「劣化した酒の原因と状況」
麓井吟醸 「輝ら星の如く」 生原酒、 純米吟醸 「正雪 吟ぎんが」 生酒 、の二本が劣化して飲める状況にありませんでした。その原因を探ってみます。
1.「掲示板から」、その原因と思われる事
7月26日のメールマガジンを読んで 投稿者:酒屋 投稿日: 7月28日(月)09時20分28秒
7月26日のメールマガジンを読んで感想、何時も適切に良く吟醸酒を評価してくださり
ありがとうございます。楽しく読ませていただいております。ただ今回のメールにで
麓井の「きら星の如く」17〜18%生原酒、神澤川酒造の正雪「吟ぎんが」16〜17%
生酒を飲んだ感想ですが、少し白濁し香りも変との事ですと、その商品は火落菌(乳酸
菌の一種)に冒されている可能性が大です。生酒は十分気をつけて瓶詰していても火落
菌は入り込みます、アルコール分が20%にも有りますと抑えることも出来ますが、16%
程度では繁殖いたします。そのため低温での保管を酒屋さんに頼んでいるのでしょうが
輸送途中での温度管理も問題になり、大変厄介です、その点十部に注意して生酒はお買
いになられることをお勧めします。大手ビール会社でも回収をしていることもあります。
只、一切火を入れない(65度程度での熱殺菌)をしていませんと、酒本来が持っている
芳香成分も一緒に酒に入っておりますので、美味しさを楽しむことが出来ます。
65度程度の殺菌でも芳香成分はかなり空中に蒸発したり変化したりいたします。難しい
ものです。安定しているのは火入れした製品です。そりでも6ヶ月もしますと変化してし
まいます。保存状態が大変難しいわけです。信頼される酒屋さんからお買い求めされる
のが大事と思います。長くなりまして失礼します。今後とも楽しいメールマガジンお願
いします。
2.麓井酒造株式会社 専務取締役 佐藤市郎様 からのお問い合わせメール全文
吟醸 様 平成15年7月30日 拝啓 盛夏の候、吟醸様におかれましては益々 ご健勝のことと存じ上げます。平素は麓井のお 酒をご愛飲頂き真に有難うございます。 さて、本日偶然吟醸様のHPを発見し、拝見さ せて頂きました。7月26日にお飲み頂いた、弊 社の『麓井 輝ら星の如く 吟醸生原酒』に関 しまして、ご満足を頂けなかったこと、弊社と しても真に申し訳なく、残念に思っております。 今回吟醸様にご不快な思いを抱かせる結果とな ったことをお詫び申し上げます なお、今回の件については、よりおいしいお酒 を造り、消費者の皆様に楽しんで頂くことを社 是とする弊社と致しまして、今回の件を重大に 受け止めております。 原因につきましては、貴HPを拝見した限りで は、まったく火入れをしていない生酒であるこ と、「白濁、オリ」といった記述から「火落ち」 が疑われるところではございますが、なにぶん 現物を調査してみなければはっきりしたことが 申し上げられません。 今後、弊社製品の品質管理体制向上の一助とす るためにも、お手元に現物があれば、是非お送 り頂き原因を調べさせて頂きたく存じます。 また、下記の件についてもお教え頂きたく存じ ます。 ご多忙中恐縮ではございますが、何卒ご協力を 賜りたくよろしくお願い申し上げます。 最後になりましたが、吟醸様におかれましては 今後とも麓井のお酒を変わらずご愛飲賜りたく、 よろしくお願い申し上げます。 敬具 記 お問い合わせ事項 1.当該製品裏ラベルに記載の「製造年月」 をお教え下さいませ。 2.当該製品をお買い求めになった日時と酒 販店名をお教え下さいませ。 3.お手元に当該製品をまだお持ちでしょう か。お持ちでいらっしゃいましたら、着 払いにて弊社までお送り頂ければ幸いで す。 4.差し支えなければ代品をお送りし、改め てお試し頂きたく存じますので、ご連絡 先をお教えくださいませ。(既に同一製 品はすべて出荷済みのため、同一価格帯 の商品とさせて頂きます。予めご了承下 さい。) 以上 |
このメールについて、私からの返事、全文 7.30.
