トランプ米国大統領候補の人物像(2016.9.1)

数年前に、米国に旅行したとき、現在、共和党の大統領候補、Donald J Trump氏が執筆した「Trump 101」という本を購入して、机の上に積み込んでいた。しかし、まさかこのアメリカの不動産王が、米国の大統領に立候補するだろうなどということは、夢にも想像することができなかった。しかし、最近、アレヨアレヨという間に、この人は、周囲から酷評を浴びながらも、共和党の本命の候補となってしまった。そして、民主党候補のヒラリー、クリントンと対峙している。11月までは、もう2月しか残されていない。ヒラリークリントン氏は、日本でよく知られているが、トランプ氏はほとんど知られていない。そこで、色々な風評や評価を世界中にまき散らしている、ドナルド、トランプ氏を取り上げ、2007年に彼自身が発表した本、「トランプ 101」を読んで、その人物像に光を当ててみたい。

最近米国では、共和党出身の大統領は、あまり人気がなく、クリントン氏やオバマ氏のような民主党出身者が、長く大統領を務めている。長く続いたブッシュ大統領があまり評価が高くなかった理由には、イラク侵攻の前提となった情報が、必ずしも、公正なものでなかったことが、大きく米国民の不信感をを買ってしまったことが災いしている。

共和党は、昔から、資本家、金持ち階級の政党とみなされてきた。ドナルド・トランプ氏は、一代で、アメリカの不動産王にのし上がってしまったが、ドナルド流の個性の強いやり方で、apprenntice(不動産の見習い奉公)から始まって、独力で、グイグイと資産と富を増やしていったが、泥臭い仕事の中で、一人で踏ん張り、自分の社会的な地位を築き上げていったということは、日本の自民党の田中角栄氏によく似た、メンタルなイメージを我々日本人に与えるかもしれない。米国や米大陸のみならず、世界中に不動産(ホテル、ゴルフ場、カジノ等)を戦略的に建設して、大きな資金の流れをトランプ氏は、独特な手法で、研究し築き上げてきた。その顕著な例をトランプ101から探し出して、ここで、皆様に紹介してみようと思う。

トランプ氏の事業哲学

彼が、自分の道を振り返って、強調していることは、人間は情熱をもって好きなことに当たらないと、成功することはできず、そのためには、好きな分野の仕事を完全主義でトコトン頑張らなければならないというという人生哲学である。彼は、苦難の道を耐え忍び、完全主義をもって、ガンバリ抜くことが、アメリカで成功するには最も重要なことであると思っているようだ。大切なことは、物事は、実際に自分で実行してみなければ、簡単に判断することはできないと結論付けていることである。最後まで頑張ることを若者に要求している。若い人が事業をやっても、なかなか成功しないのは、実行力が弱すぎるためであり、全力で、現実に実行することをしなければ、成功はできないと若者を説得している。

彼の文章を引用すると、「大学時代には、余暇の時間を不動産とその差し押さえの勉強に打ち込んだ。試験をパスするためでなく、自分自身の判断で、ドンドンと深く勉強した。この特別な研究は、私の最初不動産取引で、私を成功させた。そこで金を儲けて、私自身の事業を出発させた。私は、1200単位の住居の開発で、800の空き家のあるアパートの物件を見つけたが、それは投資家が全然見向きもしない物件であった。開発者は失敗し、政府は差し押さえを実行した。私はこれを、偉大な機会ととらえた。この案件で、一生懸命働き、多くのことを学んだ。これに成功して、私は自信を得て不動産業に突入した。このことが、私の不動産業の基礎となった。こうした事例を何回も繰り返し行った。これを一生続けて、あるゆることを勉強することになった。」(第5章、知識がなければチャンスが来ない。知識を得て情報を活用せよ。を参照)

[ニューヨークの、マンハッタ地区のウオール・ストリート40番地の、建物130万スクエア・フィートを容する土地を、私は130万ドルで購入した。今いくらしているかというと、マンハッタンの1ベッド・ルームのアパートで、一戸当たり100万ドル以下の物件はないことが分かる。私がどんなに儲かったかが、わかるだろう。(同上第5章参照)

