STAX レストア方法
発音ユニット
まずはオリジナルの状態です。

左がESS−3Aの裏蓋を開けた状態です。 左からTW一枚、SQ一枚、WO二枚の計四枚のユニットで構成されています。
ユニットの開口部の角がユニット外周と同じように角になっています。

右はELS−6Aです。 左から上下対称にWO四枚、SQ二枚、TW二枚となっています。 WOとSQは全く同じもので、ユニット開口部は半円の形状をしています。


右がESS−4Aです。
左下のグレーに見えるのが二枚のWOが一体構造となったユニットで、これだけは特殊なようです。 右端がTW、その左隣がSQで、それぞれ一枚づつです。
下の写真は3AのTWを外して写したものです。
中央の端子が信号端子で両側にあります。判りにくいですが右端に高圧供給用の銅箔の端子が見えます。
STAXのユニットは貼り付けた後に周囲を蝋で固めてあります。


貼り合わされているTWユニットを二枚に分けたところの写真です。

ベークライトと思われる枠に、梯子状の金属に金網が張ってある信号電極が挟まれています。この二枚のユニット本体の間に、透明の塩化ビニールと思われる薄板が巡らしてあり、その薄板の間に振動膜であるポリエステルが貼られています。

バイアス用の高圧は周囲に塗られた導電性の塗料で振動膜の導電材に供給されています。

ユニット内部も蝋が流し込まれています。


レストアは、まず周囲の蝋をきれいに除去することから始めます。 ユニットの貼り合わせは、将来の修理が容易なように接着ではなくポリカーボネートのボルト・ナット留めにするので、最初にそのための穴を開けておきます。バッフル側の皿頭のボルト側の穴はザグっておきます。 そしてユニットを二枚に離し、塩化ビニールの薄板と振動膜を除去し、ユニットを清掃します。 ユニットに残った接着剤などを完全に除去し、きれいになったら二枚のユニットに新しい塩化ビニールの薄板を貼ります。
木枠に振動膜を張って適当なテンションをかけ、ユニットに貼ったところが下の写真です。


接着剤が固まったらユニットの周囲のフィルムを切り、導電剤を塗布して高圧のガイドと端子を付けます。
使用する導電剤は、最新のポリマー系のものです。 この導電剤の効果持続期間ですが、英文では PERMANENT ですが、日本語では「半永久」となっています。
高圧のガイドは、導電性の塗料では劣化やクラックが心配なので、下の写真のとおり、導電性の接着面を持った極薄の銅箔を使用しています。


二枚のユニットをボルト・ナットで留めれば下の写真のとおり完成です。 写真の面はバッフル側です。
ユニットの周囲は、高耐圧の自己融着タイプのビニールテープを貼り巡らしてあります。


以上がSTAXのユニットレストアの概要です。 このサイトの目的は、レストア作業の骨格をご理解いただくことで作業マニュアルではありませんので、基本的な内容しか記してありません。 実際の作業では、ここに書いた作業をするための準備などで手間の掛かる作業が非常に多くあります。



ESS−4AのWOは、恐らくこのモデルだけの特殊なものだと思いますが、二つのWOユニットが一体となったもので、グレーの塩化ビニールのユニット本体枠二枚をハトメで貼り合わせてあります。

信号電極は金属ではなくカーボン塗料を塗布したもので、ベークライトのユニットと同様、周囲には透明の塩化ビニール薄板が巡らしてあります。

STAXのユニットは、接着して蝋で固めてあったり、ハトメで留めてあったりして、どうも、修理を想定していないように見受けられます。
このユニットのレストア手順は普通のものとほぼ同様ですが、二つのユニットが一体となっているために非常に手間がかかります。
カーボン塗料で問題ないと判断されたようで高圧のガイドの導電性塗料は塗布されていませんでした。しかし、念のため、ユニット中央に銅箔を貼り高圧のガイドとしています。



ESS−6Aのレストア前後の部分写真です。

下がレストア前で、ユニットを留めるのに幅の狭い一枚の長い板が使われています。

右はレストア後で、ユニット裏側にナットが出ているため、何枚もの短く切った板で留めてあります。








STAXのユニットに総じて言えることは、非常に耐久性があるということです。 私が経験した限りでは、50年近く経っているにもかかわらず、殆どのユニットは使用可能でした。もちろん導電剤の劣化のためと思われる能率の低下や振動膜のテンションの低下などで初期の性能は維持できていませんが、それにしても非常に優れた造りだと思います。STAXのスピーカーで音が出なくなったり極端に能率が低下したりする原因の多くは、高圧回路の故障や能率の低下だと考えます。
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