焚火

瀬沼孝彰

 

 

空き地にはたくさんの人々が集まっていた

沈んでいく太陽の姿は

ビルの影に隠れて見えなかった

かすかに西の空が赤くぬれていた

 

何かとても寒くなって ここにきてしまった

人の波に身を置けば

寂しさがまぎれるように思えた

でもそれはなくならなかった

背中あわせの寂しさたちが

どんどん

大きなかたまりになってふくれ上がる

 

ガソリンの匂いが漂い

風が砂ぼこりを上げていく

長い髪のブルゾンを着た少年が

背の低い少年のカバンを押し開け

笑いながら ゴミのようなものをつめている

新聞紙を持った老人を

スーツ姿の中年男が ののしりはじめる

 

(いじめは一人 一人がちがう人間だから

(なくならないと思います・・・


テレビドラマで中学生役の少女が

呟いた言葉が蘇ってくる

こんな空き地まできたのに

学校や職場と同じことを繰り返してしまう

 

途方にくれて

青白いやせ犬のように坐り込む

見ると

傍らの人もうずくまっていた

泣き顔だった

 

夕闇がこくなってきた

 

ここはとても寒いから

ちぢれた耳の夢 瞳の夢

 

(ふくれ上がったいたみと寂しさたちを

(あつめて

(焚火をすることができれば

 

 

戻る