エウマキア

南エトルリア最大の財閥、フェリクス家。
その威望と比べはるかに控えめな造りの屋敷には昼夜問わず様々な身分の来客が訪れる。
かくして今日この時に執政官たるルシウスが訪れるのもさして奇異な光景ではなく、 身分に関係なく訪れた順に面会を待つのも慣例通りである。
しかし質素な待合室は常ならぬ異様な雰囲気に包まれていた。
その源泉は先の戦役で声望を増したルシウスではなく、その傍らに立つユリアであった。
薄手の服は豊な双の乳房の輪郭どころか、その先端の尖り具合すら隠そうとせず、 丈の短いスカートは揺れる度に内腿の付け根を見え隠れさせている。
そんな様相のユリアは控えの間にいる者全てからの好色な視線に晒され、顔を伏せて必死に羞恥に耐えていた。

「ユリア殿」

「……はい」

そんな中でのルシウスの呼びかけにユリアは、恥辱に身を震わせながら消え入りそうな声で応える。

「礼儀作法の復習をしましょうか」

「こっ、ここで……ですか?」

「大丈夫ですよ。ここは控えの間ですから、少々失敗しても皆大目に見てくれますよ」

躊躇を曲解したルシウスによりユリアは引っ立てられるようにいかにも新進気鋭の商人といった風の若い男の前に立たされる。

「し、執政官たるルシウス……様に保護していただいているユリアと申します……。以後お見知りおきを……」

どもりながら挨拶の言葉を述べたユリアが一礼すると、形の良い乳房が呆然とする男の前に捧げ出される。
視点を変えることで乳房の張り出し具合が強調され、また丈の短いスカートの裾がめくれ、 他の者にも下着を着けてない白い尻が半ば露になる。
それらが見事な形を保ちながら小刻みに震える様が観衆を興奮させる。
そしてユリアは前屈みになる事で乳房のみの重さとその揺れ具合を一層認識させられ、 下半身に直接触れる風がそこを衆目に晒している事を示している。
(こ、こんな格好だなんて……み、見ないで、見ないで……下さい)
自身の痴態を認識することで、ユリアは回りの注視の的であることを意識させられる。
男たちの視線があたかも淫猥な動きをする指のように感じられ、それらが震える乳房や剥きだしの股間を這い回る感覚に苛まされる。

「まだ腰つきがおぼつかないですね」

皆がユリアの痴態に目を奪われる中、一人冷静でいるルシウスがぽつりと寸評する。
その一言がより更なる恥辱の責めの宣告となる。

「ご、ご無礼……申し訳ございません」

恥辱に嬲られ熱っぽい息を苦しげに吐き出していたユリアは、決意するように一息のむとその顔を引き締め丁重な謝罪をする。
だがその表情もルシウスがその股間に屈み込むと、再び悦楽と恥辱が混じりなんとも艶かしい表情になる。

「もっと腰をすえなければなりませんよ」

「ひっ……、ふぁっ、はいっ……」

ルシウスの顔がユリアの股間と密着しユリアの頭がさらに下がる。
乳房の形がより強調され、一段と突き出された豊臀はルシウスの手により割り開かれそのすぼまりすら露にされる。

(はくっ、あっ……、だ、だめ、こえを……こえをだしては……、 あっ、そ、そこはっ、や、やめてください、お……おねがい、やめ、ふぁぁぁ―――!)

だがユリアにはそのような痴態にもかまっている余裕は無い。
股間ではルシウスの舌が開ききった秘花の襞を一枚一枚を丹念になぞったかと思うと、濡れそぼった秘洞に差し入れられ存分に蠢く。
さらには尖りきらせた肉芽を散々舌先で嬲られ、とどめとばかり吸引されると、腰を小刻みに震わし絶頂を迎える。

