「容器間比較研究会、LCA手法による容器間比較報告書(改訂版)、(57〜69)2001.8」より


容器間比較に関するインパクト評価(ライフサイクル影響評価)の試み


1.実施の目的
本編の容器間比較の検討は、ライフサイクルインベントリ分析(以下LCIと略す)が中心になっている。本来、LCIの結果はLCAの中核をなし、LCIの結果を意思決定などに利用することは現時点でも十分に可能である。しかし、複数の環境負荷項目を算出している場合は、単一指標(統合値)を算出したほうがLCAを利用する上で都合が良いことがある。そこで、本編で検討されたLCI結果に対してインパクト評価(以下LCIAと略す)を試行し、今後の容器間比較の検討およびLCAの結果を意思決定に利用するためのノウハウ蓄積を図ることにした。
LCIAを実施するにあたって、日本におけるインパクトの重み付け係数決定事例が少ないことや、例えば淡水消費などのデータ区分に関する重み付けがないことから、新たに重み付け係数を決定し、これを用いることを試みた。本章の目的を以下にまとめて記す。

  1. LCIA手法の一つである「時間消費法」を用いて、各種データ区分に関する重み付け係数を決定し、「時間消費法」に関するデータ蓄積および検討課題を抽出する。
  2. 算出した重み付け係数および「時間消費法」以外の重み付け係数を用いて容器間比較のためのLCIAを算出し、重み付け係数の違い等が容器間比較に与える影響を検討する。

2.時間消費法によるLCIA
「時間消費法」は、東京大学生産技術研究所の安井 1)が考案した手法で、環境負荷を時間の消費量として表現することによって異なった環境カテゴリ間の重み付けを決定する方法である。今回、時間消費法で用いられる手法の一部を使ってLCIAの重み付け係数を決定し、これを容器間比較のLCIAに利用した。以下に、時間消費法を利用したLCIA手法について簡単に述べる。
まず、環境問題を表1に示すような11カテゴリに分類する。それらの各カテゴリに重み付けをして単一指標にまとめるという「LCIAの重み付け」は、純粋に科学的な技術だけでなく、何を大事に考えるかといった社会通念によって決めていく必要がある。「時間消費法」はアンケート調査を用いて、一般社会の考えを反映させる手法の一つで、ISO-14042などで言及されているエンドポイント方式に対してミッドポイント方式と呼ばれる手法である。

表1 時間消費法で考慮する環境カテゴリ及び物質
カテゴリ 考慮している主な物質
1 地球温暖化 CO2、CH4、N2O、HFC134a、HFC else、PFC、SF6、CFC-11、CFC-12
2 オゾン層破壊 CFC-11、CFC-12、CFC-113、HCFC-22、HCFC-123
3 大気酸性化 SOx、Nox
4 大気汚染 CO、Dust(SPM)、NOx、PAH、SOx、CH4、VOC
5 重金属・発ガン性物質汚染 Hg、Mn、Pb、As、B、Ba、Cd、Cr、Cu、Mo、Ni、Sb、PAH、Org. Cl cmp
6 水質汚濁・富栄養化 BOD、COD、SS、n-hex、NOx、N total、P total
7 淡水使用 H2O
8 エネルギ消費 Crude oil、Coal、Natural gas
9 資源消費 Al、Cu、Fe、Ni、Pb、Sn、Zn、SiO2、CaCO3、Clay、Wood
10 固形廃棄物 (Total Weight)
11 その他 上記10分類に含まれない問題

