思い付くまま ・・・・・ CAW レストア

さて、CAW のレストア編、まずは、最初に開けたときの二台のユニット配線の様子から。
前にも書いたとおり、線材がオリジナルとは異なっています。 線材は CAW のものと思われますが、これは CAW のモディファイの後に、修理の手が入っているようです。 オウナーに確認したところ、やはり修理歴があるとのことでした。 その修理たるや、次のとおり、まさに「ひどい仕事」です。
 ・ CAW のものは、右側下部のように、線が金具でフレームの全てのリブに固定されているのですが、その金具が、左側の個体では全く無く、右側のものでは下部に僅かにあるだけです。 しかも、写真のとおり、外れてしまっている金具もあります。 これでは、スピーカーの振動による線や金具のビリつきが心配です。
 ・ 線をフレームのリブに金具で付けようとしたのでしょうか、 リブに変な切込みがあります。 しかも、リブが割れてしまったり しています。

 ・ CAW のものでしたら、全てのリブに切込みがあるはずです  ので、この時点で、ユニットが交換されているのでは、とのいう 疑問を持ちました。
 ・ ユニットを剥がしてみて驚きました。 二枚のユニットで、導電剤を塗っていない側、外側が何やら白く塗ったような跡が ありました。 何だか見当が付きませんが、溶剤で汚れでも落とした跡なのでしょうか。
 ・ フィルムを押してみると、電極板に張り付いたままになりました。  何だこりゃ ? ? ? ?  です。
 ・ フィルムを剥がしてみると、接着剤がベタベタです。
 ・ その接着剤をスクレーパーで削ってみたら、一枚でこれだけ の量の接着剤が取れました。
 全く凄いことをやるものです。

 ・ もちろん、これらの汚れは全て洗浄し、ラグを増設し、フィルムは張り替えました。
 ・ ユニットへの配線に使用する半田ですが、オウナーからリクエストがあり、アルミット KR-19SH RMA なるものを購入して使用しました。 写真左上が電源などに普通に使用しているもの。 右上が普段信号系に使用しているオーディオグレードを謳っているもので、これが残り少なくなっていたので、リクエストにお応えして下のものを入手したという訳です。
 それにしても、半田も凄く値上がりしていますね。

 ・ しかし、線材には、それまで使われていた半田がたっぷり染み込んでいますので、アルミットを使用する効果は、個人的にはいささか疑問でした。
 ・ 高圧回路の部品交換など全ての工程を経て、完成したのが左の写真です。

 ・ ユニットへの配線は、残っていた金具は使用し、金具のない箇所は、ビビリを防ぐため、接着剤でリブに固定し、できる限り美しく仕上げました。

 ・ 最後に、グリルネットについて。 最初に書いたとおり、オウナーが調達なさるということでお任せしていましたが、最終的には日暮里までお出掛けになり、ご納得のいかれるものをご用意なさいました。 なんでも、ダンス衣装用の素材とのことで、15Dナイロンハーフトリコット というものだそうです。 15D といのは15デニールのことらしく、これまで、デニールという言葉は知っていましたが、その意味を始めて調べて驚きました。 1デニールとは、9000mで1gになる繊維の太さ、ということでした。 900m でわずか1g がやっと 10デニール・・・何やら凄い単位で驚きました。

 ・ この生地を筒状になるように縫製して被せたのですが、久し振りにミシンを使ったので、少し手間取りました。 実は私、ミシンや編み機も使えるのです。

 ・ このグリルネットの出来栄えは、オウナーのお褒めをいただき、ホッといたしました。
  レストア作業と測定検査を終え、試聴したときの感想です。 空気感、空間構成、ホールトーンなどが普通のものとは違うと感じました。 ヴォーカルの余韻、響きが声本体と綺麗に分離し、広い空間に広がっていきます。 正直、驚きました。 
 そこで、レストアしたての PRO-63 と比較試聴してみました。 最大の違いは、やはり分離と空気感、空間の広さの違いです。
 この違いを生む原因を考えてみました。 インピーダンスが高いところ、つまり、入力トランスを出てからは、線材や素子の影響は無い、と思っています。 とすると、入力端子と入力トランスとの間に入れられている CR にパラに追加されている8μF が原因ということになります。 この C を追加ではなく、高品位のものに交換して販売しているところもあるようです。
 なお、CROSBY氏は、測定・検査・試聴を経てこのモディファイをなさっている訳ですので、私の見解は間違っているのかもしれません。
  私のレストアの眼目は QUAD の最大の欠点である信号電極の剥離をなくして耐久性を大幅に向上させることで、音質はオリジナルを復元することです。 しかし、今回の結果をみると、私用の QUAD で色々と試してみようか・・・という気にもなります。
 
 CAW モディファイに必要な部材は、素子・線材などの全てがキットととして販売されているようですので、興味のある方は丹念に検索してみてください。
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