エウマキア

「親元から離れて育ったせいかユリア殿は少々はしたない行いが目に付きましてね」

「言上は何でもよろしいですから、結局のところ私に何をさせたいのか手短に仰ってくれませんか?」

相手の要求を聞くという姿勢を示しただけであって決して屈したわけではない。
エウマキアは未だ毅然とした姿勢を崩さず、ユリウスの名誉とユリアの身柄という自分の目的のみを見据えている。

「王国随一の貴婦人たるエウマキア様に手本を示してもらいたいのですよ」

「ひっ!……うっ、あっ、はぁぁぁっ」

「思い違いを為されているようですね。私は貴方が望んでいるような事を教える事は出来ません」

無論ルシウスはそのような態度をむしろ歓迎し、膝上のユリアを見せ付けるように嬲りながら交渉を続ける。
ルシウスにしてみれば、望んでいるのは強要された行為を行う際の嫌悪の表情を浮かべながら律儀に従う様である。
悦楽に身悶えながらも抵抗を続け、どんなに辱められようとも決して屈しない気丈な貴人、これほど嬲り甲斐のある獲物はいまい。

「無論高貴なエウマキア様には、ここまでいたらないものの教育など思いもよらないでしょう、少々下準備をいたしましょう」

陵辱の始まりを告げる声にも、エウマキアは身構えるような真似もせず、ただ眼光鋭くルシウスを睨みつける。

「まずは大きく息を吸って、吐く」

「はっ?」

思いもよらない言葉に、厳めしい表情が僅かに崩れ思わず胡乱な声を上げる。

「武道の呼吸法のようなものですよ」

覚悟していた辱めとは違う。
とはいえ目の前の人間は全く信用なら無い。
何かの罠かと疑惑の色を強めはするものの、エウマキアは次の手を見失ってしまう。

「エウマキア様に協力していただけないとすると外の方に頼むよりありませんな」

エウマキアが受け入れなければ、公の場でユリウスの娘として辱めると主導権を得たルシウスが間髪入れず畳み掛ける。
諾非の損得を測りきれないエウマキアは、とりあえずは自分の身で引き受ける判断をする。
それでも応とは応えず、その変わりに言われた通り深呼吸を開始する。

「熱を取り込むようにして、残りを吐き出す。胸に熱を対流させながら蓄え、徐々に下腹に降ろしていく」

生来の生真面目な性格もあってか、一旦受け入れるとエウマキアはルシウスの言葉通りの行為を素直に行う。
ルシウスにしてみれば、目の前で娘を辱められても何の反応もなかったのは少々予想外であった。
勿論これで譲歩が引き出せると思っていたのではなく、別の方、即ち身体が多少昂ぶってもよさそうと思っていたのだが息一つ乱さない。
ということはエウマキアはユリウスと勢いで交わっただけしか経験はなく、愛はあれど本気で性の極みを極めた事がないのではないか?
そうであればこれほどの熟れた身体を持つ極上の獲物に、性の悦びを一からじっくり仕込むことができる。
腰上のユリアを仕込んだ時もたっぷり愉しませてもらったが、今度は愛する人への貞操を嬲るという愉しみが加わる。
忘れかけた経験とは比べ物にならないほどの刺激を受けた身体が淫蕩な反応を示し、 あられもない痴態を晒しては仕込まれた事を認識するエウマキアの屈辱と自責の顔、 抵抗を続けながら愉悦と苦悩がどんどん深くなる様を堪能させてもらおう。
実際エウマキアは今でも侮蔑するような表情を保っているが、鋭い敵意を宿す眼差しに悩ましさが混じり、 全身が微妙に震え何とも言えぬ艶を纏わしている。

