ヒ ト リ ゴ ト

第61話 キタキツネ
第62話 森の妖精
第63話 ポケット
第64話 小走り
第65話 格闘技

第61話 キタキツネ

JR函館本線の岩見沢駅
その駅に隣接するバスターミナルの8番乗り場から競馬場行きバスが出ている
開催日の9時50分だけが無料貸切で
10時20分、55分
11時30分
12時10分、55分
それぞれ170円の料金がかかる

どうせなら無料がいいだろうと
7時前に駅に着いた
早すぎなのは十分心得ている
先立つものは余りないが浮き足立つ性格は十分備えている

駅構内の3、4番ホームにそりを引く木彫りの大きな馬が飾られていた
”農業用馬:木彫”
”ホーム展示 55年4月10日”
そう記されていた

これが実物大のバン馬か
前から後ろから、そして斜めからじっくり観察してみた

それほど興味を示したかって?
いや
バスの発車まで時間がありあまり過ぎる

気の遠くなる時間
駅周辺を観察した
興味ひかれた場所を一周しても15分ぐらい
三周目には10分で周れるぐらいタイムが上がった
そして
やっと開いた駅前の喫茶店に入り朝食をとった

店内にあったスポーツ新聞に今日のレースの出走表が記されており
研究に没頭し始めたら
あっという間に時間が通り過ぎていった

十数分バスに乗り
正面駐車場で降り入り口ゲートをくぐった

初めてのばんえい競馬
観るものすべてに感動した

場内の”ばんえい紹介コーナー”に展示されていた”蹄鉄”
まるでフライパンのようだし
パドックで観る”馬”
「なんじゃこりゃ!」
ヒマラヤで雪男を見たとき以来の驚きである


感激のあまりまたオーバーといつわりの表現をしてしまった


今日は賭け事のことは忘れ”ばんえい”を楽しもうと決めた

どうせなら勝ちたい
しかし
体重増が良いのか絞っての減が良いのかすら判らない
速水もこみちと木村拓哉のどちらがかけっこ早いかと聞かれれば想像も出来ようが
パパイヤ鈴木と石塚英彦が荷物を担ぎ山登り競争
どちらが早いかと聞かれても想像すらつかない
そんな心境である

コースは直線
右から小さな山と大きな山の二つが作られている
第1障害坂、第2障害坂と乗り越えてのゴールである
周りは
以前行われていた通常競馬のコース跡
その栄華のあとが荒地となって残っている
その中に無数の”そり”が無造作に並べられている
周辺は自然そのまま
ふるさとの匂いすら感じる
まるで別世界に舞い降りたようである

気が付くと風上の店でジンギスカン料理を販売していた
匂いの元はそれなのか・・・
気づかねばよかった


広げた出走表に赤とんぼがとまった
幼少のころを思い出しそっと羽をつかみ近くで観察した
少し黒いが赤トンボの一種であろう、自然との闘いで汚れてしまったのか
大空に返してやり
いよいよマークカードに筆入れをした
4番、5番の連単
1レースはこれ一本にした
名づけて汚れた(45レンタン)赤とんぼ大作戦である

蜘蛛も糸で助ける
赤とんぼだって逃がしてもらった恩をきっと忘れないだろう


「天候:曇り、馬場水分:0.6」という場内アナウンスが流れた
馬場水分というのもレースに影響あるのか
すべてが不思議な世界である

そんな夢の世界から
ある場内アナウンスを機に
一気に現実に引き戻された
「この音楽が鳴り終わりますと第一レースの発売を締め切ります」
おいおい
普通なら「ただいまより第一レースの発売を開始します」からじゃ無いのか?
急いで売り場に向かった

発売窓口にはばんえい特有なのか
かなり体格の良い女性が多く見受けられたが
パドックでばんばを見た後
さほど違和感は感じなかった

レース自体は以前大井競馬の場外発売のモニターで観たことがあるが
ムチの音、砂煙、坂に登る前のタイミングの取り方
やはり目の前で見る迫力にはかなわない

あれだけ強くムチで叩かれると馬もかわいそうだ
なぜか涙がこみ上げてきた
真の涙の原因はそれだけでは無く
私の買った4−5では無く
9番8番5番と着たからかも知れない

