専用工具の引き出し

ギアプーラー タップ・ダイス グリスポンプ チェーンカッター
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 ごく普通に車やバイクをいじる程度ではあまり必要を感じません。つまり工具を見ればそれなりの使い方はできますが、本当に工具を使いこなすためにはぜひ引き出しを開いて理解してください。


ギアプーラ

  プーリー抜きという方が一般的かもしれません。シャフトに取りつけられたプーリー・ギアを取り外すための専用工具です。プーリー抜きの大きさは脚に数字で表示されています。プーリー・ギアに引っ掛ける脚が2本のものと3本のものがあります。大きなサイズのギアプーラーになると3本脚のものが多いようです。これは脚に通されているボルトの強度によるものと思われます。つまり2本脚ならプーリーを引き抜く力は各々のボルトに加わる力は1/2ですが、3本脚なら1/3です。そのため設計上、過負荷になったらこのボルトが変形するようにできています。ギアプーラーで良く壊れるのがボルトです。プーリーを引き抜く力が横方向から加わりますので、大抵「く」字に変形してしまいます。変形したボルトでは対象物をきちんと保持できませんから、ボルトを交換しましょう。
 新しいギアプーラーは使う前にセンターボルトにグリスを塗布して軽く回転するようにします。また脚のボルトを緩めてスムーズに対象物にかかるようにします。

 ギアプーラーは、ボルトの位置を変えることで、シャフトの先端とプーリーの爪の距離を合わせることができます。写真の左側は脚が短いですが、ボルトの位置を変えることでより奥にあるギア・プーリーを引き出すことができます。そうしても脚の先端が届かないような場合は、1サイズ大きなギアプーラーが必要ということです。
 シャフトにあてたプーリー抜きのボルトを締めこむことでプーリー抜きの脚の先端が相対的に手前に出てきます。ただプーリーがシャフトに固く止まっている場合にプーリー抜きのボルトを締めこむことが難しくなります。こういう場合は、プーリー抜きのボルトの背中をプラスチックハンマーでたたきます。2〜3回たたいてから、ボルトをレンチで回します。ボルトが固くて回らなくなるまでレンチでまわし、またプラスチックハンマーでたたきます。これを繰り返すことでプーリーをはずします。
 それでも抜けないような場合にバーナーやトーチランプで材料を温めることをしますが、この際にはできる限りプーリー抜きに熱が伝わらないように心がける必要があります。熱が伝わると、工具の強度が低下してしまうからです。
 また脚の上下をひっくり返すことでプーリーの穴に先端を引っ掛けることもできます。ここで注意していただきたいのはプーリー抜きによっては外側から爪をかける場合と、穴の内側から爪をかける場合で爪の形状が異なるものがあるということです。ですから爪を上下に入れ替えての内側と外側の使い分けは問題ありませんが、爪の先端が磨り減ったからといって上下・左右を入れ替えて使うのは正しい使い方ではありません。たいていの場合、内側からかける爪は先端が肉厚にできています・

ベアリングプーラー

 基本的には先述のギアプーラーを小さくしたものだと理解してください。ベアリングをシャフトから抜き取る専用工具です。ギアプーラーの脚に相当する部分をベアリングの外輪にかけます。内輪の入っているシャフトはベアリングプーラーのレバーを回転させることで押し出します。
 使用にあたっては、先述のギアプーラー同様にセンターボルトにグリスを塗布して滑らかにハンドルが回転するようにしてから使います。
 先述のギアプーラーとどこが異なるかと言うとベアリングプーラーの先端の爪の形状です。ベアリングの外輪にのみ掛かるようになっています。ギアプーラーのそれはベアリングの側面に当たってしまいます。これではベアリングを壊してしまいます。
 ただ、グリスがなくなってボールが磨耗したようなベアリングは外輪のみに爪をかけてシャフトを抜こうとすると、外輪と内輪が外れて中のベアリングが飛び出してしまうことがあります。そういうベアリングに有効なのが右側の写真のベアリングプーラーです。これは内輪に爪(セパレーター)がかかります。また外輪に爪をかける隙間のないような場合でもセパレーターを挟みこんでナットを締めこんでいけばベアリングの内輪にセパレータがかかります。
 またベアリングがダブルで使用されているような場合に2つのベアリングを一緒に上のベアリングプーラーで抜くことは困難です。そういう場合に下のベアリングプーラーで2つのベアリングを離しておいてから抜くということが可能になります。

