ヒ ト リ ゴ ト

第31話 無口なカーナビ
第32話 前日予想
第33話 くるった軌道
第34話 観音様
第35話 8羽の水鳥

第31話 無口なカーナビ

始発電車で羽田に向かい、朝10時ごろ北海道新千歳空港に着いた

目的地は門別競馬場である

一時間に1本程しか無い電車にしようか、それとも高速バスを利用しようか
計画段階でいろいろな迷いもあったが

自由に行動できるレンタカーを選び
11時近く、やっと足の確保が出来た
いざ出陣である


はやる気持ちを抑え
カーナビをセットした
千歳空港から門別競馬場に私をエスコートしてくれる頼もしい仲間の出現である

「3km先左です」

「目的地には12時30分頃到着予定です」



初めての北海道、まして外は大雨
そんなゆううつな気分をも
この仲間は吹き飛ばしてくれた

私は”ナビちゃん”と呼ぶことにした

しかし
しばらく走ると”ナビちゃん”はしゃべらなくなった

え・・・・・
えぇ・・・・
えぇぇ・・・
なんで・・・・・


カーナビのセットミス?、方向は合ってるの?
急に不安が襲ってきた


まっすぐな道路、これが北海道なんだ
曲がる必要が無ければカーナビもしゃべらない
この事実に気付くのにしばらくかかった
ま、用も無いのにカーナビから「ご趣味は・・・」とか”世間話”などされても困るが



あ、日高牧場じゃん
おぉ、シンボリ牧場
北海道、ホッカイドウ、ほっかいどう
今、まさに・・・・・そこに自分がいるのだ


雨のせいか牧場の馬を見ることが出来なかった

これから嫌になるほど馬を見るのだから

いいだろう

飽きない景色に感激している内

あっというまに目的の門別競馬場に着いた
3レースに間に合いそうな時間である


外は大雨
傘を用意してなかった私は、小走りで入場口まで行った

「入場無料」

駐車場も無料であった

さすが北海道
ずっと暮らしたくなった
(あいかわらずの単細胞である)

入場門をくぐると迎えのマイクロバスが待っていた


雨さえ降ってなければ・・・
入場してからバスに乗るなどの経験は今まで無かったので
状況確認するところであろうが

無意識にマイクロバスに飛び乗った

そのバスが
なかなか出発しないのである


右がコース
まっすぐ前方100mくらい先の左側にスタンドがある

運転手の独り言が聞こえた
「レースが始まると走れないから・・・少し待とうか・・・・・」
そして運転席から離れ外に出た

どうやらコースに沿っての道路を走る為
レース中、送迎車は運行禁止になっているようだ


運転手が車から離れた頃
乗客のヒソヒソ話が耳に入ってきた
「・・・まだスタートしないし・・・今、走れば3レース間に合うのに・・・・・」

私にとってここまで来ての1レース分は大きい
雨さえ降ってなければ車を降り、馬より早く?スタンドに走り3レース購入の為のチャレンジをした事であろう

待つことにした

この判断が後に重大な結果を生むことすら意識せずに・・・・

違う会話をも耳にした
「昨日の早出賞はコメ5kgだって・・・・・」


おいおい、早出賞をもらうのは嬉しいが
コメ5kgを帰りの機内に持ち込むのはいかんともしがたい

貰っても無いのに想像する自分が怖い・・・


スタンドといっても100人も入れば押し出されそうな建物であった
平日なのに何故か満員

一番奥が馬主席
中央部には日高牧場が企画したツアーであろう、団体客が陣取っていた
外は雨、コースはダート右回り重馬場
狭いスタンドにはあふれんばかりの人だかり


馬も見ぬうち、4レースの単勝・複勝全通りを先ず買い
空腹の腹をうどんで癒した
何が来ても当る馬券の買い方
ツキを呼ぶ私の”得意手”である


そして、うどんがのどに詰まりそうなレース結果のアナウンスが耳に飛び込んだ

第4レース
単勝3番〜、2万1千8百70円〜
複勝3番〜、1千9百・・・・・・・

お、お、おぉぉ

周りの景色がばら色に変わった



10レース頃から曇り不良馬場
最終11レースが終わる頃に、また雨が降り始めた

スタンド裏の引換場には、長ネギの箱とピーマンの箱が積まれていた
これが本日の早出賞なのか


仮に、3レースに間に合っていれば
万馬券も取れずに
運が良く?ても、早出賞の長ネギかピーマンの箱をかつぎ
本日、組まれていたJRA交流レースの北海道2歳優駿(GV)の
勝利騎手”武 豊”のインタビューを後ろに聞きながら
オケラ街道を歩いていた事であろう

送迎用のマイクロバスも待機していたが
入場門に向かって歩く事にした
もちろん
送迎車の運転手に軽く挨拶をして・・・・・

帰りの”ナビちゃん”も相変わらずの無口であった


門別競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

明日はいずこへ






第32話 前日予想

あさ早くから中山競馬場にいた

今日は有馬記念
じつは昨日もここ中山競馬場にいた

昨日の目的はもちろん中央競馬のG1レースの一つ
中山大障害の観戦である

なんと雪のため中止

高い柵を乗り越え長距離を駆け抜ける
そんな選ばれた馬達がこれぐらいの雪で走れないのか
ぶつ
ぶつ
ぶつ


不満を残して今日を向かえた


今朝、早く来た理由はもうひとつあった
船橋法典側のゲートは7時30分開門と前日調査済み
有馬記念の記念入場券は開催の中山競馬場先着限定販売
それを狙っての早めのアクションである
「あさ一番から並ぶぞ」


