口臭の原因と対策について
1、口腔外に原因のある口臭
a、消化器系疾患:胃潰瘍や喉頭、食道、胃の癌性潰瘍
b、呼吸器系疾患:慢性気管支炎、肺壊疽等
c、その他の疾患:慢性便秘、糖尿病、肝臓疾患等
これらの疾患が原因の場合は専門医にご相談ください。ただこの判別はかなり難しいのですが…
2、食品等のよる口臭
a、ニンニク、ニラ、タマネギ、チーズ、卵等の飲食後
b、酒、タバコ等の嗜好物
これはどうしようもない!!気にしないことです。ただタバコは歯周病にもかなり影響がある事がわかっています。お酒もほどほどに!酔ってしまい就寝前の歯ブラシができなくなってしまっては最悪ですので…
3、口腔内に原因のある口臭
a、口腔内が不潔な場合:歯垢、歯石などの沈着、義歯の清掃不良、舌苔(ぜったい)の付着
口腔内は常に清潔を保ってください!!歯ブラシの方法は歯科医院で指導されていると思いますが、やはり一番簡単で歯垢を良く除去できるのはスクラッビング法です。ブラシを歯列に垂直に当てて歯肉をマッサージするつもりで、1か20〜30回位小刻みな振動を加えてください。噛むところや一番奥歯の喉側も同様に磨きます。上下前歯の裏側や歯並びの悪い所は、ブラシを縦にして磨いて下さい。歯ブラシは小さめ、軟らかめ、柄が単純なものがお勧めです。歯磨剤(フッ素入りがお勧め)は歯ブラシの先に少量つけてください。どうしてもブラシの当たりにくい場所は専用の小さいブラシも市販されていますので、歯科医と相談してください。手がご不自由な方やどうしてもうまく磨けない方は電動ブラシや超音波ブラシもお勧めです。私は個人的には苦手ですが…
歯の間の掃除は専用のデンタルフロスか歯間ブラシを使います。若い人で歯の間の空隙が無い方は、フロスがお勧めです。色々な方法がありますが、私は、フロスを50cm位とり、両手の中指に巻いて親指と人さし指でフロスを保持し、2〜3cmの部分を使ってやる方法をご指導しています。この際歯の間に揺らしながらそっと入れ、できるだけ歯肉の隙間に食い込ませて数回かき揚げます。これを両側の歯で行うわけです。奥歯は特に難しく、人さし指でフロスを突っ張る感じで同様に行います。特に上の奥歯は手探り状態で1か月は練習しないとならないでしょう。頑張ってください!!
歯間ブラシは色々な太さ(sss〜L)のものがあり、歯の間に少しだけ抵抗があって入るものが良いです。1か所10回以上は往復させてください。中々面倒ですが、これを怠ると歯周病は治りません。電動や超音波ブラシをお使いの方も、フロスか歯間ブラシは絶対に必要ですのでお忘れなく!!
舌苔は柔らかい歯ブラシや専用の舌ブラシ、ガーゼなどでそっととってください。通常の歯ブラシの後、舌を前へ突き出し奥から手前にかき出すようにして下さい。一度に全部はとれませんので気長に毎日やって下さい。食事の折に良く咀嚼(一口30回が理想)することも舌苔の除去にとても大事です。
義歯の清掃は口臭予防だけでなく、周囲の歯の虫歯や歯周病を予防する為にとても大切です。義歯は毎食後外して清掃します。普通は流水下で歯ブラシか義歯専用ブラシで磨きます。汚れがしつこい時には中性洗剤を使用します。研磨剤の入っている歯磨剤の使用は避けてください(長期的には義歯がすりへります)。夜間は義歯を外して、粘膜を休めると良い場合と、噛み合わせによっては入れておいた方が良い場合がありますので、歯科医と相談してください。外した義歯は乾燥を防ぐ為に水や義歯洗浄剤に浸しておくと良いでしょう。
b、口腔内に疾患のある場合:虫歯およびその継発症、歯周病、口内炎その他軟組織疾患、悪性腫瘍
歯科医院で虫歯や歯周病を治療し、長期的ケアを続けます。一度重度の歯周病になってしまうと、決して完治することはないと自覚してください。いかにして進行を遅らせるかです。専門医による定期的なケアは絶対に欠かせません。
c、だ液分泌量の減少:起床時、空腹時、疲労時、緊張時(これらが原因の場合は生理的口臭と言う)
健康な人でも全く口臭の無い方はいません。うがいをしたり水分を補給すれば解消します!
d、ドライマウス(口腔乾燥症):1、口が乾く副作用を持った薬剤の服用 2、年齢による唾液分泌能力低下 3、精神的ストレス 4、口呼吸 5、糖尿、肝臓、腎臓病、シェーグレン症候群 6、放射線治療、骨髄移植等
最近話題のドライマウスです。鶴見大学歯学部の斉藤一郎教授を中心にドライマウス研究会が作られています。だ液の分泌が少なくなり、口の中が乾いた状態になります。症状は1、口の中がねばねばする2、食べ物が飲み込みづらい3、喉が渇く4、それにより口臭が気になる5、舌がひびわれ状態になるなどです。だ液には抗菌作用がありますので、分泌不足が続くと、虫歯、歯周病、口内炎、咽頭炎等に成りやすくなります。
対処法:1、口腔内の保湿(イオン飲料水などをこまめに補給、場合によっては保湿剤(オーラルバランス等)を使用する。これは歯科医院やネットでも購入できます。)2、刺激物の摂取は避ける(香辛料やアルコールなどは渇いた口腔に刺激を与えるので避けます。)3、口腔内を清潔に保つ(上述したように感染症になりやすいので)4、咀嚼回数を増やす(唾液分泌促進の効果があります)5、ガムを噛む(シュガーレスやキシリトール入りが良いです。ガムを噛んでいない時でもお口や顎、舌をほぐすように動かして、刺激を与えてあげて下さい)6、適度な運動をする(自律神経を刺激して唾液の分泌を促進)7、酸っぱい食物の摂取(梅干し、レモンなど。ただ重度の方は痛みが伴いますので注意して下さい)8、唾液腺のマッサージ(顎下腺や耳下腺をマッサージする)8、薬剤性のドライマウスのときには主治医と相談して服用薬剤を変更してもらう(降圧剤、利尿剤、抗うつ剤、抗ヒスタミン剤等)9、ストレスを減らすよう努力する(精神的緊張は交感神経を刺激して唾液分泌が抑制されます。精神的ゆとりを持った生活を心掛けてください。場合によっては専門家によるカウンセリングが必要です。)
4、心因性口臭
生理的な口臭以外は認められないのに、話し相手の仕草などを気にし過ぎて思い込む場合。これが結構多い。ある程度の口臭は誰にでもあるので気にし過ぎないことが大切です!!
cf 舌苔(ぜったい)とは
舌表面の糸状乳頭という上皮組織に粘膜の剥離上皮、食物残渣、細菌などが付着して白っぽく見えるようになったものである。
この乳頭は舌が傷付かないように保護するためと食物を舌の表面でしっかりと捉えるためにあると考えられている。即ち、糸状乳頭の先端は毎日少しずつ伸びているが、咀嚼や会話などの舌運動に伴って少しずつ削り落とされるので、通常は落屑(らくせつ、皮膚や粘膜の表面が少しずつはげ落ちること)と再生の平衡が保たれて非常に短い毛のように見える。あまり長期間多量に付着していると種々の細菌が増殖しやすく、舌の異和感、味覚異常、痛みなどを生ずることもある。予防法は良く噛む事、舌の掃除をする事です。(宮崎医大 芝 良祐
教授)