 
ワンポイント
 ベアリングの大きさは規格で決まっています。ベアリングが破損したような場合にはその外輪と内輪の寸法を計りましょう。販売店などには規格表がありますのでベアリングのナンバーが判明します。外輪と内輪の間にカバーがされているベアリングはナンバーの後ろに「Z」をつけます。両側カバーの場合は「ZZ」となります。この場合はグリスは封入済です。
 封入されているグリスは当然熱を持つと流れ出てしまいます。熱がかかるような場所に使うベアリングは耐熱グリスの入ったベアリングを指定しましょう。また水のかかるような場所ではステンレス製のベアリングを選定します。ステンレス製のベアリングを注文する時にはSUS(サスと呼びます)を付けます。

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タップ

 ボルトの入る穴にネジを切る工具です。タップハンドルにつけて使用します。写真のハンドルはラチェットハンドルといいます。ツマミの切換でハンドルの回転方向を切りかえられます。また中立にしておくとロックがかかりどちらにも回転させることが出来ます。もちろん、ラチェット構造でないハンドルもありますが、使い勝手は断然ラチェットハンドルです。
 タップには切りくずの出る切削タイプと切りくずの出ない盛り上げタイプがあります。ここでは良く使われる切削タイプに的を絞って説明します。切削タイプには更にハンドタップ、スパイラルタップ、ポイントタップの3種類があります。
 ハンドタップにはNo1からNo3まで3種類あります。No1は荒砥、No2が中砥、No3が仕上げという刃のつけ方になっています。通常1番タップ(先タップ)、2番タップ(中タップ)、3番タップ(上げタップ)というように呼びます。ネジの立て方は1番タップから順に使っていきます。このタップは次に述べるスパイラルタップやポイントタップと異なり、切りくずをタップ本体に溜め込みます。

 スパイラルタップ(写真下)はドリルきりにタップの刃を付けたようになっており、切りくずを上方向に排出します。これは穴の先端が抜けていない「止まり穴」に主に使用します。ポイントタップ(写真上)はリーマーにタップの刃を付けたようになっており切りくずを下方向に排出します。こちらは先端が開放されている「通り穴」に使用します。スパイラルタップ・ポイントタップともに1〜3番といった種類はありません。種類を多く持ちたくない場合にはスパイラルタップを選定すればある程度オールマイティに使用できます。
 JIS規格でM3からM4・M5・M6・M8・M10といった具合にネジの太さが決められています。ピッチ(ネジの山から山の間隔)もJISで決められておりM8ではピッチが1と1.25の2種類があります。M10ではピッチが1、1.25、1,5の3種類あります。ですから、まずネジを立てる太さとピッチを確認してからタップを使うことになります。  
 

 ダイス


 タップがメネジを切るのに対して、こちらは丸棒にオネジ(ボルトネジ)を切る工具です。タップと同様にハンドルにダイスを取り付けて使用します。
 写真の下がダイスです。クローバー型に切りかきがあり先端にネジ刃が付いています。このクローバー型の1箇所に切り込みがありその横にネジがついています。最初にネジをきる時はネジを締めこんだ状態でハンドルにセットしてネジを切ります。タップの場合と比較して、折損する心配はありません。1/2回転させたら1/4戻すという方法でネジを切って行きます。そうすると比較的谷の浅いネジが切れます。
 次にダイスを取り外してこのネジを抜く方向に回します。それからもう一度ハンドルにセットします。このときハンドル(写真上)についているネジを回してダイスを締めこむようにします。ダイスにはこのネジが当たる位置に座繰りが入れられて位置がずれないようになっています。ダイスを締め込んでからもう一度ネジを切っていきます。これを繰り返すことできちんとした山と谷のあるネジが切れます。
 サイズはタップと同様の規格です。ピッチはM8以上は複数存在します。

ヘリサート(スプリュー)タップと挿入工具

 アルミのような柔らかい金属やプラスチック・木材のように直接タップをたててメネジをつけでも、強い締め付けが出来ません。さらに頻繁にビスの取りつけ、取り外しているとネジ山が擦り減ってしまいます。それを防止するためにスプリューというコイルスプリング状の金属を挿入してアルミやプラスチックの磨耗を防止し、締めつけ強度を確保します。M5のネジをつけるにしてもスプリューが挿入される分だけ大きく穴をあけタップを立てなければなりません。挿入工具はスプリュータップで立てたネジ穴にスプリューを入れる為のハンドルのついた工具です。

