(C)インターネットランド>中学校>1年生>国語>書くことの学習>作文指導



「書くことの学習2」(光村2年)は黒板を開放してとにかく書かせる



長谷川博之(JHS☆埼玉)

「一文を正しく書く」授業では,生徒に黒板を開放してとにかく書かせる。生徒は教師が説明せずとも,板書された級友の解を参考にして自らの考えを修正していける。板書された解のどこが良く,どこが悪いか。自分たちで探し出すことを楽しみながら力がつく。


発問・作業指示・個別評定のサイクルで授業を組み立てると生徒に黒板を使わせる機会を創出しやすい
板書し、視写させた。

(1) 問題が難しくて,全部できなかった。

 半分以上が書き終えた時点で二度斉読させた。つづいて板書した。

A 全くできなかった     B できないものもあった

発問1 (1)は,A・Bどちらですか。

ノートに書かせ挙手させた。Aが22名、Bが16名であった。

説明1 このように、たった一文なのに読み手の解釈が分かれてしまうのは、文に曖昧さがあるからです。正しく伝わる文に書き直しましょう。

指示1 「全くできなかった」となるように書き直しなさい。

10人が鉛筆を置いた時点でノートを持ってくるよう指示した。
「わかりました」「なるほど」と言いながら丸をつけた。続々と持ってきた。

指示2 指名なしです。書きたい人は出てきて書きなさい。

7名がさっと出た。彼らが板書している間に,ゆっくりな生徒も書き終わる。
自分の解答の最後には名前を書かせる。「これは自分の解だ」と表明させるのである。これは教師が評定するする際にも役立つ。

ア 問題が難しくて、すべてできなかった。(A男)
イ 問題が難しくて、ぜんぜんできなかった。(B男)
ウ 問題が難しくて、一つもできなかった。(C男)
エ 問題が難しくて、一問もできなかった。(D子)
オ 問題が難しくて、全くできなかった。(E男)
カ 問題が難しくて、全部はできなかった。(F子)
キ 問題が全部難しくて、できなかった。(G男)

自分の作った文をテンポ良く読ませた。そして言った。

指示3 「これは正しく伝わらないぞ」というものを選んで記号を書きなさい。

「まだ決めていない人?」「決断!」と迫り,全員に書かせた。
アから順に挙手させた。ア・イ・カ・キにほとんどの生徒の手が挙がった。
それぞれ,「おかしな点を指摘しなさい」と指示して発表させた。
テンポ良く進め次の指示を出した。

指示4 「できないものもあった」となるように書き直しなさい。

2回目の作業のためスムーズに進んだ。同じ流れで黒板に挑ませた。

ア 問題が難しくて、できないものもあった。(H子)
イ 問題が難しくて、できなかった。(J男)
ウ 問題が難しくて、全部はできなかった。(K男)
エ 問題が難しくて、できないものがあった。(L男)
オ 問題が難しくて、何問かできなかった。(M子)    他2名

書かせて挙手させた。イのみに全員が(書いたJ男も)手を挙げた。
J男が出て来て間違っている部分を修正した。新たに板書し視写させた。

(2) 金額が足りなかったので、店員は慌てて出ていった客を呼び止めた。
    A 店員だ  B 客だ

「『慌てた』のはA、Bどちらですか」と問い,「Aだと思う人? Bだと思う人?」と訊いた。Aが10名,Bが28名であった。

指示5 慌てたのが『店員』となるように書き直しなさい。

先と同様に進め指名なしで板書させた。次のようになった。
なお,「金額が足りないので」をそのまま使う場合は省略させた。

ア 出て行った客を慌てて店員が呼び止めた。(A男)
イ 店員が慌てて出ていって客を呼び止めた。(O男)
ウ 店員は慌てて出ていって客を呼び止めた。(B男)
エ 慌てて店員は出ていった客を呼び止めた。(P子)
オ 店員は出ていった客を慌てて呼び止めた。(Q男)
カ 金額が足りなかった客を、店員が慌てて呼び止めた。(R子)
キ 店員は慌てて出ていった。そして客を呼び止めた。(A男)   他2名

おかしいものに挙手させた。「イ・ウ・キは出て行ったのが店員となってしまうからおかしい」との意見が出た。オに3名が挙手した。どこがおかしいのかを指摘させたところ,ふたりは勘違い,ひとりは「なんとなくです」ということだった。私は正しい文であると告げた。
カにひっかかった生徒が5名いた。「日本語としておかしい」という意見だった。周りからは「でも,意味は通じる」という声が上がった。「慌てていたのは店員だとわかるからよい」という意見に収束していった。

指示6 「慌てたのが『客』となるように書き直しなさい。

ア 店員は、慌てて出ていった客を呼び止めた。(Q男)
イ 店員が、慌てて出ていった客を呼び止めた。(S男)
ウ 慌てて出ていった客を店員が呼び止めた。(G男)
エ 店員は慌てて、出ていった客を呼び止めた。(T男)
オ 慌てて出ていった客は、店員に呼び止められた。(N子)

おかしいものの記号を書かせ,挙手させた。エに全員の手が挙がった。
T男が照れながら前に出て,読点の位置を修正した。

この授業で,私は読点・語順の入れ替え・受動態についてを簡単に説明しただけだった。あとは生徒が意見を出し合い修正していった。
期末考査で次の問題を出題した。「読点を打ち,『慌てたのが客だ』となるよう書き換えよ」「語順を換え,『慌てたのが店員だ』となるよう書き換えよ」。
正答率は9割を超えていた。
生徒達は,友人の解を検討する活動を通して自らの思考が促され,教師の説明がなくとも力をつけていくのである。


この授業の発展段階として,生徒の作文や日記帳から「曖昧な文」「誤文」を収集し,「誤文例集」を作成して検討させる授業を考えている。実践したら,報告する。


TOPページTOSS中学インターネットランドご意見・ご感想

Copyright (C) 2004 TOSS-JHS. All Rights Reserved.
TOSS(登録商標第4324345号)、インターネットランド(登録商標4468327号)
このサイト及びすべての登録コンテンツは著作権フリーではありません