不協和音の目立つ日米経済関係(2016.5.10)

(シェール業界の淘汰)

現在ゴールデンウィークのさなかにあるが、ガソリン価格が7年ぶりの安値水準になっているといわれている。ガソリン1リッター当たりの小売格が百円以下というガソリンスタンドさえ見られる。新聞報道によれば、米国で、新エネルギーと言われているシェール価格が、昨年6月にピークだったが、その後、原油安は続いている。2015年1月から破たんした米国のエネルギー企業は、60社に上り、その負債は、2兆円を超すという。米国のシェール業界は、淘汰のピークになっているという。(4月25日、日経新聞)しばらくは、このような状況が続くのかもしれない。ここ数年の高いガソリン価格に直面してきたガソリンの消費者にとっては、朗報といってよいだろう。

(マイナス金利政策による貸出金利の低下)

日銀の指導で強制的に導入されたマイナス金利の影響が、ジワジワと効果を与えているという。国内の企業向け貸出金利の指標である東京銀行間取引金利(TIBOR)の3カ月物が、過去最低の記録を更新しており、貸出金利が年0.25%を下回っている割合が急激に上昇している。市中銀行は、しぶしぶ日銀の方針に従っているが、そのうち、不満が噴出してくるだろう。年の金利が1.5%未満の融資は、全体の融資の4分の3を占め、借入者の天国のようなものである。

(動けない日米の中央銀行の金融政策)

日銀にとって、追加緩和は難しい。マイナス金利政策のよい効果がハッキリと社会の表面に出てこないからである。消費面でも投資面でも、目立った動きがない。
米国連銀は、昨年12月のシナリオどうりに徐々に金利の長期水準を上げたいと思っているようであるが、日銀のマイナス金利政策の導入で,出鼻をくじかれたままになっており、第2回目の金利の引き上げが実行できる段階に来ていない。日本と米国との両中央銀行の間では、お互いに政策上けん制し合う、微妙な関係ができつつあるように思はれる。その間隙をぬって、円・ドルの為替レートは、円高ドル安の方向に向いているようである。

(G20で未報道の円レートに関する政府介入の問題)

マスメヂアに正式に報道されていることではないが、G20のワシントン会議の際に、日本の円介入について、オランダ関係者からなにか発言があったのではないかといわれている。為替市場において日本の印象が悪く、これを受けて、米国政府は、監視力を強化するという報道を行った。ウワサの域を出ない問題なので、ここで的確なコメントをすることはできない。

(米国の為替監視の開始は、TPP自由協定との関連か)

2016年4月29日に、米国財務省は、貿易相手国の通貨政策を分析した結果、半期為替報告書で、対米黒字の大きい日本、中国、ドイツなど5か国を{監視リスト}に指定した。これは、相手国が、大規模な為替介入などを続ければ、対抗措置が取られるという含みを持っている。こうしたやり方で、「為替操作国」を認定して対抗措置を発動したことは、1990年代以降は前例がないといわれている。もっとも、これはTPPに反対している米国議会向けの工作であるという解釈もある。

(5か国の指定の基準)

これは、2016年2月に成立した「貿易円滑化、貿易執行法」に基づき、米国財務省が対米貿易黒字国を対象として、指定したものである。次の事項を条件として掲げ、部分的に抵触すれば、監視リストに入れるとされている。

@ 対米貿易黒字が、年200億ドル超
A 経常黒字が国内総生産(GDP)の3%超
B 為替介入による外貨買いが、GDPの2%超
を、条件として掲げている。

このうち、日本は、@とAに該当しており、仮に巨額の円売り介入で3条件すべてに該当することになれば、米国は、2国間協議で、是正策を日本に求めることになるという。

オバマ政権は,環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受けて、貿易相手国の通貨政策を監視して、対抗措置がとれるよう法制度を強化したのである。これは、米国議会で強まりつつある自由貿易協定への反対論を抑えるための布石であると、ワシントンでは説明されている。

(米国政府は、マイナス金利政策を間接的に、ターゲットとしているようだ。)

2016年の日本のゴールデン・ウィークは5月5日に終わってしまうが、この1週間で、円レートが1ドルにつき106円台にまで切りあがってしまったことが、こうした報道を事実上裏付けているように思はれる。

日本の構造改革は、土地制度の大改革から始める必要がある。日本のアベノミクストそれを過度に強調する日銀の金融政策は、経済面では、米国との協調バランスを大きく欠いていることになる。アベノミクスと日銀の基本的な欠陥は、日本経済の構造についての基本的な分析がないままに、有効需要の調整側面だけに関心を払い、財政、金融政策を行っていることである。

日本は、人口数やGDPに比べ、土地貧乏、土地地獄の国であり、国策の重点を土地所有権制度という古ぼけてしまった制度をまだ大切に使っている。これがバブルとその後のデフレ経済の根本原因となっている。土地所有権制度の創始国フランスでは、半世紀以上も前に、土地所有権は棚あげしてしまった。しかし、日本はそれにまだしがみついている。日本経済の喫緊の課題は、土地の公有化、土地の公共財化であり、フランスではこれは半世紀前から行政的に実施しているのである。日本は、フランスの何倍もひどい土地地獄に悩まされているので、土地制度の基本改革を行い、土地は公のもの、土地は公共財ということをキチンと実行しなければ、健全な経済成長と財政再建を堂々と推し進めることはできない。法律学者や国会議員はもっと丹念に日本の土地基本法の精神を学ばなければならない。

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