昨夜から出かけるときの”勝負服”を枕元に置き
赤ペンを耳にはさんで寝た(少しオーバーである・・・)

しかし
着いたのは9時前であった
あれだけ気合を入れたのに
つい
寝過ごしてしまった

記念入場券売り場は予想に反してそれほどの混雑は無かった


9:30分頃から発売開始になる
その2、30分の間
ベンチに腰を下ろし、なにげにレーシングプログラムをながめていた


その時
隣の若者二人から
異様な会話が耳に入った

今日は3ヶ所(中山、阪神、中京)が開催してるんだ
全36レースも買えねーな
去年も散々だったし・・・

「今日の中山は10レースしか無いよ」と言ってあげたくなったが
ま、36レースも34レースも変わらないので
だまっていることにした


一人の青年は専門誌「競馬8」
もう一人は、同じく専門誌「勝馬」を眺めながら
そろそろ始まるだろう
中山1Rの検討に入ったようだ

その直後であった
実に驚く光景を目にしたのは

青年の一人が相方の専門誌を覗き込み
指を指しながら
違う、違う
「えぇ」
「え」
急に二人で奇声をあげたではないか

同じレースでも専門誌によってマークが違って当たり前ではないか
しかし
そんな当たり前の驚きでは無かったようだ

なんと
1レースの

出走馬が違うと言うのだ





A君「それ(専門誌)いつ買った?」
B君「昨日の2時頃だ・・・」

ともに有馬記念が一面に出ているので勘違いし
B君は昨日の専門誌を買ったようだ
そして
充分な検討を済ませ、今日に望んだのであろう
気合を入れる時間が早すぎた


その会話を聞いてから
笑いが込み上げ
壊れていく自分があった

「昨日の結果なら全て当てる自信がある」
(笑)
(苦笑)
(爆笑)



その後
思い出すたび
おかしくなり

終日
レースどころでは無かった

中山競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

明日はいずこへ





第33話 くるった軌道

JR浜松町駅から東京モノレールに乗り換えた
大井競馬場前に着いたのは10時ごろ
まだまだ充分に1Rに間に合う時間だ

狙いはもちろん
グレードワンレースのひとつ、大井競馬の第49回東京大賞典である
有馬記念でシンボリクリスエスを操り、見事2着に9馬身差の歴史的大差でGPを制覇したオリビエ・ペリエ
前人未到のJRA年間200勝を達成した武豊騎手
向かえる大井の的場文男率いる精鋭たち
この試合見ずして今年が締めくくれようか

浜松町から大井競馬場前まで、ほんの10分たらずの間
モノレールの中ずっと考えていた
そして
大井競馬場前駅に着いた時
そのたくらみを実行にうつした
それは

モノレールを降りるとき左足から降りる事である


最初、目に入ったのはホームの壁に貼ってた
”ばんえい競馬・場外発売中”のポスターであった
まだ一度もばんえい体験の無い私にとって、非情に興味がそそられる”文字”である

入場券100円を購入し
警備員にその場所を聞きながら正門前ビルのふるさとコーナーに向かった
大井競馬スタートまで、まだ充分時間の余裕がある



正門ビル二階の”ばんえい”コーナーでは帯広競馬場のパドックが映されていた

なぬ

これも馬なのか・・・・・
写真では見たこともあったが
動画を見るのははじめての経験である
パドックを回っている9頭全てが違う生き物に見えた

まず
解らぬまま、マークシートにチェックした
金を賭けなければレースを観戦できない自分が怖い


15分ほど待っただろうか
ディスプレイには”帯広ばんえい”のスタートの映像が映し出された
その後
見てはいけないものを見てしまった
そんな気分にさせられた

スタートして各馬一斉に最初の山を乗り越えていく
周りは雪景色、コースは除雪されたのか土色である
そのまま
レースが展開されるかと思いきや
坂を下りて少したつと、なんと馬が止まるではないか
なんで
なんでやねん
5レースほど見てて解った事は
次の山を乗り越える為の勢いを溜めている戦略のようである
5レースも見なければ解らない
それが私の、、、弱さなのか・・・・・


