平成10年2月4日(水)第5校時
指導者 寳迫 芳人
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資料の調べ方
本学級の児童は、算数に関しては、意欲的に取り組む児童が増えてきている。児童はこれまでに、数を使った分類整理や簡単なグラフの読み書きにはじまり、資料を整理分類したり表やグラフに表したりすることについて、段階的に学習してきている。変化の激しい現代社会に於いて情報活用の能力が重要視されているという意味からも、資料を読み取り、整理し、わかりやすく表すという力を培う必要があると考える。
今回扱う題材は、「資料の調べ方」を考え、平均によって資料を整理したり、表やグラフに表してその特徴を知ったり、比べたりすることを学習するものである。あわせて、既習事項の発展として、度数分布表と柱状グラフによる資料整理の方法を学習し、「以上」「以下」「未満」などの言葉についての学習もおこなう。次に学習の系統性については、以下のようになっている。
5学年 | 6学年 | 中学 |
【単位あたりの大きさ】 ・平均の意味とその求め方 ・ならす平均 ・測定の平均 |
【資料の調べ方】 ・代表値としての平均 ・数の区間の表し方 ・ちらばりを表す度数分布表と柱状グラフ ・のべの意味とその求め方 |
・代表値としての平均値の意味 ・相対度数分布表から、平均を求めること ・2つの量の相関関係の意味、相関図、相関表の味方 ・標本調査による平均値、比率の推定 |
本題材で学習する「平均」を用いることの意味については、2つのことが考えられる。一方は、いくつかの数量があるとき、それらの差を相殺して「ならしてどれだけ」とする考え方である。他方は資料がある範囲にわたって分布している集団について、その代表として平均値をとらえる統計的な考え方である。
前者の考え方については、5学年第9題材で学習済みである。そこで、後者の考え方について学習するのが本題材のねらいとなる。統計的な考え方は、平均値の大小が、集団全体のレベルのおおよその様子を見当づけることができるという平均の代表的な性格や、平均値を起点として、資料の分布を考察することによって、集団全体の特徴を把握する手がかりになること。さらに、何の平均を求めたかをふりかえらせることによって、部分から全体を推測する標本として平均を見る考え方などを含むものであると考える。
また、統計的処理や考察の上で用いられる、「以上」「未満」などの用語の意味を具体的にとらえさせ、資料を度数分布表に整理することを扱う。度数分布を表す表やグラフについては、前学年までに目的に応じて、資料を集めたり、それを分類したり、表やグラフなどを書いたり読みとったりすることなどをある程度学習してきている。この題材では、集団の様子を考察するのに度数分布表や柱状グラフを用いることを指導する。
次にそれぞれの資料の整理方法について考えると、既習の棒グラフは、時間や回数などが同一条件であるものを表すのに適しており、その長さが量を表していることになるが、柱状グラフは、ある範囲で区切ることによって集団の傾向が見られるようになり、その面積が頻度を表している。一方、表に表す方法は、ある範囲の中に入る人数を数値化することによって集団の傾向を見ることができる。また数直線で表す方法は、個人の位置や全体の散らばり具合がよくわかるという特性を持っている。
今回の学習を進めるに当たって、本学級の児童の実態として、資料を表やグラフに書き表す力がどのくらいあるのかを調査した。その結果、資料を整理するためには、表やグラフを使えばいいことをほとんどの児童が理解している。しかし、作業として表やグラフを作る際にどのようにかいたらよいのかわからない児童がいた。このことから、表の枠をかいたり、グラフの縦軸や横軸を考えたりすることが難しいと感じている児童がいると考えられる。また、グラフに関しては多くの児童がかけたが、グラフの特性を考えて、折れ線グラフがいいのか棒グラフがいいのかなどを判断することは難しいことがわかった。
上記の現状をふまえて、児童一人ひとりが今回の学習を通して、資料を自分なりに整理し、表やグラフにわかりやすくまとめ、その特徴を調べたり比べたりする力を養いたいと考えている。そのために、まず問題を子どもが興味を持続するものにしようと考えた。具体的には、今回の学習では、題材全体を「正確さ比べゲーム」の結果を利用して学習を進めていくことにした。これは、日常的に使っている「時間(秒)」「距離(m)」「速度(m/秒)」を特別な道具にたよらず、感覚的に表すというゲームである。こうした単位の感覚は、日常の生活にも役立つものであると考えて設定したのである。また、ゲームの結果を学習に生かすという形にすることによって、児童の興味を持続させ、積極的な取り組みが見られるものと考えた。
