エウマキア

(ああっ、何か……何か言わないと……、でも……はしたない声が……)

(何か御言葉があるのだろうが……、それにしても艶かしいお姿……)

犯される女性が自ら剛直を咥え込む屈従の儀式、そのような真実を大半の者が知らぬまま会食の着席が完了する。
次いで客人を迎える側であるエウマキアから言葉があるはずなのだが、溢れる喜悦を必死に堪える身では唇が開く事は嬌声を意味してしまう。
内よりたっぷりの汗や母乳を滴らせた衣服は僅かではあるが布地を透けさせ、火照る肌に燻られる淫液の香が魅惑的に漂う。
家人達は礼儀以前にあまりに魅惑的な情景に動く事はできず、沈黙を破るのは自らの目論見通りに事を進めるルシウスの声であった。

「皆様、少し緊張されている様ですな」

「はっ、ええっ、何分このような場は慣れておりませぬので」

「正直、嬉しい誤算といったところなのですが」

客人らしからぬ場を睥睨する発言であるが、先程の相席からルシウスはエウマキアと一体でこの場の主とみなされているために家人達に抵抗は無い。
正直に寄り添う二人の様子に戸惑う旨を告げるが、それは決して寄り沿う事自体を否定するものではない。
エウマキアに子がおらぬ事は彼等にとって長年の懸念であり、それを解消する予兆は望ましいものである。
ただ、冷淡気丈な才媛であるエウマキアは孤高の花の印象が強く、先だって一夜を共にした事ですら十分以上の衝撃であり、次の日の朝にここまで寄り添うことは予想できなかっただけである。

(みんなが認めて……こんな茶番がどこまで続くの……)

家人達がルシウスを自らと重ねてフェリクスの主と認ている事実は淫罪に捕われているエウマキアに覆す事は出来ず、家の主として相応しい行動をとる事が贖罪として求められる。
犯され嬲られるのでなく……寄り添い奉仕する。
求められる未来の姿は辱しめを極め、それでいて逃れられぬものとしてエウマキアの脳裏に刻まれる。
内心の忌避が保たれている故にそのような自己の姿はあまりに恥辱であり、思うが侭に弄ばれる悲嘆が気丈な心と相俟って物悲しい艶となる。

「私もこのような魅惑的な姿も歓迎されるとは思いもしませんでしたよ」

「わ、我々もそのような姿を拝見するのは初めて」

「おそらくルシウス様の為の装いでは」

ルシウスは家人達の緊張を理解する言葉を継ぎ、その陰で自ら施した淫猥な衣装に注目を集める様に言及する。
寄り添う二人の様子と共にその艶かしい装いに目を奪われていた家人達は自身の視線に淫欲が含まれていたのを指摘された様に思え、それを誤魔化す様に注目の理由としてエウマキアの恋慕を上げてしまう。

(そんなっ、こんなはしたない衣装を、私が選んだかのように)

自らの手で着替えまでなしたルシウスが空惚けてみせれば、それに家人が応じてみせる事でエウマキアの否定の術は封じられ、望んでいないはずの装いが自身の意思を体現したもと見なされてしまう。
胸元の開いた淫らな衣装を改めて意識させられ、それを自らの望みと解される事にエウマキアの恥辱が存分に煽られる。

(でも……私の胸は……このような衣装ですら収まらない……)

しかし、誤解を否定する様に普段の装いを思い起こせば、内から母乳で濡らし淫肉の弾みで布地を引き裂く情景が浮かび上がり、自身に相応しくないという認識が生まれてしまう。
そう思えば普通の服の着れぬ牝である自分にはこのような装いが相応しいとすら思え……それどころか無理に胸を飾り紐で止めている有り様はこの装いすら過分であるように思えてくる。

「……エウマキア様、身体のお加減が優れないのですか」

(今にも零れ出そうっっっ、いやらしいお乳も……母乳もっっっ、こんな姿……見ないで……)

