ヒ ト リ ゴ ト

第71話 特急リレーつばめ
第72話 思い込み
第73話 返り打ち
第74話 船酔い
第75話 ピスタチオ

第71話 特急リレーつばめ

鹿児島本線の折尾駅にて
まるで迷路のような階段を上り下りし筑豊本線に乗り換えた
ホームには既に電車が待っていたので、待つ事も無く奥洞海駅に向う事が出来た

競艇場は駅からも見れる場所にある

伝統、風格すら感じる建物に入り場内の観察から始めた
近くには船のドッグであろうか数多くのクレーンが立っている
プールには4基のナイターの照明塔が設置されている

競走水面は洞海湾の奥洞海にあり、水質は海水で水面は比較的穏やかであった
しかし冬場や満潮時には、うねりが大きくなり荒れるという
若松競艇場のキャラクターは”かっぱ”、いたる所に描かれていた

何故、海水で”かっぱ”なのか?疑問に思ったが、レースが始まれば
そんなことはどうでもよくなった


夕涼みがてら最後までナイター競艇を楽しみたいところではあるが
今日中に熊本近くまで行かねばならない
航空券、新幹線、特急を使わない”青春18キップ”の旅
少なく見ても、ここからは3〜4時間かかるだろう

時間を気にしながら数レース楽しみ
ナイター設備の明かりを見ないまま、その場を後にした


大牟田駅、荒尾駅と熊本方面に近づくにつれ
電車の乗り継ぎがだんだんと悪くなり、しばしホームで待つ事となった
その間、黒い車両の”特急リレーつばめ”が右に左にいそがしく駆け抜ける

特急を利用すると九州縦断も快適そうであるが、普通・快速だけでは困難を極めた
はやく「電車代を気にしないで打てる、いっぱしのギャンブラーに早くなりたか!」
いやになるほど電車に乗り、上熊本の駅で今宵の宿を探した





若松競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第72話 思い込み

上熊本の宿場にて、いつも通りの早い時間に目覚め
朝風呂を頂き、勝負服に着替え
余った時間を電車でひとつ先の熊本駅で過ごそうと宿を後にした
それにしても、まだ充分すぎる時間がある

宿代を清算し玄関を出ると
24時間営業と書かれたマクドナルドの看板が目に入った
なんと神の恩恵をこのような場で授かるとは想像もしてなかった

店の入り口に立ち、ドアノブに手をかけると
鍵がかかっている・・・
その横に小さな文字でこのように記されていた
「毎週月曜日AM2:00〜6:00は客席メンテナンスの為、ドライブスルーのみの営業」
どうやらその日に該当したようだ

このまま熊本駅まで向うか
一時間ほどの時間をこの辺りで過ごすか・・・
結局、後者を選び、駅とは逆の熊本城方面にむかって歩いてみた

少し歩いたが簡単に着く距離でもなさそうだ
そのむかし、熊本城の殿様がハンバーガーを食べたくなった時
きっと歩かずに馬か籠を使った事だろう


熊本には城を見に来た訳ではない、自分を納得させその店に戻った

10分ほど待っただろうか従業員が中から鍵を開け始めた
一番乗りの味を楽しみ、3杯目のおかわりのコーヒーは頼まず上熊本駅に向った

昨夜、暗い時間に着いた為に気付かなかったが、熊本市電(路面電車)も走っている

JR上熊本駅の改札口にて”青春18キップ”に今日のスタートの印鑑を押してもらい
わずか40分たらずで来る電車を待った
この旅で、今までなら”40分も待つのかよ!”とこぼしていた自分が
徐々に大人へと成長している


JR熊本駅には3分程で着き
ここで一、二時間ほど時間をつぶし競輪場のある水前寺駅に向おうと計画していたが
駅前には興味をそそられるものを発見出来ず
水前寺公園に行き、その公園で競輪場の開門までをのんびり過ごそうと
熊本駅を早めに発つ事にし、0番線ホームでその電車を待った


駅から15分ほど競輪場通りを歩くと、右手奥に熊本競輪場の黄色に黒の看板が見えた
ここが国内最南端の公営ギャンブル場である

水前寺運動公園内というから緑の中にある競輪場かと勝手に思い込んでいたが
公園内には競輪場と野球場、競技場の3場があり
周辺は住宅地という想像の世界とはかけ離れた環境にあった

公園内で時間を過ごそうと早めに来たが
熱い早朝売り場の駐車場で、その開門時間を待つしか手立ては無かった


1周500mバンク
もともとは400mだったが隣接する熊本市水前寺競技場(陸上競技場)のトラック造営の為
直線部分のみを伸ばし「滑走路」とも呼ばれる長い直線バンクに改造されたそうだ

その長い直線走路でのかけひきよりも頭の上が気になる
じわじわ責める日差しでは無く、ハトのフンである
いつ爆弾が落ちるか心配でレースに集中できない


これを負け理由とすることにして、早めにその場を後にした
それ以外にも早めに終えた理由がある
今日中に”青春18キップ”にて山口県か広島県に戻り
翌朝そこからスタートしなければ、自宅にまでたどり着けない





熊本競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第73話 帰り打ち

始発5:53分に広島駅を出発し、10:44分にJR姫路駅に着いた
5時間弱、意外に早い移動時間である
ここ数日”青春18キップ”での移動に脳が完全にマヒされている


