009が関わってくる機々械々
「すまん、ちょっと電話してくる。」 ドイツに着くなり、ギルモア博士は電話ボックスに向かう。お供でついて来た009と003は、その 後ろで待っていた。・・・・と、009がゆらりと動く。 「何処へ行くのかしら、ジョー?」 すかさず003が釘を刺す。009は003にとんずらしようとしたことがあっさりバレたので、苦笑 しながら立ち止まった。 「いやさー、ちょっと用事があって・・・。」 誤魔化そうとする009に003はニッコリと笑った。 「分かってるわよ、アルベルトに会いに行くんでしょ?ちょっと待っててよ、私だってアルベルトに会  いたいんだから。」 ピシャリ、と言われて009が首をすくめた。この003は勘が大変良く、しかも009から004を 守ろうとするので009にとっては、ちょっぴり厄介な存在だった。頭の回転も口の回転も速く、00 9の言葉に鋭く突っ込んでくる。まあ、そうでなければあのやんちゃ坊主の002の彼女なんぞやって いられないのだろうが。黙って立っていれば、振り返る人もいるほどの可愛い少女なのだが、彼女の持 つ棘に中々男連中は勝てない。そんな003だったが、004には良く懐いている。どうやらブラコン であるらしく、004に兄の面影を見ているらしい。そんな彼女の心情を知っているからこそ、004 は003には格別に優しい。余りに優しいので、002が一時期勘違いを起こして拗ねてしまったこと もある。まあ、誤解は直に解けた。009が004に向かって恋人宣言したことも、問題解決に一役買 った。004は卒倒してしまったことを、此処に書いておこうと思う。 だからこそ、003は009と同じように004に会いたいのだ。それなのに、009は003を置い ておこうとした。003が怒るのは当たり前だ。 「博士が電話し終わったら、会いにいきましょう?」 「ん〜〜〜〜〜〜、あ。」 「?なに?」 003は009の視線を思わず追ってしまう。・・・・別に何もない景色が広がっている。 「?なによジョー、別に。」 再び009に目をやると・・・・・009は消えていた。003が見せたちょっとしたスキを逃さず、 加速装置を使って逃げてしまったらしい。最初ぽかーんと口を開けて固まってしまった003ではあっ たが、ふふと笑う。 「・・・・やってくれるじゃない、ジョー?後で覚えてなさいよ!!」 003の怒りの叫びが、空港に響き渡った。 ジリリリリン、ジリリリリン。 004の部屋から、電話のベルが鳴り響く。004は一仕事終えて眠っていた。余りに眠いので、その 電話のベルを無視しようとしたのだが電話はいつまでもベルを鳴らし続けている。とうとう004は折 れて受話器を取り、起き上がった。 「・・・・はい。・・・・・・・・ギルモア博士?はい、はい・・・・・・・。」 一遍に目が覚める。004は窓に背を向けて、ギルモア博士と話し出した。 だから知らない。 009がびたーっと窓にへばりつき、004の姿を見つめている事を。キチンと気配を消しているので 004に見付かる心配はない。だが道行く人々には丸見えだ。真っ赤な派手な服を着た少年の姿は、次 の日の朝刊を賑わしたのだった。 ブロロロロロロ・・・・ 004は車に乗っていた。ギルモア博士からの、突然の電話。それはある”古城”で不穏な動きが発見 されたので、ドイツに来たというものだった。 「どこかで合流しましょうか?」 そう言う004に、ギルモア博士はこう言った。 「いや、先に行って調べてくれんかの?わし等もすぐ駆けつけるでな。」 「・・・・わし等?博士、誰と来てるんですか?」 嫌な予感がして、004は尋ねる。対するギルモア博士はのんびりと、答えた。 「ジョーとフランソワーズじゃよ。」 「あの〜〜〜フランソワーズだけ連れて来てくれませんか?」 「・・・・多分そーいうじゃろうと思ったんじゃがの。ダメじゃ。」 いやにきっぱりと博士は宣告してくれた。確かに博士が009に勝ったことはない、いつの間にか丸め 込まれているのだから。しかも丸め込まれたことに気が付いていないという体たらく。そのとばっちり を幾度となく受けてきた004は、溜息をつかざるを得なかった。 「ダメですか。」 「うむ、ダメというより無理じゃ。じゃがフランソワーズがついておるでな、孤独な戦いにはならんと  思うがのう。」 「そーですか・・・・。」 そんな会話を展開した後、004は着替えて家を出た。向かうは博士の言っていた”古城”である。一 体不穏な動きとやらは何なんだろう?