淫猥に濡れる自己を恥じるエウマキアにかけられる言葉は、その脳裏で痴態を視認される脅えに変わる。
恥辱に応えるように胸の奥底が疼き、皆の視線を意識して何とか押し止めている奔流が巨乳を震わし、その先端で衣服の端を押し退ける様に乳首を尖らせる。
思い起こされるのは噴いても噴いても終らぬ乳白色の宴であり、昨夜はその全てをルシウスに目で手で舌で賞味された。
部屋に入る時から堪え続けた胸の圧迫感は限界に近く、放乳と言う母としての最悪の痴態が人目に晒される情景が脳裏をよぎる。
昨夜あれほど搾られてなお溢れる母乳は巨乳に満ちる感覚だけで喜悦を撒き散らし、エウマキアの呆けた脳裏には搾乳牝の称号を深深と焼き付ける。
脳裏に激しく噴き零す状態を想像している状態では、僅かな蠢きすら家人に放乳を気取られる様に思え、沸き上がる恥辱が一時の抑制を為す一方で最終的な痴態を深める事になる。

(ああっ、こんなに……尖って……、と、飛び出てしまうっ)

エウマキアの意識は胸の動悸を抑えようとしてその脈動に同調し、火照る身体を沈めようとしてその熱を昂ぶらせる。
汗ばむ巨乳は艶かしい色に染まっているが、中でもその先端は特に艶かしい桜色に火照りいやらしく蠢く淫猥の極みである。
布の端に位置する飛び出た形状は今にも零れ出そうであり、その頼りとするのはもはや淫虐の紐のみである。

「胸の辺りがお苦しいのですかな」

(んっ、ああっ、紐が擦れてっ……金具が震えてっ……)

着替えの際に引き裂いてしまった衣服を取り繕う様に処された飾り紐は一応の身形を保つが、一方で尖り立つ乳首にその支点を持つ淫虐の責め具である。
飾り紐による緊縛は母乳の放出こそ抑制するが、同時に痴態の露見を免れる代償も要求する。
跳ねるような乳首の脈動は当然に緊縛を食い込ませる結果になり、指とは異なる細く鋭い感触が痛みでなく喜悦に付与して放たれる。
脈動は紐を伝って処された金具に伝わり……肉に馴染んだ責め具は神経に直結して喜悦を響かせ、内に響く刺激が外からの緊縛と交錯して悲痛な責めを為す。
ルシウスの言葉にその胸元に視線が集まる錯覚が重なり、心身の両面がエウマキアを責め立てる。

(ひっ、そこまで……引かれて……)

金具の揺れで吸収しきれぬ響きは胸から腹へ紅潮した肌を這いまわり、ついには左右のそれが集って乳首と同じ様に紐で処された肉珠を責める。
その刺激のみでなく乳首を蠢かせて肉珠を慰める情景がエウマキアを辱しめ、三つの肉の突起がたまらなく淫らなものとして認識させられる。

(こ、このままでは……私は……わたしはぁぁっ)

放出を許されぬ事で内に留まる母乳の密度は高まり、爆ぜんばかりに震える肉は自身の動きすら淫虐に変えて主を喘がせる。
乳首の責めも反動に反動を重ねる事で強弱の波が更に激しくなり、胸の奥よりこれまで以上の母乳を汲み出して更なる脈動を強要する。
縛られる所に至るまでは一部の隙間も無く母乳を満たし、一方でその先はきつく尖り立つ様を意識させられ、いずれ来る放乳の壮絶さはエウマキアの気丈な意思をも震わせる。

「わ、わたし……は……、だい……じょうぶ……ですから……」

(お願い……見ないで……、こんなに……はしたなく……お乳を噴き零す私を……)

淫虐の責めのみならエウマキアの気丈な意思は持ち応えただろうが、突き刺さる家人の視線がその気高さゆえに堪える限界を超えさせる。
晒されようとする痴態を止めるのは気丈な意思の欠片のみで、抗いを伝える言葉も自身の敗北を察して悲しく響く。
はしたない反応への恥辱は人目を意識して倍化し、時折呆ける意識が喜悦に溺れている自己を意識させる。
止めようとして止めれぬ痴態が屈さぬ意思を悲嘆させ、抗おうという思いが身体を無為に揺らして媚肉を淫らに跳ねさせるのだ。