「れ、礼儀を存ぜぬ……、はぁ、ふ、ふつつかもの……で、もうしわけ、ひっ、ふぁ……、ございま……せん……」

そうやってユリアの喘ぎ混じりの苦悶の顔が控えの間にいる者達全員に紹介されたころ、次の間に進むようルシウスの名が呼ばれる。

「ユリア殿は少々控えておいてもらいます」

「……はい。あっ、な、何を……?」

とりあえずにせよ淫虐の責めが終わる事に安堵の表情を浮かべようとしたユリアは、 ルシウスに尖りきった胸の先端を摘まれ脅えの混じった疑問を発す。

「ですが合図があればすぐに入室するのですよ」

ルシウスはその疑問には答えずに、細い糸をいきり立った乳首に巻きつけ、その刺激を教えこむように糸を引く。

「ひっ、あくっ、わっ、わかりました」

桜色の突起全体に糸が食いこむだけでなく、それが引かれることで絞られるように擦れ鋭敏な刺激が縦横無尽に駆け回る。
ユリアはルシウスが交渉している僅かな時間もその刺激に耐え、必死に嬌声を押さえねばならなかった。
控えの間と同じく華美を抑えた応接間で館の主人がルシウスを迎える。
整った顔立ちに華美ではないが品の良い上質の着衣、全体的に落ち着いた雰囲気を漂わす女性はエウマキア・フェリクス。
フェリクス家の女当主である。
うら若き頃よりその美貌を謳われた名花は、 その才と誠実さで名家では有ったがフェリクス家を随一の家格に押し上げた才媛でもあり、 また並み居る求婚者の手をことごとく拒み、未だその列が絶えぬ気高き花でもあった。
ゆったりとした着衣の胸元はそれを押し上げる豊かな膨らみを想像させ、 長い袖の先のほっそりとした真白い手先は見惚れるほど艶かしい。
そして機敏な足取りに揺らめく足元にかかるのスカートまで気高く冴える、眩いばかりの氷の彫刻である。

「これは、エウマキア様ご機嫌麗しそうで何よりです。その眩いばかりの御尊顔を拝見でき誠に光栄……」

「世辞は結構です。お互い諸事に忙しい身ですから、用件を手短にお願いします」

貴婦人に対し最大級の礼をとろうとするルシウスを制し、エウマキアは完璧な礼儀作法で以って機械的に声を発する。
フェリクス家の応接間には当初から友好的な雰囲気など欠片も無かった。

「断じて世辞などではございませんが、お望みとならば用件に入りましょう。 耳目に優れたるエウマキア様のこと、先日の戦役の事も当然聞き及んでいらっしゃるでしょう」

「私怨による第三軍団の一部の暴走。表向きは」

談笑などする気はない事を宣言するような散文的な台詞には、最後に付け加えた一言すら一片の感情も含まれていない。

「第三軍団第七部隊長は投獄。オプティムス公爵家の当主代行は貴殿の元に預けられる」

続く言葉にも憐憫の色はなく、正に淡々と事実のみを語っていた。
ルシウスはこのユフィールとはまた異なった種の誇りと矜持を保ったまま辱めを受けるエウマキアの痴態を想像しほくそ笑む。

「その事で私の立場も微妙になりまして……率直に申しましてフェリクス家はユリウス殿の派閥に属すると解してもよろしいですかな?」

「我々は一介の商人であり、政争に介入するつもりなどございません。 正当な対価をいただければ品物を引き渡しますが、皇帝陛下のなさりように異議を唱えるなどという恐れ多い事は思いもよりません」

ルシウスの誘いの言葉にもエウマキアは全く言質を与えない。
ただ心の内では冷徹な受け答えにも機嫌を損じるどころか微かな喜悦すら浮かべるルシウスの様子を不審には思う。

「ですが先年のユリウス殿の蜂起の際の、フェリクス家の尽力は相当なものだったと思いますが」

「あの壮挙はすべからく彼自身の力によるものです。我々は契約通りの売買を行ったまでです」

おそらく最も幸せだった時代に言及する時もエウマキアの声には輝かしい過去を懐かしむ響きはない。
事なら無かったのを嘆くそぶりも見せず、冷厳たる歴史家のように事実を述べる。

「契約通りですか。だとしたら随分と思い切った値を付けられましたね」

「その時の売買以外の損得を考えればそれでも安いものでしょう」

さらりと言う台詞には自身の才を誇る響きはなく、相変わらずただ真実のみを告げている。

「我々も是非そのような関係を構築したいものですな」

「ご一考しておきます。オプティムス家のように貴方と関わった結果を判断する良い材料も有りますから」

拒絶を表す言葉を口にしたわけではないが、言外に断ってるのは明白である。
その上ルシウス個人に露骨な不審を示している。

「私個人の人格に対し少々誤解が有るようですな」

「人の見方は人それぞれですから、致し方有りませんね」

つまり断じて誤解などではないという事である。

「我が都市は戦乱の最中身寄りを無くした多くの者を保護しているのですが……」

「保護されたとして、どのように扱われるかが問題でしょうけどね」

人の力と言うものは掛け替えの無いものであり、兵力、労働力、いかなものでも政事を成すのに不可欠である。
ましてや美しい女性なら、良くて献上品や恩賞に差し出され、悪ければ性欲処理の慰みものとして奴隷がごとき扱いを受けるに違いない。

