とらぶた
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 ずれずれ草 16年04月

 今月の内容 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

         
 マキャヴェッリ/河島英昭訳『君主論』【ざる頭自習室80】
  映画

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2016年04月24日 ご無沙汰いたしてしまいました!
 
  しばらく、更新を怠ってしまいました。
  何度かご訪問くださいました方、申し訳ご
 ざいませんでした。

  このサイトを作っているソフトが、今使って
 るパソコンが使えなくなったら、もう新しいパ
 ソコンには対応できないかも知れなくて・・・
 先行き不安ですが、なんとか2012年6月まで
 に行った「ざる頭自習室」(=津野田興一
 『世界史読書案内』岩波ジュニア新書のリス
 トのうち、未読86作品を読んで、メモをアップ
 する)のアップは、終わらせたいと思ってい
 ます。

  おつきあいをありがとうございます!


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2016年04月24日
(読了:2012年06月11日)
 ざるあたま自習室(80

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・津野田リストNo.81

  マキャヴェッリ、河島英昭(訳) 『君主論』
  
 岩波文庫、
 
 第1刷発行:1998年6月、第19刷発行:2011年9月


  この書は、君主とは“いかにあるべきか”を
 説いたものではない。君主になりたいなら、そ
 してずっと君主でいたいなら、“どうすればう
 まくいくか”を書いたものだ。

  マキャヴェッリは、政治的に混乱し血もい
 っぱい流れた、イタリアルネッサンス期の都
 市政府フィレンツェの書記官で、政権がひっ
 くり返ったときには投獄され死刑寸前、にな
 ったという人。そんな波乱のなかから生み出
 された「思想」だから、ものすごく現実的だ。

  私は、 “現実の後追い”みたいなことをわ
 け知り顔で言う人を「けっ」と思うので、「けっ」
 と思い、そして激しく憤りながら読んだ。
  だってひどいんですよ。
  たとえば……
  軍事的に手に入れた領土をうまく支配す
 るにはどうしたらいいかというと、君主自らが
 その土地に乗込んで統治するのがベストで、
 でなければ、その領土の1,2カ所の住民の
 耕地と家屋を奪って追い出し、送り込んだ植
 民兵に与えてやればいい、という。
  この方法だと、兵隊を送り込むより費用が
 かからないし、
  《損害を受けた者たちは、散りぢりになり、
 かつ貧しくなるゆえ、君主に危害を及ぼす
 恐れはまったくない。そしてまた他の人びと
 は、(略)身ぐるみ剥がれた少数の者たちを
 襲ったと同じような危難が、自分たちの身に
 も降りかかってくることを恐れ、戦(おのの)き
 ながら過ちを犯すまいと怯えるのである》p21
 《人民は優しく手なずけるか、さもなければ
 抹殺してしまうかだ。なぜならば、軽く傷つけ
 れば復讐してくるが、重ければそれができな
 いから。》p22 
  ムッカーーーッ!!!
 
  うーむ。こういう無体な権力者のやり口を
 のさばらせないためには、どうしたらいいだ
 ろう!
  たとえば、「人民」が、徳永直『太陽のない
 町』の工員たちみたいに、30人の同僚の解
 雇に抗議するため全員でストライキに入るよ
 うな人たちなら、マキャヴェッリ流ブラック権
 力者も歯が立たないだろう。
  ・・・けど現実の私たちは、まさに《同じよう
 な危難が、自分たちの身にも降りかかってく
 ることを恐れ、戦(おのの)きながら過ちを犯
 すまいと怯え》てるありさま・・・。
  でも、真実は、現実だけでできてるんじゃ
 ない。真実の半分は“理想”でできているん
 だから、こんな横暴はイヤだと一人一人思っ
 ていれば、やがて社会の性格は変わってい
 くんじゃないか。
 
  ・・・・・・と、読んだ当初(2012年6月)鼻息
 もうもうで以上のような感想を書き付けた。
 こんな、悪い権力者の「提灯持ち」みたいな
 人を「歴史上の大思想家」扱いする世間が
 恐くてならなかったのだ。
  けれど、いま、福田歓一『政治学史』(東
 大出版会)という本を朝少しずつ読んでいて
 少し気持ちが落ち着いた。
  マキアヴェリ(こちらではこの表記)は、いく
 つもの都市国家とローマ教皇領が争って統
 一を見ないイタリアを嘆き、混乱する社会の
 原因を、人間の心理(欲望で動く。嫉妬心が
 強い。他者に残酷)の醜さにあると率直に分
 析した。
  あたりまえのことのようだが、マキアヴェリ
 の登場以前には、そんな考え方はなかった
 のだそうだ。キリスト教の道徳にすっぽり覆
 われた中世には、人間とは“神の秩序のもと
 に社会をつくる動物”だと信じられてていたか
 ら。