(もう……だめ……、み、皆の前で……、あぁぁぁぁぁぁぁっ)

衣服から踊り出る衝撃はエウマキアの脳裏にあまりにはしたない放乳の情景を思い浮かべさせる。
衣服を押し退け巨乳を零れ出し、過大な淫肉を震わしながら、情欲を示すように大量の母乳を噴き零す。
信じられぬほどの巨きさの乳房、信じられぬほど尖る乳首、淫猥極まりない形状は自身のはしたない性の象徴として晒される。
そこに処された金具は重ねられた淫行を示し、その上母乳を噴き零す様はその全てを受け入れ喘ぐ牝の姿に他ならない。

(えっ、あっ、なにが……どうなって……)

脳裏に浮かぶ放乳の情景に泣き濡れるエウマキアであるが、火照りきった身体を覆う喜悦の波が過去の放乳の瞬間と違う事で、事態が自分の思うようなもので無い事に気付かされる。
胸の奥から巨乳に満ち溢れる奔流の開放は恥辱の極みであるが、同時にその息苦しさからの開放を意味するはずであった。
しかし、今この瞬間では胸の息苦しさは変わらず、それどころか更に増してエウマキアを苛んでいるのだ。

「こ、これは」

「いや、何と言いましょうか」

(あっ……あっ……、ああっ、そんなっ)

呆けた視界は衝撃の原因を探り、選べるのなら放乳の方がまだましだったと思えるような情景を映し出す。
エウマキアの霞む視界に、そして家人達の注目を集める先で揺れ踊るのは……重厚な手鏡。
無論巨乳を晒せば痴態の中にそれも踊り出たのであろうが、それのみ揺れ踊る様は淫猥な装飾を強調する。
かつての親愛の証はいまや淫虐の責め具であり、人目に晒されては搾乳牝の証となっており、体裁を保ち晒されるそれは何らかの説明を要求される。

(淫欲に溺れ……忘れていたと言うの……)

金具に連なるその存在は決して脳裏から離れていたわけではない。
昨夜の陵辱が色濃く残る脳裏には、はしたなく揺れ踊る巨乳の先で乳首を曳き回しながら痴態を映す情景が深い恥辱と共に刻まれている。
大量の母乳が大切な遺品にはしたなく振りかかり、母としての不貞を夫に報告する情景は思い起こしても涙を誘う。
しかし、その強烈さ故に服の内で動きを抑えられた状態はその存在を失念してしまい、金具が肉の内を跳ね回る感触に意識が捕われていた。
揺れる巨乳は衣擦れにしてもその先端で最も大きな動きを示しており、その先があるのなら更に不安定であることを思い浮かべるべきであった。
淫猥な装飾は乳首までを完全に制御しており、そこから先は別個の動きを警戒すべきであった。
今となっては事態の説明は容易だが、もはや現実を引き戻す術は無い。
エウマキアの気質は自身の聡明さを誇る事は無い……しかし頼りとするのは確かであり、それが淫欲に溺れ働かなかった事態がエウマキアを愕然とさせる。

「ふむ、中々に良い品ですな」

突如現れた重厚な物体について家人が事態を把握できぬが、艶かしい白い肌に映える情景に視線は釘付けになり、内に抱く色欲を誤魔化す様に驚愕の声を上げる。
その台詞に淫猥さを確認された錯覚に捕われたエウマキアは悲痛なうめきしか発せぬが、それを取り繕う様にルシウスが鏡を手に取り平静な声で解説する。
その動ぜぬ態度が家人達の驚愕を抑制し、胸元に手鏡を揺らす光景をありえぬものでないと認識させられる。
勿論そのような認識がもたらされる一方で手鏡を弄る動きは乳首に直結し、もはや意思の枷を解かれ装飾のみに抑制を依存する奔流がルシウスの意のままに操られるのだ。

(ああっ、お乳が、爆ぜそうでっ……爆ぜなくてっ、どんどん……どんどん……沸き立たせてしまうっっ)

