【大陸横断超特急】
製作年 1976年、米
監督  アーサー・ヒラー
出演  ジーン・ワイルダー リチャード・プライヤー ジル・クレイバーグ
【あらすじ】
 大陸横断特急”シルバー・ストリーク号”でロスアンゼルスからシカゴに向かうことにしたジョージ(ジーン・ワイルダー)の隣のコンパートメントには、ヒリー(ジル・クレイバーグ)という魅力的な女性が乗っていた。彼女は美術史家シュライナー教授の秘書だった。食堂車でたまたま同席した2人は親しくなり、彼女のコンパートメントでいちゃついている最中、ジョージは窓ごしに人が落ちるのを見て驚いた。それはシュライナー教授その人だったからである。しかし、ヒリーは見ていなかったので取り合ってくれなかった。ジョージは確かめに教授のコンパートメントまで行くが、大男にいきなり列車から放り出されてしまう。
 ジョージは何とか列車に追いつき、列車で親しくなっていたセールスマン(実はFBIの捜査官)から、国際的ギャングのデブロー一味が贋作の証拠を持っている教授を殺したことを明かされる。しかし、その捜査官も一味から殺され、ジョージも大男と格闘の末、再び列車から落ちてしまう。パトカーを失敬すると、中に護送中のグローバー(リチャード・プライヤー)が乗っていた。グローバーの協力で列車に再び戻れたが、一味と銃撃戦になり、またまた列車から飛び降りてしまう。警察にすぐに捕まるが、FBIの責任者にはことの真相がわかっていたので、ジョージは一味を捕らえるために協力を要請される。列車は警察により停止させられたが、デブローは運転士を脅して列車を動かした。デブローが狙撃されたため、列車は制御不能のままシカゴ駅に向かって突進し始めた。
【解説】
 監督のアーサー・ヒラーは「ある愛の詩」(70年)の監督として知られているが、最近までアカデミー協会の会長も務めるなど業界人からの厚い信頼も得ている監督である。
主演のジーン・ワイルダーは、メル・ブルックス監督の「ヤング・フランケンシュタイン」(74年)で脚本・主演をこなし一躍有名になった。共演のリチャード・プライヤーとはコンビで出演した映画が他にも数本ある。大男役のリチャード・キールは、007シリーズでのジョーズ役でおなじみだが、この映画でも鋼鉄製の歯を付けて暴れ回っている。撮影で使われている鉄道は、カナディアン・パシフィック鉄道だが、駅に列車が突っ込むクライマックスシーンは、カルフォルニアにあるロッキード社の格納庫にシカゴ・ユニオン駅の大セットを組んで撮影された。
 現在、大陸横断特急を走らせているのは、赤、白、青のストライプが入ったステンレス製の車体でおなじみのアムトラック社(アメリカ鉄道旅客輸送公社)である。アメリカでも他の国と同じように自動車と飛行機に押されて、鉄道による旅客輸送の減少に歯止めがかからない状態になったため、1971年に半官半民のアムトラック社が設立され、各鉄道会社の線路を借り受けて旅客列車の運行を始めた。今でも経営は楽ではないようだが、ワシントンDC〜ボストン間の北東回廊にTGV型超特急「アーセラ・エクスプレス」を走らせるなどして、ドル箱路線では航空機と互角に勝負している。西海岸を始発とする大陸横断特急は、ほとんどシカゴを終点としている。そういう意味ではほんとの大陸横断とは言えないのだが、シカゴから先は電化区間が多いため、西海岸から出発するスーパーライナーと呼ばれる2階建て列車は高架線が邪魔で走ることができないのである。
 現在、アムトラックの代表的な大陸横断特急には以下の4本の列車がある。シアトル〜シカゴを結ぶ「エンパイア・ビルダー号」はアメリカ最北端のルートを走りモンタナ州の大平原を横断している。「アイアンホース」で登場したアメリカ初の大陸横断鉄道であるユニオン・パシフィック線を走りサンフランシスコ近郊のオークランド〜シカゴを結ぶ「カリフォルニア・ゼファー号」は大陸横断特急の中でもっと人気がある。実質的な大陸横断特急と呼べるロスアンゼルスからフロリダ半島のオーランドまでを結ぶ「サンセット・リミテッド号」は120年も前から走っているが、走行距離も4500qと長大で3泊4日かかる。この映画と同じコースを実際に走っているのが旧アチィソン・トペカ・サンタフェ線を走る「サウスウエスト・チーフ号」で1日1本ずつ運行され、3日かけてロスアンゼルスとシカゴの間を結んでいる。この線はテレビドラマにもなった「ルート66」と併走するように走っているが、その昔は「サンタフェ・トレイル」と呼ばれ、西部の開拓者が通っていた街道でもある。その他に、シアトル〜ロスアンゼルス間の西海岸を走る「コースト・スターライト号」やニューヨーク〜ニューオリンズ間の12の州を走る「クレセント号」などがある。