BEFORE HALLOWEEN PARTY!
       「ねえ、アルベルト。今度ハロウィンパーティをするの。だから仕事とか入れないで来てね!」        003にそう言われたのが、7月でメンテナンスを受ける為に帰った時。10月に入った途端、003        から鮮やかな招待状も来た。ハロウィンはあんまり馴染みがなかった行事だが、楽しみになった。でき        るだけ、その日に仕事をしないように頑張ったのだが、そうそう人生上手くはいかないらしい。同僚が        風邪で突然倒れたり、急な仕事が入ったりして結局やっとの思いで日本に着いたのは10/31のハロ        ウィン当日の昼頃だった。        ギルモア邸の玄関を訪れると、ヒョイと顔を覗かせたのは008だった。        「やあ、アルベルト。久し振りだね!」        嬉しそうに笑う008に、004も笑みを返す。        「そうだな、元気そうだなピュンマ。なによりだ。」        そう言いながら、004は008の後ろをきょときょとと何かを探すように見た。聡い008には分か        ってしまう。笑って、004に告げた。        「ジョーなら、居間の方で飾りつけの手伝いをしているよ。」        004は一瞬だけ、きょとんとしたが苦笑する。        「いや別に俺はジョーを探しているわけじゃなくて・・・・。」        何故か言い訳じみたことを言う004を遮って        「こっちだよ。」        と連れていってしまう。004には、ぐだぐだと言うよりも行動で示した方が良いということを008        は身を持って知っていた。        がちゃり。        008が居間のドアを開ける。008に促されて、居間を覗き込んだ004の目に映ったのは丸椅子の        上に危ういバランスで立って、飾りを天井に付けようとして背伸びまでしている002と、002に指        示を出している003の2人だけだった。        「2人共、アルベルトが来たよ。」        008が声を掛けた。振り返った003の顔がパアと明るくなる。        「アルベルト!」        嬉しさを隠せない声で、003は004を呼んだ。004はニコリと笑って、片手を上げる。        その時。        ズデ〜ンという派手な音と共に、ぎゃあとかいう悲鳴が上がった。唯でさえ危ういバランスだった00        2が、008の呼びかけに振り返って当然のことながらバランスを崩して引っくり返ったのだ。しかも        飾りを握り締めていた為に、今迄付けてきたであろう飾りが全部落ちてしまった。        「大丈夫?ジェット?」        003が助け起こすと、002はバツが悪い顔をして、てへへと笑った。        「ああ、大丈夫だ。ドジっちまったぜ・・・。」        ぽりぽりと頭を掻く。        「あんな状況で振り返る奴があるか。」        004の突っ込みに、ちぇーとばかりな顔をしてぶうたれる。        「だってさ、フランソワーズとかが凄い心配してたからさ。本当に来てくれるのかしらってね。」        「ちょっと、ジェット!」        003に睨まれて、002は苦笑したまま黙った。003はにこりと笑う。        「おかえりなさい、アルベルト。部屋で少し休んできたら?」        「俺も手伝おうか?飾りつけ、全部駄目になっちまったみたいだし。」        「良いわよ、疲れているでしょう?大丈夫!ジェットがぜ〜んぶやってくれるから!」        003の無邪気な声に、002がげっとか言う。        「僕も手伝うよ、ジェット1人じゃ大変だろうから。」        008がさりげなくフォローする。良いコンビネーションだ。004は改めてぐるりと部屋を見回した。        白いクロスが掛けられている、大きなテーブル。椅子が壁際に配置されているところを見ると、立食ら        しい。テーブルの上には、大小様々な、ジャック・オ・ランタンの顔。1つ手に取ってみると、本当の        南瓜をくりぬいて作ってある。        「へえ、良くできてるな。誰が作ったんだ?」        004の問いに003が答えた。        「ジェットよ、凄いでしょう?得意なんですって、こういうの作るの。」        ね、とばかりに003が002を見ると002はえっへんとばかりに胸を張った。        「変なトコ器用だな、お前。」        「・・・・一応、誉め言葉と受け取っておくよ。」        