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自動車修理マニア向けの本には、メガネレンチやスパナのさまざまなメーカーが紹介され、その特徴を解説しています。ここではそういった点はマニア向けの本に譲って、どうしてこういった形状にされているのかという点を含めて安全に使いこなす方法を解説しました。
+・−ドライバー
電動工具が今日のように安価に入手できない頃はマイナスドライバーで締め付けるネジが主流でした。加工が簡単ですから、それほど製造するのにも技術を必要としませんでした。マイナスドライバーの先端の大きさはJIS規格で定められています。しかしながら、電動工具など自動でネジを締め付けるようになると問題が発生してきます。マイナスドライバーの先端は横方向に動きますから、締め付けている途中に動くと、ドライバーの回転モーメントとネジの回転の中心がずれることがあります。こうなるとネジの頭をつぶしたり、怪我をするということになってしまいます。
プラスネジはそういう欠点を解消しています。ドライバーの回転モーメントとネジの回転の中心は一致しています。ですから後述の電動ドライバーを使用すれば押し付けているだけでネジが締め付けられます。
ひとつ欠点があります。大は小を兼ねるといいますが、プラスドライバーは小は大を兼ねることができるのです。ですから、小さいドライバーで1ランク上の大きなネジを回すことが可能です。しかしながら、それをすると隙間が多いためにネジの頭をつぶす原因になります。使う際はプラスドライバーは大きいサイズからネジに入れてみて、入らなかったらサイズを落とす事を心がけてください。
プラスドライバーの先端はJIS規格でNo1〜No4までの大きさがあります。我々の生活のなかでよく使用されているのはNo2のドライバーで締め付けるネジです。ですから1本しか持たない場合はNo2のドライバーがあればたいていの場合事足りるわけです。しかしながら、それでNo3ドライバー用の大きなネジを回すときはネジの頭をなめてしまう危険があります。これはドライバーに対してカムアウト(come out 後述ワンポイント参照)という力が働くからです
ドライバーの先端は磁石になっているものを選びましょう。鉄・ニッケルといった磁性体のネジを締め付けるときには下を向けていてもネジが落下することなく非常に便利です。
また、ドライバー全体の長さも考慮しなければいけません。奥に差し込んでネジを締め付ける場合は握りから先端までが長い写真の1番上のようなドライバーが必要です。しかし逆にネジの後ろに障害物があるような場合は、写真下2つに示すスタビードライバーという全長の短いドライバーが必要になります。スタビードライバーはNo2のサイズです。覚えておいて損はありません。
インパクトドライバー
錆ついたようなネジを緩める場合、かなり神経を使います。ネジが緩まないためにどうしてもドライバーの先端(ビット)がネジから離れるように力が働いてしまいます。ですから、ネジからドライバーのビットが浮かないようにしっかり押し付けながらドライバーを回す必要があります。しかし、これはかなり経験が必要です。どの程度でネジの頭が駄目になるかの判断が経験を積まないと難しいからです。
そういった問題をある程度考えて作られたのがインパクトドライバーです。ドライバーの後ろをハンマーでたたくとドライバーのビットが回転します。ドライバーの柄の先端に回転方向を選択するリングが付いています。このリングの位置L(左回転)に合わせてハンマーでドライバーの後ろをたたくとドライバー先端のビットはネジを緩める方向に回転します。またリングの位置をR(右回転)に合わせると締めつける方向にビットが回転します。
ビットの材質と大きさは選択できます。これもかなり大切な要素となります。プラスドライバーのようにビットの小は大を兼ねてしまうからです。またあまり硬い材質のビットを選択するとネジが緩むのに必要なトルク以上に力が加わりネジの頭をつぶしてしまうからです。しかしビットは硬いためにつぶれません。
ビットはプラス・マイナスドライバビットだけではありません。キャップスクリューネジ用にヘキサゴンビット、ヘックスローブネジ用にヘックスローブビットもあります。
ワンポイント(ビスのカムアウト)
インパクトドライバーを使用するのはドライバーでビスを緩める方向に回そうとするとドライバーが浮き上がる力を打ち消す必要があるからです。この力をカムアウト(come out)といいます。この力の少ないビスを開発する必要がありました。とはいえ現状のドライバーが使えなければなりません。その結果、「ポジドライブ」「スパドライブ」という商標のビスがイギリスEIS社の手により開発されました。
