(この施設がおかしいのか……それとも私がおかしいのか……)
すれ違う婦人達の不審な様子に眉を潜め初めるイリアであるが、自身が喜悦に悶え喘ぐ状態では話し掛ける機会も無い。
胸の蠢きや腰の震えは視界に映し出されるのだが、自身の淫欲の見せる錯覚の様に感じられれば施設の暗部の追及より自身への譴責の方が勝ってしまう。
呆ける視線はイリアの意思を無視して行き交う人々の中から最も麗しい婦人を探し出し、紛う事無く現実である肉の蠢く様子がイリアの肢体を淫猥に焦がし、それを錯覚と思い込む事ではしたなさへの譴責が心中に襲い来る。
凛々しき婦人もおれば柔和な婦人もおり、いずれも劣らぬ色艶がイリアを自縛自縄の淫獄に誘い、婦人たちもまたイリアの嬲られる姿に我が身を重ねて悶えを増す。
(あっ、たしか……あの方は……)
そして心身ともに切迫感を増していくイリアの視界に次に映るのは、今まで目を魅いた婦人たちの一段上をいく美貌である。
その背の伸ばされた歩みも凛とした風情に満ち、腰に帯びた剣が騎士の身分を物語る。
その内でも正規の軍装を纏う女性の存在は稀であり、それゆえイリアの知識の内に今すれ違おうとしている人物の名が止められている。
ヴァレリア=プロブス、技量精神ともに一級の男性騎士に見劣りせぬ風評は、同じ女性にとって誇らしく思えるものである。
(お噂通りの凛々しきお姿、……それに比べて私は……なんとはしたない……)
その動静は今までの視界に映った婦人達の姿と違って微塵の震えも見せず、自身の淫欲が幻影を見せていた確信を深める。
心身共にはしたない自分への譴責が一際強まり、衆に優れた強い精神が表面上の取り繕いを完璧にし、内実は今までの婦人以上に濡れているなどと思いもしない。
「これはヴァレリア殿、今日もお勤めご苦労様ですな」
(やはり、ヴァレリア様であられる……、しかし、どうしてこのような場所に……)
自らを強く恥じる意識がイリアに声を掛けるのを躊躇わせるが、実の所ヴァレリアもまた微妙に目線を反らしている。
そのままであれば両者は干渉する事無く行き交うのであろうが、ルシウスの白々しい労いの言葉が無言の交錯を妨げる。
ルシウスの台詞は改めてイリアにすれ違う女性の名を確認させるのだが、一角の人物に痴態を確認される恥辱と共に、呆けつつも明晰さを保つ脳裏に疑問を浮かばせる。
イリアの脳裏においてヴァレリアの存在はルシウスを嫌悪する一群の内に記憶されており、ルシウスの膝元であるルグドゥヌムに……口振りから少なからぬ期間滞在している事に疑問が生まれる。
「特に用が無いのなら失礼させていただきます」
(声も……どこか虚勢張っておられる……?)
素っ気無い受け答えもイリアの認識の正しさを裏付けるのだが、僅かに感じられる逃げるような素振りが知られる風評との違和感と言い知れぬ不安を掻きたてる。
「そのように言われずに……私にヴァレリア様を慰撫させて下さい」
「そのような事は無用っ……や、やめ……、くっ、ふぁっ」
その憂いが真実である事はすぐに示される。
間合いを取ろうとするヴァレリアに向けてルシウスの手が伸ばされ、それだけでぎこちなさを増す身体は容易に捕われ、恋慕の虚飾と玩弄の実態を為すユフィールとイリアの元へ引き寄せられる。
その払い除けようとする手の動きは弱々しくも艶やかに震え、拒絶の語気も波打つ様に乱れて嬌声の欠片を紡ぐ。
その動静がイリアの内に生じた疑念を増幅させるのだが、それを省みる余裕もまた同時に失われる。
「あぁっ、胸が押されて……、ひっ、ふぁぁぁっ」
「こ、このような場所で……あふれ……あふれさせてはっ」
ヴァレリアの胸元はその美貌に比するように大きく前に突き出しており、それを迎えるイリアとユフィールの胸もきつく張り詰めて突き出されている。
当然に抱きすくめられる動きに巨乳同士が触れ合い、鋭敏な釣鐘はそれだけで多大な喜悦を溢れさせる。