北口に、競馬場に向う専用バス乗り場があるというメモを片手に
駅北口を探したが
JR姫路駅には中央改札口と東改札口、南中央改札口の三ヶ所しかない

「なして北がのうなる!」
昨夜泊った広島弁でついついつぶやいてしもうた


どうやら中央改札口の向こう側を北口と呼ぶらしい
小走りでその方向に向かい
専用バス乗り場に待たせていた”競馬場行きバス”に乗った

左に姫路城をみながら15分ほどであろうか
目的の”姫路公園競馬場”に着いた


長旅の疲労と荷物を背負っている
そのひとつでも預けて競馬観戦に没頭しようとしたが
ここにはサービスカウンターなるものが無い
やむなく両手の荷物を引きずりながらパドックへと向った

観戦席の背中側がパドックであり、次の2レースに出走する馬たちが
その勇姿を2〜30人の観客たちに魅せていた
その奥には昔の学校で使われていたような緑色の”黒板?”があり
馬番、騎手名はボードを貼り付けていたが、馬名、馬体重はチョークにて書かれていた


周囲を住宅地に囲まれているこじんまりした競馬場

今回の帰りながら打つという”帰り打ち旅”では色々出費も多かったので
ここでは荒れるという予想に決め、勝負する事とした

しかし本命レースが続き、精も魂もつきはてた
”帰り打ち”作戦が、どうやら”返り討ち”に合ったようだ





姫路競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第74話 船酔い

3日午前5時45分頃
東京・大田区の羽田空港で日本航空のチェックインシステムに障害が発生し
搭乗手続きができなくなった

この影響で同空港を午前8時15分までに出発する34便のうち31便が欠航
システムは約1時間で復旧したが
欠航と遅れにより約1万2600人に影響し乗客を後続や他社の便に振り替えた

その渦中に私もいた


計画では、もうすでに長崎上空に着いてるであろう時間
JAL1841便をあきらめ
スカイネットアジア航空への振り替え便で
約2時間遅れて羽田空港を離陸した

長崎空港から諫早行きのバス10時20分発にて市役所前10時34分着という
旅計画の書出しから変更せざる得ない状況になった

あぁぁぁ〜〜長崎は〜〜♪
今日は〜〜♪雨だ〜っ〜た♪
内山田洋とクールファイブの歌を口ずさみながら
タクシーに駆け乗った

4レースの発売開始案内に間に合い
予定外出費となったタクシー料金1、950円を取り返すべく
厚めに賭ける事にした
そして
予定外出費が膨らんだ


競艇発祥の地という歴史ある場内からは
奥に大村湾も望める

冷静に事態を判断しなければならぬ!
おふくろの味”くしま食堂”で
皿うどん600円と缶ビール300円を食し
次の展開を予想した

そして10レースが終わる頃に
今日はツイてない事にやっと気付き

今夜の宿に決めている最終レース以降に発車する長崎行きの県営の無料バス

その駐車場から運転手らと共に
プールでの熱戦を眺め、その時を待った



しかし神は見放して無かった
長崎駅近いアーケード通りで
二時間1,100円で飲み放題の”浜町亭”の看板を見つけ
テーブルに置いてある呼びベルを”チャンポン、チャンポン”と押し続け
結果、ジョッキビール7杯と梅酒3杯を飲み
今日の自分に満足した

めがね橋の上で夜風にうたれ
競艇での船酔いを覚まし
宿へと向った





大村競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第75話 ピスタチオ

長崎からスタートした
県内の大村競艇場が場内外非発売日には
隣、佐賀県の唐津競艇場まで2時間10分もかけて無料のバスが出るという

肩にかけたリュックは夢と希望に膨らんでいる
というか
非常用のため買ったビール3缶とピスタチオがなぜか重い


新地のバスターミナルからそのバスが出る
朝、8時30分スタートというのに
7時ごろから既にその手の者が集まりはじめた
8時過ぎ関係者の人がターミナル内の所定の場所に出走表を置き
その後、座席番号が記された番号札を並べ、客はそれを持ち乗車券代わりとするシステムだ


途中、いくつかの停留所で客を乗せ、満席のバスは高速道路をかろやかに走り
焼物で有名な伊万里の里なども通りぬけ
予定の10時40分に唐津競艇場正門へと着いた

周囲を森に囲まれたプールで
佐賀新聞社杯G1モーターボート大賞が始まろうとしていた
G1開催ともあり、各方面からの送迎バスが数多く集まっていた


場内には薬局”ドリンクくすりのカチカチ”や
マッサージルームなどもあった
健康への配慮か、珍しい光景である

競艇場に来ないで、畑仕事でもしていた方が
よほど健康にいいだろうと思いながらもレースに集中することにした


おかしい、いつもと違う、当たらない
レースも中盤だというのに払戻し出来たのは
フライングでの返還だけである

ピスタチオの袋片手に缶ビールを開け、出走表からその打開策を探した

袋の中に最後まで残ったピスタチオには裂け目が無い
その硬さにチャレンジしなければよかったと後で反省した
その後、レストランで肉うどんセット680円は支障なく食べられたが
あの時、歯が欠けたようだ


なぜか復路だけは別途500円の負担という福岡行きバスで
競艇場を後にし、今宵の宿に向った

今日は敗者、明日は歯医者か・・・





唐津競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く