一方ボルトでカムアウトの小さいネジは「ヘックスローブ」(トルクスネジ)という商標でU.S.A.のテキストロンカムカー社が開発しました。その後、トルクスネジでネジ穴の中心に「いじりどめ」の突起のついたタイプも開発されました。
ソケットドライバー
形状はドライバですが、先端はナットを緩めることができるようにソケット(ボックス)レンチになっています。大きなナットを緩めるためではありませんので、6〜12mm程度のソケットが用意されています。
ビスとナットで固定するというような場合にナットをソケットドライバで固定しながらビスを回したり、この逆にビスを固定しておいてソケットドライバを回転させてもOKです。
電動のドリルドライバにはこのソケットビットを取りつけられます。数を多く緩めたり締め込んだりする向きにはドリルドライバを使われるのが便利でしょう。ただ高速で回転しますので、ネジがきちんと合っていないとネジ山をつぶす事になってしまいます。
6角棒レンチ(ヘキサゴンレンチ)
このレンチで回すネジの名称をキャップスクリューネジ(キャップネジ)といいます。自動車を修理される方の間では、ヘックスボルト(ヘキサゴンボルト・アレンボルト)とも呼ばれています。このネジは、外6角のボルトに比較してコンパクトに出来ています。ですから複雑なエンジン内部などにも多様され、先述のプラスネジ同様に自動(電動)工具の発達と共に使用が増えてきたようです。また金属加工の精度・技術の発達も見逃せない条件でしょう。
ネガネレンチ・ソケットレンチ同様に力は6面すべてに均等に加わりますから、大きなトルクで締めつけが可能です。
写真上側のように、6角レンチの柄が長いロングタイプで、さらに柄の先端を球状に加工したものを特にロングボールレンチと呼びます。ボールレンチはボルトの頭に対して垂直でなくてもボルトを回すことが出来ます。ただあまり大きな力を加えるような場合はさけてください。
購入される場合は焼入れがしっかりされている物を選んでください。また柄の後ろにリングがついてバラバラにならないように気を配ったと思わせるセットがありますが、使いづらいので薦められません。1本1本単体で使用できるものを選んでください。
キャップスクリューネジとセットスクリューネジ
キャップネジ(キャップスクリューネジ)はネジの頭が帽子のCAPに似ているところからそう呼び始めたと思われます。同様に6角棒レンチで回すネジにセットスクリューネジというものがあります。これは縮めてセットネジとも呼びます。
この2つのネジですが工具が共通だからと同じ目的に使用すると失敗します。どこが違うかといえばネジの先端です。キャップスクリューネジは平らです。それに対してセットスクリューネジは火山の噴火口のように溝が入れてあったり、丸くボール状に加工してあります。
セットスクリューネジはネジの先端でネジの先端にある金属を固定する目的で使用します。ですから金属に食い込む必要があります。平らですと力が分散されます。先端を尖らせることでしっかり押されつけられます。
スパナレンチ
スパナはスパン(span)という言葉に起因しています。スパンというのは指と指の間隔という意味です。スパナの形状を観察すると親指と人先指に似ているでしょう。スパナはボルトナットの平行な2面をくわえて回す工具です。
一般的には鋼材の両端にそれぞれのナットの頭に合う異なる大きさの幅に切れ込みの入った両口スパナと呼ばれる物が多いようです。スパナの呼び寸法は回せるナットの組み合わせで表します。10mmと12mmのナットを回せるスパナは10x12といいます。
スパナの先端形状は槍のように尖っているほうが狭い場所でも使いやすいです。また柄が長いもの、スパナの口が片側のみでその分、柄が長くできているものもあります。しかしながら、後述のメガネレンチやソケットレンチに比較してナットの2面にしか力が加わらない構造ですので、おのずと加えられる力にも限界があります。
また、粗悪な鋼材の材質のものは力を加えたときに鋼が伸びてスパナの口が広がってしまい、ナットの角をつぶしてしまうことがあります。良いスパナはメッキの厚さまで考慮して口の大きさを決定して作られています。
6〜22mm位までを6本のセットにしたものが多く流通しています。鋼材の質と加工の精度を考えてある程度の価格から上の物を選択してください。いい工具は一生モノです。
一般的なスパナは口が15度傾斜して取り付けられています。これを表裏交互に使うことで30度の送り角度を得られます。これは狭い場所での使用を考えてのことです。
