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「かけがえのない地球」(教出1年)を向山型説明文指導で授業する



長谷川博之(トークライン中学秩父JEサークル)

問いは明確であるが、それに正対する答えがはっきりとは示されていない文章がある。
その種の文章を読解するには、向山型説明文指導と細部の読み取りとを組み合わせることが一つの効果的な方法である。難解な部分を細かな発問で理解させた後に答えを自作させるのである。


これは平成14年度の実践である。指導は以下のステップで行なう。

(1)本文の大枠(文章構成)をとらえる
(2)細部を検討する
(3)主張を読み取る


(1)本文の大枠(文章構成)をとらえる


【第一時】
いつものように題名の横に丸を10個書かせ、段落番号を記入させる。その後追い読み・個人読み・全体丸読みと変化のある音読指導を繰り返す。

【第二時】
音読させ、内容の読解に入る。

発問1 この文章全体を貫く大きな問いは何段落にありますか。(3段落)
   2 問いの一文はどれですか。(それは、人類が〜問題です。)

指示1 問いの一文から問いだけを抜き出しなさい。(人類が〜いいのだろうか)

確認して赤で囲ませる。

発問3 問いに対する答えの段落は何段落ですか。(15段落)
  4  答えの一文はどれですか。(この財産を、〜問われているのです。)

生徒の意見は以下のように分かれた。

ア 13段落「今までより……」
イ 13段落「地球に住む……」
ウ 15段落「したがって……」
エ 15段落「この財産を……」

先行の学級で理由を書かせて討論を組んだのだが、うまく流れなかった。決定打がないのだ。
この問題をめぐり、サークルでも13段落か15段落かで議論が起きた。
そこで、次の学級では組み立てを改善し、この時点では正解を追求しないこととした。この後一段落一問ずつ出題する問題を解かせながら、生徒自身がたどり着くように意図した。

(2)細部を検討する


【第三時】
音読後、次のように問う。

発問1 1段落ではあるものとあるものが比べられています。何と何ですか。(地球の歴史と人類の歴史)

これは無駄であった。最初の学級で行ったが、次からは削った。
起承束結に分ける指導をするならば必要かもしれないが。

発問2 2段落第一文に「人類の活動」とあります。線を引きなさい。これは具体的に何を指しているのです    か。4字で抜き出しなさい。(自然破壊)

本文に線を引かせながら発問する。隣同士で確認させもする。

発問3 3段落第一文に「こんなこと」とあります。どんなことですか。
       (人類の活動が、地球全体に大きな影響を与えるようになったこと)

文末は必ず「こと」とする。1年間指導し続けてようやくほぼ全員ができるようになった。だが、まだ注意不足で間違う生徒が1、2人いる。

発問4 4段落第一文「三つの問題」とは何か。箇条書きしなさい。
     (@資源そのものを〜問題、A自然を資源として〜問題、B新しくつくり出した〜問題)

書き終えた生徒から持ってこさせ、「それは」や「さらに」等必要のない語句まで含めていないかチェックする。

発問5 第一の問題について書かれているのは何段落から何段落までですか。(5・6)

黒板には段落番号を書いたカードを貼っている。
文章構成をひとめで表したり、下にキーワードを書いたりと、かなり役立つ。

発問6 資源の例として何が挙げられていますか。(化石燃料・森林資源)

カードDの下に「化石燃料」、Eの下に「森林資源」と書く。以下同様。

発問7 第二の問題について書かれているのは7段落から何段落までですか。(10)
発問8 副産物として、具体的に何が挙げられていますか。(二酸化炭素・熱・原子力発電所から出るゴミ)

三つ目はただの「ゴミ」では不正解である。

発問9 第三の問題は11段落から何段落までですか。(12)

生徒の意見は12と13に分かれる。次の発問で確認する。

発問10 新製品として、具体的に何が挙げられていますか。(フロン・PCB)

フロンは11段落、PCBは12段落で論じられている。13段落には新製品の例はない。

【第四時】

発問1 三つの問題をまとめている段落は何段落ですか。(13)

