伊勢志摩サミットとオバマ大統領の広島演説(2016.6.3)

1016年5月26,27日に行われたG7のサミットは、無事終了し、安倍首相が議長として、総括的な記者会見を行った。

1 世界経済を危機とみるかどうか

G7サミットの最大の議題は、世界経済問題であったが、安倍首相によれば、2008年に起こったリーマン危機の際以降、経済指標の悪化は、同様の状態に陥っていると説明し、世界経済は、同様な危機の状況にあると説明し、各国は、金融政策、財政政策、構造政策をそれぞれ発動して、対処すべきであると結論をまとめた。

報道によれば、リーマンショックと同等の危機にあるというのは過大な表現であると、イギリスのキャメロン首相、フランスの大統領、ドイツのメルケル首相が、それぞれ異を唱えたらしいが、押し切ったといわれている。当研究所は英、仏、独などの見方が妥当であり、現在の世界経済の状況は危機などという表現で表す深刻なものではないものと思はれる。

その背景となったリーマンショック当時のアメリカの金融界のモラルは、地に落ちてしまい、腐敗した状況が世界の大きな経済循環を激動化してしまった。構造不況であるということが、率直に述べられていない。安倍首相の分析は、G7全体の見方を総括したものとは言えないだろう。日本に都合のよい判断をしたと判断したといわざるを得ない。しかし、安倍首相の意欲には敬意を表することができ、日本もその最も必要としている構造改革(土地改革)について、早急に取り上げ、霞が関の官庁メニューから大きく脱すべきである。

2  日本の経済政策をどうするか

安倍首相は、議長国として今後、消費税の引き上げ実施を、2年半先に延ばすことを発表し(5月29日)、周囲をビックリさせている。
ここで消費税についてふれることはしないが、ヨーロッパのギリシャよりも財政指標が悪化している日本の財政を考えると、G7の一国であるとはいえ、これ以上国債を発行し、財政負担を拡大することには、危険を感じつつあり、反対である。日本の国内面のみならづ、国際協力という面からも、大胆な歳出削減に取り組むべきである。世界経済のための歳出というのは、一見格好はよいが、命取りになる恐れがある。

日本の金融政策が、マイナス金利政策という異端なものであり、この効果がよく出るか悪く出るかはまだ分からない。そのために円の為替レートを日本政府が円安に誘導しているのではないかということが、批判されている。今回このことは、オバマ大統領ご自身からも直接批判されており、これ相当の根拠を持っていることではないかと思はれる。安倍首相はこのことを、国民の前に明らかにしていない。これは透明性を欠く態度であり、国民に対し誠実とは言えない。日本にかなり好意を持っている米国の指導者が、率直に忠告し、警告していることを、日本は、謙虚に耳を傾け、実行すべきである。

こうした通商のための通貨介入は、日本政府と日本経済のモラルを低下させ、間接的に、大きな悪影響を及ぼすものであり、国際社会から日本人の節度とモラル疑われることとなり、為替介入は即座に停止すべきであり、日本は国際社会に対する謙虚さが必要である。わたくしは、全体として、ドイツのメルクル首相の見方と政策対応が、現実的ではないかと思う。G7が無理をして、世界経済を刺激する必要はないというのが、妥当ではないかと判断される。

3 オバマ大統領の広島訪問について

現職の米国大統領としては初めて、広島の被爆地を訪問し、原爆の犠牲者に対して、儀礼(献花)を行うことができたのは、オバマ大統領の大きな勇気と決断のおかげであった。大統領は非人道的な戦争の持つ意味について、深く哲学的に思索したうえで、米国の今後の国際社会に対処する新しい方向を模索しているのではないかと思料される。この大統領の行動については、米国内でもいろいろな反応が今後起こるであろうが、こうした新しいアメリカの国際政治に対する勇気ある決断が、今まで力ずくでやってきた米国や国際社会の思想や文明を次第に改善していくことになるであろう。

しかし、オバマ大統領は「こうした核廃絶の思想は、私の生涯をかけても、達成できるかどうかわからない。」といみじくも同日広島で語っている。こうした米国大統領の勇気ある行動が、世界の世論に徐々に浸透し影響することを、わたくし達は、希望をもって期待している。

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