椅子のキャスターなど締めつける時には薄いスパナが必要になります。この極薄スパナを特にタペットスパナといいます。
ソケットレンチ
写真1
円筒形の内側がナットに合うようにえぐられています。内側は6角のものとメガネレンチのように12角のものがあります。円筒形のソケットに丸棒が溶接されています。
6角と12角のソケットを比較してみましょう。ナットに入れやすいのは12角のソケットです。しかしソケットの強度は6角の方が上です。しかし12角の角の入れ方と角度のつけ方を工夫して6角のソケットよりも大きなトルクを加えられるソケットレンチも出まわっています。
写真1はソケットレンチのセットです。中央のハンドルにソケットを取り付けて使用します。中央のハンドルを特にラチェットハンドルといいます。ハンドルの上のシャフトをエクステンションバーといい、深いところのナットを回すのにラチェットハンドルとソケットの間に取りつけて使用します。
ソケットレンチはナットの全面もしくはメガネレンチ同様6つの角に均等に力が加わります。更に、メガネレンチに比較してナットの片面側には鋼材を肉付けすることが可能ですからメガネレンチより大きな力を加えてもソケットが割れるということはないでしょう。
ソケットレンチはメガネレンチ同様大きな力をナットに加えることが出来るため、柄はメガネレンチ同様スパナに比較して長くなっています。
写真2
写真2のようなソケットレンチを特に形からTレンチと呼んでいます。また先端にソケットのついた丸棒を十文字に組み合わせたものや、Y型のものがあります。それぞれ形からYレンチと呼んだり、十字レンチということもあります。またソケットレンチをボックスレンチともいいます。
メガネレンチ
スパナレンチが口がコの字になっているのに対して、口がリング状になっています。スパナレンチがナットを横からくわえるのに対して、上から差し込んで加えます。大抵、12面のカットが施され、ナットのすべての角をしっかり保持します。ですから、スパナがナットの2面にしか力が加わらないのに対し、6つの角で力を加えることができます。それだけ大きな力で締め付けができるわけです。ですから、スパナに対して柄の長さもそれなりに長くすることができます。
12面のメガネレンチだと30°以上の回転角がとれればナットを緩めることが可能です。呼び方はスパナと同様に、メガネ口径の対角の2面幅寸法で表し10mmと12mmのナットを回すことの出来るメガネレンチは10x12と呼びます。
またスパナに比較して大きな力を加えることができますから、材質はしっかりした良いものを選ばないと、力を加えた際にレンチのリング状になった部分が歪んでナットの角をなめてしまうということになってしまいます。良いメガネレンチですと、緩まないときにナットの角をつぶす以上の力が加わると、メガネの部分が割れてナットの頭を保護してくれます。
ナットの頭がつぶれてネジがはずせなくなる事態と、メガネレンチが破損する事態とどちらが機械修理においてダメージが大きいのでしょうか。
これもスパナ同様、6〜22mm程度までを6本組セットにしたものが一般的のようです。さらにメガネの部分が柄に対してオフセットされているレンチをオフセットレンチといいます。オフセットの角度もメーカーによって15°〜70°まで様々です。これはナットの隣にナットがある場合、レンチがまっすぐだとそのナットが邪魔になってまわせません。そういう不都合を回避するために、メガネの部分と柄の部分をずらして作ってあるのです。メガネレンチでもラチェット構造のレンチはその必要がないためにオフセットになっていません。
ボックスレンチなどであれば用途によって使い分けができます。わざわざオフセットの角度は何度がいいのかとか悩む必要はありません。最後にメガネレンチという言葉は和製英語です。外国では通じません。ダブルエンディッドリングスパナとかダブルヘックスボックスレンチと言うそうです。
コンビネーションレンチ
スパナレンチとメガネレンチを両端に取り付けそれぞれの欠点を補った工具です。緩め始め、あるいは最後の締め付けにはメガネの部分を使用し、トルクが必要でない部分はスパナを使って早くまわすという使い分けが1本の工具でできます。また写真上のようにメガネの部分がラチェットになっているコンビレーションレンチもあります。先にも述べましたが、ラチェットのメガネの付いたコンビネーションレンチはオフセット構造になっていません。ストレートです。
ただ欠点は、一通りのサイズをそろえるとなると、通常のメガネレンチやスパナレンチの2倍の本数になってしまうという点です。