 時間消費法を用いたLCIA実施の手順を以下に示す。

  1. 表1に示す11カテゴリの一つ一つの環境問題について、「現状がそのまま推移すると、何年後かにはなんらかの環境的な危機を迎える」と仮定する。その危機が来るとすれば、それは何年後に発生する可能性があるか(危機発生までの年数)、 およびその危機は相対的にどの程度大きいか(致命度) を、それぞれの環境カテゴリごとにアンケート調査する。なお、ここで考えるバウンダリは日本全体とし、致命度は相対的な値(単位なし)とする。
  2. 時間消費法のアンケート調査に回答するには、それぞれの環境カテゴリごとに何らかの知識および見識が必要になるが、調査の際に表1に示すような概略を述べ、また各カテゴリごとに一般的な情報を得られるように工夫することが必要である。また、アンケートは現状の研究の結果として得られる値を示すのではなく、あくまで回答者の直観を利用するように促した。
  3. アンケートの回答値をつかって、すべてのカテゴリごとに式1に示すように重要度:Wi を算出する。
  4. i カテゴリ内のk 番目のインベントリ値がIik で表されるとき、その対象が環境に与える影響( Etcm )を式2に示すように算出する。Aip は本来「環境負荷の環境容量に占める年間の消費量」を意味し、「環境負荷年間全使用量or全排出量」に対していくつかの補正を必要とする。前回報告(第一版)はいくつかの補正を導入していたが、今回は他の重み付け手法との整合性を取るために補正しなかった。なお、今回はCO2、NOx、SOx、BOD、COD、T-N、T-P、SS、淡水、エネルギ、固形廃棄物量を考慮しているが、カテゴリ内の重み付け係数は、地球温暖化係数(GWP.IPCC:1995)、酸性化特性係数(Heijungs:1992)、大気汚染防止法想定環境濃度、水質汚濁防止法基準値などから算出した。
    ・・・・ 式1
なお、
Wi i カテゴリの重要度
m :環境カテゴリ
j :回答者
Rij i  カテゴリ、j 回答者の「致命度」回答値
Tij i カテゴリ、j 回答者の「危機発生までの年数」回答値
n :回答者数
・・・・ 式2
なお、
Etcm  :時間消費量(year)
Wi i カテゴリの重要度
i :環境カテゴリ
p :カテゴリ内の項目
Iik i カテゴリ、k カテゴリ内項目のインベントリ値
Cik i カテゴリ、k カテゴリ内項目のカテゴリ内重み付け係数
Aip i カテゴリ、p カテゴリ内項目の環境負荷年間全使用量or全排出量

3.時間消費法と他のLCIA手法との比較
現在、LCIAの重み付け手法は大きく分けて二種類の方式が提案されている。ひとつは、環境負荷物質の放出などの物理量から最終的に被害を受ける対象までの因果関係モデルを構築し、必要な係数等を科学的に決定することを通して算出する「エンドポイント評価方式」。もうひとつは上記モデルの途中からパネルやアンケートを用いて評価する「ミッドポイント評価方式」である。エンドポイント評価方式を利用した例は、「エコインディケータ95/99」、「EPS2000」、LCAプロジェクト(経済産業省の外郭団体である産業環境管理協会が主体で実施)で検討されている方法などがあり、ミッドポイント評価方式の例は、早稲田大学理工学部の永田によるパネル法、安井による「時間消費法」などがある。
エンドポイント評価方式は、モデルおよび算出に関する推定方法の透明性が確保されている(どの対象に対する被害か、被害量はどの程度であるかが科学的に表現されている)利点がある一方で、(1)現時点で解明されていない現象や明確になっていない潜在的な保護対象を評価できない、(2)過去のデータからの類推で未来を予測しようとするため現時点で被害が発生していない現象を組み込むことが難しい、(3)互いに相関がある項目を線形結合することを何度も繰り返しているために、線形代数学的に環境負荷を正確に表現していない可能性があるなどの問題点がある。
ミッドポイント評価方式は、モデルの自由度が高いために回答者が重み付け設定に関する曖昧さをすべて加味できる(まだ発生していない現象の不確実性を加味したり、リスクアセスメント的な考え方を組み込むことが可能)ことや、上記エンドポイント評価方式を手法として内包することが可能であるなどの利点があるが、(1)パネルや回答者が正確かつ公平な科学的知識をもつ必要がある、(2)パネルや回答者のバイアス調整や公正な集計法が未確立である、 (3) 回答者の負担が大きい(回答項目数が多く、因果関係を加味する等の諸問題の解決をすべて回答者に依存する)など問題点がある。
現時点では両者とも利点および欠点があり、どちらかが優れているという結論を出す段階ではない。しかし、「時間消費法などの比較的自由度が高いアンケート方法を用いて、市民全体の環境政策のための意思を集約する」という観点からの取り組みであれば、それ自体に社会的な意義があるのではないかとの考え方に基づき、「時間消費法」を用いたLCIA重み付け係数設定を試みることにした。