その背はルシウスの身により下がる事は叶わず、手中にて強要される淫猥な押し合いに生じた熱が加速度的に高まる。
その刺激は目覚めさせられたばかりのイリアの胸の奔流を活性化させ、噴き零れる事のみは何とか堪えるが、内に荒れ狂ううねりが満ち溢れる喜悦を掻き乱す。
当然に躾られた期間の長いユフィールにはそれ以上の悦楽の苦悶が襲いかかり、相乗する脈動が堪え難い疼きを奏でる。
お互いに自身の脈動の方が伝わるものに比してより淫らであるように感じられ、清廉な人物を淫獄に引き込む罪の意識が胸中を苛む。
「くっ……あっ、このような事……許されぬのに……」
(えっ、そんな……まさか……)
紛う事無く自分のものである淫猥な喘ぎと哀しくも聞き慣れたユフィールの嬌声、それだけでなくもう一種の艶やかな声音がイリアの耳に届く。
触れ合う巨乳から伝わる感覚も、どこかぎこちない自分の鼓動と激しくうねるユフィールの奔流の他に、その中間の錬度というべきものを持つ脈動が合唱する様に響き渡る。
それらの持ち主に該当すると思われるのは引き寄せられた女性以外になく、呆ける視線を向ければ潤んだ瞳に涙が湛えられているのを確認できる。
堪えきれぬ熱に頬を上気させ、切なげな吐息が断続的に漏れる。
滑らかな肌は玉の汗を浮かばせては滴らせ、内から濡れる衣服がくびれた輪郭を浮かばせる。
基調である凛とした風情は変わらぬが、それ故に上から塗される色艶は魅惑的であり、魅惑的な身体と意思の強さを兼ね備える才女は淫猥な粗相を必死に堪える事で極上の痴態を作り上げている。
「ヴァレリア様も……なのですか……?」
「そのように……驚かないで下さい……、私の本性は……元よりこのように淫ら……なのです……」
かつてなら知らず心身まで嬲られた今のイリアにはその自身を恥じる姿の意味を悟るのは容易であり、自身の経験した陵辱が質量を増して襲いかかる情景が浮かび上がる。
死産の罪を犯しはしたない身体を作り上げた自分に比してヴァレリアは高潔な人物であるという認識が疑義を発させるが、ヴァレリアの自身を貶める言動が覆せぬ真実を示す。
「私の……せいなのです……、私が、ヴァレリア様を……このような事に……引き込んでしまった……」
その告白にイリアは声を失い、変わってユフィールが責められるべきは自分である事を主張にする。
ヴァレリアが捕われるに至った経緯でユフィールは誘い出す餌としての役目を果たしており、眼前でなされた陵辱も止めることは出来なかったのである。
「ユフィール様、先日の事変を心配しておりましたが、よくぞご無事で」
「くっ……、んんっ、ヴァレリア……様……」
事の発端は静寂に満ちた錬兵場における才女達の再会であった。
昼間は剣戟の音が絶え間無く打ち鳴らされる空間も、夜がふけてくれば徐々に人影が減ることで次第に喧騒が収まってくる。
しかし、その時間を見計らった様に訪れる少数の影により、鍛錬の息使いは継続される事になる。
昼間にこの場所を占有する豪放な男達に対し、夜半にここを占めるのは凛とした才女達である。
騎士と言う身分の中で稀な存在である彼女達は奇異の目や品の欠ける揶揄を嫌い、雑音を免れ得るこの時間に研鑚に励むのである。
しなやかな身体が舞い踊り、かろやかに四肢が振るわれる。
その身のこなしは豊満なくびれを揺れ動かし、真白い肌に汗を滴らせる様は艶かしいというより外は無い。
「それではお先に失礼します」
「ヴァレリア様もあまり根を詰め過ぎぬ様に」
見る者がいれば当然にその眼を心を釘付けにするであろう情景であるが、それが演じられる期間は決して長いものでは無い。
女の身で騎士となる、その事に要するのは本人の技量よりも嫁ぎ先の力である。
修練に励む女性達も当然に既婚であり、家での責務を考えれば訓練ばかりにかまけているわけにはいかない。
勿論家庭の事情も千差があり、暖かな家庭を持つ者ほど早く帰途につき、無理を内包している者は当然に遅くなる。
となれば、最後まで残った女性、ヴァレリア=プロブスの家庭はその最たるものであろう。