「ねえ、早くやらないと終らないわよ。」        「そうだね。」        いそいそと飾りつけを再開した3人を見ながら、004は無意識に居間にいるはずの誰かの姿を探す。        「そういえば、フランソワーズ。ジョーはどこに行ったんだい?」        聡い008が004の様子に気がつき、003に尋ねた。        「ジョー?とりあえずさっきまでは飾りつけしてたんだけど、もう大丈夫ってことになって台所に行っ         たわよ。」        「だってさ、アルベルト?」        突然振られて004は、心底驚いた。        「行ったげなよ、ジョーも凄い楽しみにしてたんだから。アルベルトに会えるのを。」        「そ、そうか?・・・・・・わかった、台所だな・・・・・。」        呟くようにして、居間を出て行く004を003と008は微笑んで見つめた。        台所を覗くと、なにかを炒めている006と隣でなにかを切っている007の後ろ姿があった。        ・・・・・・・・009は、いなかった。        「よお、アルベルト。元気だったかい?」        007が004の気配に気付いて振り返った。        「ホントだ。アルベルト、良かった間に合ったアルねえ。」        006も中華鍋ごと振り返る。        「やあ、久し振りだな、2人共。今日のパーティはやっぱり中華かい?」        「当たり前ね!わての中華はおいしいアルから大丈夫よ!」        なにが大丈夫なのか、今一わからなかったがとにかく004は頷いた。006の料理の腕を疑う奴はい        ない。きょろきょろと台所を見回す004に、なにかピンとくるものがあったのだろう。007がにや        りと笑って言ってきた。        「ジョーを探しに来たんだろう、大将?ジョーなら、さっきまでここで手伝いをしてくれてたんだが、         ギルモア博士に呼ばれて博士の部屋にいったぜ。」        「いや・・・・別に・・・ジョーを探してたわけでは・・・。」        さっきと同じく言い訳じみたことを言う004に、止めとばかりに007は言い募った。        「一旦、部屋に行って荷物置いてから博士の所に顔をだしてくれよ。」        004は、意外と素直に頷いた。        「分かった。そうする。」        一応、自分の部屋に行ってからギルモア博士の所に向かう。途中、009の部屋を訪れてみたのだが、        案の定誰もいなかった。        軽くノックをすると、どうぞと声がする。004はドアを開けた。そこにはギルモア博士が机に向かっ        て何かを書いている。        「お久し振りです、博士。」        博士は004の差し出した手を両手で握り締め、嬉しそうに笑った。こういう時のギルモア博士の顔は        本当に優しい。        「お疲れじゃったのう、アルベルト。どうじゃ、なにもないか?」        「はい、お陰様で。博士は又、発表会があるんですか?」        「うむ、来月にアメリカでの。」        「・・・・・・ところでここにジョー来ませんでしたか?」        「さっき、ちょっとわしがジェロニモに用があっての。伝言を頼んだんじゃ。アルベルト、ジョーに会         ってなかったのか?」        「ええ。じゃあ、ちょっと俺も行ってきます。」        004は、そう言ってギルモア博士の部屋を出て行った。        005は家にいない時は、森にいることが多い。大体同じポイントで瞑想している。探しやすそうに思        えるが、そんなポイントを3つばかり持っているので探し当てる確率は1/3だ。自分の勘で行った1つ        目のポイントはハズレだった。        次のポイントもそうだった。そして、最後に005の大きい背中を見つけた。        ・・・・・・・だが009はいなかった。ここで踵を返すのもなんなので、004は005に近づいて        行った。・・・どのみち、気付かれているのだから。        「久し振りだな、ジェロニモ。元気そうでなによりだ。」        「・・・・・アルベルトか。」        005が振り返って答える。相変わらず年齢以上に落ち着いた態度。        「ジョーを探しに来たのか?」        「・・・・・まあな。」        004はなんとなく005の隣に座った。005に核心をつかれても、他のメンバーと違ってうろたえ        ることはない。005は不思議とそういう素直な気分にさせてくれる。