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最近半導体部品はチップになってしまい、ここに紹介する工具を使っても取り外したりすることができません。そういう半導体の組み込まれた基板は基板ごと交換するしかないと思います。
そうはいっても信頼性が要求される産業機器ではハンダ付けができればかなりの修理ができます。テスターもデジタルとアナログの特徴を生かして使い分ける技量を身につけてください。
テスター
電流計に抵抗を直列あるいは並列に接続して、電流値や電圧・抵抗値をメーターの振れ具合から読み取るようにした測定機をテスター(アナログテスター)といいます。
最近ではLCDの画面に微積分回路をつけて電流値や電圧・抵抗値を数値表示させるテスター(デジタルテスター)もあります。特にアナログテスターと区別するためにデジタルマルチメーター(DMM)と呼ばれています。写真の右側がアナログテスター、左側がデジタルマルチメーターです。大きさはアナログに比較してデジタルは1/4程度の大きさです。
この両者で大きく違うのが測定レンジです。アナログテスターであればあらかじめ測定しようとする個所の電流値なり電圧を予想してそれより大きな測定レンジを選ぶ必要がありました。デジタルテスターではその作業を演算回路が行なってくれますので、測定レンジの選択といえばAC(DC)電圧・電流・抵抗のいずれを測定するのかということだけです。
それならデジタルテスターが良いようにも思えてきます。しかし、家庭のコンセントにテストピンを差し込んでみれば解りますが、実際に電圧を測定しようとすると感度がいいため表示された数字がころころ変化します。変化の幅を読みとって平均値を出すというコツも必要になってきます。けれど感度がいいということは小さな値を読み取るには非常に便利です。マイクロ(μ)レベルの電圧(V)や電流値(A)を測定するにはデジタルマルチメーターがないとちょっと不便です。
ワンポイント@
近年節電ブームでインバータ付きの家電製品が多く出まわっています。このインバータという代物は周波数を可変できる装置なのです。つまり、電気をあまり消費しない条件のときは30Hzや40Hzでモーターを回します。エアコンなどで急速に冷やす必要がある場合などは120Hzでモーターを回します。
このインバータの電圧をテスターで測定してみるとどうなるでしょう。120Hzの時は電圧は100Vでなく150Vを指していたりします。そもそもテスターのAC電圧レンジは正弦波の実効値(ある意味平均値)を表示しています。インバータで周波数変換した電流の波形が正弦波かというと、そうではない場合が多いのです。パルス波形だったり、ノコギリ波形だったりします。ですからインバータから出力される電圧はテスターで測定しても相対的に高いか低いかということしか解りません。
ワンポイントA
正弦波でないパルス波形やノコギリ波形はどうやってみるかというと、時間経過の概念を取り入れなければなりません。時間と共に電圧がどう変化するかを見取る必要があります。それはオシロスコープという測定器で見ることが出来ます。ブラウン管の縦軸は電圧、横軸は時間を表示します。
その昔、シンクロスコープという測定器がありました。これはオシロスコープそのものです。シンクロは「同期させる」「動きをそろえる」という意味で、シンクロナイズドスイミングという競技を思い浮かべれば納得していただけると思います。
オシロスコープはトリガという信号に同期して波形を表示しています。そのトリガ信号に同期させる、いい方を変えるとトリガ信号にシンクロさせるということになります。その辺りからシンクロスコープと呼ばれていたようです。どうもこの呼び方は日本国内だけでしか通用しないようです。
ニッパー
ワイヤーを切断する工具です。一口にニッパーといっても、右側の強力(電工)ニッパーと左側の精密(マイクロ)ニッパーに総別されます。強力ニッパーはピアノ線のような硬い材料を切断できます。またちょっとした釘をはさんで抜くのにも使えます。ただ寸法が大きいため細かい作業には不向きです。
精密ニッパーは全長が125mm前後と強力ニッパーのそれが200mm前後であるのに対し小型です。当然ピアノ線などを切断しようものなら使いものにならなくなります。トランジスタの足とかいった1mm以下の軟鋼線の切断に使ったり、ビニール被覆電線の被覆を向くのに使います。メーカーによっては刃の硬度を表示しているものもあるようです。購入の際にはひとつの指標になるでしょう。