これは28人中25人が正解した。

発問2 まとめの一文はどれですか。線を引きなさい。(今までより、〜きました。)

引けない生徒が4名いた。
全体に対して、「まとめの文では、三つの問題すべてについて述べられていますよ」と告げたところ、彼らもうなづきながら引き始めた。

この後、第二時で出た生徒の意見を再度板書する。

@13段落「今までより……」
A13段落「地球に住む……」
B15段落「したがって……」
C15段落「この財産を……」

発問4 もう一度問います。3段落の問いに対する答えの段落は何段落ですか。
指示2 @〜Cで、「これは違う」というものを一つ選んで書きなさい。

このようにして二つに絞る。AとCが残った。

(3)主張を読み取る


3段落の問いは、

人類が地球という財産を勝手に利用したいだけ利用しようとする時代が、いつまでも続いていていいのだろうか。

である。
直接の答えは、「続いていてはならない」とでもなろうか。だが、明確な答えは本文にはない。
そこで、答えを生徒に自作させることになる。そのためには材料となる文が必要である。
それは、

地球に住むわたしたち一人一人が考えるべき問題なのです。(13段落)

この財産を、人類のみで山分けして都合のいいように使い尽くしてしまうのか、それとも人類のみならず、地球全体の資産として未来のために生かせるのか、このことが今日、わたしたちに問われているのです。                                                         (15段落)

のどちらか。


生徒には次のように問うた。

発問5 「〜すべきだ」「〜しなければならない」というのが主張です。筆者の主張としてふさわしいのはA    とCどちらなのでしょうか。

書かせて挙手させた。Aが4人、Cが24人であった。

前者の文は、3段落の「わたしたちが考えなければならない難しい問題があります」の繰り返しであろう。主張としては不適である。
それに対し、後者は、「か」、「か」と問いかけの形こそとっているものの、そこから筆者の主張を読み取ることはたやすい。その主張とは、言うまでもなく、「地球を、人類のみならず、地球全体の資産として未来のために生かすべきだ」である。
よって、15段落最終文を材料にして答えの文を作る。

指示3 Cの一文を「人類は」で始まる文に書き直しなさい。

解答例

人類は、この地球を、自分達だけで使い尽くしてしまうのではなく、地球上の生物全体の資産として未来のために生かすべきである。

これが3段落の問いに対する答えであり、また、本文全体の要約でもある。
授業では、書き終えた生徒から持ってこさせ、4人に板書させた。
そして個別に評定した。

@人類は、この財産を人類のみで山分けしてはならない。
A人類は、地球全体の資産として未来のために生かすべきである。
B人類は、自然や動物を守らなければならない。
C人類は、地球を、地球全体の資産として未来のために生かさなければならない。

@は「未来に生かす」という視点が欠けているので30点、Aを60点、Bは一瞬戸惑ったが、指示に従っていないので10点とした。そして、なぜAは減点されたのかを全体に問うた。
「『地球の財産を』が抜けているから」「『地球を』と書いていないから」という意見が出た。
うなづきながらCに100点と記した。
以上で授業を終えた。

【考察】
次々と生まれる課題を改善しながら今日、4学級すべての授業を終えた。同じ教材に何度も挑戦できるのが中学教師の特権である。同じ部分でも、試行錯誤しつつ二度、三度と繰り返すにつれ、少しずつ生徒の動きが活発になってゆく。
今回は、最後に自作する答えの文がそのまま本文の要約文にもなるため、要約指導を行わなかった。
(2)の「細部を検討する」は向山型にはない。我流である。ゆえに第一時に比べ生徒の動きが鈍くなった。
だが、無駄を削っていくにつれて生徒は乗ってきた。

このような「読み方」を日常生活ではしない。不自然な「読み方」である。
だが,日常しないからこそ授業でさせる価値がある。
一目見て文章の構造を把握し論旨を理解する力を高めるためには,問いと答えの対応,細部の検討というプロセスが必要なのである。そう信じて実践している。


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