麓井酒造株式会社 専務取締役 佐藤市郎様 ご丁寧なメール申し訳ございません。 貴蔵のお酒は何度か飲んでいますので 氏素性は大体判っていると、心得ています。 今回の原因は酒屋さんの全面的な管理ミスです。 今日、この酒屋さんに出向いて、残りのお酒を 持参して、見て貰いましたが、全面的に悪いので 勘弁してくれ、との事でした。 原因は問屋さんから入荷した時点では 冷蔵庫に入れてませんでした。 エアコンの効いた室内ですが、そこに放置されていたものです。 販売される、何日か前に店頭冷蔵庫が空いたので 移し替えて、販売したものです。 販売店では、お酒の賞味期限や生ものだという認識が まだまだ足りなかったようです。 このお酒と同時に購入した「正雪」も全く同じ状態でした。 と言う事で、今回の件は私のホームページに 「酒販店のミス」と言う事で一言、追記しておかなければ ならないと思っています。 製造年月日は03.02.または3月だったと思います。 購入日は7月22日、呑んだのが26日 現物は酒屋さんに持参しましたので、手元にはありません。 酒屋さんの名前は今回は伏せておきますが、次回もこの様な事があれば 私のホームページで公表し、今後のお付き合いは無くなるでしょう。 他の酒屋さんでも貴蔵のお酒は買えますから。 代品のお送りは固くお断りします。 最後になりましたが、貴蔵の益々のご発展を祈ります。 |
3.株式会社 神沢川酒造場 望月 正隆様 からのお問い合わせメール全文
ごぶさたしております。 平素は清酒正雪に多大なるご愛顧を頂き誠にありがとうございます。 この度は純米吟醸吟ぎんがが白濁すると言う事態をおこしました事誠に申し訳ござ いませんでした。 吟ぎんがは岩手県の比較的新しい酒造好適米で、平成5年の凶作より激減した美山 錦に代わる好適米として開発されたタンパク含有量等の少ない端麗な仕上がりを望め る米です。 当蔵では気候風土、また地形的な問題から近隣に田圃が無く、吟ぎんがを杜氏、蔵 人が生産している事もあって発表年度より吟ぎんがを使用した純米吟醸を醸造してま いりました。 杜氏自ら生産した原料米ですから、仕込みにあたっては大吟醸用の750kgジャケッ トタンクと1000kgサーマルタンクを使用して仕込11号(総米750kg)、仕込12号(総 米1000kg)、仕込13号(総米1000kg)の三本を小川酵母(協会10号の原種株)で仕込 みました。 この三本を12月18日、24日、27日の3回で上槽して、熟成をまった後ろ過割水して1 月22日に瓶詰めしました。 このうち1.8lで1560本を生で、211本を瓶燗火入れで、10lステンレスタンクで 290本分を生で瓶詰めして全量蔵の冷蔵庫でマイナス5℃〜マイナス7℃で出荷まで保 管しました。 お手元に届いた吟ぎんがは、3月24日までに出荷された960本の生酒のうちの一本だ と思われます。 現在手元にあるぎんぎんがを点検しましたが白濁などはありませんでした。 どうしてこのような事態となったのか調査したく、誠にお手数で申し訳ございませ んが、購入酒店名をお知らせ頂けないでしょうか。 またお手元に残酒がございましたら当蔵までご返送いただけないでしょうか。 仕込みはもとより、瓶詰め・貯蔵・出荷管理につきましても、お客様にご迷惑をお 掛けしないよう、品質管理に細心の注意をはらっております。 メールでのお願いで失礼とは思いますが、当蔵と致しましては重要かつ緊急を要す る事態と考えましたので、誠に勝手で大変申し訳ございませんがご理解を頂きますよ うお願い致します。 株式会社 神沢川酒造場 望月 正隆 |
このメールについて、私からの返事、 7.30.