4.「時間消費法」による重み付け係数の設定方法およびその結果
 2001年6月11日〜20日に、一般市民、LCAに関する研究会や工業会会員、環境やLCAに関する有識者、および大学生を対象にして、時間消費法によるLCIA重み付け係数算出の為のアンケートを実施した 2)。回答数は全体で91件になった。それぞれのアンケート回答から式1の各Wi を求めた結果を図1に示す。また、回答者属性ごとにWi の平均を求めた結果を図2に示す。図2から各回答者属性ごとのWi 平均が全体平均とあまり違わないことから、図1のWi のばらつきを説明する因子として回答者属性は不適切であり、また全体の平均、あるいは各回答者属性ごとの平均をもって回答者の総意とすることは難しいと考えられる。

 そこで、全回答者の回答をクラスタ分析することでいくつかの集団に分割し、各集団のWi 平均を求め、それぞれからLCIA重み付け係数を求めることにした。
クラスタ分析は、c-平均法 3)を用いた。クラスタ数は試行錯誤の結果、7クラスタとした(図3)。それぞれのクラスタごとに各回答のWi の平均を求めた結果を図4に示す。
 それぞれのクラスタの特徴および略称を表2に示す(全体平均から算出した重み付け係数はTCM-avと略す)。


表2 各クラスタの略称と特徴
略称 クラスタの特徴
TCM-1 「水質汚濁/富栄養化」に約4割の重要度を与えているクラスタで、「大気汚染」「固形廃棄物」にも重点がある
TCM-2 「大気汚染」、「大気酸性化」の合計に約4割の重要度を与えている
TCM-3 「地球温暖化」に約4割の重要度を与えているクラスタで「エネルギ消費」にも重点がある
TCM-4 「淡水使用」、「エネルギ消費」、「資源消費」の合計に約6割の重要度を与えている
TCM-5 「固形廃棄物」に約4割の重要度を与えているクラスタで、「エネルギ消費」「資源消費」にも重点がある
TCM-6 「重金属/発ガン物質汚染」に約3割の重要度を与えているクラスタで、「固形廃棄物」「その他」にも重点がある
TCM-7 「オゾン層破壊」に約5割の重要度を与えているクラスタで、「その他」にも重点がある

全回答の式1のWi 平均、および7つのクラスタごとのWi 平均のそれぞれについて、式2から単位インベントリあたりの Etcm を算出し、それぞれのインベントリごとに重み付けを決定した。算出した重み付け係数をもとに日本全体の環境負荷を算出した結果を図5に示す。なお、EPS2000、エコインディケータ95(以下、EI95と略す)および99(同、EI99)、永田による方法(同、Nagata)、産業技術総合研究所の伊坪による方法(同、Itubo)、エコポイント97(同、EP97)についても、同様に日本全体の環境負荷を算出した結果を図5に示す。なお、他の手法は、考慮していないデータ区分があるため、それを表3に示す。


表3 各手法で考慮しているデータ区分(○で示す)
データ区分 EPS2000 EI95 EI99 EP97 Itubo Nagata TCM
エネルギ消費
二酸化炭素排出
硫黄酸化物排出
窒素酸化物排出
水圏排出:BOD        
水圏排出:COD  
水圏排出:T-N    
水圏排出:T-P    
水圏排出:SS            
淡水消費            
固形廃棄物        
TCM:「時間消費法」の略                                        

日本で算出された重み付け係数であるItubo、Nagataに対して今回算出したTCM-avを比較してみると、水圏排出物(+淡水消費)のカテゴリ内の処理が異なることを除けば、非常に相関が強いことがわかる。また、「エネルギ消費」+「二酸化炭素排出量」、「窒素酸化物」+「硫黄酸化物」、水圏排出物+淡水消費といった3つのカテゴリ間の割合で見ると、EPS2000を除く他の重み付け手法とも相関が認められる(EPS2000は、今回考慮していない資源消費の重み付けが大きい。エネルギや環境負荷物質の排出が資源消費の形で考慮されている可能性があるために今回の検討から相関があるか否かは判断できない)。
今回は、インベントリのデータ区分に含まれていない「重金属&発ガン性物質汚染」、「オゾン層破壊物質」、および「資源消費」を対象外とした。「資源消費」は代替が不能でかつリサイクルが難しいものに対象を絞るべきであり、また「重金属&発ガン性物質汚染」および「オゾン層破壊物質」の排出が認められる場合はLCA実施の対象外としたほうが環境に関する意思決定上も都合が良いと考える。
今回これらを除くことで、(1)各LCIA重み付けの間に相関が認められるようになった可能性があり、(2)またこれらはLCIの曖昧さが比較的大きいカテゴリであることから、「重金属&発ガン性物質汚染」、「オゾン層破壊物質」、および「資源消費」を除くことはLCAを考える上での曖昧さを著しく小さくする効果があると考える。
また、今世紀の地球レベルの最大の環境問題は淡水の枯渇であると言われているが、従来淡水に関して重み付けを考慮したものがなかった。また、日本における固形廃棄物の多量排出による処分場の枯渇問題は、経済発展の抑制要因として十分に考慮する必要があると考えられるが、従来固形廃棄物を含んだ重み付け係数を設定した事例が少なかった。さらに、LCIAの重み付けの違い/曖昧さを検討した事例は少なく 4)、今回の「時間消費法」を用いた複数の重み付け係数設定の試みは、LCIAの曖昧さを考慮しつつ淡水、固形廃棄物を含めたLCIAの重み付け係数算出を成し遂げたことは意義が大きいと考える。