また、これまでに既習事項を充分に生かしたり、学習のパターン化をはかったりすることによって、子ども一人ひとりに学習の見通しを持たせるようにしてきているが、今回もこの流れを踏襲して学習を進めていこうと考えている。その上で、児童が課題の解決に集中できるように、表、グラフ、数直線の枠をかいた用紙を用意し、作業に手間のかかりそうな児童に与え、本時の練り上げの話し合いもこの3つの方法でわかることを話し合わせることにした。これは、この3つの方法が児童の思考からでてくる考え方の中でもっとも代表的な考え方であり、児童にとってわかりやすいであろうと予想されることと、第二次につながる考え方でもあるということで採り上げることにした。
さらに評価については、見通しを持ち個人で自力解決する場面、小集団での練り上げをする場面、1時間を振り返ってわかったことや感想をまとめる場面を確保することによって、教師の評価、児童相互の評価、自己評価ができるようにしていきたい。
はじめにクラスを2チームに分けて3つの競技を行う。競技(1)は、ストップウォッチを使って、10秒経ったと思ったところで止めるというゲームである。競技(2)は、足のつま先からかかとまでの間を使って1mを計るというゲームである。競技(3)は、1分間でどのくらいの距離を歩けるかを測るゲームである。これらの競技はいずれも題材の計画には含まず、時間外で行っていくことにした。
(1)問題解決のための見通しを一人ひとりに持たせ、問題解決的な学習の学び方を学ばせる
(2)課題づくりを工夫する
(3)評価を工夫する
・身のまわりの事象を平均やちらばりの観点でとらえて集団の傾向や特徴をすすんで考察しようとする。
・資料のちらばりを表した度数分布表や柱状グラフを見て、資料の特徴を筋道立てて説明することができる。
・資料のちらばりを度数分布表や柱状グラフに表したり、それを読んだりすることができる。
・代表値としての平均の意味や、度数分布表や柱状グラフの書き方、読み方がわかる。
題材の構成 | 時数 | 指導内容 | 学習活動 | 評価の重点 | |||
関 | 考 | 表 | 知 | ||||
1.平均とちらばり (4時間) |
1 | ☆資料を平均で比べる ○正確さを比べるためにはどんな調べ方で比べたらよいか考えよう |
・代表値としての平均で考える ・最大値・最小値で考える →平均が同じならば二つのチームの特徴は同じと見てよいのだろうか? |
◎ | ◎ | ◎ | ○ |
1 本時 |
☆資料を比べる方法を考える ○どちらのチームがより正確だったか、平均以外の調べ方で比べよう(本時) |
・表やグラフに表して考える ・数直線に並べて考える ・平均や10秒に近い人に注目して考える →それぞれの調べ方でどちらがより正確だったか考えよう |
◎ | ◎ | ○ | ○ | |
1 | ☆資料の比べ方の特徴を考える ○資料の調べ方のよさを考えよう |
・表に表したとき数字なのでどこに何人いるかわかる ・グラフに表したときどのあたりにどのくらいいるか見た目でわかる ・数直線に表した一人ひとりの散らばり具合がわかる ※区切る間隔やグラフの種類についても目を向けられると良い ※平均で調べたこととの比較も必要 →いろいろな調べ方を経験した上で、それぞれの調べ方についてそのよさを考えよう |
○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
1 | ☆資料を整理するための用語について ○「以上」「以下」「未満」について知る |
→資料について、以上、以下、未満の用語を使って整理しよう | ○ | ○ | ◎ | ◎ | |
2.ちらばりを表す表とグラフ (3時間) |
1 | ☆資料を表で整理する ○ちらばりを見るために表に表して考えよう |
→前次の学習から、資料を表で表すやり方を考えよう ・記録ごとにそのまま表にする ・ある程度の範囲を区切って表にする(度数分布表) ※以上、以下、未満の応用 |
◎ | ○ | ○ | ◎ |
1 | ☆資料をグラフで整理する ○ちらばりを見るためにグラフに表して考えよう |
→前次の学習から、資料をグラフで表すやり方を考えよう ・棒グラフ ・柱状グラフ |
◎ | ○ | ○ | ◎ | |
1 | ☆練習 ○前時までの学習について練習しよう |
→前時までに学習したことを使って、新しい資料についてそのちらばりを見てみよう(表化、グラフ化) | ○ | ◎ | ◎ | ◎ | |
3.のべ (3時間) |
1 | ☆のべについて ○のべを使って資料を整理しよう |
→「のべ」について知り、資料を「のべ」を使って整理しよう | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
1 | ☆大きさの範囲について ○大きさの範囲を考えながら、資料を整理しよう |
→資料を整理するときにどのくらいの幅の範囲にしたらよいのか、考えてみよう | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | |
1 | ☆練習 ○前時までの学習について練習しよう |