株式会社 神沢川酒造場 望月 正隆 様 ご丁重でしかも適切なメールありがとうございます。 この件で全く同じように、麓井酒造株式会社 専務取締役 佐藤市郎様から 同じ内容でお問い合わせのメールが今日届いています。 私の言いたい事と望月さんの聞きたい事が同じなので 佐藤様に送ったメールをコピーして送ります。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 貴蔵のお酒は何度か飲んでいますので 氏素性は大体判っていると、心得ています。 今回の原因は酒屋さんの全面的な管理ミスです。 今日、この酒屋さんに出向いて、残りのお酒を 持参して、見て貰いましたが、全面的に悪いので 勘弁してくれ、との事でした。 原因は問屋さんから入荷した時点では 冷蔵庫に入れてませんでした。 エアコンの効いた室内ですが、そこに放置されていたものです。 販売される、何日か前に店頭冷蔵庫が空いたので 移し替えて、販売したものです。 販売店では、お酒の賞味期限や生ものだという認識が まだまだ足りなかったようです。 このお酒と同時に購入した「正雪」も全く同じ状態でした。 と言う事で、今回の件は私のホームページに 「酒販店のミス」と言う事で一言、追記しておかなければ ならないと思っています。 現物は酒屋さんに持参しましたので、手元にはありません。 酒屋さんの名前は今回は伏せておきますが、次回もこの様な事があれば 私のホームページで公表し、今後のお付き合いは無くなるでしょう。 他の酒屋さんでも貴蔵のお酒は買えますから。 最後になりましたが、貴蔵の益々のご発展を祈ります。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− と言う事で、お分かりいただけたでしょうか。 今度は私が望月さんに、あやまらなければいけないのは なんの確証もないのに吟ぎんがとそれの仕込みについて 言い過ぎた事を謝ります。 「正雪」ブランドは静岡を代表するだけではなく、吟醸酒を代表する ブランドです。落差が大きかったので、つい言葉がきつくなりました。 重ねて、お詫びいたします。 話は変わりますが、「正雪・雄町」は絶品でした。美味かった。ありがとう。 |
3.考察
伝言板と二通のメールで大方の内容がご理解できたことでしょう。
1.まず、各蔵元さんの対応が早かった事です。今まででしたら考えられない事です。電話でクレームを出しても要領を得ない事が何度あった事か。この素早さと、消費者を大事にする考えが大事で、しいてはこれが良い酒へと繋がっていくと思っています。
トラブルはどんな時にも発生するものです。トラブルやクレームを怖がる事は少しもありません。それを取り除く事によって、一段階段を上がる事になるからです。処理をしなければ壁を乗り越える事は出来ません。
この教訓から、両蔵とも発展する事は間違いないでしょう。
2.原因は流通業者、ここでは酒屋さんです。メールの中で書いていますが、保管状態が出来ていません。弁解の余地がありません。
日本酒にも賞味期限がある事。日本酒は”生物”である事。このことが判っていないと、今回のような事件が起きるのです。酒屋さんの猛勉強と、蔵元からの教育がもっともっと必要でしょう。せっかくイイものを造っておきながら、消費者からクレームが来たのでは身も蓋もない事になります。
ビール業界では保冷輸送と保冷保管は今や常識です。昔は店先に瓶ビールが野積みされていたものですが、最近は教育が行き届いて、その様な店は見あたらなくなりました。
3.吟醸酒はとてもデリケートな商品です。特に生酒は保管に特段の注意が必要です。この温度管理と紫外線対策は二本柱でしょう。このことを教訓に流通業界の猛省を期待します。
このお酒2本とも酒門の会(注)の酒です。
それから、当たり前の事ですが、益々の業界の発展と我々消費者の迷う位の商品開発と品質の向上を期待します。
酒販店のポリシーは、お客様とフェイス・トウ・フェイスで、一本一本
お嫁に出す想いで丁寧に販売させて頂いております。
蔵元の思いを新鮮にお伝えする。
故にフェイス・トウ・フェイスは商いの原点でもあるのです。
そしてこれからもそうありたいと願うのです。
(酒門の会ホームページより)
4.最後になりましたが、両蔵元から「貴HP掲載商品に関するお詫びと対策について」のメールが届いております。このメールを皆様に開示して、この件については完結とします。
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(宛名及び文中の”吟醸”は本名で来ていますので、私の独断で吟醸に変更しています)