と運転しながら首を傾げる。BGかとも思ったのだが、彼らの本 居地は叩いてある。ミュートスやらの動きは断片的にあったものの、ここ最近はすっかり平和だったか らだ。 ”まあ良い。全てはそこに行ってからだ。” そう結論付けて、目的地に走って行く。 004は知らない。 その車の上に009が張り付いていたのを。 車の上にしがみ付いている、満面の笑みを浮かべた真っ赤な派手な服を着た少年の姿は、次の日の朝刊 を賑わしたのだった。 バタン。 004は車から降りた。古城を見上げて、周りを観察する。そして古城へ向かって歩き出したその時。 「ア〜〜〜ルvvvv」 聞き覚えのあり過ぎるのーてんきな声が響き、なにかが004の背中に飛びついてきた。すっかり前に 気を取られていたせいで、004は衝撃に耐えられず地面に激突した。 「アルッ、大丈夫?」 背中に乗ったまま、009が一応心配そうに尋ねてくる。004はなんとか顔を上げた。 「そ、そー思うなら・・・・・どいてくれ!お、重い!!」 「は〜い、じゃあどきましょ。」 009は思ったより素直に004の背中からどいた。のろのろと起き上がって、座り込む004の顔を 009は覗き込んでから、ニッコリと笑った。 「久し振りだね!会いたかったよ、アルv」 「出来ればこーいう形では、会いたくなかったがな・・・・。」 「そう、アルもそんなに僕に会いたかったんだね!嬉しいよ。」 がばあ、と009は004に抱きついた。周囲には誰もいなかったのだが、思わず周りを見回してしま う004であった。それにしてもすれ違う会話だ。 「おいジョー、博士とフランソワーズはどこだ?」 「あ、うっかり置いてきちゃったvてへっv」 「てへ、じゃない。お前、わざと置いてきたな?」 「あ、それは誤解だよ。そんなことしないもん、僕。優しいから。」 「自己申告をするな、馬鹿者。お前が優しいなら、スカールだって優しいぞ。」 「もう、会ったこともない人を勝手にイメージしちゃダメだよ?・・・ところでさあ。」 「ん?何だ?」 009はキョトキョトと不思議そうに、周囲を見回して首を傾げる。 「何でこんなトコ来たわけ?」 「はあ?なに言ってんだ、博士が此処で不穏な動きがあるから調べる為にドイツに来たって言ってたぞ。  聞いてないのか?」 「ふ〜ん・・・・・・・・・・。」 009は何か考え込むような仕草を見せた。が、なにか思いついたらしく目が004には見えないぐら いにキラリ〜ンと光った。 「博士から詳しい話を聞いてないんだよ、僕。飛行機の中でも寝てたしさ。」 「ちゃんと聞けよ、まったく。」 004はブツブツ言いながら、古城に入って行く。その後姿を眺めながら、009は立ち尽くした。 「どーしたジョー?行くぞ。」 004が振り返って声を掛けてくる。009はうん、と曖昧に答えた。きょろきょろと見回した後、あ るポイントを見てニヤリと笑う。そして駆け足で004の後を追った。 「待ってよ、アル!」 「わー梟だ。」 物珍しげに言う009に、004は尋ねる。 「お前、本物の野生の梟って見たことないのか?」 「いんや、こんな建物の中に巣を作っているのを見たこと無いだけ。」 「そーか。そう言えば、こんな感じの古城って日本にはないもんな。」 「うん。」 「でも、そろそろ行くぞ。」 004にそう言われて、009ははあいと良い子のお返事をして後ろをトコトコと歩いていく。2人し て異常が無いか見て回ったが、怪しいところは無い。どんどん、奥に進んでいく。 「アルッ、危ない!!」 突然009がそう叫んで、004を後ろから抱き締めて後ろに飛ぶ。 「!?」 驚く004の目に、自分に向けて落ちてくる柱らしきものが映る。 ズ、ズウウウウン 鈍い音をたてて、柱は床に激突した。004がついさっきまでいた場所に。思わず固まっていると、0 09の溜息が聞こえた。 「大丈夫かい、アル?」 「あ、ああ。有難う。」 004が固まったまま、マニュアルのようにお礼を言うと009の腕が離れた。 「やっぱり、なんかあるな。此処は。」 「うん、確かにね。」 そう言いながら、009はきょろきょろと辺りを見回す。 「どーした、ジョー?」 「うん?いや、今柱を落として僕の大事な恋人のアルに粗相をした奴がいないかなーと思って。」 「お前なー、いつ俺が認めたよ?」 「大丈夫、分かっているから。」 「何をだっ!」 「照れてるってこと♪」 「・・・・・・・・先を急ぐぞ。」 力なく、可哀想なくらい肩を落として004がとぼとぼと歩き出す。