→今までに習ったことを使って、資料を自分なりに整理し、発表してみよう | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
前時の学習 | ・競技(1)の結果について、どちらがより正確なのか比べる方法を考える ・考えられた方法の中から、「平均」を使って正確さを比べる |
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学習活動 | 主な発問と 予想される児童の反応 |
支援と指導上の留意点 | 評価の観点と方法 | ||||
つ か む 2' |
1.前時の学習を想起する 2.課題を把握する ○前時の学習で、競技(1)について平均で比べてみたが、その他に特徴を調べるためにはどうしたらよいか考えよう ○前時の学習から本時の課題をたてる |
・競技の結果を提示する ・ノートに記入させる |
・前時の活動を思い出し、本時の学習に意欲的に取り組もうとしているか〈関〉 (観察による) |
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見 通 す 5' |
どちらのチームがより正確だったか、平均以外の調べ方で比べよう | ||||||
3.解決の見通しを持つ ○資料の特徴を調べるためには、どのような方法があるでしょうか a:表に表す b:グラフに表す c:並べ替える→数直線 d:10に近い人の数を調べる e:平均に近い人数を調べる |
・ノートに記入させる ・既習の学習の中で資料を整理するために使えそうな方法はないか考えさせる ・とまどっている児童には、前時の学習を想起させる |
・既習事項から課題解決について見通しをもてたか〈関・考〉 (ノート・観察による) A:見通しを持ち、自分なりの方法を工夫して調べようとしている B:試行錯誤しながらも、自分なりの方法で調べようとしている C:教師の支援により、調べようとしている |
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自 力 解 決 13' |
4.自力解決をする ○自分が考えた方法で課題を解決しよう |
・自分なりの方法で解決させる | ・自分の考えた方法で問題解決に取り組めたか〈考〉 (ノート・観察による) |
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a〜eの思考の流れと教師の支援
※Aチームのデータについてできたら、Bチームについてもやらせる |
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5.自力解決の結果を発表する ○自分の見通しとそのやり方をした理由を発表しよう (代表者による発表) |
・机間指導の中で発表ボードを配って発表する児童を決めておく(a,b,cについては、あらかじめ書いたものを用意する) ・これからの練り上げの材料として注目させる |
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練 り 上 げ る 10' |
6.班ごとにお互いの考えを深める ○代表の児童が発表した表やグラフを見て、どちらが正確だったか考えよう(班ごとに発表) ●数直線では、Bの方が10の周りに多く集まっているので、Bの方が正確だと思います。 ●表では、10秒台にAチームは5人、Bチームは10人なのでBの方が正確だと思います。 ●グラフでは、Bの方が9秒台や10秒台に集まっているのでBの方が正確だと思います。 |
・自分のやったやり方ではなく、代表者が発表したものについて話し合わせる ・班ごとに発表ボードを配布し、話し合ったことを書かせる |
・どちらのチームが正確なのか、根拠を明らかにして判断しているか〈考〉 (観察・発表・ノートによる) A:ちらばりの範囲や人数の多いところに着目して判断している B:人数の多いところに着目して判断している C:教師の支援や友達の話から、根拠を探そうとしている |
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ま と め る 5' |
7.本時の学習を振り返り、まとめをする ○今日のまとめをノートに書きましょう ●わかったこと ●感想 ●次時にやりたいこと を書く ○自分のまとめを発表しましょう |
・自分なりにノートにまとめさせ、次時の意欲づけをする ・机間指導の中で発表者を決めておく |
・本時の課題解決のための考え方、新しくわかったこと、これからの発展についてまとめられたか〈関・表・知〉 (ノート・自己評価による) |
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次時の学習 | ・いろいろな調べ方に挑戦し、それぞれのやり方のよさを考える |
男子18名、女子18名、合計36名
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