思い付くまま ・・・・・ 書かずにはいられない その弐

今回は高圧回路についてです。

   言いたいこと・・・・・・高圧回路の部品を交換していなものには手を出さない方が賢明です

レストアされている個体は、ノイズを発生していたもの、と考えてまず間違いないと思います。

静電型スピーカーの振動フィルムには高圧が供給されています。 この高圧は、コッククロフト・ウォルトン回路と言われているものを使って供給されています。 この回路は、、高圧を出すのは得意なのですが、(大)電流を供給することは難しい回路です。 (雑駁な説明ですので、詳しくは検索してみてください。)

理論的には、フィルムに一度高圧の電荷が貯まってしまえば、その後の電荷の供給は必要ありません。 しかし、現実的には、電荷は空中に逃げたり、色々な理由で僅かにリークしたりしますので、その損失分を供給し続ける必要があります。 QUAD は、ネオン管発振回路を使って、高圧側とフィルム側に一定の電位差が生じた場合にのみネオン管を通して通電し、電荷を供給しています。 この電力は、AC 100V側で 2-3W つまり 20-30mA ですので、 5200Vほどの高圧側では、0.6mAにも満たない、ということです。

ところが、ノイズが発生しますと、フィルムの破損状態にもよりますが、常時大量のリークが発生します。 そのため、高圧回路には、正常時より遥かに高い負荷がかかります。 この回路の部品には、前記の電力を前提とした部品が使われていますので、ノイズ発生時などの大量のリーク時には、設計容量を超える電流が流れ、必然的に部品の劣化の原因となります。 

具体的には、電源トランスと高圧回路の間にあるブリッジ回路の抵抗が焼損したり、焼けて抵抗値が上がってしまったりする現象です。 抵抗値に異常がなくとも、ノイズを出している個体では、この回路基板の蝋が溶けて、抵抗が発熱していた履歴が認められます。



左は 2805 ですが、ノイズが出てからも酷使されていたようで、焼損(?)が認められ、抵抗値も狂っていますので要交換です。
右は 63 です。 熱で蝋が溶けた痕跡はありますが、抵抗にダメージは無く、このまま使用できます。

なお、この高圧回路に使用されているダイオードとキャパシタは、仮にリークがあっても直ちに問題が出る仕様のものではありませんが、製造時から相当の年月が経っていますので、どんなに程度の良いものでも、必ず交換しています。 家電でも、ウン十年前のものを何の手も入れずに使うのは怖いですよね。

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