強力ニッパーと精密ニッパーは形が同じで大きさだけが異なります。しかし、使用する作業での使い分けは必須のようです。
ワイヤーストリッパー
ニッパーでビニール被覆電線の被覆をとるのに多少こつが必要です。まあ慣れの問題ですが、日常的に作業していないと難しいかもしれません。そんな方がビニール被覆電線の被覆を数多くむくような場合に使うと便利なのがワイヤーストリッパーです。
電線の太さに合わせた切り欠きに電線を差し込んで握れば被覆をむくことができます。
右側はビニール被覆に切れ目を入れた後、柄を握ったままワイヤーストリッパーを引っ張るとビニール被覆が抜けます。左側は被覆を被った電線を挟み、柄を握るだけで切れ目を入れて、ビニール被覆を取り除いてくれます。どちらも、電線の太さより若干大きめのビニール被覆径を選んで被覆をむくといいでしょう。
はんだこて
写真は上から60W・30W・15Wのハンダこてです。
小さなICの足などを基板にハンダ付けするには15W程度のこてが必要です。また、1.6mm程度の導線のような大きなものをハンダ付けするには80Wほどのこてでないとハンダ付けできません。ハンダこてはハンダつけする部品によって大小使い分ける必要があります。1本だけでオールマイティにと考える場合は40〜60Wのこてがいいでしょう。
さてどうして100Wのこては60Wのこてより大きいのでしょう。15Wのこては40Wのこてより小さいのでしょう。こてが小さいということは表面積が小さいということです。つまり表面から放射される熱量が少ないわけです。ですから一定温度を保つには小さな熱量で十分です。もし大きな熱量のヒーターが付いているとしたら温度がどんどん上昇してしまいます。放射熱量=ヒーターの発熱量と考えればいいでしょう。また、ハンダ付けする部品にこてを当てたときに部品に熱が伝わります。この熱量が十分でないとコテの温度が下降してしまいます。ハンダが溶けるまでコテを当て続けなければならないということになってしまいます。これではハンダ付けする前に部品を温めて壊してしまいます。
ハンダこての大きさはハンダつけしようとする相手の大きさで決めると考えてください。対象物にハンダをあて、こてでハンダがすっと溶けていく状態がベストです。大きなこてですと間違いなく溶けますが、ハンダつけの対象が小さいとハンダブリッジを作りかねません。
ハンダ
現在はリールに巻いた糸ハンダは主流です。鉛:スズ=40:60のものと50:50のものがほとんどです。鉛レスハンダも出回っていますから環境のことを憂慮される向きにはお薦めです。糸ハンダの太さは0.8mmから1.6mm程度まで0.2mm間隔で選択が可能です。小さいものをハンダ付けすることが多い向きには比較的細い径の糸ハンダがお薦めです。大きな部品には太いハンダが使い易いです。
ハンダ吸い取り器
注射器タイプ(写真上)と銅線を編み上げた「ハンダ吸取線」(写真下)の2種類があります。多くの量のハンダを取り除く場合は注射器タイプがてっとり早いですが、細かいところまであるいは小さなICの足などのハンダの取り除きには吸取線は向いているでしょう。ただ吸取線は使わないでおくと表面が酸化してハンダをうまく吸わなくなります。
ソルダースタンド
作業中のこてを置いておく台のことです。机やテーブルを焦がす心配から解放されます。こてを差し込んでおくところがコイル状になっています。このコイルが小さいと大きなこては差し込めません。ソルダースタンドは大は小を兼ねると考えて下さい。
交換コテ先
先端部のみ耐腐蝕処置を施してハンダの乗りを良くしたコテ先部のみ販売されています。形状は丸いものから、先端部を斜めにカットしたようなものまで種々雑多あります。ご自分にあったものを選択して下さい。
拡大鏡
その昔真空管全盛期の頃は必要を感じなかった道具でしょう。しかしなから電子部品がチップ化してきた今、ハンダ付けをするのにあったほうが便利ではあります。ただ実際使ってみると距離に違和感があります。若い方なら目を近づけてハンダ付けしたほうがいいかと思います。
スタンドに基板を固定するクリップが付いていますので、ハンダ付けには便利です。
ペンチ
写真左側の電工(強力)ペンチと右側のラジオペンチに大別されます。
