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「温かいスープ」(光村3年)で要約の仕方を指導する



長谷川博之(トークライン中学秩父JEサークル)

要約といわれても、「こうすればできる」という明確な方法を知らない生徒達に、向山型要約指導で要約の方法を指導した。キーワードの決定に悩んだ箇所は教師主導で進めた。リズムとテンポを意識して進めたので生徒達も最後まで集中して取り組んだ。


前の時間に向山型要約指導「桃太郎」の授業を追試済み。

【第1時】

ページごとの追い読み、個人読み、指名なし音読と十分読ませた後の指導。

指示 形式段落に番号を振りなさい。 

すぐに、「○○くん、最後は何段落ですか」と問う。テンポを作り出すため。


板書       G F E D C B A @

(@…は段落番号。授業では番号の上下に「起承転結」やキーワードを記していく。)

指示 本文を起承転結の四つの部分に分けます。段落番号の上に「起・承・転・結」と書きなさい。

この授業は3年の1月に行なった。起承転結に分ける学習はこれまでに何度も経験しているため、このような指示で生徒は動く。
たとえば、2段落から5段落までが「承」であれば、段落番号Aの上に「承」と記すわけである。
初めから自力で分けさせたことには理由がある。文章を指定された数(本授業では起承転結の4つ)の部分に分けるには、全体を見渡し、部分同士のの関係性も視野に入れる必要がある。最初から「転はどこですか?」と微に入るよりはまず全体を精読させ、一度自力で分けさせた方が力がつくと私は考える。この時点では完全な正答を期待してはいない。
机間巡視をし、ほぼ半分の生徒が書き終えた時点で確認を始める。

説明 「起」は「これから、こういうことについて書いていくよ」と話題を提示する部分です。

発問 「起」は何段落までですか。

最初なので列指名で発表させた。1段落(以下@)だけとする者、Aまでとする者に分かれた。根拠を述べさせ、検討させる。

指示 今、意見が二つに分かれました。それぞれ、本文に根拠を求めましょう。判断の根拠となる部分に線を引き、見せに来なさい。

「わかりました」と言いながら小さな赤丸をつける。「正解」とは告げない。

指示 指名はしませんから、立って発表しなさい。

生徒からは以下の2点が挙がる。

@の根拠…@最終文の一部。「国際性とは何かを考えさせる話があるので書き記しておきたい。」  
Aの根拠…B最初の文。「そのころの話である。」

「起」に書かれる事柄は全体のあらましや予告であること、そして、A以降は筆者の具体的な体験談が語られていることから、前者を正解とする。
板書@とAを線で区切り、@の上に「起」、Aの上に「承」と書く。

指示 @の最後の一文に赤線を引いておきなさい。

根拠となる部分を明確に意識させるための指示である。

説明 「承」では「起」の話題がすこし発展するのですね。

発問 「承」は」何段落までですか。判断の根拠となる部分に線を引きなさい。

指示 指名なし発表をします。△△さんからどうぞ。

生徒の意見が二つに分かれた。

Dまでが「承」派……根拠は「ある晩」「黙ってパンを二人分添えてくれた」「何か心の温まる思いで」  
Eまでが「承」派……「その後、何ヶ月かたった二月の寒い季節、また貧しい夜がやってきた。」

「ある晩」とあり場面が変わるから、という意見が多い。
だが、それならばEにも同種の表現(「……また貧しい夜がやって来た。」)があることを指摘し、不十分であると告げた。
発表が滞ったところで、机間巡視の際に目をつけておいた生徒を指名した。

「Dまでは筆者の体験した苦労が書かれており、Dからは筆者が受けた親切についての話が始まるので『承』はCまでです。」

秀逸である。この意見は次の発問の解答「『転』がDEF」であることの根拠にもなる。
板書CとDを線で区切り、Dの上に「転」と記す。

発問 「転」では話題が一転するのでしたね。「転」はDから何段落までですか。

ここは全員が正解した。Gが全体のまとめの段落であることは全員が理解できていた。正解を大いに褒めた。
つづいてFの最後から二番目の文、「この人たちのさりげない親切のゆえに」がDEのまとめになっていることも根拠として挙げ、赤線を引かせた。

