HAPPY BIRTHDAY!


       仕事を終えて、自分の部屋に帰ってきた004。
       「?」
       何故か部屋の電気がついている。刺客かと思ったが、殺害する相手の部屋の電気をつけっぱなしにする
       馬鹿はいない。
       ”ここに誰かがいるぞ”
       と主張しているようなものだ。ノブをそっと握り締め、廻すと当たり前のようにドアは開いた。思いき
       ってドアを開けると・・・・
       「あvお帰りアル♪久しぶりだね〜v」
       こちらの緊張感を台無しにするような呑気な声が響いた。
       「ジョー・・・。」
       004のベットの上に、これまた当たり前のように座っているのは盟友(プラスアルファ)の009であ
       った。ニコニコと無邪気な笑顔の裏に、人にはとても言えないような腹黒さを持ち合わせる最強のサイ
       ボーグ。何度振り回され、泣かされてきたか思い出したくもない。
       「なに、そこに突っ立ってるの?こっちへおいでよ。」
       取り合えずドアを閉める。うっかり近くに行こうものなら、何をされるのかわからないので一定の距離
       を置いて、椅子に座った。少しは004も学習しているらしい。
       「ジョー・・・・。」
       「ん?なあに?」
       「お前、何で此処にいるんだ?」
       「え?だって今日はアルと一緒にいたかったからさ。」
       「何故。」
       「・・・・・・・アル、今日何の日か知ってる?」
       「いいや。」
       即答してくる004に(珍しく)はあ、と溜息をついて下を向く。
       「どーしてこーアルってずれてるんだろう・・?まあ、そこがまた可愛いんだけど。」
       「30過ぎた身で、18の奴に可愛いと言われる筋合いはないぞ。」
       「筋?」
       「ああ。」
       「筋ならあるよ、お芋ぐらい。あ、サツマイモの方ね。」
       「ますます、お前の言いたい事がわからん。」
       「そーかなー?でも本当に分かんない?」
       「ああ。」
       「今日はアルの誕生日だろ!そのお祝いに来たんだよ!」
       「はあ!?」
       009の言葉に、004は天井を見つめて少し考える。・・・・・確かに今日が誕生日だ。納得したよ
       うな顔を見せた004に009が畳み込む。
       「思い出した?」
       「ああ・・・まあな。・・・・でもジョー、お前それだけの為にドイツまで来たのか?」
       「悪い?」
       「いや・・・。そんなわざわざ来なくても・・。」
       009は立ち上がり、004の前まで歩いていって右の人差し指を004の顔の前に持ってきた。
       「そんなことじゃないよ?僕には大事な事だよ。」
       「そうか?」
       「恋人の誕生日に、一緒にいたいっていうのは自然の事だろう?」
       「・・・・・・誰が恋人だって?」
       「アルv」
       004が何か言おうとする前に、009は持ってきたらしい袋を開けてゴソゴソやりだした。
       「何やってんだ?」
       004が訊くと、ドンと何かをテーブルの上に置く。・・・白い紙でできた箱。ケーキでも入っている
       ような。
       「これはね、僕が作ったケーキだよv」
       「えっ!?」
       思わず素っ頓狂な声を上げる004。
       「これ・・・日本から持ってきたのか?」
       尋ねると、あっさり009は頷いた。手作りのケーキには防腐剤等を使ってはいないハズ・・・という
       ことは・・・・。何か、ケーキから妖気が漂ってきたような気がする。サイボーグだから、お腹を壊す
       こともないだろうが、食べるには相当の勇気と覚悟が要りそうだ。さらに・・・。
       「お前が作ったって!?フランソワーズじゃなくって?」
       「うん。あったりまえじゃん。」
       004はいよいよ青くなっていった。009は・・・料理オンチなのだ。味覚オンチではない、料理す
       るセンスがまるでないのだ。前、自分が作ったから食べてくれ、と言われて食べたホットケーキは草加
       煎餅より固かった。”料理”というものには興味があるらしく、手伝いたがる傾向もある。前、003
       に頼まれて、ボールで生クリームを泡立てていたら力を入れすぎたらしく、ボールの底をぶち破り泡立
       て器を潰し、挙句の果てには台所の床にも穴を開けてしまったのだ。音に驚いて走ってきた006がそ
       の穴に落ちたりしたので、009にはそれ以来”料理禁止令”が発令されているのであった。その00
       9が作ったというケーキ。
       ”俺、誕生日に死ぬのかな・・・。”
       004が悲嘆に暮れている間、009はせっせとタッパー(笑)をテーブルの上に乗せていく。
       「・・・これも、お前が作ったのか?ジョー。」
       縋るような004の気持ちが、天に届いたのか009はフルフルと首を横に振った。
       「いんや、これは張々湖が作ってくれたんだよ♪」
       「そ、それも・・・日本・・・から・・・?」
       「うん。」
       カビてんじゃねーの?と突っ込みたくなる004であった。そんな004の気持ちに気付いているのか
       いないのか、009はあっさりとタッパーを開けた。
       そこには(何故か)ほこほこと湯気を立てているえびのチリソースがあった。カビなどどこにもない。
       009は次々とタッパーを開けていく。
       「アル、皿出してよ。せっかくの料理がもったいないからさ。」
       「あ、そうか。」
       004は慌てて食器棚を開けて、適当に皿をセレクトして出した。009は器用にタッパーから、皿に
       料理を移していく。そして、とうとう009はケーキの箱を開けた。
       「じゃ〜んv」
       そこにあったのは、カビなどどこにも見当たらないケーキの基本中の基本である丸いパウンドケーキだ
       った。上には赤や緑のピールが飾ってある。009にしてはまともっぽい。
       「本当は、普通のバースデーケーキっぽくしたかったんだけど。アルは生クリーム苦手だろ?」
       余談だが、004はショートケーキ1個食べれないぐらい、生クリームが苦手だった。
       「それで、フランがこういう方が僕にも作れるって言ってたもんだから。ん〜とそれから・・・。」
       009はバンと瓶を出してきた。それは、日本酒だった。
       「乾杯用にねvせっかくだしさ、日本酒で乾杯ってのも良いでしょ?」
       ニッコリと009は笑った。004は最初は唖然としていたが、段々嬉しくなってきた。わざわざ日本
       から、自分の誕生日の為にこんなに気を使ってくれれば誰だって感動するだろう。ワイングラス等とい
       う洒落たモノはないので、普通のコップに日本酒を注ぐ。009曰く”一の蔵”という一種の地酒らし
       い。
       「じゃあ、アルの誕生日を祝って・・・かんぱ〜いv」
       009と004はカチンとコップをあわせた。


