ヒ ト リ ゴ ト

第76話 地獄めぐり
第77話 日本の夜明け
第78話 冷たい財布
第79話 坂本龍馬
第80話 霧が無い

第76話 地獄めぐり

JR九州日豊本線の亀川駅に9時5分に着いた
駅前に設置されてる案内板の周辺観光地図を見ながら
まだ時間も早いので、亀川商店街を通り競輪場へと歩いて見ることとした

どこを商店街と呼んでいるのか判らぬその道の入り口に
”地獄めぐり2km先”の大きな標識が目に付いた

競輪場開門まで2時間近くあり興味をそそられたが
競輪を早めに切りあげ、それから観光しても良いかと考え事前に計画した道をたどった

駅から15分ほど歩いたところ
その道の中ほどに公園を見つけ一服すると
その公園の片隅で椅子に腰をかけこちらを見ている男性がいる
奥には温泉があるみたいだ

別府にまで行って温泉は入らないで帰ってきた馬鹿がいたと
末代まで語られるのを恐れ、一風呂浴びることにした


四の湯温泉
入浴料100円と書かれている
入り口で「お金はどこに置けばいいですか?」と聴くと
その男性は
「うちでいいよ」「風呂道具もっちるか?」
「タオルは持ってます」と言うと「これ!」と桶を貸してくれた
今回の旅で始めて大分県の人と話した会話であった


風呂上りの公園
駅近くのコンビニ”ココストア”で買ったビールのうまいこと
「あぁ〜うめぇな〜」

競輪場の早朝売り場には既に20〜30人のファンが集まっていた


歴史を感ずるたたずまいと、白いペンキに塗られている特観席
昔と今が異様な風情で調和している
木立で微かにしか観えないが奥は海であろう

食堂、十字屋で焼きうどんとみそしるを食し戦いに臨んだ

4レース頃から崩れ始めた天候
勝負の戦績も大粒の雨へと変わって入った

10レース頃には雨も上がり
ぬかるみから脱出する為、場内を後にした
30分ほど歩き観光港でみやげを買い空港行きのバスに乗った


「地獄めぐりはしなかったのか」って?
十分に地獄は観た!





別府競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第77話 日本の夜明け

東京駅6時30分発の”のぞみ5号”、岡山10時5分の”南風5号”と乗り継ぎ
10時28分、定刻どおり高知駅に着いた

今日は高知競馬も高知競輪も非開催である

盆休みを利用しての旅
途中立ち寄った桂浜でアイスクリーンを食べながら
”ギャンブル場めぐりばかりしちゅうと、日本の夜明けに間に合わんぜよ”
坂本龍馬像と
しばし日本の将来について語り合い
夜のよさこい祭りの時間を待った


高知城横の追手筋本部競演場には既に
あでやかな衣装でかためた踊り子達がステージ狭しと乱舞し
”ひろめ市場”も多くの観衆達で賑わっていた

よっちょれ よっちょれ よっちょれよ♪
高知の城下へ 来てみいや♪
じんばも ばんばも よう踊る♪
鳴子両手に よう踊る♪

軽快なリズムに”鳴子”の音
カチカチと鳴らす”鳴子”に刺激され
明日は鳴門競艇場に行く事とした


高知駅6時ちょうど発の南風2号
途中、阿波池田駅で徳島線に乗り換え
佐古駅で高徳線、鳴門線と乗り継ぎ
10時35分に鳴門駅に着き
駅前から競艇場行きの送迎バスに乗った
4時間30分を超える長旅になった

鳴門駅から競艇場までは、およそ15分間隔でバスが出てるという
そして5分もたてば競艇場に着いた

異様に広い駐車場
反して
狭いプール
率直な感想である
ここで
”日本の夜明け”を考える前に
今日のメシ代を考える事にした


奥には鳴門海峡があるが、競艇場内からは展望出来ない

右上は小鳴門橋か
盆休みともあり多くの車が行き来していた
観光で周るなら最高の場所であろうが
私の場合は仕事であり、余韻に浸っている時間もない

”たこやき天ぷら”の看板を見つけ
数種の天ぷらとビールを買い
朝から食べてなかった体に気合を注入した

昨今、多くなった禁煙席
その隣に婦人席なるコーナーが確保されていた
そこに座っている多くがオヤジ達であったが・・・


とにかく炎天下
何缶ビールを飲んだことか
そのビールが汗となって直ぐに出ると言いたいが
大半
涙となって噴出した


徳島市内での阿波踊り開場に向う為
7レース終了後、その場を後にした
最終まで打っても阿波踊りには十分間に合うが
ここにいても幸せは訪れては来ないだろうと判断しての早めの行動である


「せっかく鳴門まで来たのだから渦潮は見たのか?」って
競艇場のターンマーク付近で
モーターボートによる小さな渦は何度か見た





鳴門競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第78話 冷たい財布

福山駅に着いたのは11時を30分ほど過ぎていた

競馬場への無料送迎バスは
福山駅前発、11時45分が最終のようだ
このままバス乗り場に向えば
なんとか間に合いそうだ
しかし
財布の中には5千円しか残ってない

野望だけで生きられた若い頃は
今から稼げばいいと考え
そのバスに飛び乗っただろうが
甘くない人生を嫌というほど経験した今
石橋を叩く進路を選んだ


地図では、ものの5分くらいで着きそうなゆうちょ銀行で預金をおろし
駅のバス発着場の3番乗り場まで戻ったときには
既に最終の送迎バスの姿は消えていた

財布は十分過ぎるくらい暖かい状態まで補充した

駅前タクシー乗り場で、競馬場までお願いし
福山競馬場に駆け込んだときには
既に第三レースが終了していた
タクシー代 1、050円を”取り返し手帳”に記し
第四レースの出走馬のパドックに向った