「私もそろそろ帰らねばならぬか」
幼い頃から剣技に長けていたヴァレリアは騎士の道を志し、当然に性差による差別をその身に味わった。
研鑚を重ね有数の使い手となり、公の大会をも征し……その先ですら示された騎士の座に至るには政略的な婚姻を必要とした。
諸共に断る選択も頭に浮かびはしたが、後進への道を思えば躊躇われる。
若き時分に何度か恋路を経験したヴァレリアであるが、剣に没頭する質が災いしてか長続きはしておらず、自身が恋愛に無縁であるという諦めに似た感情がその選択を選ばせる。
似たような境遇の女騎士は多いが、皆勤めて誠実に妻たろうとし、結果として幸せな家庭を得ている例もある事は早々に家路につく者達が示している。
しかし、そうでない方が遥かに多く、ヴァレリアの家庭もまた暖かくも優しくも無く、家事に励むより騎士としての鍛錬に重点が置かれるのは止む無い事であった。
それでも夜明け近くになればその手を休め、気が進まぬながらも家路に就こうとする。
「ん、もしや、ユフィール様……」
しかし、ヴァレリアの帰途には予期せぬ人影が通りかかっており、その身を不本意な嫁ぎ先から艶かしい淫獄に連れ去るの初端となるのである。
見えた人物はここにある事こそ予期せぬものの、その存在は非常に見知ったものであった。
ユフィール=オプティムス、全ての女性騎士の憧れであるユスティティア=オプティムスの娘は当然ヴァレリアも見知っている。
そして近日の動乱に巻き込まれたその身をヴァレリアもまた案じており、その無事な様子に一先ずの安堵が冒頭のやり取りに繋がるのである。
「おや、御二人は御面識がございましたか」
「……ルシウス様もご一緒でしたか」
しかしユフィールに寄り添うもう一つの人影を確認すれば、ヴァレリアの緩められた頬はたちまち引き締められる。
ルシウス=M=プランクス、文武の才と気さくな性で市井には名望が溢れるが、一部の才女貴婦人の間での評価は決して芳しくない。
当然その一部に属するヴァレリアの挨拶も友好の欠片も含まず、ユフィールに対するものから態度を一変させて、その油断無く身構える姿勢は果し合いすら思わせる。
「ユフィールは私を補佐する大事な方ですから当然ですよ」
(しかし、こんな夜半に二人で出歩くなど……まさか噂が真では……)
(ああっ、こんな時間に寄り添えば……世情に言われる通りと……思われてしまう……)
ルシウスは罪に問われる身となったユフィールの保護者であり、公にも執政官の補佐と言う身分を冠されたとなれば、二人が同道するのはそれほど奇異ではない。
自分と同じくルシウスを嫌っていようとも、自らの家の存廃に係るとなれば私情は消し去るが当然である。
しかし、深夜に寄り添ってとなると流石にそれだけの名分では足りず、艶やかな様子は巷に流れる恋慕の噂を思い起こさせる。
絶え間無く震えるユフィールの姿と悠然とするルシウスの姿は対照的であり、そこには年の離れた恋慕の錯覚をも見出し得る。
ユフィールがルシウスに恋慕を抱く……一笑にふした噂の真なる可能性を示唆され、それを更に推し進める戯言……ユフィールがルシウスに妊娠を願った……などという事すらもしやと思えてくる。
怪訝な視線を受けるユフィールもヴァレリアの意図を介し、流布する噂を思い起こしては犯され辱められる以上の恥辱に塗れる。
(それにっ、ふあぁっ、はしたないっ……姿まで……晒しては……)
勿論ユフィールが力無くルシウスに寄り添っているのは思慕などが原因でなく、その豊かな肢体をルシウスに弄ばれている結果である。
執政官の補佐という身分がユフィールを常にルシウスの傍に寄り添わせ、寝所のみならず政務の最中ですら貫き犯される日々を送っているのだ。
親密な様子を演出するのは真白き尻を嬲る陵辱の魔手であり、しっかりと揉み込まれれば肉の弾むような震えが熱くうねる。
背筋を走る喜悦がユフィールを呆けさせ、忌み嫌う相手に身体を預け、艶かしく上気して微かな嬌声を喘がせる。