その後、出走表にとまろうとするバカトンボは追い払った


パドックそばには
”岩見沢 競馬音頭 輓曳節”
と刻まれた石碑があった
意味すら判らないが手を合わせておいた

多くて10頭しかいない今日のレース
それにしても配当がいい
そして
私が狙う逆が来る

きっと奥の森林に住む北キツネの悪戯であろう
まさに狐につままれるとはこの事をさすのか
私が買うたび
「コン、コン、、、それもコン、来ん・・」と
笑っているのであろう

すっかりいじけてしまいその場を後にした


岩見沢競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く






第62話 森の妖精

私にとってナイター開催ほどつらいものは無い

旅打ち人の大半
主目的はレース場、そのあいまに観光であろうが
私の場合、まったく観光に興味が無い

今日の旭川競馬のナイター開催は1レースが14時30分からの発走予定
ホテルをチェックアウトしたのが8時
その間なんと6時間30分
おまけにじっとしていたら震える寒さである

駅から平和通、買物公園を少し歩いたマクドナルドで観光ガイドマップを見ながら思案した
駅周辺には幾多のデパートもあるが
私の住んでいる街にもそれはある
町の至るところ河が流れている
その中、石狩川という名前に釘付けになった
熊が鮭をくわえている印象が脳裏をかすめた
よし行ってみよう
3杯目のコーヒーを飲みほし決意した

国道40号線をただひたすら歩いた
地図では近くに見えたがそうとうな距離を歩き、旭橋のたもとに一級河川”石狩川”の文字を発見した
橋の中央まで進み
何時間、何年、いや何百年待っても熊も鮭も絶対に観れない事を自分ながらに確信し
逆方向のバスに乗った
旭川駅からのふりだしである

近くに新旭川という駅があることに気づいた
きっと旭川より大きな街だろう
そこにはなにかが私を待っている、そんな期待が胸をよぎった
勝負師の”感”である
駅で切符を買い電車を待ったが
迎えに来たのは車両一両の電車であった
ずいぶん待たされ発車した電車がたどり着いた新旭川駅
改札はなく運転手に切符を渡し降り立ったが
駅舎から外を眺めるだけで、旭川駅に戻ることにした
新宿、新大阪の”新”と文字が違ったようだ

ふりだしの旭川駅に着いたのが11時過ぎ
もう一度ガイドマップを見直し人生やり直す決意をした

近くに”大雪地ビール館”という場所がありそこで地ビールが飲めるらしい
人生の出発点をここに決めた

何杯飲んだであろう
徐々にペースが上がる飲むスピード、それをあざ笑うかのようにますますゆっくりと時は刻み続けている
その時の流れに従うしかない
時おり小雨振り朝の気温13度とか
先週までクールビズという一部の地域のはやり言葉でネクタイをはずしていた事実さえ信じがたい


旭川駅前の”藤田観光ワシントンホテル旭川前”から競馬場行きバスの始発が13時22分に出る
まだ30分ほど早いがそのバス停に向かった
そして
その目に映った光景に目を疑った
なんと平日というのに多くの人たちがそのバス停に集まり始めたでは
そして、あろうことかその大半が女性
神の与えてくれたごほうびに感謝した

定刻の13時22分の2分前に一台のバスが来た
そのバスには
”イオン旭川西ショッピングセンター行き・無料お買物バス”と書かれ
多くの女性客を飲み込んで行った
2分後”競馬場行きバス”に乗ったのは野郎ども5名だけであった
これも神の試練であろう


これは絶対に歩いて帰れないと実感させられるほどずいぶんな距離をバスは走り続け競馬場に着いた


中央部にはばんばの直線コース
その周りに今回のコースが設置されている
コース向かって左は”ちびっこ広場”右少し離れた場所にパドックというこじんまりした競馬場である
トラックに載せた移動できる電光掲示板とばんえいレースで使うだろう差し替え形式の大きなボードが正面にあった
公園野球場で見かける得点が入るたびに人の手で差し替えるそれである
これが雪国の工夫だろう