次のレースはアラブ系2歳馬のレースのようだ

かつて福山競馬場にて全日本アラブグランプリを制した
ミスターカミサマ号やフジナミスペシャル号のような
強そうな馬体を探したが
アラブ系馬とサラブレッド系馬の違いすら判らない私に
どの馬が速いか
決める事すら出来なかった

それが出来るくらいなら
旅打ちなどせず馬主になっている


周囲を小高い山に囲まれた小じんまり競馬場は
お盆休みもあってか
多くの家族連れの姿も見えた

多くといっても
数えられる数だが

見事!4レースは


外し
5レースから始まるサラブレッド系のレースに運命をゆだねた

ちなみに4レースの配当金は
3連単
6→4→8で19万4、500円だ
取れるわけねえ。。



本馬場だというのに
枠の発売も、また3連複の発売もしていない

どこかに埋まっている埋蔵金を見つける為
危険な馬連単、3連単を手広く買い続けた

そして
すでに財布が冷たくなっていた


最終レースまで居られず
その場を後にした

福山駅までのバス代190円は
かろうじて残っていた





福山競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く


第79話 坂本龍馬

幕末の時代
一人の男が歴史を変えた
そして、名もなき若者は、その時「龍」になった

その後、一人の男が歴史をさかのぼった
そして、名もなきバカ者は、その時「馬」に負けた



高知龍馬空港からリムジンバスに乗り高知駅に着いた
路面電車は駅前から乗れるようになり、市内の鉄道は高架線にと変貌し姿を変えていた

「まっこと、こじゃんと綺麗になっちゅうが!」


福山雅治が坂本龍馬を演じる「龍馬伝」の舞台
2010年のNHK大河ドラマ”龍馬”一色に街は染まっていた



まず五台山に登り、市内を一望しながら牧野植物園で
自然と共に暮らすことの豊かさを再発見し
桂浜の県立坂本龍馬記念館へと移動した

いたる所に「龍馬」「龍馬」「龍馬」の文字が
しかし、心の病んでいる私には、その文字が「競馬」としか映らない



県内は路面電車とバスが縦横に走っているが路線が複雑で
県内の人でも乗り継いで目的地に向かうのは難しい
少し早いが、桂浜を後にしてタクシーで高知競馬場に向かった


小高い丘に囲まれた一周1,100mの馬場には
うっすらとナイター照明が灯されていた
まだ、一月のナイター競馬は南国といえども寒い
観客もまばらである

震える体で4レース,5レースと挑んだ
結果は、3連単でも千円に満たない配当が続く
そして
「龍馬」は近江屋で暗殺され生涯を終えたが
私は、たった二つのレースで打ちのめされ
競馬場を後にした


帰りのタクシーで、電車通りで飲める場所に行ってくれと運転手に任せ
帯屋町あたりで降ろしてもらった



舵を任せたその運転手の横顔は

ジョン万次郎に似ていた





高知競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く



第80話 霧が無い

いちど着陸態勢に入った航空機が再び離陸した
その後、機長からの機内アナウンス
「進入限界航路で滑走路の中央が厚い霧に覆われ着陸出来ない状況です」
そして再び上空にあがった

そういえば羽田空港を飛び立つ際
「霧の影響で函館空港に着陸出来ない場合、千歳空港に降りるか
羽田空港に戻る場合もあります、あらかじめご了承下さい」
気にもせずに聞き流した機内アナウンスであったが、その予告通り函館は霧に包まれていた

20〜30分も旋回しただろうか
再び、津軽海峡上空から滑走路に向かい
定刻20分ほど送れて函館空港に無事降り立った


ナイター競輪の開催時間まで、6時間もある
時間つぶしの為、空港からバスに乗り函館駅にむかった
駅のすぐ近く、数百件の店舗が軒を連ねる函館朝市
イカ、カニ、ほたてなどの色々の海産物や夕張メロンなど
多くの品々が店頭に並べられていた

「お兄さん、食べてみて」
さっそくズワイガニとタラバカニの試食である
朝市会場を一回りするころには、試食のカニで空腹が満たされ
カニの雄雌の違いも判るほどのカニ研究家と化していた


今日はナイター競輪を観戦して
函館山からの世界三大夜景を楽しもうと計画している

駅前から見る函館山には、いまだ雲がかかっている
登山する夕刻時には、霧がはれてて欲しい事を願った

競輪場には駅前から無料バスが出ている
一日一便、ナイター開催は14時10分発
そのバスに乗るためコンビニで缶ビールを購入し7番乗り場に向かった


スターライトレース函館
入場料は無料であったが、なにか雰囲気が違う
マークシートはあるが、車券の発券機が見当たらない


函館競輪場は今年4月から導入されたという全国初のデンシマネーシステムになっていた
まず、カードを作り入金する、後はそのカードがサイフ代わりである
機械で発券されるのは車券でなく買い物のレシートのようなもの
的中した場合はカード内に貯蓄される
次回訪問でも使え、清算時には清算窓口で現金化する

全国のギャンブル場をまわり
投票券を集めている私にとっては、目の前が暗くなる衝撃であった
『車券のなくなる日がいつか訪れる』

詳しく話を聞くと
場内に一ヶ所だけ、従来のように車券の発券できる販売機があるという
しかしカード化に慣れない人たちも集まり、すぐに列が出来る
これでは、ゆっくり予想する時間も取れない

その発券機で買い続け、負け続けた

もうきりが無いとあきらめかけたころ
はるか函館山にも霧が無かった



まだ、ナイター照明が点灯しない明るい時間に競輪場を後にし函館山に向かった
世界三大夜景は涙で霞んでみえた





函館競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く