 エキストラクター

 ボルトがネジ穴の中で折れたような場合にボルトを抜くための工具です。ボルトが折れた場合にボルトより小さい径のドリルきりで穴をあけ、エキストラクターをその穴にハンマーで打ち込みます。タップハンドルを使って緩める方向に回転させるとボルトが抜けてきます。逆ネジがらせん状に切ってあるラセン型(写真下)とリーマー状の刃がついている角型(写真上)があります。

 プールタップ

 タップでネジを切っている途中で、タップが折れてしまった場合にその折れたタップを抜き取る工具です。切りくずをためる溝に爪を入れて回転させてタップを抜きます。ですから、タップのサイズにあわせてプールタップがあります。写真上からM6・M5・M4・M3用のプールタップです。M6は爪が4本、それ以下のサイズは3本爪です。ハンドタップとポイントタップの除去に使えます。
 しかしながら、タップが折れた場合金属にしっかり溝が食い込んでいる状態がほとんどです。プールタップで逆にまわして折れたタップを抜くというのはかなり熟練した技術が必要です。大抵の場合プールタップの爪が折れてしまいます。

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 グリスポンプ(グリスガン)
写真1
 回転部分、主にベアリングに注入されているグリスは長年使用しているうちに、熱で液化してなくなってきます。その為に、なくなったグリスを補う必要が出てきます。グリスを注入する工具がグリスポンプです。
 グリスポンプには手でポンプにグリスを詰めてから使用する比較的小さい直入れ式と、チューブ入ったカートリッジグリスをそのままポンプに取り付けて使用するカートリッジポンプがあります。
 また写真1で見て分かるように、ポンプ自体に長さがあります。狭い機械の中でうまくグリスポンプのレバーを動かすことは困難な場合が多いため、ほとんどの場合グリスポンプの先端をあてるグリスニップルの形を変えて対応しています。もちろん、ポンプのノズルにもまっすぐな物だけでなく、30°ほど傾斜したノズルもあります。しかしながら、その都度ノズルを交換するのは面倒なので、あらかじめニップルをグリスポンプのノズルの差し込みやすい物に変えておきます。
 ニップルにはスプリングで押さえつけられた鋼球が入っています。ポンプでグリスを注入するとグリスで鋼球が押し下げられ中にグリスが入ります。入れ終わると鋼球はスプリングでニップルの内壁に押し付けられグリスが逆流するのを防ぎます。
写真2
 写真2はストレートと直角に曲がったグリスニップルですが、他にも45度傾斜したグリスニップルもあります。それでも、ノズルがうまくかみ合わないような狭い場所には、ホースノズルを使えばよいでしょう。ただ問題があります。片手でホースノズルの先端をニップルに押し付けながらもう片方の手でレバー操作をして注入するということは困難です。ホースノズルを使う場合はピストル型のグリスポンプを使うか、写真3のような電動式のポンプを使うことを推奨します。
写真3

 オイルでいう粘度に相当するものが、グリスにもあります。ちょう度といい、0号から6号までの7段階あります。数字が大きくなるにしたがって硬くなります。0号の下にさらに00号・000号がありますが、形状は粘度の高い液体です。
 カートリッジグリスには、大きく分けてリチウムグリス・シャーシーグリス・モリブデングリスの種類があります。カートリッジの場合はキャップの色で分かるようになっています。リチウムは黄、シャーシーは燈、モリブデンは白です。その他にも、食品用に大豆油から精製したホワイトグリスなどというものもあります。ベアリングには特にアルバニアグリス(商品名)が良く使われています。カートリッジは80ml・200ml・400ml前後の容量です。それぞれグリスポンプに合わせて使ってください。
 大抵の場合は、機械にどのグリスを補充すべきか表示してありますので、それに従ってください。補充量はポンプのレバーが重くなったら満タンになったと判断します。電動式ポンプなら、オイルシールからグリスがにじみ出た時点で補充を中止してください。

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 チェーンカッター

 最近の車はタイミングベルトの進化でエンジンにもローラーチェーンが使われているところは少なくなっているようです。とはいえ農機具・オートバイや伝導機器には確実に力が伝導できるチェーンはまだまだ使われています。
 伝導機器で使われているチェーンはJIS規格でNo25とかNo60とかの番号で規格が定まっています。No25のチェーンは小さいため専用のチェーンカッター(写真下)は必要ですが、No35からNo50は1つのチェーンカッター(写真上)で切断できるようです。
 使い方はチェーンをカッターの溝に入れて、ツマミを回してチェーンを固定します。その状態でレバーハンドルを回して行くとチェーンのピンを押し出してくれます。

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