土地改革(土地公有化)による日本経済の構造改革(2016.7.1)

アベノミクスには構造改革がない。土地制度の抜本改革で、土地所有権制度を廃止して、土地は公共財として利用権を中心と考えなければならない。日本では明治以降、約140年もの間土地は、純粋な私有財産として法律上扱われ、現在に至っているが、今や、世界中にそんな古ぼけた土地制度を持つ先進国は存在しない。

日本は人口に比し、国土の狭い国であり、土地の価格は高く、経済活動の上で、土地を持っているものは、土地を持たないものに比べ、明治以降非常に有利に、経済活動を行うことができた。第二次大戦後,日本では財閥解体が行われたが、日本の土地は、農地改革によって、農業の地主が消滅したが、農地以外では、地主が存在し、明治以降地価上昇により大きな利益を得て、有利に経済活動を行い、盛んに土地投機が行われた。

日本では、農地改革はあったが、農地以外には、土地改革はほとんど行われなかった。フランスの絶対的土地所有権を模倣して、明治政府は土地所有権制度を導入したが、1945年以降本家のフランスでは、第二次大戦後に、深刻な住宅問題が発生し、1950年代以降フランスでは、土地所有権制度を事実上、棚上げしてしまった。日本は、終戦直後のことだったので、この重要な出来事を、マスコミは報道せず、日本の学者もあまりよく勉強していない。フランスが棚上げしてしまった土地所有権制度は、そのマネをした日本だけが、いまだに忠実に実行している。これでは、経済が成長せず、行き詰まるのは当然である。

フランスの影響もあり、外国では、土地は私有財産や商品ではなく、公共財(公のもの)として扱っている国が多い。アングロサクソン系の国では、土地の重要な権利は、所有権ではなく利用権となっている。日本の土地基本法では、土地政策の基本として公共の福祉を重要視しているが、残念ながら実定法ではなく、理念上の言葉だけのものとなっている。

日本経済の構造は、1990年代に起こったバブル経済の時のままで、今でも土地不動産の投機が、盛んにおこなわれている。現在の日本の地方の人口減少と不況は、産業や工業生産から見捨てられた土地における投資や資金の流れが全く起こっていないこと、つまり、人間の雇用の場がないことが基本原因となっている。
フランスでは、土地所有権を棚上げした後、産業や、都市の配置上必要な土地は、公共財として合理的な価格で買収することを前提として、第二次大戦以降地域作りを進め、雇用の場を農村部にも作っている。土地は純粋な私財や商品ではなく、公共財として、その地域の住民の産業や、雇用の場を設ける国策として、活用されなければならない。

こうした土地制度の改革による経済の構造改革が、アベノミクスには皆無である。日本の土地制度(絶対的土地所有権)は古い18世紀の遺物であり、これは本来ならば、1990年代のバブル経済の直後に、緊急に改革されるべきであった。これを怠ったために、土地、不動産投機が、今再び盛んになっている。一刻も早く21世紀の日本にふさわしい、土地制度を創設しなければならない。 土地を公有化し、バブルとデフレの張本人であった、土地所有権制度を改革し、土地を公共財として、利用権中心の制度に大転換しなければならない。

生産と雇用の場の中心を、東京、大阪、名古屋等の大都市中心から、人口密度の小さい地方の農村、漁村へ、大きく拡大分散化しなければならない。土地を、私財や商品として投機の対象とすることを厳しく禁止し、公共財として利用権を中心に、土地の権利を見直す必要がある。それが現在の世界の土地政策の潮流であるといえる。日本経済全体のバランスを向上させるための企業と雇用の、地方への大胆な誘導が、日本経済の成長と財政再建にとって、不可欠な構造政策なのである。土地所有権制度の改革が遅れれば、遅れるほど、社会の格差が拡大し、日本経済の成長力が、沈下し続けるのは、必定である。日本の若者が、日本経済の将来に希望が持てないのである。

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