勿論一時は放乳を観念したのだから、エウマキアの胸の堰は開ききっており、一時で巨乳の先端まで満たす程の量の母乳が常時溢れ続けている。
ただでさえ巨き過ぎる乳房が一回り以上膨れ上がるように脈動し、放乳の態勢に入った乳首も尖り切って震えている。
処された飾り紐も弾き飛ばされて当然の風情であるのだが、手鏡、金具、紐、と連なるルシウスの手腕が体裁を取り繕い、更にはエウマキアの放乳能力をも更に増強させていく。

(ひいっ、でる……でるっ、ああっ、見えてるの、見えてないのっ)

ルシウスの手管は放乳を完全に止める事をせず、霧雨のような母乳を噴き零させてエウマキアを嬲り調教する。
衣服の端から宙に響く細く鋭い音は距離を置き動揺を重ねる家人達に気付かれず、それでいてエウマキアと婦人たちにはその視線の先での放乳を意識させる。
勿論エウマキアは家人が気付いていない事を信じきれず、晒される痴態を恥じ……それにより一層の母乳溢れさせる淫虐の循環に陥る。
わずかでも噴き零せば胸の奥からはそれを上回る量の母乳が追加され、巨乳を苛む圧力は増すばかりで安んじられず、今気付かれずともいずれ晒してしまう放乳の痴態が更に激しく脳裏に浮かび上がる。

(いやっ、剥かないでっっっ、ああっ、杯に注がれて……、でも……止まらない……止まらないのっ)

(もう……だめっ、……えっ……うそっ……、それでは見られて……いやぁぁぁっ)

実際に噴き零しているわけではないが、それを観念するようなエウマキアの様子は周囲に伝わり、同じ様に放出を必死に堪えていた婦人達の意思を粉砕してしまう。
後背の男の手に弄ばれ続け、更にはエウマキアに処された金具や紐の揺れに同調していた婦人達も限界であり、抑制されている主の分を補う様に胸元をぐっしょりと濡らす。
それどころかエウマキアに視線が集まっているのをよい事に順次その巨乳を剥き出しにし、机に並ぶ杯や深皿に乳白色の液体を注いでいく。
家人達は気付かぬが他の婦人たちはそれを確認しており、痴態を見せ付けられる事で自身の番が回ったときの露見を強く意識させられる。

(み、皆にこのような辱しめが……、なのにっ、私は何を考えているのっ)

そしてエウマキアは自らの負うべき放乳の責を部下に押しつけたような感覚に泣き濡れ……更に抑制無く噴き零す様に羨望すら感じる牝の性に打ちのめされる。

「獅子と鷲、何らかの対ですかな」

エウマキアに向けられた鏡面は霧雨のような母乳が噴き出る様が映り、一方でレリーフの側は家人に向けられてルシウスの解説が続けられる。
その説明は物品に込められた思いを……剣を振るう者と後ろを支える者の対を正確に指し示すが、その具体的な人物については事実と異なる者達をこの場においては想起させてしまう。

「対、となれば……言うまでも無く」

「まこと、お二人に相応しい」

(違うっ、それはユリウス……なのに……、わ、私の……はしたなさが……)

本来込められた思いは愛するユリウスとの対であったのだが、場の雰囲気は犯し辱めるルシウスと喘ぎ泣くエウマキアとの対を実体を知らぬまま想定させる。
先程の言葉に詰まる様子も恋慕の表明への初心な躊躇ととられ、二人の仲についての誤解は更に強まっていく。
いかに否定しようとも傍目にはそう映ってしまうのはエウマキアにも明確であり、大事な遺品を淫具に堕とされた時を上回る悲嘆を溢れさせる。
ユリウスとの親愛の証がルシウスへの従属の証となり、同時にいやらしい自分がどちらに相応しいか宣告された様に感じられる。
エウマキアはこれまで以上に悲痛に項垂れ、その様子に手鏡の意味を知っている婦人達も涙を零す。

「翼広げる鷲に相応しいのは……」

(あひっ、どんどん……漏れ出て……、皆の目にも……)

