ヒ ト リ ゴ ト

第86話 ウォシュレット
第87話 男の花道
第88話 不思議な鳥
第89話 得した気分
第90話 玄界灘

第86話 ウォシュレット

たまには下品な話をする

ロマンを求め、自宅を出て3日目の朝をむかえた

普段はウォシュレット式のトイレを使っているが
まだ普及していない地域も多く
今だ、ロマンもウォシュレット式トイレも探せてない

ふんぎりがつかないとでも表現しようか
ウォシュレットに慣れると、むかし方式のトイレは使いづらい



JR宇野線の宇野駅

本土宇野と四国高松を結ぶフェリー乗場がある駅で
瀬戸大橋、神戸淡路鳴戸自動車道や
しまなみ海道などで本土と四国がつながる以前は多くの人が利用していた駅である

その駅に競輪場への無料送迎バスが出る一時間前に着いた

フェリー乗場を観光しても仕方ないので
目の前にひときわ高く建つ”産業振興ビル”でトイレを借りようと向かった
そして、ついに発見した
ロマンでは無い
ウ、ウォシュレット式のトイレだ


まるで砂漠の中でオアシスを発見した気分だ
もちろん砂漠に行った事も無ければ、オアシスなど見た事もないが・・・



長い時間電車に座らされ、多くの我慢をさせたお尻に
しばし休息の時間を与えた

今から訪れる玉野競輪での勝利を祈願して
すこしお尻を下げ、玉の方まで洗った


バスに乗ること、ほんの5〜6分
先着500名に配られるというラッキーカードを受取り
勝負に挑んだ


バンク向こうには瀬戸内海が観れる
岡山県らしく”桃太郎”の曲が締切前の場内にながれる
太陽輝く一周400mのシーサイドバンク

そんな瀬戸際の競輪場で瀬戸際の戦いが続いた
♪も〜もたろさん、ももたろさん〜♪ひとつわたしに取らせてね〜♪


途中、530円の天ぷらうどんと50円のゆで卵で気合を入れ直すが
9レース締切後のラッキーカードすら外した時点で
駅まで歩いて帰る事にした



どうやら
朝のウォシュレット式トイレで運まで流してたようだ





玉野競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く



第87話 男の花道

新聞配達員と朝の散歩を楽しむ方々が交代する時間に阪急電鉄の宝塚駅にいた


近くを流れる武庫川沿いの”花のみち”を少し歩くと目の前にお城のような建物が見えた

女性だけから成る劇団においての頂点を究める方々が集まる
そう、これが宝塚大劇場だ


今までの人生”おけら街道”しか歩いて来なかった自分に言い聞かせた
「努力して”男の花道”を歩ける人間にならなければ」と

意を決し「♪すみれの花〜咲くころ〜♪」と口ずさみながら
宝塚駅まで戻り、仁川駅へと向かった



JRAの馬場には数多く足を運んでいるが、開門2時間前に来たのは始めてである
長い時間待った
当然、開催日は多くの方々が休日で
徐々に人が増え始めた開門30分前ごろ
ガードマンが入場制限との事で入り口前の観客の数を抑え始めた

たしかに、ここ阪神競馬場は通路幅のわりには入り口ゲートが狭すぎる



開門後、3階にあがり
札幌、中山と、ここ阪神競馬場の3場全レースがモニターで見る事が出来
かつ、タバコの吸える場所を選び出走表を眺めてみた
宝塚歌劇団の花組、月組、雪組、星組、宙組のコトバから
連想できる馬名は見つからなかった



結局、遠くの競馬場まで来てパドックも本馬場も観ず
モニター画面だけの観戦で終わってしまった



来る時は人の流れについて外の道を歩いて来たが
駅まで地下道でつながっている事に帰り気付いた

しかし私は
歩き慣れた外の”おけら街道”を選び
駅まで戻った





阪神競馬場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く



第88話 不思議な鳥

大阪市営四つ橋線の住之江公園駅A番出口の目の前に競艇場がある
いや、競艇場の前に駅があると表現した方が適切なぐらい
外からは閉ざされた一角が駅前を大きく陣取っている


この後、大阪駅に出て
青春18切符で名古屋駅に向かい23時発の深夜バスで東京駅に帰る計画だ
時間の関係でせいぜい9Rまでしか出来ないであろう


14:00の開門を待ってか、多くの人で賑わっている
と表現すると嘘になる
駅前を行き来する多くの人たちの中、ごく少数のファンが入場門前に集まり始めた



競艇のコースは大きく分類すると海、河川、湖・沼、プールだが
ここ住之江競艇場は完全なプールだ

第1ターンマークは第2マークマークより18mしか手前に振られてない
マークから右壁まで70mあり1コース進入の選手が有利であろう
天候晴れ、ほぼ無風

よし!
中にいるのは金魚かドジョウか?それとも金魚のまねするどじょうか?
どちらがいても全部とってやる!