「実例を見せなければ信頼されないようですな、ユリア殿」

(ユリア?……まさか)

聞き覚えの有る名にエウマキアが心の内で僅かに動揺する中で、応接室の扉が開かれユリアが引っ立てられるように静静と進み出る。
月の如く銀の髪、そのかんばせは少しやつれ何とも言えぬ風情が有った。
中でも胸の双乳は不自然なまでに大きく前に突き出され、まるでそれによろめくかのようにユリアがふらふらと進む。
ルシウスは自分の教育の成果を満足げに見やり、エウマキアは幼少の頃に鏡を覗き込んで以来の再会にその素性を瞬時に悟る。

(これが彼の切り札というわけですか……ただどこまで知っているのか。ただ私の娘と言うだけなら)

つがいになる事は叶わねど、確かに授かった愛しい人との愛の結晶を目の前にしてもエウマキアは冷静であった。
心のどこかが確かに異議を唱えてもその意思は依然揺るぎ無い。
だがその確たる視線がユリアを苛んでることには気づいていない。

(あ、あの人が、エウマキア様……こ、こんな格好をみたら、きっと……きっと、あぁ、いやぁ)

ルシウスの糸に操られながら進み出るユリアはエウマキアの注視を侮蔑と感じ、更にその身を悶えらす。

「この娘、名はユリアと申しまして、先日の戦乱の折……その酷い目にあいまして、 その上二親の顔も知らぬ孤児と言うことでしたから我が手元に保護したのですよ」

「だからどうしたというのです?」

エウマキアは動揺しないどころかルシウスの今までのそぶりが納得できむしろ安心し、 目の前の、自分の娘ではなく敵の切り札を空振りさせれば相手は引き下がるしかないと読む。
ただその腕の中で乳首をいきり立たせ、やや開いた足を震わせる娘の姿に胸のどこかが痛む。

「娘の状況に同情なさりませんか」

「どこにでもある話です」
道化るように驚いてみせるルシウスに冷たく言い放つ。

「だが奇遇な事に、この娘フェリクスを名乗っているのですよ。それで縁者かと思いましてここまで連れて来た次第です」

「申し訳ありませんが、私も一門の全てを存じてるわけでは有りません。 ですが何かの縁でしょうからその娘預からせては貰えないでしょうか?」

「いやそれには及びませんよ。これも不徳な身のわずかな罪滅ぼしですから。 ……それに戦乱の犠牲をなんとも思われないような方に預けるのは……」

「ならばお引き取り下さい」

あたかも取って置きの切り札を出したように言うルシウスに一応は提案してみるが、勿論引き渡してもらえるなどとは思ってない。
そして自分の娘なればこそ、その身を見捨てようとも多くの知己をまきこむいかな譲歩もすることは出来ないのだ。

「これは手厳しい。しかしまだ退室するわけには行かないのですよ」

「ひっ、やっ、やめっ、い、いやっ」

ルシウスは胸板に持たれかかるユリアを四つん這いにさせ、 もはや会談は終わったとばかりに席を立とうとするエウマキアに見せ付けるように尻を突き出させる。
当然タイトなスカートはめくれ上がり、濡れそぼった秘花とひくつく尻の蕾がその眼前に晒される。
同性の目に自分の欲情した秘所を晒されたユリアは羞恥にわななくようにその身を震わせる。

