あつじ屋 Q&A

このページは上に行くほど新しい記事です


その2 面白く描くって?  2003 01 23

 BBSのお客様Kさんよりお尋ね。
 「あつじ先生は落書きする時って、漠然と描くの?それとも、何か考えながら?
 Kたん落書きしようと思ってネコ描いてもなんか面白くないんだよねー
どーすると楽しい落書きになるのかなー?」

 これは深い深い問題なので、とても一口には説明できないのです;
 うまく言えるかどうかわかりませんがやってみますね。

 結論から言うと、まず楽しくないのは思ったようなイメージが描けないからだと思います。それには二つ可能性があって
 「描いて楽しいイメージ」が頭の中に思い浮かばない、浮かんでも手がうまく動かなくて思ったとおりの絵が描けない。
 そのどちらか。あるいは両方。
 だから楽しくないんじゃないでしょうか。
 私がラクガキするときは、ある程度イメージを思い浮かべながら描きます。で、描いたものをもっとこうした方がいいかな、とか、あ、描くとこんなふうになるのか、思ったのと少し違うな、じゃこうしようかとかフィードバックし合いながら頭の中と紙の上を行き来します。
 思い通りのものが描けなくて辛い思いを何時間もすることもありますが、この歳になると大体思ったイメージは再現できるだけの技術があるので、その部分のストレスはそれほどないのです。そこがKさんと違うとこでしょう(プロだから当たり前なんですが)(笑)。ただ何歳になっても100%思い通りのものなんて描けやしないわけで、その点では同じです。
 描きたいイメージと再現された絵とのギャップが必ずあって、そこを埋める作業がある。その過程を楽しめる者のみが絵を描く楽しみを手に入れられる(そして上達も)のだと思います。これは半ば天から与えられたものではないでしょうか。

 実は以前うちで働いていた某アシスタントに、全然自分の漫画描かないけどどうして?(もっと練習しないとプロになれないと思うけど)という意味の質問をした時、彼が少し怒ったような口調で
 「そりゃあ思ったように描ける人は楽しいから練習できるでしょうけど」
 と言っていたことがあります。
 彼がうちをやめた時(と言うかやめていただいた時)はもう30代も後半でしたが、いっこうに作品は描かないようでした。連載も読みきりも持たず、手も遅く、もうこの世界からは足を洗ってカタギになると言っていましたが、その後どうされたかは存じません。
 けして楽しいことだけやって腕が磨けるわけではないので、彼の抗弁はいささか子供じみた逆ギレだったのですが、一面真実をついてもいたと思います。
 
 話を元に戻しますと、お尋ねのネコであるなら、ただ漠然と描くのではなくて、猫のこんな顔が好き、とかこんなポーズがかわいいとか言う、自分の心にヒットしたところを描くことから始めてみてはどうでしょう?
 これは私の想像ですが、おそらくKさんはリアルな描きこんだ絵ではなくて、シンプルな線でラクガキをなさっているのだと思います。それはそれでいいのですが、デフォルメというのは、あれはあれでけっこう才能と技術を必要とします。
 リアルでもかわいきゃいい、のであれば写真トレスから始めてみるのもいいかも。
 うちの仕事でもビルとか自動車とかアシさんにお願いする時、よく自分で撮った写真を(人の撮ったものを使ったら盗作です。出版社から渡された専用の資料写真などは別として)(笑)コピー機でそのコマに合うサイズに縮小拡大してトレス台(下から照明をあてて原稿用紙越しに写し取る写真などを見る箱)を使って描いてもらいます。
 ネコも同じで、かわいいネコの写真をちょうどいいサイズにコンビニか会社かでコピーして、昼間窓ガラスをトレス台代わりにして別の紙に写し取ってみるのです。アマチュアの方が一人で非営利に楽しまれる分には、雑誌などの写真でもかまいません。
 ネコの毛のふわふわーっとした感じはアマチュアの方には難しいでしょうが、それならそれで毛のところだけペンとかの硬いタッチの画材ではなくクレヨンとか太目の色鉛筆とか柔らかなタッチの画材で描くのです。で、爪とかキバとか目とかだけはペンでくっきり描いて見る。これだけでもだいぶ違うと思います。
 実は私も実際の仕事でそういう画材の使い分けをもっともっとしてみたいと思っているのです。普段は締め切りに追われて忙しく忙しくやっていると、ついそういう試行錯誤をする余裕がなくなり「いつものやつ」なルーティーンワークに陥ってしまうのですが、ほんとはもっと色々やりたい。見ているお客様もその方が面白いと思うのです。ただし、お客をそっちのけにした自己満足の実験作はいただけませんけどね(笑)。

 話が少しそれましたが、そんなところでいかがでしょう?
 アマチュアの場合「楽しんで描く」ことが肝心だと思います。
 辛い思いをしてまで描くのはプロだけでたくさん。
 ポイントは達成感。
 これくらいの苦労でこれくらいの絵が描けるならいっかな。そう思える範囲内で描くことです。実はプロだってそれなしではやってられません。普通の人の何分の一かの努力で普通の人の何倍かの成果、達成感を得られる人が、普通の人の何杯も努力(この言葉は「したくない苦しいことを義務感でする」イメージがあるので、ちょっと不適当かも。努力を努力と思わないで楽しめるから伸びるのですが)している、それがプロだと思います(例外はいるでしょうけど)(笑)。これは漫画に限らず、他の業界でもそうだと思います。
 また自分なりに試してみて、困ったことがあったらお尋ねください。ではでは〜。


その1 スピードローダー(クィックローダー) 2002 12 02

 BBSのお客様より「アモウの口絵で右脇の下につっている小型の手りゅう弾みたいな物体はなんですか?」とのお尋ねがありました。お答えします。

 あれはクィックローダー(スピードローダーとも言う)といって、回転式拳銃(リヴォルヴァー)の弾倉に一気に全弾を装てんするための道具です。百聞は一見にしかずで、うちのモデルガンと問題のパーツの写真を掲載しますのでそちらをご覧ください。(雑文・銃のこと「クィックローダー」の項参照)


トップに戻る