その行為を嫌悪しているはずなのに淫猥に躾られた巨尻はその窄まりすら捲らせ、指先が穴の縁を捉えれば逃れようとする動きは完全に封じられる。
淫らな調教の成果は本来滴るべきで無い粘液すら溢れさせ、脳裏に響く水音が嬲られる以外の部位でも淫らな体液を滴らせる。
その痴態が人目に晒されると思えばその矜持は咽び泣き、必死に露見を堪える心中では喜悦に溺れる自己の姿に幾重にも譴責を重ねてしまう。
(街路で……はしたなく……喘いで……、このような場でまで……淫猥に……濡れるなんて……)
ルシウスの手による陵辱は極上の肢体のみならず誇り高い矜持にも及び、絶頂を連ねる我が身を自覚させられる才女は相応の罰として隷属の道を進まされる。
今日は共に捕われた部下と並べて犯されては痴態を比較され、最も淫らな者への罰として先程まで貫かれながら街中を曳き回されていたのだ。
淫猥な刑罰に躊躇いを見せればルシウスのその部下は再びの比較を示唆し、息も絶え絶えの共に捕われた牝達の惨状がユフィールに粛々と陵辱を受け入れさせる。
深夜の人通りの無い街路とはいえ公の場を歩む意識が恥辱を高め、併せて励起する身体は母乳を潮を噴き零す。
才女の矜持を辱しめる淫らな足跡は錬兵場に至り、一際増す所在と痴態の落差がその心身を震わせる。
(騎士たる者の場所で……このような痴態……、ヴァレリア様……淫猥な牝である私を……お笑い下さい……)
犯され喘ぐ自分がもはや騎士などと名乗れぬ事は分かっているのだが、それでも心のどこかは支えを求めて誇り高く戦う身分に執着する。
しかし、その思いはその心身を辱める陵辱に用いられ、生真面目な性はその落差を自覚して自身を恥じる事になる。
街中を曳き回される時はいつものように巨乳を破り出したまま外套を纏っていたのだが、訓練場に入る際にその装いは騎士として正規のものになり、正しき装いが淫らに濡れる様の騎士としての不適を引き立てる。
人並み外れた乳房に標準の装いを纏っては当然にきつく擦れ、今にも破り出て噴き零れる母乳が鍛練の場を汚す恐れがユフィールを苛む。
夜半ゆえの静粛さが淫らに喘ぐ自分との落差を際立たせ、騎士の身分を強調する辱しめは女としてのそれやオプティムスの家の当主代理としてのそれととは別種の恥辱をもたらし、それに捕われたユフィールはひたすらに自身を淫らに貶めるのだ。
(そして……どうか、お立ち去り下さい……もうこれ以上……辱められる者を作るわけには……)
改めて淫獄に所在する自己を認識させられるユフィールであるが、その懸念は自身の痴態の露見より相手の身柄に向けられる。
ヴァレリアの凛とした美しさは衆目の知る所であり、それは即ちルシウスに狙われる可能性を意味する。
とはいえ、今のルシウスの目的は訓練の場でユフィールを嬲る事にあるし、帯剣したヴァレリアの技量と訓練場の露見の可能性を思えば、ルシウスとて迂闊には手を出さないと予測できる。
ならば早急にこの場を離れればその身を捕われる事も無いと思われ、それならば痴態が察される事も厭うわけにはいかず、ヴァレリアが退く気配を見せれば自ら積極的にルシウスに奉仕し、その足止めを為さねばならぬ覚悟と悲嘆がユフィールの内に生じる。
「折角このような場所でお会いできたのですから、一つユフィール様と手合わせをお願いしたいのですが」
気高く凛としたユフィールの姿しか知らなかったヴァレリアには、その身に降りかかった陵辱の数々も恥辱に打ち震えるその心中をも察する事はできない。
しかし、胸を満たす悪い予感がヴァレリアを突き動かし、武断な性が憶測を重ねるのでなく直接本人に尋ねる事を選択させる。
勿論真実を聞く為にはその身を捕えるルシウスから引き離す必要があり、場所柄を鑑みて手合わせを所望する形をとる。
「えっ……そ、それはっ」
「そうですね、お二人の立合いは是非私も鑑賞させていただきたい」