いつしか
我を忘れる前の自分に戻ってきた
ここは大井競馬場





走りかけつけたパドックには、もう大井6レースの出走馬が周っていた
違う
なにか違う
あれほど力強い馬達を見た後

サラブレッドの強さが見出せない




”ばんえい馬”ばかり見続けていた私は
もう
走りに拘る馬との違いが判断できない状況に落ちいっていた



いつしか
また
ふるさとコーナーに戻っていた
周りでは
メインレースの”東京大賞典”
ペリエが・・・
武が・・・



騒いでるというのに




大井競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

明日はいずこへ






第34話 観音様

今年の元旦は川崎から

その計画がいとも簡単に崩れ去った

前日の大晦日
勝負好きな私は、ある戦を観ていた
それは小林幸子と美川憲一との衣装合戦では無く
因縁の再戦>吉田秀彦vsホイス・グレイシーなどの男祭り”PRIDE”
そして
その間ビデオ録画をしていた
ボブサップvs横綱>曙参戦のK1ダイナマイト
そして、そして
格闘技界のカリスマ・アントニオ猪木プロデュースによるイノキボンバイエ
である

全て観終えた頃には
すでに年も変わり
数時間後の”はつ日”を迎える時間にもなっていた

日の出を迎えるほどの心のゆとりも無く
川崎に向かうには、まだ早すぎる
2〜3時間ほど睡眠をとる事とした



その判断が大きな誤りであったと気付いたとき
時すでに遅し
朝日どころか夕日がまさに沈もうとしている時刻に
目が覚めた

いま出かけても川崎への計画は間に合わない
まさに
取り返しのつかない
元旦が過ぎ去ろうとしている


フテ寝モードに入った矢先
夢を観た
これが初夢?
それは
”タカ”でも”なすび”でも
もちろん
”富士山”でも無い

身の丈40mもあろう、女性のような御姿が山から現れた
そして
私に手招きするではないか


これぞ”御告げ?”


2004年1月2日
大宮駅で9時4分のアーバン号に乗り換え高崎に向かった
10時12分に高崎駅に着き
20分ほど歩いただろうか


高崎競馬場の入り口ゲートをくぐった

今年はじめての競馬場
馬の匂いも清々しい

右回りダートコース
家族連れの観戦客も多く見られた

想像したほどの入りでも無い
正月というのに?
みんな何処に出かけたのであろう・・・


1レースから入り
門松特別
初夢賞
ニューイヤーカップと
久々、最終までいた

5、6レース過ぎた頃には、用心の為着込んだ厚着も苦痛になるほどのポカポカ陽気
遠くに見えるのは浅間山であろうか
雪は見えなかったが
その雄姿がくっきりと姿を現した

「5、6レース過ぎるまで山は見えなかったのか」って?
「記憶に無い・・・・・」

その後
レースを重ねるごと

身も

心も
冷え始め

最終レース終了後
逃げるよう、高崎駅に向い
高崎線各駅停車「上野行き」に飛び乗った




「”カンノンサマ”は見なかった?」って
いや
「そんな名前の馬は出走してなかった!」


そして
飽きるほど電車に乗り
自宅に着いた

高崎競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

明日はいずこへ






第35話 8羽の水鳥

まだ夜も明けぬ頃、岐阜競輪場に着いた

久々の車での旅打ち
連休渋滞を考慮し、早めに自宅を出た
10時間ほど車を走らせての到着である


周辺はごく普通の街並み、市電も走っていた

近くの山の頂きにはお城が観えた
おそらく岐阜城であろう

「殿、きんのうに続き、また城下に」
「おみゃーもまっぺん競輪に行こみゃあ」
「ちょこんと3連単当てれば、どえりゃー儲かる、それで城ば建て直す」

その昔、このような会話がなされていたかは定かでは無い



気付いたら周囲に開門待ちのお客が集まっていた
どうやら車中で数時間、気を失っていたようだ


コースは400mバンク
中央部に大きな池がある、その池に架かっている橋を渡って
選手達は入場門からスタート地点に移動する
もちろん
池に落ちる選手はハナから競輪学校を卒業出来てない

風は強くないが少し肌寒い

よく観ると、池に8羽の水鳥がいるではないか
”カモ”であろうか
きちんとラインを組んで泳いでいた
いつもレースを観ているのでラインの組み方もさまになっている

今日は競馬のG1春の天皇賞が近県で行われている
その為か
人影はまだまばらであった

1レース開始までまだ時間は充分ある

まずは場内探索から始め、一軒のレストランの看板に目が留まった
それは
『コーヒー』の文字である
運転疲れの為、まだもうろうとしている
勝負が始まる前に目を覚ましたい

体はコーヒーとトーストを欲したが
サンド、トーストの類は無く
やむなくコーヒーだけを頼んだ

一杯350円
すこし高く感じたが、これで目覚めれば安いものであろう
そして

届いたのは


なんと紙コップに入れられたカフィーであった


飲む前に目が覚めた


ここは、マークカードは使われていたが
自販機無しの、おばちゃんとの対面販売である
来場の記念に数多くの券を購入したいとする私にとって苦手とする販売方法である
「一枚で何点か買えるのよ」

言わんとするおばちゃん達の白い目が肌で感じる


前半、可も無く不可もなく経過し
そろそろ勝負を賭けることにした
どこのレース場でもおなじみの
当りもち200円
おさえに
みそおでん100円
黒ぶた串かつ100円を食べ気合をつけた

最終レースを終える頃
やっとその事実に気付いた

池でライン組みして泳いでいる水鳥たちは”カモ”では無く”アヒル”であった
そして
私が
”カモ”であった事に



岐阜競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

旅はまだまだ続く