溶けていく追っ手の死体を前に、身体を小刻みに震わせながらしゃがみ
こんでいるアリサ。絶叫し、その場を走り去ったアリサは、近くの工事
現場の物陰にその身体を縮ませていた。追っ手の恐怖に怯えながらも、
アリサは移送空間の入口と出口が別々にあり、出口は捜さなければいけ
ないことを知る。
「でも、どうやって‥‥‥?捜せないわ、捜せない。こんなに広い世界
をどうやって‥‥」
アリサの不安は募るばかりだった。バッグに何か手がかりがあるかもし
れない、と思ったとき、アリサは追っ手に襲われた際、バッグを落とし
たことに気づいた。追っ手がいるかもしれない、と一度は躊躇するアリ
サだったが、意を決して、バッグを取りに行くことにした。その時、足
音がアリサの耳に入った。
懐中電灯の明かりはモーゼルを構えるアリサを照らしていた。一瞬たじ
ろく警官だったが、物陰に隠れ、拳銃を構える、銃を捨てて出てくるよ
う呼びかける。銃を向けた相手が警察官であると知ったアリサは、モー
ゼルをホルスターに収め、ブレスレットとバックルを合わせてホルスタ
ーを消した。アリサは警官の前に出て、銃を持っていないと主張するが、
警官はアリサの腕に手錠をかけ、交番へと連行した。
アリサはこれまでの出来事を警官に話すが、信じてもらえるわけもなく、
留置所へと入れられてしまう。警官が身元を調べようとしたとき、アリ
サの保護者を装った2人の追っ手が交番に入ってきた。追っ手が警官に
助けを求めるアリサを引き取り、その場を去ろうとした時、警官は背広
の下に拳銃のホルスターらしきものを見つけた。追っ手は警官を気絶さ
せ、アリサを眠らせると、交番を後にした。そこへ見回りから戻ってき
た別の警官=西沢に見られた。西沢は追っ手からの発砲を避けると、拳
銃を撃ち、1人を射殺した。溶けていく死体に驚く西沢だが、アリサを
乗せた車を追おうとする。追っ手の銃が西沢の肩を撃ち抜いた。その時、
西沢の銃の発砲音で気絶していた警官が目を覚ました。その警官は西沢
に代わって車にめがけて銃を連発し、1発がタイヤに命中した。コント
ロールを失った車は電柱に激突。その衝撃で後席のアリサは意識を取り
戻し、落としていた自分のバッグを見つけた。追っ手は警官に向けて撃
とうとするも、警官がすかさず発砲、命中するや否や溶けていった。
車を降り、その場を走り去るアリサ。西沢は声をかけようとするが、同
僚の警官がそれを止めた。
「このまま行かせたほうがいいような気がするんだ」
溶けていく追っ手の死体を見て「悪夢だ」という警官。しかし、アリサ
の言っていることは本当だったのかもしれないと思うのだった。
「不思議な国のアリサ‥‥‥」
2人の警官は闇の中を走り続けるアリサを見送るのだった。 |