鷲の文様が描かれた方の品がルシウスの手に引かれ、家人に見える様に高らかに掲げられる。
当然に鎖で連なる乳首も上方に曳かれて母乳を噴き、鏡面の側だけでなく家人に見える側にも母乳が滴る錯覚がエウマキアを襲う。

「聡明で優雅なエウマキア様とフェリクスの家の富強」

(もう……ユリウスと対をなすなど……言えない……、わ……私の手で……お乳を噴きかけて……)

ルシウスは一方の手で手鏡を介して乳首を嬲りながら逆の手にエウマキアの手を捕らえ、意のままに操りながらあたかも自発的な意思であるかのように手鏡を支えさせる。
甲に添えられたルシウスの手はそれを取り落す事を許さず、白くか細い手に不貞の証を掲げる様に保たされる。
そこに誇るべき親愛の残滓はいささかも残っておらず、手を変え表明される自身の淫乱不貞がエウマキアを飽きる事無く貶める。
加えて震える手はルシウスの時と同様に尖り立つ乳首を刺激し、自身で搾乳を為して家人に痴態を知らしめる錯覚もエウマキアの悲嘆を加速させる。

「こちらの方は……」

(私が……対をなすのは……貫き犯すこの……っっっっ、ひあぁぁぁぁっ)

当然に逆の手鏡はルシウスの手に取られる事を予期するエウマキアであるが、その手法が想像できぬほどに淫猥であるとは思いもしない。
自身の手にした手鏡は自ら搾乳する恥辱を生むが、その刺激は淫虐の意図を介さぬのだから気丈な意思が堪え得るものである。
喜悦を無にするわけで無いがこれまでの暴虐とは雲泥の差であり、意識は喜悦を堪えるより表明されつつある恥辱のつがいに向けられる。
その間隙を縫いルシウスの手が蠢き、手鏡でなくそれに連なる鎖を直接に引けば……安んじていた心身に一際強い悦楽の波が響く事になる。
励起しきった乳首の強いしなりは処された紐を通じて肌を這い、下方で膨れ上がる肉珠を経由して逆の紐の連なりに響き、その終着点は同じ様に尖り立ちながら直接は刺激されていなかった逆の乳首である。

「私が手にとって宜しいのですか?」

連なる手鏡に嬲られる一方の乳首は濃密な刺激に励起を極めるが、触れられぬ方の一方も緩やかな刺激と対となるものとの落差が情欲を溜めこませていた。
今刺激を受ける事で溜まりに溜まった情動が一息に開放させ、励起しきった尖りが跳ね上がる事で吊るされている手鏡がルシウスの手元に吸いこまれていく。

(ううっ、ちがうっ……ちがうのにぃっっっ、なんで……こうなってしまうの……)

獅子の文様が刻まれた手鏡が……本来ユリウスに所持されるべきものが、ルシウスの手中に収まる様子は喜悦に霞む視界に映し出され、蠢かされる手の動きに比例する乳首の刺激が嫌でも事態を悟らせる。
端緒である鎖を弾く動きはエウマキアの意識の外であり、搾乳自慰の延長として認識される淫猥な献上は本心が望んだものとして脳裏に刻まれる。

「こ、これは……、ちがっ……あっ、ふあぁぁっ」

溢れる恥辱が望まぬ相手から大切な品を奪回を図る様に伸ばされるが、力無い手は逆に陵辱者の手に捕われてしまう。
既にエウマキアの手にする一方にはルシウスの手が添えられており、もう一方の手鏡を取るルシウスの手も指と指を絡ませて手の甲にエウマキアの掌を重ねさせ、左右で主従を逆にする手合わせがあたかも互いが互いを認める姿として映し出される。

「まこと……似合いの一対ですな」

「やはり、そのようであられましたか」

(私の望んでいる事は……私欲なの……?、家のため……ユリウスのため……淫猥な私が取り得る道は……)

その様子を何も知らぬ家人達には深い親愛を宣言であると解し、当然本意で無いエウマキアの沸き上がる否定をも封じる。
家を思うエウマキアの心は不貞の罪に塗れる自身の忌避より家人達が望みを優先させ、溢れる拒絶も淫らな性への罰と思えば抑えつけられる。
淫猥な契約で自らユリウスを裏切った身でかつての縁を主張できるはずも無く、断絶を宣言するのがユリウスに報いる唯一の道とすら思えてくる。