説明 「結」は全体を結びます。残りのGが「結」となります。

板書FとGを線で区切り、Gの上に「結」と記した。

@で赤線を引かせた部分は「国際性とは何か」という疑問の提示である。
Gではその疑問に対する筆者自身の解答が述べられている。この文章は冒頭で提示した疑問に結末で答えるという模範的な構成で書かれている。
「国際性の基本とは、相手の立場を思いやる優しさ、お互いが人類の仲間であるという自覚なのである。」 これが全文の要旨である。

【第2時】

立って一度、座って一度読ませる。

説明 四つの部分の要約作業に入ります。「桃太郎」と同様、二十字以内で体言止めの要約文を作ります。

説明 まずは「起」からです。出だしなので私がキーワードを指摘します。「起」 の最重要キーワードは「日本」です。文の最後に置きなさい。あと二つは「第二次世界大戦」と、「世界の嫌われ者」です。

最初は自信をつけさせるためにこちらで提示した。

指示 並べ替えて二十字以内にまとめなさい。制限字数以外にまとめるには言葉の言い換えも大切です。

向山型要約指導では三つのキーワードをそのままの形で使わせ作文させるが、私は似た意味の語句への言い換えも可としている。
3分の1程度が書き終えた時点で持ってくるよう指示した。他の生徒も続々と持参した。
十点満点で採点した。(生徒の解答を記録しておきませんでした。提示できなくてすみません。)
〈解答例〉
 ・終戦前後、世界の嫌われ者であった日本。(19字)
 ・世界の嫌われ者だった終戦前後の日本。(18字)

指示 つぎに「承」です。これがなかったらこの部分は成り立たない、という語句をひとつ探し、丸をつけなさい。

全員が丸をつけたのを確認し、発表させた。
生徒からは「パリ」「金詰まり」「オムレツ」「小さなレストラン」「料理店」が挙がった。
「『料理店』が正解です。これを最後に置いて作文します」と告げた。

指示 あとの二つに丸をつけなさい。

これは難しかったようだ。生徒達の多くがなかなか丸をつけられない。フランス人の母娘を取り上げるのか、それとも金詰り状態の私を取り上げるのかを決めかねていた。
私は、「ここでは『母親』と『娘』とをキーワードにしましょう。『転』にも関わりますから。」と指示した。

指示 要約文を書き、持って来なさい。

キーワードひとつにつき3点。最重要キーワードは4点。数名に板書させ採点した。

〈解答例〉
 ・フランス人の母娘が切り盛りする料理店。(19字)

指示 「転」です。大段落に分けた過程を思い出しながら最重要キーワードを探しなさい。丸で囲んで持って来なさい。

「(湯気の立つ)スープ」と「(さりげない)親切」に分かれる。前者は題名との関わりもふまえての解答であろう。この思考自体はすばらしい。
だが、ここではパンとスープをひとまとめにした表現である「親切」を正解とした。これは「転」が「転」たりうる根拠でもある。
ここでも生徒はキーワードの選定に悩んだ。
私は、残りのキーワードを「私」と、「どんなにありがたかったことか。涙がスープの中に落ちるのを気取られぬよう……」から「感激」としよう、と告げた。

指示 作文できたら持って来なさい。

〈解答例〉
 ・私を感激させた、母娘のさりげない親切。(19字)

指示 最後は「結」です。最重要キーワードに丸をつけなさい。

「相手の立場を思いやる優しさ」「国際性(の基調)」「無償の愛」「人類愛」に分かれた。

発問 本文ではある疑問が提示されていました。それはどんな疑問ですか。書きなさい。

生徒は一斉に教材文を読み始めた。これはすぐに見つかる。@で赤線を引いた部分だからだ。
「国際性とは何か」である。

指示 この疑問に対する筆者の考えが8段落に書かれている。1文で探して線を引きなさい。

解は4文目である。あえて一文と限定した。この限定がないと1・2・3文目も可となり、混乱をきたす。

指示 「国際性の基調」を最後に置いて要約文を作りなさい。

「国際性とは何か」との問いである。通常ならば「国際性とは……である」とするところだが、要約文は体言止めで書くとしている。そこで、このキーワードを最後に置かせた。

〈解答例〉
 ・平凡な日常の中の人類愛こそが国際性の基調。(20字)


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