これも彼の人格のなせる業なの        だろう。        「森は、変化無しか?」        「まあな。」        会話は短い。        「アルベルト、ジョーなら張大人に呼ばれて家に帰ったぞ。」        「そうか・・・。擦れ違いっぱなしだな。」        苦笑する。だが、005は笑わなかった。        「お前がジョーを探し回るなんて、珍しい。」        「・・・・・俺もそう思う。なにやってんだかな、俺は・・・。」        苦笑すると、005の瞳が004を捕らえる。        「良いんじゃないか?たまには素直に行動しても。素直に言葉にしても。」        なにやら意味深いことを言ってくる。        「?」        004が首を傾げると、005は言った。        「取り合えず、気がすむまでジョーを探せ。俺が言えるのはそれくらいだ。」        家に帰って来たが、又しても009はいなかった。006に頼まれてお使いに行ったらしい。        ”まさか、まだ会えてなかったとは知らなかったアルよ。悪かったねえ。”        006に申し訳なさそうに言われてしまえば、004とて強くは言えない。誰かの手伝いをしていれば        帰ってくるだろうと思って、手伝いをメンバーに申し出たが皆一様にいらないと言う。なんと無しに外        に出て、ぼんやりと海を見つめる。ここに到着した時は、眩しいぐらいの青い色を湛えていた海は、今        は夕陽に染まって赤に近いオレンジ色に変わっていた。・・・・・風が少し冷たくなって004の髪を        たなびかせる。        ババッ        いきなり横殴りの風が004を襲った。一瞬戸惑ったが、004にはすぐにわかった。        ------------探し人が帰ってきたのだ・・・・と-------------        振り返ると何やらダンボール箱を肩に担いだ防護服を着ている009の後姿。そのまま、くるりと振り        返る。        「あれ?・・・・アル?こんな所で何してんだい?」        そんな009の疑問に、004の脳裏に言葉が浮かぶ。        ”お前を待っていたんだ”        口に出しそうになって、004は口を噤んだ。        「?アル?」        「なんでもない。」        ”良いんじゃないか?たまには素直に行動しても。素直に言葉にしても。”        005の言葉が蘇る。004は苦笑した。        「いいや・・・・・お前を待っていたんだ。ここで。」        004の言葉に、009の目が大きく見開かれる。        「ボクを・・・・待っていてくれた・・・?」        「ああ。」        箱を降ろして、009は近づいてきた。        「僕に・・・・会いたかった?」        004は少し迷い・・・告げた。        「ああ。」        その瞬間、まさに花が綻ぶかのように009が笑った。        「本当?」        004は頷く。すると009はおずおずとではあるが、004に腕を廻して抱き締める。004はされ        るがままになっていた。        「・・・・・・有難う、僕もアルに会いたかったよ・・・・。」        抱き締められている為、009の表情は見えない。それでも、その声には喜びが含まれている。ふと0        09の腕が緩められて、009が004に顔を近づけた・・・・。          「おかえり、アル。」        「ああ、ただいま。」        他愛も無い、こんな言葉がお互いに心底嬉しい。出会った頃には、こんな言葉を交わす日が来るとは思        わなかった。        009は箱を担ぎ上げ、004と共に家に入って行った。        さあ、ハロウィンパーティーが始まる・・・・。
       ☆季節ネタのハロウィンパーティのお話です。これから先はがらっと雰囲気を変えてギャグタッチにな         ります。何故かは見てのお楽しみ(笑)なんて、エラソーだな私・・・。いつも009が004を追い         かけている話が多いので、反対をしてみました。・・・ダメですよ?こんなの脳内通信すれば一発だ         なんて管理人の心を踏みにじっては(笑)         あと本音では加速装置なんぞ使っては、箱や食物が燃えると思うんですがTVでも大丈夫だったよう         だったので、箱を持たせました。         あんまりハロウィンパーティってピンとこないんですけど、今はするんでしょうか?        戻る