空の青さと雲のしろさとの境界線がくっきり分かれて観える
それほどまでに空気が澄んでいた
しかし
寒い

今日は大井競馬も併売しているようで
場外専用モニターには多くのファンが集まっていた
多くといっても10人位であるが、、

6レース頃であろうか夕闇に包まれライトアップされたコースは
さながら妖精の住む森のように幻想的な光景を映し出していた

しかし
とにもかくにも寒い
考え集中出来ぬまま馬券を買い続けた
時おり人恋しくなり
売り場の女性に声かけてみた
「旭川っていいとこですね・・・」
「どちらから来られたのですか???」
「千葉です」
「田舎から来られたんですね!・・・」



どうもプロトコルが合わない


携帯メール、電話をその震える手でかけてもみたが
寂しさの解消までには至らなかった


ザンギ(どうしてフライドチキンと呼ばないのか判らない)
揚げだこ(たこやきよりは手間がかからなさそうで合理的なアイデアに絶句)
を食べまくり
その言いあらわせない寂しさに絶え続けた
何でもないような事が 幸せだったと思う・・・

そんな孤独との戦いのさなか
森の妖精たちがやさしい声をかけてくれた

・・・・・・モゥ・・・よぅせぇ〜♪・♪・・♪・・・♪・・・・


「次の”ばん馬”開催まで今日の金を預けておく」
そう捨て台詞を残し
この場を後にした

帰りのバスも本数が少ない
その停留所でも震えていた

旅打ちの仲間に言う
「9月の旭川は半袖で行くな、めちゃ寒いぞ!」




旭川競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く






第63話 ポケット

ここ数日、日本列島全体に寒波が続いている
いたる所で雪害や最低気温更新のニュースが飛び交っている
そんなさなか意を決して冬の鉄火場に向かうことにした
その理由は
やがて迎える正月
ひと様より大きい餅を食べるため

朝、9時前にJR京浜東北線西川口駅に着いた
駅前で数件のコンビニを探索し
求めるもの入手出来ぬまま
送迎バスに乗り込み
10時前に入り口ゲートを潜った
駅周辺のコンビニは酒類の販売が禁止されているのか?

久々のオートレース
今日は飲まずに戦おう
酒の力をかりなくとも十分な作戦はたててきた
あとは結果を待つだけである

オートは意外と堅いレースが多い、そう認識している
今日は連勝複式の本命に重きをおき
掛け金操作で大金に増やす


その決意が
一瞬にして崩れた

入り口でもらったスピードクジ
何気に開けてみると
なんと”当り”の文字があるではないか
すぐに送迎バス入場口の北門から正門”引換所”に移動し500円のクオカードと交換し
そして
先ほどまでの作戦を変更した

もちろん
”今日はツキがある”
3連勝単式で高額配当を狙う作戦への変更である
その作戦変更がどんな結末を迎えるかも想像すらしないまま


いつも場内では財布からの札の出し入れはしないようにしている
入場する前
本日、投資する資金すべてを千円札にし
右のポケットに入れている
いちいち枚数を数えなくとも
その厚みで収支が判断できる

コースに向かってみると選手たちがスタートの練習を繰り返していた
そのエンジン音に久々動揺がはしった

そして
マイクから「ファンファーレのテストです・・・♪♪♪」
いよいよ戦いの始まりである
身が引き締まる思いで出走表に目を通し、まず1Rの検討に入った


気温低いが陽だまりでは寒さしのげる晴天に恵まれた

レース重ねるにつれ
3連単の予想の難しさを再認識させられ
心の寒波が迫ってきた

5R目でやっと予想通りの結果が現れたが
その後も天候とはうらはら、凍える寒波が続いた

10Rを終え
右のポッケに手を入れると
そこには
冷たい感触の
コインしか残ってなかった

「餅食わずとも正月はすごせるであろう・・・」
レースの結果放送を後ろに聞きながら
送迎バスに向かった

そしてバスの中
なにげに手を入れた左ポッケから驚くべき感触が伝わってきた
かなりな”タバ”である
ぬくもりも感じる

今日は勝った記憶がないので
前回入れ
忘れていた札束であろうか・・?・・・?