「両家の友好をルシウス=プランクスの名において誓う」

揺れ動くエウマキアの心情を見透かしながらルシウスは手にする獅子の文様を掲げ、自らの名と共に表向きの友好を声高に宣言する。
その行為は同時に丈夫な鎖を介して鋭敏な尖りを曳き回し、内で暴れる金具が神経に直接喜悦を響かせる。
淫肉の尖りは紐を食いこませながら脈動を繰り返し、露見のギリギリで乳白色の薄霧が噴き零れる。
間近で同じ様に犯される婦人達にはその陵辱が見てとられ、ルシウスの宣言の真意に自らと主の隷属を見出して涙する。

「両家の友好をエウマキア=……っっぁぁぁっ」

もはや逃れる道の無いエウマキアはルシウスに習って手にする鷲の文様を掲げ、力無く先の台詞を復唱する。
勿論その意味するのは両家の友好だけでなく……エウマキアが陵辱を受け入れる事を正式に宣言するものである。
婦人達も遺品まで用い嬲られたエウマキアにこれ以上の抵抗を望まず、あとはその身を盾にする方途に思いを巡らせるのみである。
しかし、ルシウスはエウマキアにそれ以上の恥辱の宣言を望み、体奥に収めたモノを蠢かせて宣言の中途で言葉を詰まらせる。

(何の意図で……、っっっ、まさか……わたしにっっっ)

自らの名を名乗る段で台詞が止められたことは、思い浮かべるのと違う名乗りが望まれている事を意味する。
聡明なエウマキアは瞬時にそれを察するが、慣れ親しんだエウマキア=フェリクスの名乗り以外思い浮かばない……はずであった。
昨日までならその通りであるのだが、一夜を経て今日に至ればもう一つの名乗りが脳裏にちらつく。
名は確かにエウマキアであるがそれに続くフェリクスと異なる姓……家人に告げるべき自身の本性を示す姓を思い浮かべて慄然とする。
この場にいるものはエウマキアの名を……普段の生活を知っている。
しかし、昨夜ルシウスに抱かれて見せたような……はしたない本性を知らない。
現在犯されている姿は家の体面を慮って晒す事は出来ずとも、その現実は出来得る限り知らしめねばならない。
その為の最も容易な方法が自らの名に相応しい姓を付け加える事であり、友好の宣言の裏の意味をも体現するものである。

(ユリウス……ごめんなさい……、そして……さようなら……)

決して望まぬその姓を思い浮かべれば、許されねど想いつづけたもう一つのフェリクスと異なる姓が思い浮かぶ。
親愛と恋慕に溢れるそれを名乗る事は叶わぬまま、それとは違う姓を名乗る事は何物にも換え難い想いの全てが打ち砕かれる錯覚をもたらす。
変わらぬ想いを抱く相手の顔が脳裏に浮かび、逡巡の想いがエウマキアに言葉を詰まらせる。
しかし、不貞の淫罪への贖罪を求められる生真面目な性は今更に道を引き返す事を許さず、逆にそうする事が故人の名誉を保つ術とすら思わせる。

(こんな……わたしは……、こんなに……はしたないわたしは……、エウマキア=……)

その躊躇を絶つ様に……淫猥な牝の本来の居場所を示すように、体奥を貫く剛直が突き上げられる。
エウマキアの強靭な意思は周囲に痴態を気取られぬ体裁を保つが、それ以上に鋭敏な感覚は胸元に足元に容赦無く淫猥な染みを拡げていく。
はしたなく濡れる様子は愛より淫欲を選ぶ自身の姿となってエウマキアの心中に確立し、真意な思いによる抗いすら不当なものに貶め、生真面目な意思は義務として自身の敗北を宣言させるのだ。
愛する者への思い、相手への忌避、感情の全てが唇の動きを否定する……それでも真実を尊ぶ意識が恥辱の名を紡いでしまう。

