■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■ 神和のメルマガ・もっと知りたい不動産 13号 2004/04/15作成 ■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■ 「本当にあった怖い話 その1.」 その家主さんから2××号室の様子がおかしいと連絡があった日の夕方、いつも ババを引かされる若手の僕ら二人は件の部屋の前に立ち、ドアを叩きました。 応答はありません。しかし電気メーターの回り具合から居るのは間違いない。 「いるのは分かっているんだから○○さん、ドア開けてよ。でないと家主さんに 立ち会ってもらって中に入るよ」 ガチャリと内鍵を開けて白い女性の手が。 ドアの隙間に半身になって長い髪の女性は僕らが中に入るのを無言のまま拒んだ。 痩せた、どこか病的な感じのする、きれいな女性だった。 真っ暗でなにも見えないドアの向こう側から饐えた異様な匂いが立ち昇ってくる。 嫌な予感。 出来ればこの場から逃げ出しちゃいたいけど、そうもいかないのが男の子。 「入るよ!」半分腰が引けながら相棒が強がる声で言い、僕はドアノブに手をか けた。女はとたんに夜叉の顔、僕の指に血が滲むほど爪を立て、低く唸り始める。 相棒が震える手でドアに手をかけ思いっきり引っ張る。ドゥッと、女は糸の切れ た人形のように通路に転がり出た。 女は観念したようにその場にへたり込んで泣き始めるのだった。 ドアの向こうはシンとして、黒い匂いがじっとうずくまっている ジャンケンで負けた僕を先頭に、ほとんど泣きたい気分で二人は中に足を踏み入 れた。 暗闇の中を手探りで進むが、足元になにか粘っこいものが絡みついて来て思うよ うに進めない。 床がない感じなのだ。 何かがうずたかく積まれており、そこここでカサコソと小さな音がする。 耐え切れない匂いをかき分け、ようやくたどり着いた窓のカーテンを開ける、と。 ゴミ、ごみ、ゴミ、生ゴミ、空のジュース缶、食べ残しのカップラーメン、コカ コーラ、ゴミ、カビの生えた下着、生ゴミ、湿ったパジャマだったもの、ゴミ袋、 腐り始めてかどのなくなったダンボール、ゴミ、ゴミ、ゴキブリ、分けのわから ない虫・・・・・ スッ転げるようにして逃げ出しました。アッという間です。3日間体中匂いが取 れませんでした。 その美しい女性は、2トントラック一台に積み切れないゴミと、腐ってどうしよ うもなくなった床を残して2日後、部屋から出て行きました。 今でこそ、メディアでも良く取り上げられる「ゴミ屋敷」のアパート版。テレビ で見れば面白おかしいけど、僕らにしてみれば死体とご対面しなかっただけラッ キーな、なんとも言いようのない思い出であります。 あの女性はやはり今でもゴミの海にただようベッドの上で、壊れた自分を抱きか かえながら、静かに眠っているのでしょうか。 □────────────────────────────────────□ 神和不動産メールマガジン(ID:0000114821)13号(2004/04/15作成) 発行者:株式会社 神和不動産 お問い合わせメールアドレス:sinwa@mx1.ttcn.ne.jp バックナンバー : http://www2.ttcn.ne.jp/~sinwa/ 登録解除はこちら: http://www.mag2.com/m/0000114821.htm ウェブサイト : http://www2.ttcn.ne.jp/~sinwa/ □────────────────────────────────────□ |