鮎と蕎麦にあれこれ言うようになると、年を取った証拠と言われますが、私はずいぶん年を取ってしまったようです。
鮎の塩焼きの仕方には、一家言お持ちの方もおいででしょうが、私の方法を述べてみたいと思います。
(実際に焼くときはかなり省略してますが・・・)


1.はじめに
   数ある魚料理のうち、焼物については、姿・味・香り総合して鮎の塩焼を第一と考えます。

2.鮎
   天然に優るものなし。養殖では肥満体で油がつきすぎている。味も天然の珪藻を食んで育った鮎と違って
   香りに乏しい。
   天然もその土地々で”おらが鮎”があって、やれ郡上だ、吉野だ、四万十だ、と色々あるがやっぱり”おらが
   鮎”で久慈川を最高とします。(一時質が落ちていましたが最近良くなってきています)

3.塩
   塩にもこだわりたい。
   精製塩ではしょっぱいだけで深みが無い。赤穂の天然塩をアク引きして使う。または粗塩を天日で
   2日乾燥させて使います。

※アク引き塩の作り方
    天然塩1キロに卵の殻3個をいれ、盃1杯の水を加えて両手の掌で揉むように混ぜ合わせる(拝み
    塩という)。コップ2杯ぐらいの水を加え、手鍋に移し火にかけてかき混ぜながら煮つめていく。卵の
    殻にアクがついて真っ黒になって浮いてくるから丁寧に取り除く。布巾でこし、鍋に移し小皿を何枚
    か沈めておきさらに煮つめる。塩の結晶が小皿の上にたまったら、和紙に取り出し天日で十分に乾
    燥させる。真夏なら15日くらい、その他なら1ヶ月くらいでアク引き塩が出来ます。
    吸物用の塩ならば煮つめるときに清酒を1割加えてから煮つめます。

4.炭
   白炭の備長炭ならば申し分ないが、黒炭でもグリル・ガスレンジで焼いた物とは味に雲泥の差がでる。
   レンジのような上火で焼いてはいけません。
   炭火を使い、強火の遠火が基本です。
   弱い火で焼くと身が縮んでしまいます。

5.下ごしらえ
   川魚は鱗をひかないのが普通だが、鱗をひいたほうが歯当りがいいし、焼き上がりもきれいになる。
   鮎の腹をしごいて尻からフンを絞り出す。特に濁りの後の鮎は、珪藻と一緒に砂も食んでいるので
   ジャリジャリします。

6.串のうちかた

串打ち 鮎の塩焼き 踊り串・うねり串・登り串等色々あるが、皿に盛りつけないならば郡上式おどり刺しがよいです。
まず、串の先を口からいれ、腹の中間から背ビレの後ろへ突き刺し、そして尾ビレをはりあげて、尻ビレの後ろから先が抜けるように刺します。


7.振り塩
   川魚は焼く直前に塩を振る。
   約30センチメートルの高さから全体にパラパラと、平均にまんべんなく振る。
   (尺塩という。こすりつけないこと)
   塩は控えめに振る。
   鮎が新鮮な場合はひれに化粧塩をする必要がない。焼き始めると自然にピンとひれがひろがる。
   しかも不思議と焦げることがありません。
   色が変わり始めたものや解凍した物はヒレが立たないし、すぐ焦げるので厚く化粧塩をします。
  
8.焼き方

塩焼き 一般に海腹川背(美味しい部分?)といわれているが、鮎は腹から焼く。(炭火のまわりに立てて焼く場合)
遠火の強火で焼くと腹ワタからアク油が竹串にでて来る。炎や煙がかぶらないようにカラ揚げ状の黄金色に焼く。
次に背を焼く。アク油が止まるとジワジワとおいしい油がでて来る。
最後に左右の側面を焼いて出来上り。
昔から魚は大名に、餅は乞食に、といわれているように頻繁にかえしてはいけません。
また、鮎はアク油がでるときはジワジワとでないで一気にどっとでる。ススで真っ黒にならないように、火の側を離れてはいけません。
塩焼き 香魚庵では特製のステンレスのカバーで蒸し焼きにします。
こうすることによって、身はふっくらと焼き上がり、表面はいいゴゲ色だが中は生焼けということがありません。


9.あしらい
   鮎にはタデ酢です。タデの辛みが鮎の香味にぴったりあい、味わいをグッと引き立ててくれます。
   タデ酢は、まずタデの葉をみじん切りにし、塩をほんのちょっと加えてすり鉢でよくする。さらにご飯を
   加えてペースト状になるまでよくすり、最後に酢を加えて出来上り。
   これをジュッというくらい熱々の鮎にかけてかぶりつきます。

10.食べ方
   歯の丈夫な方は、余計なことは考えずに頭からすべて味わい尽くすに限ります。
   まず各ヒレをはずす。そしてここで今までに培った教養や、他人の自分への評価などは一切かなぐり
   すてて、腹からでも背中からでも尻尾からでも好きなところからかぶりつく。
   どうしても他人の目が気になる方やもうちょっと上品に食べたい方は、ヒレをはずした鮎に尻尾からパ
   クリとかじり、身の半分に歯をたてて頭の方を引っ張ると、中骨がぬけて身だけが口の中に残る。
   次に中骨を折り取り同じように囓る。これを繰り返し最後に頭を食べる(頭はちょっとという方は残せばよい)
   鮎を食べるときに「内臓はちょっと」という方は、鯖か鯵にした方がよいでしょう。
   鮎は身の香りと内蔵のほろ苦い旨さに、真価があると思います。
   鮎ばかりではないですが、魚は身をほぐして食べると美味しくありません。是非かぶりついて下さい。
     

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