行動−−−アクション−−−
俺が目覚めた時、仲間ってのは001という赤ん坊だけだった。赤ん坊といっても、超天才なんだが、
ハッキリ言って俺は天才は苦手だ。
俺の次は003となった少女だった。始めは、俺のことを怖がっていたが徐々に慣れるとキッツイ事も
言うようになった。年は1歳違いだったが、やっぱり女の子との会話は物足りなかった。
そして・・・004となった奴が現れた。年は30歳と俺と12歳も違ったが、俺は素直に嬉しかった。
同性の話し相手がいるって、結構良いことなんだと痛感した。まあ、俺と違って冷静な毒舌家だったが。
やがて、俺はある事に気が付いた。004と話す時、妙に浮かれている自分に。004から、声をかけ
られると、それこそ尻尾をぶん回すような気分になる。しばらく、何故かと考えていたがやがて自分で
も驚くような結論にたどりつく。
俺は004を好きらしい。信じられなかったが、本当に彼を好きになっていたのだ、と。でも、いきなり
コールドスリープなんてもんに入れられた挙句、目覚めれば40年後の世界。新しいメンバーも加わって
、忙しく時は流れていく。だから、俺は決めたんだ。BG団を倒して、平和になったら告白しようって。
BG団を脱出して、コズミの爺さんの所に一旦落ち着く。BG団との本格的な戦いが始まった。
ある夜、俺は俺達の部屋の前にある、大きな木の枝に座って遠くに見える海を見ていた。此処は、俺が
見つけたある意味、秘密の場所だった。
と、誰かの部屋に電気が点く。何気なしに覗いてみると、そこは004の部屋だった。何となくコッソ
リ移動して、004の部屋の中が見える位置に腰をおろす。もちろん、あちらからは俺は見えない。
004はトコトコとベット迄歩いてきて、窓のほうを向いて座る。すると・・・009が近寄って来て
、004の隣に座った。何故、あいつが此処にいるんだ?でもまあ、仲良いみたいだもんなと納得する。
彼等は、何やら楽しそうに話していた。
何がきっかけだったのかは、わからないが009は突然004の顔に自分の顔を近づけていった。しばら
く止まった009の後ろ頭が、ゆっくりと離れていく。004の顔が、うっすらと赤くなっている。
それから、009は004に手をのばして押し倒したのだ。だが、004の方に抵抗する気配はない。
自分の上に乗っかっている009を押しやろうともしていない。どうやったのかは、良く見えなかった
のだがスルリと004の着ていた黒のタートルネックのセーターが床に落ちる。
そして・・・・俺は信じられないものを見た。自分の首筋に顔を埋めている009の背に、オズオズと
ではあるが004が手を回したのだ。
その瞬間、俺は咄嗟に木のてっぺんまで移動して、そこから空へ飛び出した。頭ん中がグチャグチャだ。
どのくらい飛んだのか、自分でも良くわからなかったが、俺は海の上で停止した。目から涙が次々と溢れ
て止まらない。
「何だってんだ・・・・?」
さっきの光景。
004に覆い被さる009。
009の背中に手をまわす004。
わからない、何故あんな関係になっていたのかも知らなかった。俺のほうが004のことをずっと想って
いたのに。なんで、あんな新参者が彼を振り向かせてしまったんだ?俺の決意はなんだったんだ?涙を
こぼしながら、俺はしばらくその場に留まっていた。
明くる朝、俺は盛大に寝坊をしてしまった。ハッキリ言って、海の上で迷子になったので部屋に帰るの
が遅くなってしまったのだ。その上、ショックでなかなか寝付けなかった、というのもある。
のそのそとリビングに降りていくと、004がソファーに座って本を読んでいた。004は俺に気づい
て、顔を上げた。
「おはよう、002。大分遅い朝だな。」
その姿は、俺の知っている004だった。
「昨日、寝るの遅かったんだよ。」
そう答えて、そそくさと台所へ行く。006に飯をたかろうとしたのだが、台所にはいなかった。仕方
がないので、自分でコーヒーを入れて、そこらにあるパンを引っ掴んでもそもそと食べる。昨日の衝撃
があったので、リビングへ行って食べる気にはならなかったのだ。
遅い朝食を終えて、リビングに戻る。そこには、さっきと同じ様に004が本を読んでいた。テーブル
を挟んだ向かい側のソファに腰を下ろす。
「なんか、静かだな。皆は?」
「出かけた。俺は留守番だ。」
俺との会話をするつもりになったのか、004は本を閉じて俺を見た。気のせいか、目が赤いような気
もするが・・・。
「お前ももう少し、早く寝たらどうなんだ?」
「しょーがねーじゃん、色々としてたらつい遅くなっちまうんだから。」
「お前だけだぞ、昼過ぎまで寝てるのは。同い年の009はチャンと起きてくるのに。」
「あいつと比べないでくれよ!!」
つい、大声で怒鳴ってしまう。004はキョトンとしていたが、すぐに渋面を作る。
「何、怒ってるんだ?」
いつもなら”へーへー左様で”と言って終れた。でも、今はそんな気分にはなれなかった。本当は、何か
きっかけが出来た時に聞いてみたかったのだが、我慢できない。俺は爆弾発言をすることにした。
「002?」
「俺、知らなかったぜ・・・。」
「何を?」
「アンタが、ホモだったなんてな。」
ガタッ
面白いくらいに、俺の爆弾発言は効いたらしい。004は瞬間真っ青になって、ソファから立ち上がった。
「な、何を言ってるんだ!唐突に!」
