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    神和のメルマガ・もっと知りたい不動産     15号    2004/05/25作成
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  「本当にあった怖い話 その3.」


 その日、若手の僕ら二人は、予算ピッタリ、間取り希望どおり、立地文句ナシで、
 決まったも同然の物件にご新婚のお客様をお連れしていました。
 麻布は暗闇坂の坂を上りきった辺りを少しばかり住宅地に入ったところに鬱蒼と
 した木々に囲まれ、その白い建物はありました。
 さて、商売とて僕ら二人はお客様に賑やかしのヨタを飛ばしながら、件の部屋の
 鍵をガチャリと開けました。
 2LDKの部屋は西向きで、午後のこの時間、シンとして妙に明るい。
 そして、初秋とは思えない、湿った冷たい空気が部屋全体に満ちていました。
 ここだけの話、商売の僕らでも実は入るときに抵抗のある部屋ってあるんです。
 だけど、この部屋はどうも何か違う。部屋に入るまでの賑やかさはどこへやら、
 誰一人ひとことも喋ろうとしない。
 商売の僕らまで何も言葉が思い浮かばないまま、数分が過ぎ・・・。
 いるはずのない何か、が、いる・・・
 とうとう女性の方が「出ましょう!」と震えながら言い、そのあとはもうなにが
 なんだか分からない、われ先に靴を履くのももどかしく玄関の外に飛び出しちゃ
 いました。鍵も閉めないまま、誰も後ろを振り返らず一目散でした。

 実際これだけの話なのです。別にお化けも幽霊も何も出やしなかった。
 後日、あの部屋に以前住んでいた姉妹は2人とも精神病院に入院したという話だ
 よ、と相棒がしたり顔で言うのだが、すべては都市伝説のたぐい、今となっては
 確かめようもない。
 ただ、恐怖というものは、実にこうして30年近く経ってなお脳髄の奥から消え
 去ることなく、昨日のことのように心にあるものだということです。
 で、その建物は今どうなっているのか、ですって?
 実はこの前、麻布に行く用があったのでちょっと寄り道して、その白いタイルの
 マンションの前を通ってみたんです。
 昔のままの佇まいで、30年の時を忘れさせるようにそこにありましたよ。
 むろん、だまってそこを通り過ぎました。
 度胸がない? ほっときなさい。
 どこだか教えろですって? ダメダメ!
 この手の話は嘘か本当かわからない、ただのうわさ話、曖昧な記憶の産物。
 まともに信じちゃダメなの、でもきっとどこかにあるはずの都市伝説の一つ。

 ということで、さまよえる魂に、合掌。

 
 

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神和不動産メールマガジン(ID:0000114821)15号(2004/05/25作成)
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