ACOUSTAT のこと
2019年4月に ACOUSTAT を手に入れたので、これから色々と書いていきます。
まずモデル名称ですが、 「2A」 というものらしいのです。 ヤフオクに出品されていたモデル名は 「MK-121-2A」 となっており、調べたところ、「MK-121」の部分は、シャーシに収められた高圧電源と入力トランスなどのモジュールの型番のようで、他のモデルでも同じものが使用されているようです。 最後の「2A」というのが発音ユニット部分の型番を表すもののようで、「2」というのが発音ユニットの数を表しているらしいのですが、後述するように、どうも違うようです。 色々と調べたのですが、どんなモデルが製造販売されていたのか、日本にはどのモデルがどれだけ輸入されたのかなど、殆ど判りませんでした。 

正面の投影面積は 71×147cm で、STAX の ELS-6A を見慣れた目にはさほど大きくは見えません。

正面の意匠ですが、ACOUSTAT というと高さが180cm以上ある黒い板、という印象があるのですが、これは下にツキ板の部分があり、真っ黒ほど不愛想ではないものの、好みにもよりますが、あまり洒落た感じはありません。
下の写真がシャーシの内側です。 海外のサイトで見掛けたものを想像していたので、どんなに酷いことになっているのかと恐る恐る開けたのですが、拍子抜けするくらい綺麗でした。
左上が高圧用のトランスで750Vを出しています。
左上が高域用、右下が低域用の入力トランスです。 入力の段階で高域と低域に分けて処理するのがACOUSTATの特徴のようです。
下中央やや左にあり、外にツマミが出ているのが高域レベル調節用のVRで、ワッテージの大きそうな巻線VRです。
真ん中の基板両側の巻線抵抗は、低域の出力に入れられています。
基板を裏返した写真です。
上側中央に、コッククロフト・ウォルトン回路のブルーのセラミックコンデンサーとダイオードが五個づつ見えます。 五段ですので、出力電圧は750Vの6倍の約4500Vということになります。 QUADでもSTAXでもそうなのですが、この回路のCとDは必ず交換していますので、これもすぐに交換しました。 このダイオードが破裂した、というのをあるサイトで見掛けましたが、そんなこともあるのですね。
その他のパーツですが、Cの容量の変化が気になりますが、いずれきちんと測定して対応することとし、当面はこのまま使用することにしました。
左右の木で出来たような大きな筒は、高域の出力に入れられているフィルムコンデンサーです。
グリルネットを下ろした正面・背面の写真です。
ユニットは、20×115.5cmのものが三枚で、左右が僅かに外側にスラントして取り付けられています。 背面には厚み7mmほどのフェルトが貼られています。 注意して見ると、中央のユニットと左右のものとでは貼られているフェルトの幅が異なっているのが判ります。 これで指向性を調整しているのでしょうか。 だとすると微妙なものです。

さて、モデル名ですが、ユニット数が片ch三枚ですので、どうやら2Aではないように思いました。 色々なサイトを調べた結論としては、MODEL-3 というものではないかと推測していたのですが・・・・  しかし、MODEL-3 というのは、高圧・ネットワークのモジュールがこれとは違うようですし、全面ネットで覆われていて下部が我が家のもののようにツキ板ではない画像があり、やはり判りません。 これは推測ですが、高圧・ネットワークモジュールがMODEL-1 当時のものより新たな設計と感じますので、いわば後期のMODEL-3 で、やはり 2A と称していたのではないかと・・・・・

 (2021年11月追記・・・モデル名ですが、これは、MODEL3 SLIMLINE です。 また、ACOUSTAT は、高圧回路やネットワークの入ったモジュールを INTERFACE と呼んでいます。 敢えて上の誤記を残しています。)

グリルネットの内側には、防塵フィルムもパンチングメタルも内部保護のための棒など、何もありません。 私はこの方式に賛成です。 防塵はグリルネットで十分、それを潜り抜けるほどの微細な塵は問題ない、破損は自己責任、それでいいと思います。 つまり、STAXやMartinLoganのやり方でいいいと思いますし、QUAD はやり過ぎだと思います。

背面の縦二本の角材は、ユニット取付用であると同時に、補強の役割も果たしているのでしょう。


信号電極は、電線を折り返して貼り付けるという、おもしろい構造になっています。 その長さは、ざっと計算するとユニット当たり18mほどになるでしょうか。 QUADはプリント基板、STAXは乱暴に言えば金網、MartinLoganは材質は判りませんが穴の開いた導電性の板ですので、メーカーによる違いが興味深いです。 しかし、ACOUSTATが特異であるのは、そのインピーダンスとインダクタンスがどうなっているのか、という点です。 インピーダンスはトランスで整合させられるからいいとして、こんな風に線を折り返したら、隣り合う線を流れる信号の干渉はどうなるのか、インダクタンスの影響は回路部品で何とかなるのか・・・等々、素人としては色々と考えてしまいます。

最後に・・・
このサイトでは、各スピーカーの音質というか音の違いに触れないようにしています。 音は好みですし、何よりも、我が家のシステムで出た音を私の感覚で書く訳ですから、ニュートラルな見解が書けるはずはないからです。

しかし、このスピーカーはいい音、と言ってはマズイので、私の好きな音がします。 これまではSTAXが好みだったのですが、このスピーカーは、厚みがありながら透明で空間が広く、リアリティがあります。 低音は、大口径のコーンスピーカー寄りと言えるような音で、静電型らしい軽く透明な風のような低音というのとはいささか違って感じます。 音像の浮かび方ですが、誤解を恐れずに書けば、虚像ではなく実像という感じなのです。 しかし、柔らかさが醸す雰囲気はSTAXの方があるのかな、とも思いますので、難しいところです。

と、ここまで書いて思ったのですが、やはり、どのスピーカーにも良い点があり、単純には論評できないですね。

今のところ問題なく鳴っていますのでこのまま使用しますが、いずれ修理が必要になると思います。 そのときは、レストアに挑戦し、その方法なども載せていきたいと思っています。
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