ユフィールは自らルシウスの手中に陥りかけないその判断に異議を唱えようとするのだが、揉み込まれる尻肉の淫猥な調べにその言を詰まらせ、替わってルシウスの言葉が承諾を告げる。
ユフィールの身柄を保持するが如きルシウスの態度に非難が溢れるが、経緯はどうあれ自身の申し出が受けられたのだからヴァレリアに異論はない。
むしろ、反対をしないルシウスの態度の方に疑念が生じるが、訓練場を訪れた者が手合わせを断るのは不自然であるし、ルシウスにとって自分は警戒するほどの相手で無いと思われていると判断すれば腑に落ちない事は無い。
しかし……あまりに悠然としたルシウスの様子がヴァレリアの心中に言い知れぬ不安を渦巻かせる。
「あっ、ふぁ…はいっ」
(……近くで……逃げる様に伝えれば……)
(……恋慕の噂が真であるのか……もっと深い闇があるのか……)
ここに至りユフィールも話の流れを覆す事を諦め、ヴァレリアと同じく間近でこの場から逃げる事を伝えようと判断する。
結果として事を望まぬ様に口篭もったユフィールが、ルシウスの勧めを経て申し出に応じる様を作り出してしまう。
執政官のその補佐と言う立場があるにせよ、繰り広げられる完全なる主従関係はかつての二人からは想像できず、世情の噂を思い浮かべる一方でヴァレリアの本能はただならぬ事態を予感させる。
「御身体を慣らされるのは宜しいので?」
「その点は万全ですよ」
(このような行為が準備……しかし手足はまだ蕩けて……)
今まで鍛錬に励んでいた自分と違い、この場に表れたばかりの相手は身体を暖める必要がある。
当然に発せられるヴァレリアの配慮であるが、その申し出はやんわりと断られる。
ルシウスが繰り返し替わりに答えるのはやはり気に障るが、返答自体は付属の施設で軽い運動を済ましたと思えば不審は無い……が、その真意は当然にヴァレリアの想定とは大きく異なっている。
激しい運動の前に身体を温める……当然の行為であるが今のユフィールの上気は肉の交わりにより為されたものである。
今まで普通であった行為が性の交わりに代替される牝の実感がユフィールを苛むが、ヴァレリアが特に異議の無い様子を見せれば否定する間合いも見出せない。
止む無く立合いに進み出ようとするが、存分に嬲られた身体は未だ呆け自由が効かず、思うが侭に動けぬ自身の姿が陵辱の露見に繋がる危惧がユフィールを躊躇させる。
「ただ、最後に一つ……健闘の祈願を」
「ひっ、ぃぁっ、はっ、ああっ」
ルシウスの言葉に反してどこか覚束ない様子のユフィールであるが、改めてルシウスの手が伸ばされるとその身体がビクンと震える。
台詞も動作も共に何気ない行為であるため、二人の触れ合いに不審を強めるヴァレリアも咎める事はできず、そして影ながらに行われる陵辱に気付く事も出来ない。
先程からユフィールの尻を撫で回していた陵辱の魔手が堪えきれずに捲れる尻穴を捉え、指を内に沈めて淫熱に潤む粘膜を味わう様に蠢く。
人目を意識し必死に喜悦を堪えるユフィールであるが、連日の躾に格段に増された感度はその意思を崩し、背筋を駆け上る淫らなうねりが牝の感覚を弾けさせる。
剛直によりなされるそれに比べれば遥かに軽いのだが、それでも微かな鐘の音と共に胸元に染みが広がり、前掛けを湿らせ太腿を伝う蜜が足元に溜まる。
現実にはヴァレリアに気付かれずともユフィールの脳裏には痴態の露見が映し出され、あたかも痴態を取り繕いきれぬ自己の姿が胸元を破り前掛けを捲り上げる以上の恥辱をもたらす。
「どうかなされましたか」
「いっ……いえ、それでは始めましょう」
思いも寄らぬ嬌声にヴァレリアが譴責を内に含んだ疑義を発するが、次いでの受け答えと確かに覚醒したユフィールの様子がそれ以上の追求を許さない。
軽くではあれ絶頂に達した事で胸の悶えが幾分が和らぎ、息を整えながらユフィールは全身を浸す熱から主導権を取り戻す。
(はしたない色欲を満たさねば……動けないなんて……、そして……この程度では……多分……)