ワンポイント(ダブルナットの活用)
スタッドボルト(ネジの部分だけの埋め込みボルト)を緩めるような場合にどうしたら良いでしょうか。パイプレンチやプライヤーでくわえて回そうとするとネジ山をつぶしてしまいます。そういう場合ナットを2個入れて、互いに締めつけます。そうする事によってナットがネジ山にしっかり食い込み、ナットを回すことでボルトを回すことが出来るようになります。
コンビネーションプライヤ
最も良く見かけるタイプで、単にプライヤといえばコンビネーションプライヤの事だと思ってください。先端で物を挟んで引っ張ることができ、ギザギザ部分でナットをくわえて回すことができます。アール部ではちょっとしたパイプなどをくわえることが可能です。ワイヤーカッター部では写真下のようにあごの根元で針金を切断することもできます。
支点の長穴は柄を90°開いてずらすことにより大きなサイズのものをくわえることができます。しかしなからナットの側面にジャストフィットの大きさにはなりません。またナットをくわえる力は握力に左右されるので、出来るだけ柄の後ろを握って使う癖をつけたいものです。
手で持つことの出来ないような材料をくわえたり、適当な専用工具が手元にないような場合にこれがあると非常に便利です。見方によっては非常に重宝な工具ですが、別の見方をすれば中途半端な工具ですので出来るだけ専用の工具がある場合はそちらを使用する癖をつけたいものです。
また絶縁されていないので電気の流れている回路には使えません。
先端のくわえ部分を長くしたものをロングノーズプライヤ、さらにその部分を斜めに曲げたものを特にベントノーズプライヤといいます。
ウォーターポンププライヤ
水道設備工事屋さんは必ず1本持っている(?)といわれる工具です。別名「烏口」といいます。名前は、その大きく開く烏のくちばしにも似た先端をみれば納得できます。プライヤに比べて支点を5ヶ所ほどスライドさせることが可能です。それによって水道管をもくわえて回すことができることから「ウォーターポンププライヤ」と言われています。先端は約60°斜めに傾けてあるので力を加えやすくなっています。まっすぐ引っ張るという使い方以外は先述のコンビネーションプライヤよりも用途は広いでしょう。サイズは250mmと300mmの2種類があります。特別大きな物をくわえるという用途がなければ250mmの方が使い勝手が良いでしょう。
モンキーレンチ
スパナの口の片側がスライドして色々なサイズのナットをまわすことができるように工夫されたレンチ
です。英語でもモンキーレンチ(Monkey Wrench)で通用します。名前の由来はレンチのスライド
する部分の形状が猿の頭のような形をしていることから来ているという説が有力のようです。正確に
はアジャスタブルレンチ(Adjustable Wrench)といいます。
全体の長さによって色々なサイズが選択できます。サイズは柄の横に数字であらわされています。
サイズに対する最大口径(回せるナットの大きさ)はほぼ決まっています。(表1参照)使い勝手から
すると、大小(300mmと150mm)各1本ずつあるといいですね。
サイズ | 150 | 200 | 250 | 300 | 375 | 450 |
最大口径 | 20 | 24 | 29 | 34 | 44 | 53 |
(単位はmm) | 表1 |
ある意味万能工具ですが、それだけにシビアな条件が求められるような場合は使わない方がよい
でしょう。柄の先端にある回転子(ウォームギア)を回すことで下あご側の口がスライドするわけです
が、回転子とスライドする口の接触部分にはそれなりの遊び(ガタつき)があります。この遊びがナッ
トを回転させる時ににナットの角をつぶしてしまう危険があるのです。言い換えればウォームギア部
分に遊びの少ないモンキーレンチがいいレンチという事にもなりましょう。
もうひとつ、スライドする口の側に力が集中しない方向に、つまり下あご側に回転させてナットを緩
めたり、締めたりしないとモンキーレンチをこわしてしまいます。口の部分が20°前後傾斜して取り
付けられていますので、最初に緩めるときには下あご側に回転させ、次に裏返して使用すれば狭
いところでもOKです。
ワンポイント
工具は手前に引いてナットを緩める習慣をつけましょう。非常にきつく締めつけられたナットを緩
める時、押して緩める方向にレンチを回転させているとナットが回転したはずみにレンチがはずれ
たりして体のバランスを崩すことがあります。これは手前に回転させてナットを緩めたり締めつけたり