「その調子ですよ。口からだけでなく、全身の肌から熱を取り入れる」

頬が上気し、僅かに露出した白い肌に玉の汗が浮かぶ。 敵意を保ちつつ色欲に染まりつつある貴人の様は壮観であった。
そして当然エウマキアも自分の状態に気づいている。
目の前でルシウスに貫かれているユリアの痴態が、あたかも自分を鏡で写したかのように思えてくる。
風景がねったりと揺れ、熱っぽい身体は全く意のままにならず、ともすれば意識すら熱に飲みこまれそうになる。
下腹が慣れぬ熱に炙られ鈍く疼き、その蹂躙の果てに体の最奥からまずはほんの一雫熱い液体が漏れ出る。
慌ててそれを留めようとするがその術も無く、かえって意識すればするほどそこに熱が集まる。
遥か昔に味わったことのある、しかしそれとは桁違いの刺激に、 胸の鼓動に追い立てられるように体奥から愉悦の証が次々に分泌される。
触れられてすらいないのに蕩け出す身体を諌めようとするが、その理性は無力と恥辱のみを自覚させる。
微妙に腰を震わせる様を見ながら、ルシウスは正直掌中の獲物の素質に驚嘆と賞賛を禁じえない。
只一度の経験しか無いその身体は当然性愛に抵抗する術を知らない。
しかし意識せずとも身体が満たされぬ状態が続いていた間、密かに研ぎ澄まされていた感覚は今ここに開花しつつある。
この美味しそうな身体を曇り無き貴き心と供にいただけるのだ、出来る限りじっくりと味わうのが礼儀と言うものだろう。

「十分溜まったところで……一気に開放する」

十分どころかエウマキアの全身はすっかり火照りきり、特に胸や下腹は渦巻く熱に苛まされ汗や恥液が溢れ出てもう限界である。
だが今“それ”を放てば自分がどうなってしまうか分からない。
分からないが今までと比べ物にならない恥辱である事は分かる。

「では続けますか。はい、吸って、吐く」

放つわけにはいかない。
だが止めてしまってもどうなるか分からない。
破滅から逃れるためエウマキアはルシウスの言葉に操られるように、更なる高みへ上っていく。

「ひっ、あはぁ、はっ、ふわぁぁっ」

にわかに突き上げられ始めたユリアが上げる嬌声、淫猥に揉みしだかれる桜色に色づいた乳房、 その上部の肉芽を摘まれながら剛直に貫かれる秘花、その全てが自分のもののように思えてくる。
そしてユリアの喘ぎの間隔が徐々に狭まるにつれ、胸がつまり息苦しさが増す。
歯を食いしばって耐えるが、その時はやってくる。

「ひあぁぁぁ――――っ!」

「…………………っっっ!」

ユリアが一際甲高い泣き声を上げ全身を瘧にかかったかのように震わせる。
それでもエウマキアはその響きにわななく全身を少しの間押さえこみ、ルシウスの視線から逃れるように虚空を睨む。
そこで残された意思の力で痴態を晒さないよう準備した後、声にならない声を上げつつ内より溢れる奔流を開放する。
だが身体を一寸も動かさず極める様は正に貴人と称されるのに足るものだろう。
実際断末魔に震える母娘の息がなんとか収まったのを見計らいルシウスは労わるような声をかける。

「どうなさりました?」

「……なんでも……なんでもございません」

「ですが、さすがエウマキア様ですな」

エウマキアにしてみれば、淫乱と賞されているようなもので、恥辱以外の何者でもない。

「ですがユリア殿は……」

そう言いながらルシウスはぐったりとしたユリアから剛直を抜き取ると、 それを誇示するようにいまだ微動だにできないエウマキアの眼前に示す。

「これを使ってエウマキア様に次の手本を示してもらおうと思ったのですが、 こんなに汚してしまうと使い物になりませんね……清掃してもらわねば」

そう言うとルシウスはへたり込むユリアの口元に男根を突き付ける。
何度も強要された行為であり何をさせられるかユリアは当然分かっている。
だが指一本動かないこの状態では、口を開けることすら億劫である。
それを見越しているルシウスはエウマキアに目を向ける。

「ユリア殿はもう母親の前で無作法は晒したくはありませんか。ならばやはりこれもエウマキア様に手本を示してもらいましょうか」

「手本とは?」

「ですから汚したものの清掃ですよ」

犯した上後始末させるというその要求の無体さに、絶頂の余韻に惚けていた頭に怒りの感情が満ちてくる。

「エウマキア様が付き合いきれぬと言われても、我々にはユリウス陛下の娘を一人前にする義務があります。 いくつか心当たりはあるのですが……」

「……手本を見せます」

だが含みのあるルシウスの台詞に、娘のそして何よりユリウスの名誉が脳裏を霞める。
そして自分一人が痴態晒すことでそれらが貶められる事が回避できるならと、自身より他者を慮るのがエウマキアの性である。