「見ちまったんだよ、昨夜アンタと009がしてた事。」
「!」
「誤解すんな、別にワザと覗いたわけじゃない。偶然、見ちまったんだ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「惚れた相手の味方をするのは、当たり前だよな。アンタはいつでも009の味方だった。そういう関係
だったからこそ、庇ったりしてたわけだろ?」
「ち・・違う・・。」
もともと色素の薄い004の顔から、さらに色素が消えていく。何か言おうとして失敗したのか、口を
開きかけたがすぐ閉じてしまう。目が不自然に落ち着きを無くして、宙を彷徨う。
「ま、良いさ別に。安心しろ、誰にも言わねーよ。」
そう言って、俺はソファから立ち上がった。こんな風に、追い詰める感じで言う気は更々なかったのに。
立ち上がったまま、下を向いている004を残して、俺は平静を装って、リビングから出て行った。
004に爆弾発言をしてから、3日後。
上辺では、何も無かったかのように004も俺も普通に会話をしたりしていたが、明らかに004は俺を
避けていた。わかってはいたけれど、後悔が胸をうつ。
ノックと共に現れたのは、009だった。
「002、ちょっと良いかな?話があるんだけど・・・」
「俺にはないぞ。」
ベットに寝っ転がって、009を一瞥もしない俺に奴は苦笑しながらベットまでやって来て、俺の
足元に座る。
「アル・・・004と僕のことなんだけど。」
俺はむっくりと起き上がってベットの上で、座った。009が俺の横に座り直す。
「002さ、4日前のコト見てたんだって?004が凄い落ち込んでたよ。」
「004がお前に言ったのか?」
「うん。でも様子がおかしかったから、強引に聞き出したんだけどね。」
「・・・・・・・。」
「004は知らなかっただろうけど、002が004のこと好きなんだってこと、僕は知ってた。」
「!嘘だ。」
「ほんとだよ。結構、あからさまだったでしょ。でもそれは、僕が004のこと一生懸命見てたからかも
しれないけどさ。」
「それ、知ってて004にちょっかいかけたのか?」
「うん。僕だって、004のこと大好きだったんだから。彼に振り向いて貰いたくて、一生懸命だった
よ。」
そう言って009はまるで祈るように、膝の上で両手を組む。いつになく、真剣な眼差しで前を見つめる
「何度も、拒絶されたよ。それでも、004が好きで振り向いて欲しくて、僕は何度でも004に手を
伸ばした。何回、振り払われても諦められなかったから。君、知らなかったでしょ?」
「ああ。」
そんなに、004と009が攻防戦をやらかしてたとは知らなかったので、俺は素直に頷いた。
「だから・・・004が僕の方を振り向いてくれた時は、凄く嬉しかったよ。諦めずに頑張った証だって
思った。その間、002は何にもしてないでしょ。」
「・・・・・・俺は、BG団を壊滅させてから行動するつもりだった・・・。」
俺の言葉に009は1つ溜息をついた。
「つもり・・・・だけだよね。それじゃあ何も変わらないよ。思っているだけじゃ、ダメなんだ。それ
に、BG団を倒した時に僕はいなくなってるかもしれない。皆無事にすむかもわからない。そう思った
ら、いてもたってもいられなかったんだ。後悔は残したくなかった。」
「・・・・・俺は・・・。」
「いるよね、文句ばっかり言って何にもしない人って。002は大分違うわけだけど。君も行動するべき
だったんだ。004を好きになった時点で。・・・まあ、僕はBG団時代を知らないからこんなに簡単に
言ってるんだろうけどね。」
そこまで言ってから、009は立ち上がった。ウーンと伸びをする。
「004に謝っておいてね、002?凄い落ち込みなんだから。003とか007なんかは僕らの関係
は気付いてるし、005と008は気付いているけど黙ってるっぽい。004は知らないんだけどね。
良く003に怒られるよ、僕。004をいじめたら私が許さないわよってね。」
俺にそう言って微笑んだ009は、そのまま部屋を出て行った。
俺は怖かったのかも知れない。004を求めて、拒絶されることに。だから、理由をつけてズルズルと
行動を先延ばしてしまった。拒絶されて、自分が傷つく事を避けた。
だが、009はそれでも004を求めた。何度も拒絶され、傷つきながらも必死に手を伸ばして。そし
て、遂に004がその手を取った。
俺と、あいつとの違い・・・・それは行動-----アクション-----することだったんだ。
★まずは謝ります!002および002FANの皆様ごめんなさい!すっごい002が可哀想な人
になってしまいました。思い人のそーゆーシーンを見せられたら、ショックですよねー。ついつい、009
引き合いにだされてプッツリ切れたり。ああ、所詮は94女です。結構、他所様のカップリングで、
009が失恋してしまうお話を読んでしまい、009可哀想と思っていまして・・。逆のバージョンで
書いてみました・・・。この話の「行動」は某リヴァの主人公の弟の台詞から、思いつきました。
「自分はなにもしないで、非難ばっかり言いやがって。しかも非難したことで、自分が何かをしたつもり
になってやがる。」
ちょっと、過激ですが私の心にグッサリときました。・・・行動しないと始まらないってことですよね。
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