することである程度防ぐ事ができます。
パイプレンチ
水道設備工事屋さんは先述のウォーターポンププライヤ同様に必ず持っています。ウォーターポンププライヤは握力でパイプをくわえますが、パイプレンチは回そうとする回転力でパイプをくわえます。ですから、ウォーターポンププライヤに比較して相当大きなトルクで回転させることが出来ます。
サイズはくわえられる最大径のパイプをくわえた際の全長が呼び寸法になっています。200mm〜1200mmまでの8種類がJISで定められています。パイプレンチを使用する上での注意事項は太すぎるパイプをくわえないということです。あごが滑って非常に危険です。また口の部分にゴミや油が付着していても同様に危険です。使用する前にチェックしましょう。
また縦方向(回転方向)に対して力が加えられるように設計されていますから、横方向や斜め方向に力を加えないようにしてください。
柄の部分にパイプを差し込めば、テコの原理で大きな力を得る事が容易にできます。しかしこれはパイプレンチを壊す原因になります。柄の部分にパイプを差し込むような裏技はある程度経験を積んで、力加減が十分に分かってからにしましょう。原則は禁止行為です。
その名のとおりパイプをまわす為の工具ですが、山のつぶれたボルト・ナットも回すことができます。
チェーンレンチ
パイプレンチを最大に広げた状態にすると、パイプの太さに対して口が若干浅いと感じられます。本来そこまで広げて使う場合にはもう1ランク大きなパイプレンチを準備すればいいのでしょうが、なかなか難しい場合もあります。そういう場合に重宝するのがチェーンレンチです。チェーンのジョイント部分に長い丸棒が取り付いています。この部分を柄のくぼみに引っ掛けて回します。チェーンを締め付けることでパイプをまわします。
パイプレンチにはパイプをくわえる口の長さが短いために太いパイプになるとそれに対応したパイプレンチでなければくわえて力を加えられません。ですからパイプの径に対して十分に大きいパイプレンチということになってしまいます。その欠点をみごとに解決したのがチェーンレンチです。チェーン全体でパイプを締めつけるようにして力が加わるからパイプにもあまり傷がつきません。
使い方は、まずパイプの周囲にチェーンを巻きつけてレンチの付け根にチェーンを引っ掛ければそれでOKです。次にレンチを回すことによってチェーンが張り、それによってパイプを締めつけるわけです。ただどちらが一般的によく使われているかといえば、パイプレンチでしょう。その理由はチェーンレンチよりも価格が安くて、使い勝手がいいからでしょう。
フランジレンチ
チェーンレンチはその名のとおりチェーンを使っています。同様にチェーンを使っていますが、幅の広いチェーンを使ってあります。これはフランジの用に直径が大きくて幅の狭いものに通常のチェーンをかけたのでは力を加えた際にすべって外れてしまう危険があります。その為の工具です。先述のパイプレンチが使えるのであればそれでもOKです。
ワンポイント
写真は丸パイプに平板を溶接したものです。写真のようにメガネレンチや6角ボールレンチに差し込んで大きな力を得ることもできます。先述しましたが、自己責任で作業してください。工具を壊す原因になります。
これは、平板部分をハンマーでたたくことによりタガネの代用にもなります。ベアリングを穴に挿入する場合にはパイプをベアリングの外輪に当てて叩き込むなど大変重宝です。
あると便利ですが、使う時には十分注意が必要です。
スナップリングプライヤ
ベアリングやシャフトがスライドしない様にスナップリングで固定する方法があります。このスナップリングをはさむ工具がスナップリングプライヤです。スナップリングプライヤは握ると先端が閉じるものと開くものがあります。また写真上のように先端がまっすぐなものと写真下のように90度曲げられているものがあります。
スナップリングプライヤの良し悪しはスナップリングの穴に差し込む先端の金属の硬さによります。硬度が不足しているとリングを取り外そうとした時にリングのバネの力で変形してしまうからです。工具は駄目になり、スナップリングははずせないという泣きっ面に蜂状態になってしまいます。
写真は先端部分です。左が穴用、右が軸用です。わずかに角度がつけられていてスナップリングをつかんだ時に外れないようになっています。
ひとつのプライヤーで先端金具を交換する事で穴用と軸用の使い分けのできるものもあります。
スナップリング
スナップリングには軸用と穴用の2種類があります。写真左側が軸用、中央が穴用です。スナップリングの使われている場所は回転軸や穴の部分です。回転による摩耗などが原因でシャフトが横方向にずれないようにするためです。
