各種飲料容器に関するライフサイクル影響評価の試み
Case Study of Life Cycle Impact Assessment of Beverage Containers
○伊藤 健司(1)、中澤 克仁(2)、坂村 博康(3)、安井 至(3)
Kenjy ITOH, Katsuhito NAKAZAWA, Hiroyasu SAKAMURA, Itaru YASUI
(1)科学技術振興事業団(CREST,JST);(2) 東海大学工学研究科(Graduate School of Engineering, Tokai Univ.); (3)東京大学生産技術研究所(IIS,Univ.Tokyo)
1.はじめに
「ライフサイクルにおける各種飲料容器の環境負荷評価」(別発表)のライフサイクルインベントリ分析(以下LCIと略す)に対してライフサイクル影響評価(以下LCIAと略す)を実施した。「時間消費法」を用いてインパクト重み付け係数を算出し、さらに時間消費法以外の手法を含めてLCIAを実施しすることで、LCIAの手法の違い等が容器間比較に与える影響を検討した。
2.時間消費法によるLCIA重み付け係数算出方法
「時間消費法」は、安井1)が考案した手法で、環境負荷を時間の消費量として表現することによって異なった環境カテゴリ間の重み付けを決定する方法である。時間消費法は、いくつかの環境問題について、「現状がそのまま推移すると、何年後かにはなんらかの環境的な危機を迎える」と仮定し、その危機が来るとすれば、それは何年後に発生する可能性があるか(危機発生までの年数)、 およびその危機は相対的にどの程度大きいか(致命度) を、それぞれの環境カテゴリごとにアンケート調査することを通して算出する。
3.「時間消費法」による重み付け係数の算出結果
2001年6月11日〜20日に、一般市民、LCAに関する研究会や工業会会員、環境やLCAに関する有識者、および大学生を対象にして、時間消費法によるLCIA重み付け係数算出の為のアンケートを実施した。回答数は合計で91件になった。回答をクラスタ分析することでいくつかの集団に分割し、各集団の重み付け平均を求めた結果を図1に示す(全体平均をTCM-avとし、各クラスタはTCM-1〜7とする)。それぞれからLCIA重み付け係数を求め(淡水消費、固形廃棄物を含む11項目)、日本全体の環境負荷を算出した結果を図2に示す。なお、EPS2000、エコインディケータ95(以下、EI95と略す)および99(同、EI99)、早稲田大学の永田による方法(同、Nagata)、産業技術総合研究所の伊坪による方法(同、Itubo)、エコポイント97(同、EP97)についても、同様に日本全体の環境負荷を算出した。
4.各種飲料容器のLCIA結果
「時間消費法」を用いて算出したLCIA重み付け係数(TCM-av)を各種容器のLCI結果に対して適用した結果を図3に示す。
さらに、TCM-1〜7、および他手法のLCIA重み付け係数を用いて、同様にLCIAを算出したが、図3のTCM-avの場合と非常に強い相関を示した(相関係数:0.8〜0.9)。LCIAへの影響が大きな固形廃棄物、エネルギ消費、二酸化炭素排出、硫黄酸化物排出、窒素酸化物排出の間に比較的強い相関が認められるためと考えられる。
5.結論
複数の重み付け係数を「時間消費法」を用いて算出した。各種飲料容器のLCIに適用した結果、LCIAの重み付け係数の違い/曖昧さは、LCIの主要要素間の相関が強い本ケースの場合はあまり影響しなかった。
複数の重み付け係数を用いることで市民全体の環境意識を集約することは可能であり、またLCIA実施に必要なデータや概念が比較的曖昧でも、「曖昧さをコントロールしつつ実用に耐えうる結果をだすことは現時点でも十分可能である」と考える。
6.参考文献
1) 安井至、時間を基準とするインパクト分析法の提案と応用例―時間消費法−、第三回エコバランス国際会議講演集、未踏科学技術協会他、89(1998)
[キーワード:容器間比較、時間消費法、ライフサイクル影響評価、重み付け、CREST]