解雇(首切り)につて、一言忠告したい

不動産業は、解雇が多く出る。それはやむを得ないことである。「お前は首だ!」という最後通告は、みんなが聞きたくない言葉だし、それを発する側も言いたくない言葉である。十分に考慮した後でなければ、そんな言葉は言うべきでない。雇用者をクビにするのは、自分が怒っているときと、他の労働者がその場所にいるときは、言ってはならない。自分が怒っているときは、すぐにその場を立ち去るべきである。
冷静になってから、弁護士等と相談しながら実行したらよい。自分のために働く労働者の前で、自分の感情を爆発させてはならない。また、労働者と最終面接の際に、口論や、ディベートに引きずり込まれてはならない。こうしたことは慎重に避けるべきことである。(トランプ101、第6章参照)

実行することの大切さ

物事を実行し、リスクをとることによって、いろいろなことが解決され、真実が明らかになる。教育を受けることは大切なことだが、成功を達成するには、いろいろなことを経験しなければならない。我々自身の持っている知識に基づいて、実行し経験しなければならない。ゴルフをすることは、一見簡単に見えるが、しかし実際にやってみると、非常に難しいことがよくわかる。事業で成功するには、リスクをとることが必要である。リスクをとれば失敗することもある。しかし失敗しても、やった人は,いろいろなことを学ぶことができる。テレビを見たり、しゃべっているだけでは、本当の真実を学ぶことはできない。そして、行動を起こすためには、勇気が必要である。あなたの生まれつきの能力に耳を傾け、あなた自身の勇気と決断で実行せよ。他人のいうことにあまり耳を傾けることは、必要でない。(7章、8章参照)

トランプ氏の日常生活について、かれは、自分自身の生活の中のある期間は、生活と仕事の日誌を読者にさらけ出し、どのような仕事ぶりをしてるかを、日を限定して公表している。トランプ氏は、ビズネスだけでなく、ゴルフが大好きで、ゴルフの話が、本のいたるところに出てくる。ゴルフから人生におけるいろいろな教訓を学ぶことを、たくさん例示している。(20章参照)

トランプ氏の家系等

トランプ氏の母親の家族は、スコットランドから米国へ移住してきた。従って、スコットランドは、彼のルーツである。トランプ氏は、世界中で、不動産やゴルフ場、レストラン、カジノ等の事業を展開しており、専用ジェット機の写真が示されている。国際的規模での大実業家としての実績をきづいてきた。

彼は,「信念(confidence)をもて」と人に呼びかけ、信念を持てば、多くの人々を自分の方へひきつけることができると訴え、よい判断をもち、それを人々に示すことによって、自分自身の慣性(momentum-動いている物体によって得られる物理学的な力)を続けていくことができるとひとびとに説いている。そして、その動きをコントロールし続けていくことが重要であると説いている(29,30章参照)

そして、一番重要なことは何であるかを絶えず考え続け、自分の使っている武器ではなく、最終的な目的は何であるかを常時全神経を集中することが重要であると強調する。(33章参照)

ドナルド・トランプ氏は、非常に熱心な慈善家であり、他人をよく助けている。彼は、トランプ機構(The Trump Organization)の議長であり、総裁であり、トランプ大学(Trump University)の議長でもある。そして、世界でもっとも有名な不動産投資家であり、作家でもある。彼は、不動産事業、国際的なホテル事業、ゲームやスポーツ、娯楽の分野で、新しい形の優秀性を発揮している。

(あとがき)
以上、ドナルド・トランプ著「トランプ 101」(成功への道)に沿って、彼の事業、思想、そして経歴を読者に紹介してきた。ドナルドトランプ氏とヒラリークリントン女史の参加する米国大統領選挙は11月初旬に行われる。私が、トランプ氏を紹介したのは、共和党を支持しているからではなく民主党のクリントン氏が日本人に広く知られているのに反し、トランプ氏は、日本で事業を何もやっておらず、日本人が同氏と接触し、見聞する機会が全くないことが、バランスを欠くと思はれたからである。

日本人は、米国の大統領選挙はおとなしく観劇するより方法がない。しかし、米国の次の政権がどんな人物によって担われるかは、米国や世界の政治のみならず、日本と日本人の運命をも大きく左右する事になるだろう。ドナルド・トランプという大統領候補者像を、ヒラリークリントンと同様に、平等に日本人に紹介しておくことは、日本と日本人にとって必要なことではないかと考えた。読者のご理解を得たいと思う次第である。

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