009は、さささと隣にいって背 中をバンバン叩いた。 「良く分かんないけど、元気だしてアルv」 「元凶がいけしゃあしゃあと言うな。」 「ん〜〜〜?何のこと?」 惚けると、諦めたのか004は黙ってしまった。と、そこへまたしても柱が落ちてくる。今度は004 の反応が間に合った。ドコカの聖闘士の主人公みたいに、拳を連続して叩きつける。それは、多分に八 つ当たりが含まれていることは、想像に優しい。哀れ、柱は啄木鳥に突付かれたように穴ぼこだらけに なった。004は何やら爽快な満足感と共に、額の汗を拭く。 「スカっと爽やか。」 「わあ、格好良いやアル!どこかの漫画みたい!」 009が珍しく突っ立ったまま、パチパチと手を叩く。004は笑顔満面の表情で、009を見た。 「さて、先に進もうか。」 「うん!まるで伝説の川○宏の探検隊みた〜いvv」 「何だ、それ?」 「あのねえ、有名なやらせの探検を・・・・。」 とても此処が(一応)敵地だと思えぬ会話を呑気に展開しながら、2人は更に奥地へ進んでいく。その時 その2人を眺めていた人物がいたことを、004は知らなかった。 大広間らしき場所に辿り着く。すると、又しても柱が落ちてくる。004はヤケクソ気味に右手のマシ ンガンを炸裂させて、柱を壊す。009もきちんと柱を粉砕していた。 「何だか柱を倒すのが趣味らしいね、此処の住人は。」 「やな趣味だな。ドミノ倒しとかが好きだったりして。」 「でもさ、アル?」 「何だ?」 「うん、さっきの場合さあ、無理にマシンガンの弾を無駄遣いしなくても左手のレーザーナイフで切れ  ば良かったんじゃないの?此処、弾の補充は出来ないよ。」 「そーいう冷静なツッコミは、断固として拒否する。つーか、言わないでくれ。落ち込むから。」 「あ、やっぱり気がついてたんだ。」 ゆらり、と前に人影が映る。009と004は、直に臨戦態勢に入った。なんといっても00ナンバー の主戦力だ、こういう反応は両者共に早い。 「・・・・・・!!」 「わお。」 現れたそいつに、2人は驚きを隠せなかった。そいつは・・・・004だったからだ。思わず004が 口走った。 「・・・俺じゃねーか・・・。」 009は、あっちとこっちの004をきょろきょろと交互に見てから、やおら隣の本物の手を掴んで挙 げさせる。 「僕の好みはこっち。」 「っ馬鹿ったれ!!!何が好みだ!!好みで決めるな!!!」 004が009の手を振り解いて怒鳴る。偽者は黙ったまま、左手をすうと上げる。そこにはレーザー ナイフが光っていた。 「!!下がれ、ジョー!!!」 咄嗟に叫ぶ。その動作を”隙”とみたのか、偽者が襲い掛かってきた。 ギイィィィン!!! レーザーナイフ同士がぶつかり合って、嫌な音をたてる。004の目の端に、こちらへ向かってこよう としている009が映る。 「来るな!!コイツは俺に任せろ!!」 激しい打ち合いになりながら、004は必死で叫んだ。009の動きが、ピタリと止まった。 「どこかに黒幕がいるはずだ、それを探してくれ!!」 「分かったよ、無理はしないでねアル?」 そう言って009が、目の端から消えて行った。 大広間を出たところで、009はピタリと止まった。後ろから、ミサイルの撃ちあいになったのか、激 しい爆発音が聞こえてくる。 「まいったな、どうも誰かが徘徊しているとは思ったけど、アルのそっくりさんだったとはねえ。」 009は考え込んだ。一応004の顔を立てて、大広間から出てきたものの、やっぱり004が心配な のだ。何やかんや言いながら、009が004を大切に思っているのは確かなのだから。黒幕の姿は見 てはいないが、博士のそっくりさんは見ている。多分、そこから引っ張っていけば黒幕に出会えるハズ だ。・・・・・・きっとBGに。 「はあ、アルに目を付けたのは良い線だとは思うけど。なんたって攻撃力の威力と攻撃の豊富さはアル  が1番だしなあ。でも、思い通りにはさせないよ?アルに手を出す奴は、全て滅びるって決めてるん  だから。・・・・仕方ない、様子を見ながらアルに手助けするか。バレたら怒るだろーし。」 目出度く結論が出たので、009は行動を開始した。・・・・まずは004を探さなければ。 続く
★ははは、単なる機々械々のパロだというのに何長々と書いているんでしょうか私は?というかDVD  でこの回を観て、やっぱり009に参加して欲しかったなあと思って書いてみました。全然役に立っ  てないような気がしますがどーでしょうか?009ってば。 戻る