自然と笑みが込み上げて来た



10分ぐらいで着いた西川口駅前で降り
左のポッケから
そっとその”タバ”を出してみた


そして
目にした物は



”ホカロン”だった

朝、念のために入れていたことをすっかり忘れていた



川口オートレース場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く






第64話 小走り

冷や汗を流しながら着替えを済ませ、とりあえず持つもの持って小走りで駅まで向かった

5:25分の始発に乗れば一時間ほどのゆとりはある
そんな計画を立てていた
そしてその朝3:00には目が覚めパソコン画面をなにげに眺めていた

30分ほどでネットサーフィンにも飽き
携帯電話のアラームを4:50分にセットし再度一時間ほど眠りにつくことにした

え、まさか、、
もう6時?、、もうろくジジイ?、、、%&#$*?
携帯をマナーモードにしていた事をすっかり忘れていた


まだ目覚めぬ”感ピューター”をフル稼働し
当初計画していた路線を若干変更し羽田空港に着き
機内整備の遅れにより搭乗が10分ほど遅れたその便に滑り込んだ


小雨降る羽田を飛び立ったJAL1151便は
白銀の大地”とかち帯広空港”に定刻より15分ほど遅れて着いた
レンタカー、タクシーという手段を選ばない限り
ここからはバスで帯広駅に向かい
そして競馬場行きのバスに乗り換えるというルートしかなく
事前に調べたこの時期の時刻表にはそのバスは一日5本の便しか予定されてない

私の利用した羽田空港発JAL1151便9:20分着→バス9:35分発車
名古屋・小牧空港発J−air4303便12:00着→バス12:15分発車
羽田空港発JAL1153便12:15分着→バス12:30分発車

羽田空港発JAL1155便15:20分着→バス15:35分発車
羽田空港発JAL1159便19:25分着→バス19:40分発車

つまり航空便到着時間の15分後にバスは出発する
その予定した9:35分発に乗れなければ昼まで動きがとれない
15分遅れで着いた為、少し小走りでバス乗り場に向かった
しかしその心配をよそに
バスは全員の利用客が乗るだろう時間まで待ってくれた

やっとである
景色を観る心のゆとりが出たのは

電光掲示板には”只今の気温”ー7からー8度が点滅していた
ふきすさぶ北風に雪が強く舞っている
閉ざされていた携帯電話の電源を入れてみた
アンテナも凍って2本から動かないようだ


先ほどから”十勝”の文字があたりまえの如く目に付く

10勝(じゅっしょう)と読むのか+勝(プラス勝ち)と読めば良いのか
そのゲンの良い二文字に自然と笑みがこぼれてきた

「まもなく発車します♪」のアナウンスに1000円を支払いそのバスに乗った

幸福駅、大正、川西、大通と約40分の道のりで帯広駅バスターミナルに着いた
途中、十勝(トカチ)の牛を多く見かけるかと想定していたが実際に見つけたのは一ヶ所だけ
冬場は牛舎に入っているのか、はたまた白銀の世界と牛とが調和して気付かなかったのか
今回の旅の目的のひとつである”馬で勝って牛を食う”作戦は後で考えることとし
”馬”に集中することとした

バスターミナル12番から競馬場方面行きのバスが出ているが一時間に数本しか運行されてない
それを待つ間、震えながら駅周辺を観察した

ショッピング場所はひと際目立つ長崎屋か駅舎内かくらいしか見えない
それに反し異様にホテルの数の多さが目に付く
今宵の宿も決めてない旅
なかでも一番豪華に観えたホテル
それを指差し、勝ったらそこに泊まろうと心に誓い
10:35分発の競馬場行きバスに乗った

停留所”競馬場”のひとつ手前”西11条9”で降車し一番近いルートで入場料100円払い場内に入った

もう既に第一レースの発売締め切り間際の音楽が流れ購入を急がせていた
またまた小走りで売り場に向かい
記念にとマークシートに単勝1番と記し
その券を5枚買った
最近、可能な限り1Rに間に合った場所では単勝の1番を購入し”記念券”として持ち帰る事にしている
なんとか間に合った