電工ペンチはその名の通り、電気工事で使われるのに適したペンチです。先端は物を挟んだり曲げたりできるようになっています。支点の前側には電線を切断するためのカッター刃があり、後ろ側にはワイヤーを挟みこんで引くことが出来るように工夫されています。この部分が圧着端子をかしめられるようになった電工ペンチもあります。先端部分はちょっとしたナットをくわえられる様に溝が入れられています。
ラジオペンチは電工ペンチの先端をスリムにし、一回り小型になっています。機能的には全く同じです。最近ではラジオペンチのカッター刃を省略して部品を挟むことにだけ用途を絞り込んだラジオペンチもあります。別名アジャスティングプライヤーとかロングノーズプライヤーと呼ばれています。この辺りになるとペンチとプライヤーの境界ははっきりとはしてきません。自身の作業を分析して使い易いものを選択するしかないようです。
圧着ペンチ
圧着端子という便利な接続部品が出現して久しくなります。昔はコンセントの指し込みプラグに電線を接続するにしてもきちんとしようとするとハンダ付けをしていました。けれど圧着端子の出現でハンダ付けという作業は一部のマニアックな部分でしか生き残っていません。
プリント基板どうしはコネクタ接続になっていますね。このコネクタの内部も圧着端子で止められています。このような小さいコネクタはそれ専用の圧着工具が必要です。
写真左側は電線の太さで1.25mmと2mmのものに限定した圧着ペンチです。手の大きさに合わせてあるので使い勝手は良いです。右側は1,25mmから8mmまでの電線に対応しています。更に大きな圧着端子に対応した圧着工具もあります。それは油圧を使って締めつけるもので、電柱上のトランスの圧着端子をかしめたり、それを職業としている人でないと必要ないと思います。
圧着する上でもっとも気をつけたいのが、圧着不良による発熱です。熱を持つとさらに電流が流れて最後には火災に至るということもあります。ですから、配線にきちんと適合したサイズの圧着端子を使い、圧着端子に適合した締め付け位置で圧着ペンチを使うことを守らなければなりません。
圧着端子の接合部分(切れめが入っている)を圧着ペンチの凸部分で締め付けます。また圧着ペンチは圧着が完了しないとラチェットがかからず、ハンドルが開かない構造になっているものがほとんどです。これは先ほどの圧着不良を防止するためです。
しかしながら、1.25mmの圧着端子を圧着ペンチ2mmの径で締め付けてもラチャットはかかりハンドルは開放されます。これでは圧着不良になります。また逆に2mmの圧着端子を1.25mmの径で締め付けるとめいっぱいに締め付けてもハンドルがなかなか開放されず、やっと開放したとおもっても端子がペンチに食い込んで外れないという事になります。
ワンポイント(圧着端子)
右から絶縁被覆付き丸端子・丸(R)端子・絶縁被覆付き平型端子・Y端子・絶縁被覆付きつき合わせ(キャップ)端子・リングスリーブ・つき合わせスリーブ。ギボシ端子(F型M型)です。
ポピュラーな圧着端子は丸端子とY端子です。端子台の留めネジのサイズと電線のサイズで表示されます。1.25Y3とか2R4とかです。この先頭に来る数字が電線の太さをあらわします。YとかRは端子の形状です。アルファベットの後の数字は端子台の留めネジのサイズです。ですから1,25の直径までの電線をM3の留めネジで固定するY型の端子が1.25Y3というわけです。
ワンポイント(電気工事)
家庭内でコンセントを増設したりするには電気工事士の資格が必要なことは知られています。では工場内ではどうでしょう。工場内のコンセントの増設工事を資格のない人が行なっても必ずしも違法にはなりません。工場のように高圧電圧(6000V以上)で電力会社から電気を購入している場合、法律で電気主任者を置くように定められています。つまりこの主任者が工場内の電気配線について全責任を負っているわけです。ですから工場内で漏電から火災になっても電力会社は責任を問われることはありません。
それに対して、一般家庭はそういう電気主任者は置くことはありませんから、家庭内の末端のコンセントまで電力会社の管理範囲というわけです。時折、ブレーカーの絶縁抵抗を測定に来たりするのはそのためです。
工場では電気主任者が絶縁抵抗を測定します。電気主任者のいない工場では、外部の電気主任者にその業務を委託しています。