身体の状態とは裏腹に情欲を開放してもらえねばまともに立つ事も出来ぬ自身の姿が心中を占め、淫乱な性と所有される現実が繰り返し認識させられる。
しかも、軽い絶頂のもたらす僅かな安穏はその後の堕落をも確約しており、今に増して色欲に飢える自分の姿を脳裏に予見しては悲嘆を溢れさせる。
「それでは参ります」
「あっ、はい」
自身の懸念を押し退け二人の受け答えが揃う様は恋仲ともとれるが、深い闇が隠されている懸念もヴァレリアの内から消える事はない。
しかし、憶測を重ねるので無く直接語り合う事を選択したのだから、当面は手合わせの中に接触の機会を作る事に集中する。
まずはルシウスに目的を気取られぬ様に数合打ち合うのだが、久方ぶりの良い相手に情報を探る意図を外にして高揚するヴァレリアに対し、ユフィールの方は受け流す技も打ちこむ力も弱々しさを垣間見せる。
全力ではないがそれに近いヴァレリアの打ち込みを受けきれなければ剣よりの衝撃が腕を伝い、呼び起こされる肉の震えに足腰が崩れそうになるのを必死に堪え、誘発される神経の震えに漏れ出そうになる嬌声を懸命に堪える。
しかし息を整えきらぬ内に次の斬撃に対処せねばならず、ユフィールの心身はむず痒い熱を昂ぶらせながら追い詰められていく。
(ぎこちない太刀筋……足裁きも遅れて……一体何が起こったと言うのだ……)
内に煮え滾る熱は察せなくとも、その技量の不全はすぐにヴァレリアの怪訝する所になる。
らしからぬユフィールの姿に疑念が募るが、傍らのルシウスの視線を意識しては十分な頃合を見計らわざるを得ず、自然と鍔迫り合いに持ち込む段には心中の焦燥が打ち合いに増す疲労をもたらしてしまう。
「ユフィール様っ、何があられたのですか」
「くっ、ヴァレリア様っ、私はっ……大丈夫……ですから……、早く……お帰りに……」
ようやく心中の懸念を伝える事の出来たヴァレリアであるが、受けるユフィールは真実を伝えらるはずもない。
ただ、自身の方の懸念を伝え返すのだが、その台詞が切なげに震えては却ってヴァレリアの方の懸念を増幅してしまう。
(触れただけで……こんなに熱く悶える……なんて……)
(くっ、なぜ……こんなに息が荒く……身体が熱いのか……)
小声で話すためには互いの身体を密着させる必要があるが、二人共に並外れた実りを胸に持てば図らずもそれらが押し合ってしまう。
柔らかく歪んでは力強く弾む互いの巨乳が目まぐるしく絡み、鍛錬に陵辱に生じた熱が加速度的に煽られる。
その波動はむず痒い喜悦となって全身を覆い、ユフィールの淫猥に躾られた肉が押し止めようとする意思を無視して蕩け始め、ヴァレリアの性愛に無垢な肉は自覚の無いままに崩れ始める。
「わ、私にできる事があれ……ば、何なりと……仰ってください」
「いえ、何でも……ないのですっ、ですから……早く……」
耳元で囁かれるヴァレリアの声は燻り始めた熱を宿して徐々に乱れ、聞くユフィールの内も十分以上に蕩けている。
応えるユフィールの声もヴァレリアの未だ深く意識せぬ熱を煽り、篭められている喜悦が全身の肉を淫らに染めていく。
(ああっ、お乳が……擦れて…漏れて……)
(くぅっ、何か胸の奥が……ユフィール様の鼓動と同じに……)
尖り立つ突端が押し刺さる事で浸された喜悦に波が生まれ、押し返される事で身体の中心により強い刺激が響く。
迫り合う柄も意図せずとも巨乳に押し当てられ、僅かな蠢きも鋭敏な乳肉に伝わってしまえば堪え難い玩弄となる。
淫らに躾られたユフィールの巨乳はこの刺激に更なる痴態を要求され、必死に堪えれど内に渦巻く奔流は触れ合う相手にも伝わり、同様に優れた資質を持つヴァレリアに同種の目覚めを強要する。
ユフィールの胸の布地は先のルシウスの責めで存分に濡れており、その上に乳白色の液体を漏れ出させてしまえば布地越しに対面に浸透していく。
ヴァレリアの胸の布地を濡らしては内に染み通り、残余の分は柄を握る手にしっかりと滴っては、露見の懸念がユフィールの羞恥を煽る。