回転する部分に使われているベアリングの固定を考えてみましょう。例えば6000番のベアリングの内輪は15mm、外輪は24mmです。ですから、シャフトに使用する場合は呼び径15mmの軸用スナップリングを、また穴に使用する場合は呼び径24mmの穴用スナップリングを使うことになります。また材質はバネ鋼とステンレスの2種類があります。
写真右側は軸に使用するEリングという止め金具です。軸用のスナップリングと使用目的は同じです。形がアルファベットのEに似ていることから名前が付いています。スナップリングの用にプライヤ用の穴がありません。その分径の小さいシャフトに限定されるようです。呼び径で0.8mmから24mm程度までのサイズです。ただしステンレス製のEリングのサイズは19mm程度までです。これはバネ鋼でないため強度が不足するためと思われます。
割ピン
写真左端が割りピンと呼ばれるものです。サイズは5mm間隔であるようです。使用目的はスナップリングの軸用とほとんど同じです。割ピンを使用する場所にはシャフトにピンを通す穴が開けられています。その穴に割りピンの両足を指し込み穴に貫通させ、穴から出たところでペンチやプライヤで折り曲げて抜けないようにします。
その隣はスナップピンと呼ばれています。使い方は1本のピンが穴の中を、もう1本のピンはシャフトの外側を通ります。使用目的は割りピンと同じですが、割ピンは再使用出来ないですが、スナップピンは何度でも繰り返し使用できます。ただ余り大きな力には耐えられませんので、サイズは4〜20mm程度までです。
写真右から2つめはスプリングピンです。写真では解りにくいのですがハガネを丸めてバネにしてあります。これはシャフトとシャフトを連結するような場所で使います。片側のシャフトを穴加工してもう一方のシャフトが差し込めるようにします。差し込んだ状態でスプリングピンの径より少し小さい径の穴をあけてスプリングピンを挿入します。
写真右端はテーパーピンです。使用場所、目的はスプリングピンと同じです。スプリングピンがハガネを丸めただけなのに対してむくの鋼材ですから、さらに大きな力に耐えられます。共に指し込むときはハンマーなどでたたきこみます。抜く時は平ポンチを反対側からあててハンマーでたたいて抜きます。
万力(バイス)
写真1
写真2
写真3
写真1のように頑丈な作業台にしっかりと固定された万力を思い浮かべる方も多いと思います。この万力を丸胴万力といいます。その他に、写真2右側をベンチバイス、写真2左側はボール盤用バイスといいます。ボール盤の台座の上に載られるように底面が平らにできています。ベンチバイスはドリルで穴を開ける材料を固定したりする時に使用します。ベンチバイスは下側のハンドルを締めつけて作業台に固定して使う小型のバイスです。
写真1・2の万力に共通して注意しなければならないのは締め付けネジ部への注油です。丸胴万力であれば、可動部の後ろに注油口(写真3)があります。ここから注油してください。写真2のタイプはネジ部が露出していますから簡単です。しかしながら露出しているために金属屑などが付着しやすいですから、清掃が必要です。
また口金が変形してくると材料を傷めるだけでなく、材料をきちんとくわえられないために材料がずれて思わぬ事故につながります。口金の変形した万力と、可動部分にがたつきの大きな万力は使わないようにしてください。
シャコ万力(C型万力・バーコ型万力)・グリッププライヤ(バイスプライヤ)
クランプともいいます。2つの材料を固定して接着したり、溶接したりするのに重宝です。複数個用意して仮止めしたり、位置を合わせたりするのに使用します。(写真左側)
写真右側はグリッププライヤです。プライヤと名前がついているのでプライヤのところで説明すべきかもしれませんが、使い方は先述のクランプとほぼ同様の使い方をします。ウォータポンププライヤ同様に支点を変えることでくわえられる大きさが変わります。材料を程よい支点でくわえて思いっきりグリップ(柄)を握るとシャコ万で締めたのと同様に固定できます。 緩める時は、グリップハンドルの上にあるレバーを押し下げることで開放されます。
これらの万力は機械の締め付けや、溶接作業時の固定用に考案された工具です。しかしながらたまに吊り作業に使われていたりしますが、本来横向きの力には耐えられませんので、万力を壊したり、吊り下げ物が落下したりという事故につながります。
また挟み込む場合に出来る限り挟み込む材料の重なりを大きく取るほうが材料がずれ難くなります。