       やはり、いつ食べても張々湖の料理はおいしかった。
       「これ、日本から持ってきたんだろ?なんでこんなにあったかいんだ?」
       004に負けないくらい料理を頬張っていた009は、ニッコリと笑う。
       「良く聞いてくれました!」
       何故かバンザイのポーズをとる009。
       「実はね、イワンの力を借りたんだ。」
       「イワン?起きているのか?」
       「うん。で、ここまで”テレポート”させてもらったんだ。」
       「え!?ドイツまで?そんなに遠くまでテレポートって出来るのか?」
       思いもかけないコトに、004は目を白黒させた。
       「結構難しいらしいけどね。位置がハッキリしていたのと、1人だけのテレポートなら何とかなるって
       言われたんだ。」
       「へー、じゃあ今頃は・・・。」
       うん、と009は頷く。
       「そう、今頃は爆睡してると思うよ。」
       そう言って苦笑する。
       「実はね・・・、フランが自分が行くって言って、聞かなかったんだ。」
       「なんでだ?」
       「自分がアルの誕生日を祝いたかったんだって。でも僕もどーしても譲れなかったから大喧嘩してさあ。
       結局、ジャンケンで僕が勝ったんだ。」
       009は得意げに、胸を張る。004はどうコメントすれば良いか悩んでしまった。
       「ん?イワンは意識を持っていないものしかテレポートできないだろ?」
       「ああそれはね、フランにパラライザーを撃ってもらったんだ。で、アルが帰ってくる直前迄気を失っ
       てたけどね。」
       「そりゃまた・・・・命がけじゃねーか・・・。」
       随分物騒な来かたである。こんなに簡単に命をかけて良いものなのだろうか・・・・。004は、何故
       か頭痛がしてきた。
       「そ、それで、帰りはどうするんだ?イワンが起きるまで待つのか?」
       「いいや、帰りは飛行機だよ。帰るその日に駆け込む予定。」
       「おいおい。いきあたりばったりじゃないか。」
       「アルだってシンクロワープした時に、同じコト言ってたらしいじゃないか。」
       「そりゃ一か八かだ・・・・・。」
       「同じだよ♪」
       沈黙。
       004が黙ったので009は首を傾げていたが、いきなり大きなろうそ・・いやいやキャンドルを出し
       てきた。そして、ぶっすりとケーキのど真ん中に刺す。面食らう004をほっといて、とっとと火を点
       けてしまった。
       「さーて、(自分的に)話題も尽きたことだしキャンドルを吹き消すのしようよ。僕が歌、歌うね。」
       「いや、良いよ。恥ずかしいし。」
       「良いから良いから、いくよ?」
       そう言って009は大声で歌いだした。
       「も〜ろびと〜こぞ〜りて〜♪」
       ドガタア!
       004は椅子から、しかも頭から落っこちた。009が驚いたようにして、跪き004の頭を両手で抱
       えた。
       「どーしたんだい!?驚いたよ。大丈夫?って、あーコブできてるよ〜。」
       「ああ・・・まあ・・・。」
       「おかしいな僕、歌には開けっぴろげに自信があったのに?」
       ゴン!
       009は考えるように腕組みをした為、支えを失った004の頭は再び床に激突した。
       「あ!ごめんアル!大丈夫?」
       「ま・・・まあな・・・。ジョーお前、歌は上手だが選曲がまちがっとる。」
       「?なんで?これ誕生日に歌う歌だろ?」
       「本気で言ってんのか。誰に教わった?」
       「神父様。だからどの子の誕生日にもコレ歌ってたよ。」
       そう言い切る009は、真面目そのものである。
       「そりゃクリスマスの時に歌う歌だ。」
       「ええ!?」
       ゴイン!
       驚いたらしい009の手が離れた為、004の頭は・・・以下略。
       「あ。ゴメンゴメン。」
       3度004の頭を抱えようとした009は、004の拒絶にあう。004はチカチカする視界を抑えな
       がら、椅子に座った。009も同じように座り直す。
       「ね、アル。普通の誕生日には、どういう歌を歌うの?」
       009に言われて、004は思わず歌いだそうとしたがハタと正気に戻る。
       「いや、この歳になってから歌うのはちょっと・・・・・。」
       「なんでさ。」
       009がキョトンとして、首を傾げた。
       「・・・・・・やっぱりダメだ。帰ってフランソワーズにでも歌ってもらえ。」
       004は赤くなってしまった顔を009から背けながら、そう言うのが精一杯だった。取り合えず、0
       09に強制されてキャンドルの火を吹き消す。ナイフでケーキを切ろうとすると、009が一緒に切ろ
       うとしたので、004は跳ね飛ばして1人で切っていった。生クリームもなにもないシンプルなケーキ。
       食べてみると、思ったより柔らかい。かなり003の手が入っているのがわかり、009には悪いが0
       04は003に感謝した。