「それが貴方の本質ですか。ですが、たとえ一門の女性を眼前で辱められた所でなんらかの譲歩が得られるとお思いですか」

エウマキアは形の良い眉を潜め、吐き捨てるように言う。

「誤解なされてませんか?これは……」

ルシウスは可笑しそうに眉をひそめ、ユリアの股間で一際濡れ光る大きく膨らんだ肉芽を摘む。

「ひぃぃぃ、も、申し訳……ございません。ユリアは……ユリアは、ソ、ソファーを汚してしまいました。 ル、ルシウス様……どうか、栓を」

「ふふっ、しょうがありませんな」

ルシウスがいきりたつ剛直を眼前に示すと、ユリアは逡巡、羞恥、哀惜、無力、様々な表情を浮かべてそれを咥えこむ。
見たことも無いようなはしたない痴態を自分の娘がとらされる様にエウマキアは冷え冷えとした敵意を研ぎ澄ます。

「それに面白い話もあるのですよ。この娘の身元を捜してる内に取り上げた医師の消息が掴めましてね。 その者によると母の名は……エウマキア。ご一門にこの名を持つ方はおられませんか?」

「心当たりは有りませんね」 白々しい問いにも母は動ずることなく、表情一つ変えない。

「エ、エウマキア様が……お……お母さん?」

だが娘のほうはそうもいかない。剛直から口を離したユリアが呆然と呟く。

「い、いや……見ないで、見ないで下さい。ユリアの、ユリアのこんな……こんな……うぅ」

「……このような真似見るに絶えません、あなたに少しでも関わりたくは有りませんが、 そのような真似をするならこちらも相応の手段をとらせて頂きます」

泣き叫ばんばかりの娘の顔にエウマキアの声に殺意が篭る。

「正直、我らは良き盟友になれると思ったのですが」

「我らは現体制に不満など有りません」

「ユリウス殿を討たれた事も?」

「過去の為に現在を犠牲にする事は出来ません」

「さて、それが本意ですかな?」

「貴方には関係ありません」

相変わらずユリアの秘所を弄びながらのルシウスの言葉に、感情を押し殺した断言が立て続けに襲いかかる。
エウマキアの声はもはや命を奪わんばかりの迫力があった。

「そうとも言えますまい、我々はユリウス殿の遺志を継ぎ事を成そうとしてるのですよ」

「その名を汚してるだけです」

娘を弄んでいる事、ユリウスの名を引き合いに出す事、どれ一つとっても容認できることではない。
それなのに延々交渉を続けてしまう自分にエウマキアはいらつきを隠せないでいた。

「なるほどその娘がこんな痴態を晒していては確かにその名を汚しているかもしれませんね。 とするとユリウス殿の名を汚しているのは貴方では?礼儀を教える責任はあなたにあるのですから」

「えっ?」

おそらくこの会談の中で初めてのエウマキアの感情の動きが直に表情に現れる。

「……なぜその娘の責任が私にあるのですか」

「それはエウマキア様のほうがご存知なのでは?」

「……私は何も存じません」

(恐らくこの男はユリアを公衆の面前で辱めるに違いない。……しかもユリウスの娘として)

自分の娘と言うだけならどのような扱いを受け様とも耐えられる ……だがユリウスの、愛する人の娘と言われれば、正直拒絶しきる自信は無い。
愛しい人の苦悶の表情がエウマキアは苛み振り絞るような声はかすかに震えていた。

「では会談はここまでですな。早々に退出させて頂きましょう。 ユリア殿、作法に通じてなくともユリウス閣下の娘として胸を張って皆の前にお出で下さい」

「いっ、いやっ、ひっ、あっ、うふぁ、ふあぁぁぁっ」

ルシウスはユリアの腰を抱えると愛液の滴る秘所に剛直を突き入れ、犬のように進ませ退出しようとする。

「待ちなさい……………分かりました、援助します」

哀しい決意の声に、長い沈黙、そして屈服の言葉。それを言いきるとエウマキアは思わず顔を伏せる。

「援助……ですか。正直そのような事はどうでも良いのですよ」

「では何が望みなのですか」

悲哀の混じったエウマキアの声にルシウスはとびっきり邪悪な笑みを浮かべる。

「知性と気品溢れるエウマキア様ご自身ですよ」

「……それでは思い通り辱めなさい。私は抵抗いたしません」

体が目当てなら安いもの、そう考えユリウスへの貞操をどこかに追いやる自分の理性がエウマキアはたまらなく哀しかった。

「思い違いを成されていませんか。 私は母と娘の間のわだかまりを無くしユリア殿が一人前の淑女となるのにエウマキア殿の助力が得たいだけですよ」

それはつまりただ犯すのみで無いと言うことに他ならなかった。