「…………プランクス」

決意してもなおエウマキアの心のどこかは抑え切れぬ忌避を擁し、何らかの不測の事態が自らの身の所有を決する宣言を防ぐ事を願う。
しかし、エウマキアの願いも虚しくそのか細い声が遮られる事は無く、不自然に中断された言葉の次を待っていた室内に無常にも響き渡る。

「なっ、なにをっ」

「いや、それは」

相好を崩し間抜けな面を晒す者、椅子からずり落ちる者、様様な反応は一様に途方も無い衝撃を与えられた事を語る。
エウマキアがルシウスの姓を名乗る、意味せんところは言うまでも無く婚姻ではないか。

(もう……戻れない。私は……私は……この男の所有する牝……)

勿論エウマキアの受ける衝撃はその比ではなく、既に心中で何度も思い浮かべた名でも改めて外に響く事で格別の悲嘆をもたらす。
名前とは自己を規定するものであり、常日頃契約を交わしているエウマキアは特にその意識が強く、異なるそれを名乗る事は本当に今までとは違う何かに変わってしまう感覚をもたらす。
ましてやそれが名乗る事を欲した愛するユリウスの姓でなく、自分を犯し辱めるルシウスの姓であるなら、その変わる先は淫乱不貞の搾乳牝に他ならない。
その認識は今までの人生の全てを否定させるのに十分であり、ルシウスの所有物である事が自己の全ての様に思えて来る。
心の闇に呼応する様に胸の奥から母乳が溢れ下腹が重くなる錯覚は、あたかも自分の言葉が不貞を決したように感じさせる。

(もう戻れない……私はエウマキア=……プランクス)

どこか他人事のように自身の発した言葉が再び自身に染み入り、エウマキアの心身を心底から望まぬ立場へ押し上げる。
両家の友好は表向きの装飾であり内実は淫猥極まりない従属である事をエウマキア自身が知っている。
言葉を発した事でエウマキアの生真面目な性はそれに伴う責務を背負わされ、ルシウスに犯されようとも心ではユリウスの妻であり続けるなどという都合の良い解釈を許さない。
口尻秘穴を犯され、淫猥な契約を押印した上に衣服を破り遺品を吊るし喘ぐ、振りかえる全てはあまりに淫らであり、淫欲に身を任し自ら突き進んだが如き情景が走馬灯の如くエウマキアの脳裏に示される。
そのことを目の前の家人の歓迎が示しており、その審判に抗することはエウマキアに許されない。
勿論家人達が望むのは幸せな恋愛であり、今行われているのは紛れも無い陵辱である。
しかし、その外見が変わらぬ事が、エウマキアに逃れられぬ運命をせめて家の者の望む姿へ擬態する事を義務としてしまう。

「なんてことを……」

「これでは……もう……」

そして、見え隠れする痴態に主の苦境を察していた婦人達にも、その宣言は十分以上の衝撃を持って振りかかる。
あの貴き強いエウマキアが望まぬ宣言を強いられるまで追い詰められている……涙を湛えながらも吊り上がる目尻は心までは屈していない事を映すが、どの様に強制されたとしても一度口にしてしまった言葉は無いものにすることはできない。
相手によほどの落ち度が無ければ……心は屈さぬ上で隷従を強要される最悪の恥辱が待っているのだ。

「……の名において誓います」

恐らく何事も無くともこの会食の内で聞かれたであろう両家の友好の宣言であるが、先に抱かれる男の姓を自らの名に連ね、艶かしい装身具を共に握る身では当然その意味が異なってくる。
表向き謳う両家の友好の先には当然にエウマキアとルシウスの婚姻が示唆され、何も知らぬ者の歓迎はエウマキアの抗いを封じ、真実を知る婦人達は共に堕ちる事を強要される。

(わ、私達も……同じ様に)

(エウマキア様が……そのように身を処されるのならば)