ヴァレリアにとっても汗とは異なる質感の液体は不審であるし、その上に自身の鼓動も不審である。
「鐘の……音?」
(ああっ、もう聞こえるまでに……、このままでは……私も……ヴァレリア様も……)
豊満な肉同士が奏でる鼓動は各々の胸の内に響くが、それとは別に微かな鐘の音が紛れも無く大気を震わせる。
その意味はユフィールの脳裏に明確に認識され、ヴァレリアの戸惑う声に痴態の露見が激しく意識させられる。
言葉を連ねても不審を増してしまい、放乳の露見は目前に迫る。
感じられる上気も益々熱っぽくなり、陵辱に引き込んでしまう不安も掻き立てられる。
焦るユフィールの意識は恥辱と諸刃であるが、最も引き離すのに効果があるであろう言葉を選択してしまう。
「くっ、ヴァレリア様っ、どうかルシウス様と二人きりにっ」
「えっ、それは……真に……」
世情に流れる虚偽の風評、それはギリギリの陵辱を取り繕うのに用いられ、助けの手を遠ざける事も度々であった。
それはルシウスと二人きりの空間を作り出す呪詛であり、裏を返せば今この場でユフィールに求められるものである。
現に思いもよらぬ言葉を聞いたヴァレリアは呆然とし、ユフィールが引き離そうとする動きに抵抗は無い。
(噂通りであるのか……それとも……)
押し合っていた巨乳が一気に開放され、揺れ弾む衝撃か才女達の極上の身体を苛む。
しかし、それ以上にヴァレリアの心中に満ちるのは先の言葉の真意であり、言い放つ語気の影に悲痛さも感じられたのだが額面とどちらが真実であるかは判断がつかない。
答えを求める様にユフィールに視線を向けるヴァレリアであるが、その視界に映るのはよろめく自身を遥かに超える艶やかさである。
「っっっ、ユフィール……様っ」
「ぁぁっ、ヴァレリア……様っ」
上気する肌から滴る汗が全身を艶かしく覆い、特にその胸は傍目にも明らかに濡れそぼる。
ヴァレリアの視線に気付いたユフィールはその事実を隠すように両の腕を寄せるが、自身が生んだ接触に苦悶を増して悲痛に喘ぐ。
よろめく太腿も粘性の液が艶やかに滴り、太腿を擦り合わせる動きが虚しく艶を増す。
「お疲れ様でした。見事な勝負でしたよ」
「くっ、あぁぁっ」
(な……なんと……艶やかな……)
自身もまた覚束ないヴァレリアには手を差し伸べる事も出来ず、替わってルシウスがそのよろける身柄を抱える。
地にへたり込む事は免れるが、中空に腰を置いたまま折れた足を拡げられ、その手は後ろに回される。
その様子はやはり寄り添う恋人の様にも淫虐の責めのようにも見える。
そして、判断に迷うのとは別に突き出された巨乳に股間に視線が捕われ、ヴァレリア自身の胸も励起を強め、よろめく足の動きに合わせて股間が熱く疼き立てる。
「次は、ユフィールに変わって私がお相手いたしましょう」
荒い息を整える時間が何事も無く過ぎ、次いでユフィールを抱えなおしたルシウスが交代の名乗りを上げる事で時間が動き出す。
その身柄を後ろに隠す素振りにおいてユフィールを守るのはルシウスであり、ヴァレリアはむしろそれに対する敵である。
調子の悪い貴婦人に代わり共にある男性が進み出る事は礼儀に叶っており、妨げるより早くユフィールも引かれるままに下がっては手の打ちようがない。
「宜しいのですか、随分と現役を離れて久しいのでは」
「お、お止めに……くっ、うぅっ」
建前に抗し得ぬ立腹と艶姿を見惚れた失態を隠す様に、語気も鋭くヴァレリアは挑戦を受ける。
かつては剣の腕を謳われていたとはいえ、近年は専ら指揮官として采配を振るっており、日々鍛錬に励む自分が劣るはずが無いという自負がヴァレリアを突き動かすのだ。
その進む先に淫獄を見るユフィールは止めようとするが、抱えなおす際に鋭敏な身体を嬲られては沈黙するしかないのである。
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