夏祭りに行こう!〜やっぱり004を誘わない〜


       「あのさ・・・・・。」
       咄嗟に口から出てきた言葉に、004がうん?と首を傾げる。
       「なんだ?」
       問われたが、それ以上の言葉が出てこない。話しかけたくせに、ちっとも先に進まない009に004
       は眉を顰めて見やった。
       「どうしたんだ、おかしいぞさっきから。言いたい事はキチンと言葉に出せって言わなかったか、俺は。」
       004は心配してだろう、口調が厳しくなっている。となると、ますます誘えない009であった。
       「ごめん、もう夕方なんだなあと思ってさ。」
       「はあ?なに当たり前なこと言ってるんだ、お前は。やっぱり調子が悪いんだろう。ギルモア博士、呼
        んでこようか?」
       「え?いいって、大丈夫だからさ。」
       「しかし・・・・・。」
       「平気、本当に。大丈夫だから。」
       「なら、良いが。」
       004は納得しかねる表情で009を見ていた。


       「あら、ジョー。出てきたのね、ちょっと手伝って欲しいのよ。」
       「あ、フランソワーズ。良いよ、なに?」
       「ええ、ちょっと力仕事をして欲しいの。」
       「うん、分かった。」
       003と共に去ろうとした009の背に、004の待ったの声がかかる。
       「俺がやるよ、フランソワーズ。」
       「ええ?だってアルベルトはさっきメンテナンスが終ったばかりなのよ?今は安静にしているべきだわ。
        ねえジョー、そう思うでしょう?」
       003に問いかけられて、009は深く頷いた。メンテナンスは確かに終了後はどこかに倦怠感が纏わ
       りつくもので、あんまり力仕事とかはしない方が良い。だが009のことで、納得はしていなくても大
       いなる誤解をしている004は譲らなかった。
       「ジョーもな、何だか今日は調子が悪いみたいなんだ。本人は大丈夫だと言うんだがな。」
       「あら、ジョー。それホントなの?」
       「え、い・・・いや・・・。」
       慌てる009に、003は溜息をついた。そういえば、いきなり廊下に蹲っていたと余計なコトまで0
       04に喋ってしまう。003に、悪意が無いことは分かっている。彼女とて、009の心配をしている
       のである。それを邪険に扱うことは出来なかった。
       「ギルモア博士を呼んできましょうか、ジョー?」
       004と同じことを003に言われて、009は焦ってしまう。ただただ、004と夏祭りに行ってみ
       たいという単純かつ、真剣な思いがなんだかおかしな方向へ流れていってしまっている。そう例えるな
       ら、淀川(大阪)に落っこちてあわあわと何とか助かろうともがいていたら、大阪湾に出てしまったよう
       な感じで。いまいちスケール的に小さい気もするが、まあ細かいことは気にしているとアデ○ンスのお
       世話になりそうな感じなのでとりあえず無視。
       「いや、本当に大丈夫だから!全然快調だから、気にしないで。ささっフランソワーズ、なにをすれば
        良いのかな?」
       話を終らせるつもりで、努めて明るく言ったのだが003と004はますます眉を寄せた。
       「悪いけど、とても大丈夫とは思えないわ。」
       「ええ!?」
       「だろう?だから俺がするからさ、ナニをすれば良いんだフランソワーズ?」
       「ち、ちょっとアル?」
       「じゃあ、悪いけどお願いするわアルベルト。ちょっとこっちに来てくれる?」
       「フランソワーズ?アル?」
       「分かった・・・・・。おいジョー!」
       「え、な・なに?」
       「お前はちょっと休んでろ。大分疲れているみたいだからな!」
       「いや、それは・・・・。」
       「そうよアルベルトの言う通りよ!具合が悪い時はちゃんと言ってね。」
       「え、でもフランソワーズだって体調が悪いって騒いでたジェットを買い物に引きずり出しただろう?」
       009としては、決定的瞬間のつもりで物申したのだが003は余裕の表情だった。
       「あらジェットはね、私とお買い物と行く時は必ずそう騒ぐのよ。いつものことだから、気にしないわ。」
       あっさりきっぱり言い切ってくる003に、009はきょとんと目を丸くした。
       「・・・・・・そう・・・・なの?」
       「ええ、そうよ。」
       さらに言い切って003は、004を促した。
       「アルベルト、こっちよ。」
       「ああ。・・・ジョーちゃんと寝てろよ。」
       004によって決定打をうけて、沈んだ009はぼんやりとドアに消えていく2人を見ているだけしか
       できなかった。


       「あれドコ行くの、2人して。」
       玄関先で003と004の声がしたので、自室から出てきた009は浴衣姿の2人に問うた。
       「あジョー、起きてて平気なの?」
       003が心配そうに訊いてくるのを、うんと頷いて返す。そんな009の顔を004が覗き込んできた。
       「・・・・・・・まあ一見大丈夫らしいな。」
       「一見じゃなくっても大丈夫だってば。で、2人共何処へ行くの?」
       「朝、話したでしょう?夏祭りに行くのv」
       「ええええーーーーーーーーーー!?」
       そんな!と寝耳に水状態で009は叫んだ。それに対して2人は呆れ顔である。
       「なに大声出してるんだ、お前は。フランソワーズが驚くだろう?」
       「え、だって僕だってお祭りに行きたかったんだもん!」
       004に対して力説する009に、003が何言ってるのよと呆れる。
       「体調、悪いんでしょう?大人しく寝てなさいよ。」
       「そうだぞ、サイボーグといえども体調が良くない時はちゃんと休んでおけ。」
       「アルは・・・さ、夏祭りに行きたかったの?」
       「ん?ああまあな。最初はフランソワーズがお前と行って来い、と薦めてくれたんだが肝心のお前が倒
        れちまったから。」
       「私が代理で、一緒に行くことにしたのよ。」
       「・・・・・・・・・・・・・。」
       「じゃあな、お土産買ってきてやるからちゃんと良い子に寝てるんだぞ。」
       「行ってきま〜す。」
       呆然として声も出ない009に、2人は爽やかに出かけて行ってしまった。残された009はただただ
       後悔と共に、玄関にいつまでも立ち尽くしていた。

       バッドエンド

       ★はーい、バッドエンディングでした。この009はどちらかというと白っぽい彼ですね。003も0         04も、唯単純に009の心配をしているだけなんですが・・・・。しかしバッドエンドって私には         書きにくい・・・・(苦)根本がハッピーエンドの人なので、結構時間が掛かってます。・・・ええこ         んな短い話なんですけどねー。本当は誘わないとスグにゲームオーバー(ゲーム?)にする予定だった         のですが、ちょっと味付けしてみました。        戻る