5−v ボブ・スキンタイト3(1996年)
さてさて、私が何のために漫画を描いてるかって話だっけ。
それはもう「生活のため」(笑)ってのは半分当たってるが半分間違い、それはあくまで締め切りを守る目的に過ぎない。
そもそも幼少のみぎり、生活のために描いてたわけではない。好きでたまらないから描いてたわけだ。無論、苦しかったり退屈だったりする日々の暮らしから一時なりとも逃避したいという切なる願いはあったわけで、そういう意味では「生活のため」いや「生きるため」ではあった。
何年か前、ある編集長が「人は『成功した人生を体験したくて』漫画を読むんです」とおっしゃっていたが、そのとおりだと思う。成功といっても、事業に成功して大金持ちになる成功、好きな人を恋人にする成功、嫌いな奴を殴り飛ばす成功、まあその他色々あると思うが、いずれにしても実生活で恵まれぬ思いや憂さを、せめてフィクションの中だけでも晴らして思い通りの選択肢を選びたいと思っていることは間違いない。
んで、これ。
描く側にも当てはまるのではないか。
5−w ボブ(1997年)
少なくとも山本も、そう願っているようである。
子供が漫画を描く、その原点に現実逃避や代償行為があるわけで、それはオトナになりいい歳のおっさんになった現在でも消えてはいない。
私は「成功した人生」を描きたいのである。
えーっ???
きれいな姐さんをひどい目に合わせてどこが成功した人生なのおおお??
という声が聞こえてきそうだが、最初から成功していては物語として成立しないのである。
1ページ目。
「ふたりは幸せに暮らしましたとさ」
終わってしまう。
漫画というのは終着点に向かって進んでいく主人公にいかに障害物を設けるかが見せ所であり(いや、一見なにも起こらない「癒し系」とか例外はあるだろうが、ここはあくまで原則論)私はそれをやっているのだ。
どおせひどい目に合うなら美しい方がいい。
むさいおっさんが苦しむよりも、美しい乙女(いや既婚者でも歓迎)が苦しんでいた方が、見る方としても燃えるであろう(「萌える」という字は「定義」がいろいろあるようなので、あえて当てない。いや学問的な話じゃなくて「これは『萌え』じゃない」とかそういう、である)(笑)。
幸せになって欲しいと願うであろう。
道に倒れて誰かの名を♪呼び続けているおっさんと乙女とどっちをあなたは助けたいか。(え?とりあえずどちらも近づかない?ううむ、それはそれで賢い洗濯じゃぶじゃぶじゃぶ)
さて1995年のピークというかコーナーを曲がって再び、ごつくてかわいくない姐さんから少しは可愛げのある(たかが知れてるか?)タイプに復帰し始めた山本であった。とはいえ、昔のそれとは同じではありえない。人は同じところを回るように見えて、実際は螺旋を描いてたりするものである。
1993年のキャラと1998年のキャラを見比べてみると、それは歴然としていたりする。
5−& ボブ・コート(1993年)
5−x ボブ色々(1998年)
この辺はアモウのラフ試行錯誤、1−aと同じ日に描いたようだ。
ちょっと不思議に思ったこと(2003 05 19)
最近映画『シカゴ』が上映され、そのCMをあちこちで見かける。
ヒロインの一人をかのキャサリン・ゼタ・ジョーンズが演じており、ご存知の通りのきつめの美女が見事にボブで肌もあらわに舞い踊る。本来ならばボブ馬鹿の私山本は大喜びして映画館に駆けつけなくてはいけないはず・・・であるが、これがなぜか不思議なことに、全然フラグが立たないのである。
なぜか?
これはあくまで個人的な趣味の問題であるからジョーンズのファンの方がおいでだったらお許しいただきたいのだが、私的には「好きでない」。
なんと言うか、おそらく彼女の内面が、である。
別に超能力者ではないのだから、そうそう他人の心の底が覗けるわけでもないのだが、この歳まで生きてくるとある程度はそういうものにセンサーが働く。
なんと言うか、彼女は「嫌な歳のとり方」をしたように思う。
『マスク・オブ・ゾロ』やショーン・コネリーと競演した泥棒モノの頃まではまだ良かったのだが、その後の彼女は、段々となんだか嫌な顔つきになっていった。高慢さというか傲慢さというか(そういう女優を演じた彼女の作品もあったように思うがその一本は見ていない)。無論ハリウッド・スターに高邁な人格などというものを望んで映画を見るわけではないし、映画を見ている間だけこちらを「騙して」くれれば十分なのであるが、それを越えて、こちらが夢を見る限界を超えて彼女の「嫌な内面」が顔からあふれ出してしまい、こちらが「醒めて」しまうのである。
男も女も、美しいに越したことはないが、最終的には「人格」である。
ボブな美女ならなんでもいい、というわけではないらしいと、この一件で改めて自分の嗜好に気が付いた私であった。
ご無沙汰でした(汗) (2005 03 19)
この上の記事をアップしてから二年近くの歳月が流れました。
放置プレイをお許しください。
その後、雑誌を移りつつ続いている『弾(アモウ)』の連載(「ヤングペンギン」誌>「ペンギンクラブ」誌>「ペンギンクラブ山賊版」誌・2005年春現在)でヒロインのアモウこと天羽弾(あもうはずみ)は、ボブカットを続けてきた(時にウィッグでロングヘア)。
2005年2月売りの号で、和服姿になった時、ウィッグを取るとショートのオールバックになっていたが、自分で描いてけっこう気に入って担当さんのウケも良かった。いっそこのままヘアスタイル変更イメージチェンジとかも思ったが、昔のラフとか見直してやっぱりアモウはボブがいい、と再確認。
5−Y アモウ(2004年ごろのラフ)
途中でヒロインのヘアスタイルを変えた連載に『西遊少女隊』がある。
一つの連載を長く続けていると、同じスタイルに飽きてきて、つい目移りしたりもするのだが、『Mr.ボーイ』の主人公ボーイが潜入捜査でどんな変装・髪型をしても、必ずいつものショートカットに戻ってくるように、アモウはボブに戻らせようと思う(この先どこまで続くのかわからないが)♪
5−Z/1 ボブ・スキンタイト4(1998 02 20)
などと、とりとめもない事を書いてきましたが、えー要するに私はボブ乙女が好き。ボブ乙女が描きたい。
時たま心移りもしますが、離れられない腐れ縁とでも申しましょうか、山本貴嗣のボブ極め道(そんな大層なもんじゃない)はこの先も続くと思います。
読者の皆様にお引き合わせしたいキャラが何人かいますので、どうかその機会が得られますように。ではでは〜〜♪
5−Z/2 ボブ・ホットパンツ(2003 03 17)