       「ハイ、これフランからね。」
       009がドラえ○んポケット張りの袋から、ゴソゴソと綺麗にラッピングされた箱を004に渡す。開
       けてみると、シンプルなオルゴールだった。曲目は”トロイメライ”。いかにも003らしいプレゼン
       トに004の顔が、優しい笑みに変わる。
       「フランソワーズに礼を言っておいてくれ。」
       「OKだよ♪あ、これはグレートから。」
       007のプレゼントは、万年筆だった。いかにも書きやすそうな万年筆だ。
       「それから・・・僕のはショボイんだけど・・・コレね。」
       009からのプレゼントは写真フレームだった。木彫りの縁がついている。しかし、写真はもう入れて
       あった。それは”宇宙の子供達”が帰った後、せっかくだからとメンバー全員でキャンプをした時の写
       真であった。役割をアミダクジで決めた為、002・005・008がテント係、006・007が薪
       拾い係、003が当りを引いて何も無し(だから写真を撮ってまわっていた)、001・ギルモア博士は
       番外。そして、009と自分が調理係だった。メンバーに泣きつかれて、009に料理させないように
       奮戦した覚えが004にはあった。写真には、後ろにテントのロープを引っ張り大騒ぎしている3人衆
       と、薪を持ったまま転んでる006とびっくりしている007、1番前には興味津々の顔をして004
       にひっついている009と、纏わりつかれて何か怒鳴っている自分が写っていた。
       「アルにね、この”想い出”の写真を飾って欲しいんだ。」
       009が珍しく照れたように言う。
       「そうか・・・・。”想い出”ね・・・・。」
       004にとって”想い出”とは、余り良いものはない。だが、こういう”想い出”も良いもんだと思う。
       009は”物”ではなく、”気持ち”を送りたかったのだろう。004は、なんだか009を見る目が
       変わったような気がした。
       「あ、でもこっちでも良いよ?」
       と出してきたのは、もう1枚の写真。そこには、ブロマイドのように防護服を着て親指を立て、あまつ
       さえ歯が光っている009が写っている。
       
        前言撤回。
       
       「な〜んてね、ウ・ソだよ〜」
        009はいたずらっぽく笑った。思わず、004は全身の力を抜いた。
       「てっきり”僕がプレゼントだよ〜”とか言うのかと思ったよ。」
       気の緩みから、004はポロッと本音を漏らす。すると009はうふふvと笑って答えた。
       「あ、そうなんだvじゃあ、リクエストには答えないとね♪はーい、”僕”をプレゼントv」
       バフウ
       009は、一気に004をベットに押し倒した。
       「わ〜!!言うんじゃなかった〜!」
       004の悲鳴が響いたが、すべては後の祭りであった。



       結局009は4日間、泊まっていった。あちこち”観光”に引っ張り廻され、家でも翻弄され続けた。
       それでも不思議なもので、009が帰った後、何だか家がシーンとして004は少し物悲しくなったものだ。
       しかし、009が帰った次の日の朝、004は朝1番天井にいつの間にか貼られていた009の”例”
       の写真と対面することとなった。転んでも、転ばなくてもタダでは起きない男、それが009である。



       ★1112を踏んでくださった笈川さまのリクエスト小説です。えー御題は「明るく楽しい004の誕        生日」だったのですが・・・。今回悩んだのは各々が004にあげるプレゼント。何を贈るのか、さっ        ぱり思いつかなくて・・・こうなりました。ちなみにショートケーキ1個食べれないのは、私です。好        きなんですが、あんまり食べれません。        で・・・・えーと笈川さま、こんなんで宜しいでしょうか・・・・。        戻る