5.各種容器のLCIA結果
5-1 TCM-avを用いた結果
 「時間消費法」を用いて算出したLCIA重み付け係数(TCM-av)を各種容器のLCI結果に対して適用した結果を図6に示す。なお、算出に当たって用いた仮定を下記に記す。

  1. 液体廃棄物は、処理法が不明であることから排出量の1/10を固形廃棄物と同等であると考える。ただし、固形廃棄物と分けて「液体廃棄物」として表現する。
  2. 本事例では、「資源消費」、「重金属&発ガン性物質汚染」、および「オゾン層破壊」の顕著な影響がないものと考える。これらの項目について顕著な影響が認められる場合は、本LCIAは意味をなさない。

 図6の結果をまとめると、
(i) 環境負荷の統合値は、ワンウェイびん、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶が大きく、
(ii) リターナブルびん、紙容器が少ない。
(iii) また、いずれの容器の場合も、未来型の環境負荷が小さくなり、
(iv) ガラスびんはリターナブル回数が増えるほど環境負荷が小さくなることがわかる。

5-2 他の重み付け係数を用いた結果 
 さらに、「時間消費法」を用いて7つのクラスタごとに求めたTCM-1〜7を用いて各種容器のLCIAを算出した結果を図7に示す。それぞれの環境負荷の構成要素は異なるが、統合値は図6のTCM-avの場合とほぼ同じ傾向があることが分かる。各容器のTCM-avを用いた統合値と各容器のTCM-1〜7を用いた統合値との相関を表4に示す。


表4 TCM-avを用いた統合値とTCM-1〜7を用いた統合値の相関
TCM-1 TCM-2 TCM-3 TCM-4 TCM-5 TCM-6 TCM-7
相関係数 0.96 0.99 0.94 0.98 0.95 0.98 0.99

「時間消費法」以外のLCIA重み付け係数を用いて各種容器のLCIAを算出した結果を図8に示す。また、TCM-avを用いた統合値とそれぞれの他手法重み付け係数を用いたLCIA合計値との相関を表5に示す。


表5 TCM-avを用いた統合値と他手法重み付けを用いた統合値の相関
EPS2000 EI95 EI99 EP97 Itubo Nagata
相関係数 0.9 0.98 0.94 0.99 0.97 0.99

表5の相関係数が表4の相関係数に比べてわずかながら小さいのは、表3に示すように考慮してないデータ区分が影響しているものと考えられる。特に固形廃棄物の影響が大きく、日本における環境負荷を考える際には、固形廃棄物の環境影響を加味したLCIA重み付けが必要であることが示唆される。

5-3 LCIA結果に関するまとめと考察 
図6〜8および表4〜5から、各重み付け係数を用いたLCIA結果は、環境負荷の構成要素が違っていても統合値では大差ないことが分かる。また「5-1のTCM-avを用いた結果」で述べた図6のまとめ:(@)〜(C)は、他の重み付け係数を用いた図7、図8の場合も成り立つことが分かる。容器間の統合値の順位が逆転している場合もあるが、一般にLCAにふくまれる曖昧さから判断するとこの程度の違いは許容範囲であり、それを踏まえれば図6が全てのLCIAの結果を代表するとしても問題ないと考える。
表4〜5に示すように各統合値が非常に強い相関を示すのは、主要なデータ区分である固形廃棄物、エネルギ消費、二酸化炭素排出、硫黄酸化物排出、窒素酸化物排出の間に比較的強い相関が認められるためと考えられる。表6に、各容器のTCM-avから求めた統合値と各データ区分の値との相関を示すが、LCIAの主要構成要素でない水質汚濁物質以外は強い相関が認められる。