昭和27年に狭山池から始まった大阪の競艇だが池が干上がり
昭和31年に芦のおい茂ったゴミ捨場の、ここ住之江沼地を埋め立て初開催された
その施設は外からは想像すら出来ない位、広くて環境が良い

2Rが終るころ
プールのフェンスに不思議な鳥がとまっている事に気付いた

大きさは鶴やペリカン位だが、そのどちらでもない
鶴の黒い部分を茶色くぼかし、毛深くした様な姿だ

最初はオブジェかと思ったが
勝負の分かれ目、私の好きな場所の第1ターンマーク付近を中心に動いている
まるでレース観戦をしているかのごとく


あとでネットで調べたが、その鳥に関する情報は見付けられなかった


コウノトリで運ばれた人生、この不思議な鳥が迎えに来たとは考えたくない
見たのは私だけでない事を願う



ところでドジョウや金魚は取れたか?って
この不思議な鳥が食べ尽くしたのか、プールには一匹もいなかった


時間の関係で9Rまでと計画していたが、財布の関係で
まだナイターの照明が点かない7Rを最後とし大阪駅に向かった





住之江競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く



第89話 得した気分

本州のもっとも西に位置する下関
フグの水揚げ高が全国の8割を占めるそうだ

競走水面をのぞくとたくさんのフグが跳ねている

そんなわけ無い・・・



自宅を始発の電車に乗り
羽田空港から山口宇部空港
空港近くの草江駅からJR宇部線の長府駅と向かい
その駅の目と鼻の先の競艇場に入った

駅近くのコンビニでビールを調達しなければ1レースに間に合ったかも知れないが
駆け込み2レースが我が家から
前泊無しの最短コースかと思われる


コース向こう瀬戸内海が望め
多くの大型船舶が停泊していた

2レースの舟券を購入後、朝から何も食べてない体に
中央スタンド2Fの食堂福寿で580円の焼きそばを補給した
120円のみそ汁も頼みたかったが
勝負の前、贅沢はひかえた


コースは、潮の満ち引きによってもレースが大きく影響される海水
そんな海面を観ていると
別れた家族の事を思い出した

「あんたが死んだら遺骨は海に流すから!」って
いつも言われていた

別れたといっても今朝別れ、明後日には再会する家族であるが



ファンサービスのひとつに「片道サービス」というものがある
私は空港近くの駅”草江駅”から、ここ”長府駅”へとコースを選んだ
その”長府駅”の改札出口で
”片道サービス”と言うと証明書を発行してもらえる
その証明書を競艇場内の”荷物預かり所”のとなりの”片道サービス”のカウンターに出すと
帰りの乗車券がもらえるというサービスだ

わたしの計画では
このあと、小倉駅に向かう予定なので
それを伝えると
”長府駅”から”小倉駅”までの440円の切符を頂けた

なにか、得した気分だ


下関競艇場で”得した気分”は

この一度だけだった





下関競艇場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く



第90話 玄界灘

エスカレーターを2度乗り継ぎドーム入り口に立った
眼下に見下ろせる公園では多くの人たちが
思い思いの休日を楽しんでいる

その”名も無き公園”の片隅にある”競輪発祥の地”と記された石碑は
今なお、人々の平和をそっと見守っているのか
触ってみると温かみをも感じた


ドームで開催される前は
この公園敷地内で競輪が行われていた

第三回の国民体育大会、いわゆる福岡国体が開催され
その自転車競技の会場跡地を利用し
戦災都市復興及び自転車産業振興を目的とする自転車競技として
日本初の競輪、第1回小倉競輪が開催されたのが
この公園
1948(昭23)年の事である

当初、小倉競輪4日制初開催の日曜日には約2万人が押し寄せ行列をつくったという



小倉駅南口から無料の送迎バスが出るらしいが
その15時15分の発車時間まで待ちきれず
北九州都市モノレールで3駅先の”香春口三荻野”に向い
15分ほど歩いただろうか
ここ北九州メディアドームに着いた

徒歩5分位の場所に健康ランドがある
そこを今夜のねぐらと決め
今宵のナイターレース、とことん勝負する事にした


ドームには最大客席数の約15,000席があるという
だから余計に感じたのか
客がほとんどいない
今日は阪神競馬場で春のG1桜花賞も開催されている
そちらにファンの興味が移ったのか
場内警備員までもが
「小倉競輪は、いよいよ締め切ります。お早めにご購入を!」と
購入を促している状況である


まずは
レースに集注する事にした


そして
「ばってん、まるっきし話にならなか〜」と感じはじめたとき
ふと、こんな歌を思い出した

「小倉生まれで〜〜〜玄海育ち〜〜〜♪」
”無法松の一生”という歌の歌詞の一節である

”玄界灘”で勝負したが私の軍資金は、もう”限界なんだ”



最後、小銭入れから車券を購入し始めた頃
外は、すっかり薄暗くなり
公園の”競輪発祥の地”と記された石碑も冷めきっていた





小倉競輪場ご関連者様、お世話になり有難うございました

この旅、まだまだ続く