今日は平日、この時間の客数はまだ少ない
そのほとんどがストーブ吠えているガラス張りの観戦場所からレースを見守っていた

私はせっかくだから
雪が舞う屋外でレースを観ることにした

久々のばんば観戦、もう震えが止まらない

興奮してでは無いようだ

歯がガチガチ鳴っている


スタートからゴールまでのわずか数分
その間”外で観てると死ぬ”と判断し馬よりも早い動きでストーブ前に移動した

「決定!!一着イチバン・・・・・♪」
なんと私が購入した記念券が当たったではないか
さい先が良い
当たり券を持ち帰るのも気がひけるが”記念”に残したい

第2レース購入後、場内の観察に入った
左向こうにマンションのような高いビルが一棟観えるがあとは周辺には民家が広がっている
ゴルフの練習場も観える

競走コースは除雪され
はてしない大空と白い大地のその中で
その黒さがアンバランスな絵画を描いている


場内、レストランや食堂のような場所は無く売店前のテーブルで食すようだ
興味ひかれるものも見つけられないまま
300円の缶ビールを買った

他場に比べて場内は静かである
考えてみると、ここには”予想屋”さんがいない

二階に馬主席があった
新聞片手に人の出入りが激しい
『馬を飼う』より『馬を買う』のに興味が高いのであろう


レース重ねるにつれ天気は良くなり空には青空が広がって来た
パドック、コースと何度か外回りにチャレンジしたが
外での観戦はつらすぎる気温である

中での観戦もつらすぎる戦績である



最終レースを終え振るえ止らぬまま場内後にした
帯広駅に向かうバス停も出口直ぐにある
しかし待つ時間は涙も凍るほどつらい


「1Rで当たった”記念券”はどうした」かって?
そんなの払い戻しした!

十勝牛は食べたのか?お目当てのホテルに泊まれたか?」って


明日があるさ!

日も沈み始めた帯広駅周辺
安い宿を探すため小走りで雪道を歩いた
そして

転んだ



帯広競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く






第65話 格闘技

JR大森駅東口4番のバス乗り場にはすでに長蛇の列が出来ていた

連休初日
天候にも恵まれ
数多くの競艇ファンが夢と新聞を持ち集まっていた

今日は特に特別なレースが組まれている訳でもない
ゴールデンウィーク
何処に行こうか考え
その結論も出せないままに過ぎ去る時が怖く
とりあえず競艇にでも行ってみようと考えた
そんな
私と同じ考動を取った人もこの列の中にはいることだろう

ここを選んだ理由は他にもあった
実は財布の中に4枚の舟券がこの日を待ちわび眠っていた

その4枚、全て3連勝単式
購入日は3月17日、裏には有効期間60日間と記されていた
そろそろ払戻ししなければただの紙切れになってしまう券である
その両替も兼ね、ここ平和島競艇場を連休初日の戦いの場に選んだ

『 3連単、それも4枚、凄いじゃない! 』

想像されることすら恥ずかしい”券”である

実は前売りで購入し結果が出る前に持ち帰った
9レースの4枚
2→1→3
2→1→4
2→1→5
2→1→6

1号艇が欠場返還になり
払戻しても400円にしかならない”券”である
先ほど駅の改札機に620円の切符を入れた
既にマイナスからのスタートである

開門時間5分前に夢を乗せたそのバスは入り口ゲートに着いた
入場料の100円玉を握りしめ
これで320円になる戦いのハンディをいかに克服するか精神統一をし
水上の格闘技というそのリングに向かった


早朝スタート練習(アサレン)の観察から真剣モードで挑んだ
今日の結果で連休の予定が決まる

羽をのばせるか、もぎ取られるか

夏が急ぎ足で向かってきている
そんな
すがすがしく汗ばむほどの陽気である

戦いを挑んでいる私の周りでは
連休の友達・家族連れ、恋人同士などうらやましい限りの明るい会話が飛び交っていた

私にとって”勝負の世界”は遊びでは無い
”我慢”という出走表に”孤独”という赤ペンでマークをはじめた

そして
3連単という強敵に

ボコボコに殴られた


帰りの送迎バスの中
”レストラン なぎさ”の700円のカツカレーを食べず
”レストラン ベイサイド”で500円のしおラーメンを食べてれば
あと200円勝負出来た
そんなことを考えながら・・・

今日は観たいテレビ番組もあり早めにその場を後にした

そして”HERO’S”を観ながら
どうすれば神の子山本”KID” 徳郁選手のようなすばらしい戦いが出来るのか真剣に考えた


いまの心境は曙選手である

なぜ勝てない?


平和島競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く