表6 各容器のTCM-avを用いた統合値と各データ区分値との相関
データ区分 相関係数
エネルギ消費 0.92
二酸化炭素排出 0.83
硫黄酸化物排出 0.95
窒素酸化物排出 0.96
水圏排出:BOD -0.19
水圏排出:COD -0.26
水圏排出:SS -0.26
淡水消費 0.45
固形廃棄物(液体廃棄物1/10含む) 0.84

 「時間消費法」によるLCIA重み付け係数の算出のためにはまだいくつかの課題を解決する必要があり今後も検討が必要である(例えば環境負荷の閾値の概念の組み込み等)が、LCIAの重み付け係数の違いが容器間比較の結果にあまり影響しないことが示せたことは非常に重要であると考える。
 一般に、安易なカットオフやゼロ値設定がなされないProduct-LCA事例の場合、非常に幅広い産業への遡りをバウンダリに含めることになるため、今回のようにLCI結果間(オプション間)の相関が強まる傾向があり、相対的にLCIAの手法の違いあるいは曖昧さの影響は小さくなると考えられる。もちろん、すべてのLCI事例について同様の結果が得られるとの保証はないが、従来考えられていたように、LCIAの手法の違いあるいはLCIAの曖昧さはそれほど重要ではないケースもありうることを今回の検討結果は示している。
 今後は、本事例から明らかなように、LCI、LCIA、曖昧さを含めた不確実性分析をそれぞれ単独の技術として別々に進歩させるのではなく、互いに連携をもたせて技術開発すること、およびLCA実施に必要なデータや概念が比較的曖昧であっても「曖昧さをコントロールしつつ実用に耐えうる結果をだすことは現時点で十分可能である」ことを広く社会に浸透させることと考える。

6.結論
 容器間比較のために、「時間消費法」を用いてLCIA重み付け係数を設定した。一般市民を含めた91名のアンケート結果から、淡水、固形廃棄物を含めたLCIAの重み付け指数(TCM-av)を算出した。さらに、アンケート回答をクラスタ分析して7つのカテゴリごとに重み付け係数(TCM-1〜7)を算出した。
重み付け係数決定のためには社会的合意が必須であるが、特定の属性ごとに平均化するのではなく、少数意見も含めた複数の重み付け係数を用いることができることを示した。
 算出した8種類の重み付け係数および従来の6種類の重み付け係数のそれぞれを用いて容器間比較のLCIAを算出したところ、相互に非常に相関の強い結果が得られた。本ケースの場合は、 (1)主要なインベントリ項目間に強い相関があること、(2)従来のLCAの曖昧さを増大させていた「重金属&発ガン性物質汚染」、「オゾン層破壊物質」、「資源消費」を除いて検討したことから、LCIAの重み付け係数の違い/曖昧さがあまり影響しなかったと考えられる。

7.謝辞
 本「時間消費法」の検討を進めるに当たり、アンケートに真摯に取り組んでいただいた一般市民 5)およびLCA研究会を始めとする各企業団体会員ならびに学会の有識者、学生諸君に感謝いたします。
また、LCIAの検討を進めるにあたり、資料提供やデータ提供などを快く引き受けていただき、さらに有用なご助言をいただいた独立行政法人 産業技術総合研究所の伊坪氏に感謝いたします。


参考文献等

  1. 安井至、時間を基準とするインパクト分析法の提案と応用例―時間消費法−、第三回エコバランス国際会議講演集、未踏科学技術協会他、89(1998)
  2. http://www1.ttcn.ne.jp/~kankyo/lab/t6.htm
  3. 宮本定明、「クラスタ分析入門」、森北出版株式会社、14(1999)
  4. 伊藤健司、不確実性評価とLCIAの連携について、平成12年度環境基本計画推進調査費LCA応用施策に関する検討調査「物質・材料の研究開発および選択におけるLCAの導入に関する調査」調査報告書、文部科学省、135〜138(2001)
  5. 環境情報ボランティア:http://www1.ttcn.ne.jp/~kankyo/lab/t2_1.htm

LCA研究室へ戻る