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【フェラーリの鷹】
製作年 1976年、伊
監督 ステルビオ・マッシ
出演 マウリツィオ・メルリ、オラツィオ・オルランド
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【あらすじ】
覆面パトカーに乗務するパルマ(マウリツィオ・メルリ)はがむしゃらな性格で同乗の刑事ニッザルドはいつも肝を冷やしていたが、今日も暴走するポルシェを追跡中転覆し車を大破させた。上司のタリアフェリから大目玉を食らうが、パルマは車が悪いからだと食ってかかり新しく支給されたパトカーを勝手にチューンアップした。その頃ニースのジャン(オラツィオ・オルランド)という異名を持つレーサーくずれの銀行強盗が白昼堂々と銀行を襲いシトロエンで逃走した。警察は相手に翻弄され事故を起こすのを懸念し追跡中止命令を出すが、パルマは制止も聞かず追い掛ける。しかし、相手の思うつぼにはまり車は横転し同乗のニッザルドは亡くなってしまう。責任を感じたパルマは辞表を提出するが、タリアフェリは取り合わず強盗団への潜入捜査をパルマに命じ自分のフェラーリを渡した。
パルマはタリアフェリからドライブ・テクニックをみっちりたたき込まれると、ジャンの手下ときっかけを作りジャンから仲間に誘われる。いよいよ決行の日になるが慎重なジャンはどこの銀行を襲うか明かさない。パルマはとりあえず警察に電話するが、パルマの恋人フランチェスカによってパルマの正体がばれていしまい銃撃戦になりジャンたちは逃走した。大胆なジャンは襲撃を中止することなく銀行を襲い、パルマはフェラーリに飛び乗り追跡を開始した。激しい追跡でジャンはハンドル操作を誤り車に激突し、脱出したところをパルマに捕まる。しかし、パルマは逃がしてやり車での決着を申し込む。ジャンはその勝負で着地に失敗し車は大破して真っ赤な炎に包まれた。
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【解説】
イタリア映画でありながらセリフは英語であり、マカロニウェスタンの現代版のような作りはアメリカ市場を念頭においてあるものと思われる。敵役が乗っている車はすべてイタリア車以外で自国の自動車産業への配慮も伺える。
フェラーリの生みの親エンツォ・フェラーリは、アルファロメオのレーシング・ドライバーとして活躍していたが、1929年アルファロメオの準ワークスチームとして”スクーデリア・フェラーリ”を設立しチーム監督して数々のレースで好成績を収めた。ちなみに、フェラーリのシンボルである黒い跳ね馬(キャバリーノ・ランパンテ)は、レーサー時代に兄の戦友で第一次世界大戦の撃墜王フランチェスコ・バラッカ少佐の遺族から譲り受けた紋章が元になっている。アルファロメオ自体も公式チームを持っていたため、しだいに利害が衝突するようになり1938年に袂を分かつことになるが、第二次世界大戦が勃発したため両者の対決は戦後に持ち越された。戦後、エンツォはフェラーリの代名詞になるV型12気筒エンジン搭載のマシーンを作り上げ、戦後初めて開催された1949年のル・マン24時間レースでいきなり優勝するという快挙を成し遂げ、フェラーリの名は一躍世界中に知られるようになった。1950年から始まったF1グランプリにも当然意気込んで出場したが、宿敵アルファ・ロメオが全勝し苦杯をなめさせられた。しかし、翌年のイギリスGPで優勝し、エンツォは歓喜のあまり涙を流した。アルファロメオはこの年を最後にF1から撤退し、1952年以後フェラーリが無敵になっため主催するFIA(国際自動車連盟)をあわてさせている。
フェラーリのマシーンがレースで活躍し人々の憧憬の的となると、エンツォはロード・カーの生産にも乗り出した。本作品に登場するフェラーリ250GTEも量産型モデルで、250シリーズの中で唯一2+2(座席が4席)である。市販車の生産量は年々増えていったが、あくまでもそれはフェラーリがモータースポーツを行うための資金調達の一環であるところが他のメーカーと大きく違う点である。特にF1への取り組みは並々ならぬものがあり、F1の歴史はフェラーリの歴史と言っても過言ではないくらいである。ティフォシと呼ばれる熱狂的ファンが世界中に存在し、フェラーリのファクトリーがあるマラネロはモータースポーツの聖地となっている。50年以上の歴史の中には1度も表彰台に上がれないほど低迷した年度もあったが、1996年から“皇帝”と称されるミハエル・シューマッハを起用し、2002年には全戦表彰台の偉業を達成するなどニキ・ラウダがいた70年代後半以来の全盛期を迎えている。エンツォ・フェラーリは1988年90歳で天寿を全うしている。
本作品に登場するパトカーはアルファロメオ・ジュリアスーパーで、実際本国ではよくパトカーに採用されていた。強盗団のシトロエンDSは独特のフォルムが特徴で20年近くも生産された。手下のフォード・カプリは英独両国のフォードが本国のマスタングを元に開発した車である。
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