  またマキアヴェリは、相争う乱世をまとめる
 には、軍事力が強くて悪知恵の回る権力者
 が必要だと考え、「政治」をキリスト教的な道
 徳から解放し、権力者の「技術」の問題と定
 義した。この考えも画期的だったそうだ。
  それから。
  彼の言うことには、やっぱり矛盾もあるそう
 だ。
  マキアヴェリは、権力者には強力な軍が
 必要だから「金目当ての傭兵などダメ、ロー
 マ帝国のような国民軍を持つべし」といって
 るが、権力者が力でぎゅうぎゅうねじ伏せた
 「国民」が、マキアヴェリのいうような優秀な兵
 士になるだろうか・・・と。
 

  マキアヴェリの著作は、まだ強い権力を持
 っていたローマ教皇を批判しているので、生
 前ついに出版されず、死後発刊されたが、
 30年足らずでまた教皇庁の「禁書」に指定さ
 れたそうだ。
  マキアヴェリもまた、戦いながら思想を築
 いていたのだ。「わけ知り顔」だったわけじゃ
 ない。
   のち、絶対王政の国々の為政者が、彼
 の言い分を曲解し都合良く使いながら自分
 たちの本性は見つめず、マキアヴェリを悪者
 あつかいする。マキアヴェリの真価が見直さ
 れたのは、革命の時代の思想家たちによっ
 てだそうだ。
 ジャン・ジャック・ルソーもその一人。
  ルソーは言っているそうだ。 
 《『君主論』は自由の書物である, 人民がボ
 ンヤリしていると,どういうことになるかを教え
 ている》(福田『政治学史』p203)


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2016年4月24日 『吟醸掌篇』はじまります!

↑装幀・イラスト山崎まどかさん

  えー。
 じつはこのたび、文芸誌を作りました!
 「短篇小説」という形にこだわった本です。
 そして、「版元」にもなりました。
 「編集工房けいこう舎」といいます。
 実は、以前から、小さい出版社をつくって、
 みんなの知らない上質な記録文学なんか出
 せたらいいな、と思ってお金をためていたの
 ですが、とても死ぬまでかかっても無理なこ
 とに気づき、法人にしないで儲けも考えず、
 本を出すことにしたのです。

  「新人賞を頂いたもののその後、発表の
 場がなく、それでもめげずにこつこつ書いて
 いる小説家」たちを誘って、寄稿していただ
 きました。
  執筆者がお金を出して作品を載せる「同
 人誌」ではありません。1枚400円ながら原
 稿料が出ますし、水準に満たない作品は載
 りません。えへん。
  挿絵も豊富ですし、ツイッターなどで出会
 った、ものすごく本を読んでいる「ちまたの読
 書人」の方に書いていただいた、短篇小説
 にまつわるコラムも充実しています。
  こちらのホームページをどうぞ!

 http://ginjosyohen.jimdo.com/

  なんとまあ、アマゾンで予約(5月9日発売)
 を受け付けているんですよ〜〜。

http://www.amazon.co.jp/%E5%90%9F%E9%86%B8%E6%8E%8C%E7%AF%87-vol-1-%E5%BF%97%E8%B3%80-%E6%B3%89/dp/4990886208?ie=UTF8&redirect=true

 
  
でも、ドキドキです。興味を持って手にとっ
 てくださった方が、「なーんだ、凡庸だなあ、
 こんなんじゃこの人たち、売れなくて当然だ
 よ」と思われたら・・・。
  編集者の胃の痛さがわかりました。
 やっぱ、いちばん神経がいるのが、直しをお
 願いする作業です。自分のいってることが
 間違ってるかも知れないし、ただ「ダメ」と言う
 んじゃ相手を困らせるばかりだし。こうしたら
 どうか、というのを、知恵を絞って考えないと
 いけない。
 勉強になりました。
 が、のべ3ヶ月半費やしてしまいました。
 さあ、自分の仕事に打ち込みます!!!