「清掃すればよろしいのですね」

しかしエウマキアが気だるげな身体に鞭打ち、意を決し努めて無表情を保ちながら膝まづこうとするのをルシウスが制する。

「いかに手本とは言え床に手をつかせるような真似をさせるわけにはいきませんよ」

「私は言われるままにするだけです。どうぞお好きなように」

ルシウスの礼節ぶる物言いにエウマキアはあくまで冷たく言い放つ。

「それではお手を拝借」

ルシウスに手を引かれるままに、エウマキアは直立から腰を折り長い足を伸ばしたまま覗き込むような形で股間に顔を近づける。
緩やかな上衣の胸元は内包する豊な双丘の重みでその形が分かるほど張り出し、さらには尖りきった先端が一際窮屈そうに押し出す。
足を揃える事で引き締まった、それでいて弾力に富む掴み甲斐のありそうな豊臀が天に掲げられる。

「これでよろしいのですね」

エウマキアはその面に嫌悪と羞恥が浮かびそうになるのを堪えながら開始を宣言する。
覚悟はしても嫌悪は隠し切れず出来るだけ近づかぬよう舌先を突き出し忌むべきものに触れさせる。
その熱さ硬さに反応しつつ、それでも生来の性格からか休みなく丹念に舌を這わす。
技巧以前に唯舌を這わすだけだが、必死に無表情を保ちながら舌先を蠢かす様が艶めかしく、更に屈辱の顔が彩りを添える。
しかも体勢のせいかバランスが悪くルシウスが少し腰を動かせば剛直が唇や顔に触れ、 たわわに実る乳房を重々しく揺らしつつ顔を背ける様がルシウスを喜ばせる。

「さすがエウマキア様巧いものですよ」

屈辱の賞賛を無視し、エウマキアは無心に舌を動かす。
しかし明晰な頭脳は自然に自分のありさまを想像し、無反応でいる事が客観的にはその事に没頭してるように思えて、 そのあさましい様に恥辱が湧き上がる。

「くっ……あっ」

しかも時間がたつにつれ無理な体勢が祟ってか、体が小刻みに震え突き出し続けた舌先が振るえだす。
そして丁度顔を擦るように突き出された男根から顔を逸らそうとしてバランスを崩す。

「おっと」

「……っ!」

崩れそうな体をルシウスが、その手で豊満な乳房を捕らえ支える。
触れられた箇所から刺激が走り、エウマキアは湧き出る嬌声を辛うじて抑える。

「は、放して下さい」

「どうかご遠慮なさらず。エスコートぐらいさせてもらいますよ」

表面を、さらに布地を挟んで擦られるだけで、芯が炙られるように火照る。
羞恥そして得体の知れないむず痒さから逃れようとするほど、頬に熱い肉塊を擦り付けられ、 重量感ある乳房はルシウスの手を添えられてるだけで巨きすぎる双乳が互い自身を圧する。
敏感な肌は子細な指の動きも余すことなく感じとり、直接触れらてない乳首も布地で擦られいきり立つ。

「舌が止まってますよ」

目を閉じ胸からの刺激に耐えていたエウマキアは叱責に反射的に舌を動かす。
矜持を捨てず、とはいえ余裕も無く嫌悪と火照りに彩られた様はひどく魅力的であった。
「エウマキア様はこれほどなのに、ユリア殿が至らぬのは……やはり幼少の頃が原因ですかな」
一人ごちるとルシウスはエウマキアを抱き上げその腕に納める。

「な、何を?」

「ユリア殿の練習を手伝っていただくのですよ。やはり……舌の使い方は乳を授けられる時に覚えるものでしょうから」

「なっ……っっっっ!」

笑いながらルシウスは絶句するエウマキアの胸をこれからここを責めると宣言するかのように撫で上げ、ユリアを向かいに備え付けた。