主の完全な服従の様子は婦人達に……同じ被虐に敗れた牝達に自身も同じ様に犯される相手の性を名乗る義務を感じさせてしまう。
エウマキアの宣言の影響で夫の自分に向けられる眼は厳しくなり、後ろに抱く男との仲への疑惑を強めている様に見て取れる。
エウマキア只一人に陵辱の道を歩ませてしまいと思う心は、当然に後ろから抱く男の姓を同じ様に名乗る自分を想像させ、それの意味する愛する夫子との永遠の離別がその心を震わせる。
主と家庭の二択はどちらかを選べるものではない……しかし、今の彼女達は自身の淫猥な反応を認識させられ確かなはずの貞節を信じれぬ状態である。
進むべき道の一方は不貞の罪を隠し続ける事を意味し、逆の一方は淫肉の所業への当然の罰を思わせる。
主に似て生真面目な性が選ぶ道は明らかであり、婦人達も主と同じく淫獄への道を決意してしまうのだ。

「あっ……」

(落ちて……このまま無くなれば良いのに……)

この場の視線の全てを集める両の手鏡は感嘆と悲哀を確認させ、友愛と陵辱を刻み込まれた象徴の様に思わせるが、不意に一方の手鏡が支えるエウマキアの手から零れ落ちる。
もはやエウマキアの心中には隷属への覚悟と呼べるものがあり、その事は定まりつつある相互関係への抗いを意図したものではなく、震える手が自然に取り落したものである。
しかし、意図せずとも起きた現実はエウマキアの本意に添うものであり、例え僅かでも不貞陵辱の公認が損なわれるのは屈しきらぬエウマキアの意思に歓迎される事である。

「ひっ、あぁぁぁぁっ」

(お腹に……そんな……)

しかし、そのようなエウマキアの儚い幸せを打ち砕く様に、下腹部から狂おしい刺激が沸き上がる。
手から零れた手鏡は自然の理に従い下方に向い、エウマキアの下腹を……剛直で、精液で、そして不貞の妊娠で膨れる下腹を襲ったのだ。
衣服で無理に抑えられた下腹は遠目にはその異常を気付かせぬが、エウマキア自身には恐ろしいほどに明確である。
本来床に落ちるべきものを妨げるほど膨らんでいる感覚に辱しめられ、免れたと思う先にあった淫虐に逃れられぬ運命を感じさせられる。
ルシウスの手に握られていたはずの手鏡も同様の道筋を辿り、衣服から垣間見える下腹には定位置として双の手鏡が添えられ、確約された絆の証として不貞の子が求められている錯覚に震える。

「それでは乾杯と行きますかな」

「はっ」

「どうぞ」

犯され、吊るされ、孕まされた状況を正当と認定する様にルシウスが締めの前口上を述べれば、事情が分からぬまま歓迎の思いのみ強くさせられた家人達が応じる。
彼等の手にする杯を満たしているのは通常の酒であるが、睦み合うルシウスの部下と捕われの婦人の杯には、エウマキアに視線が集まっている隙に搾り注がれた母乳で満たされている。
無論、ルシウスとエウマキアの杯にも乳白色の液体で満たされており、霧雨のように噴き零しながら確かな量に至った事実が、決して望まぬ放乳の能力に優れている事を語りかける。
皆が一様に杯を掲げる中で生真面目な才女達は足並みを乱す事は許されず、例え不貞恥辱の証で満ちていたとしても手に取らぬわけには行かない。

「我等の共に歩む未来の為に」

「未来の為に」

「未来の……為に……」

ルシウスの言葉に唱和するのはその部下や家人達だけでなく、偽りの許せぬエウマキアもその覚悟を察した婦人たちも言葉を合わせる。
そして、杯を掲げ唱和した以上は口をつけぬわけにはいかず、陵辱を認めてしまう錯覚に苛まされながら杯を傾ける。
喉を通り抜ける感触はあくまで滑らかで、豊潤な香は心身を癒す。
しかし、その正体が忌むべき陵辱の成果であればその質の高さは恥辱となり、含んだ事に応える様に胸の奥の沸き立つ機能が増強される実感が涙を誘う。
忌避は確かであるが、守るべきものを見据えて受け入れた事も、自身の心身が陵辱に蕩けていた事も事実である。
その上に宣言を為したなら逃れる事は叶わず、気丈な才女達の前には友愛という名目の陵辱の未来が決定付けられたのだ。