静寂の夜の砂漠
俺の望みはただ1つ
それはお前が生きること。
だから
俺は進んで生贄になった。
2つの星間で終らない戦争。そこへ突如現れた”仲介人”が彼らに命じたのだ。
「双方より代表する戦士を1名ずつ選べ。そして闘わせろ!
その結果で2つの惑星に勝負を決定する。」
その言葉に従って、静寂の夜の砂漠に”戦士”が選出され、闘った。
1人は異形の戦士。
1人は銀髪の青年。
3日3晩の死闘の結果。
異形の戦士のレーザーが、青年を直撃した。
青年の両手は飛び散り、左足は吹き飛んだ。
勝者は決まった。
倒れた青年は、置き去りにされた。
静寂の夜の砂漠に1つの”命の音----ノイズ-----”が響く。
ふと、”ノイズ”が1つ増える。
現れたのは、青年と同じ服装をした少年だった。濃い茶色の髪が揺れている。
少年は、ゆっくりとした足取で青年に近づく。
1瞬、見下ろしてから吹き飛んだ青年の両手と左足を拾う。
そして、ゆっくりと座り込んで優しく青年の上半身を抱き起こした。
ピクッと青年が動き、その瞳に少年を映す。
「・・・・・・・ジョー・・・・・・。」
青年が少年を呼ぶ。
「うん。」
少年は、微笑んで答えた。
青年が身じろいだ。
少年に触れようとしたが、触れるべき手がないので出来ない。そんな感じで。
「・・・・・・・・・・・・ジョー・・・・・・。」
「うん。」
青年は、何度も少年の名を呼ぶ。まるで、それだけしか言葉を知らないように。
少年は、何度も青年に答える。青年を安心させるかのように。
何回か繰り返した後、青年の瞳から涙が零れだす。
仰け反り、最期の息を吐こうとする。
「・・・・・・・・・・ジョー・・・・・・・・。」
弱々しい、声。
弱々しい、”ノイズ”。
少年は笑った。鮮やかに、優しく。
「うん。」
青年が、微かに笑った・・・・・・・。
静寂の夜の砂漠に響いていた2つの”ノイズ”は1つになる。
少年は、暫く青年を抱き締めていたが、やおら青年のホルダーから銃を抜き出す。
何も語らず、何も迷うことなく。
少年は、銃をこめかみに当てた。
パシュッ
大きな意味を持つ、小さな音が聞こえる。
少年は、青年を守ろうかとするように抱き締めたまま、倒れた。
”ノイズ”は消え、再び夜の砂漠に静寂が戻る。
なんの意味も必要ない静寂。
青年と少年の身体もやがて、静寂の夜の砂漠に飲み込まれていく。
僕の願いはただ1つ。
それは君に手が届く場所にいること。
だから
君が逝くなら僕も逝く。
☆・・・・・暗い話で申し訳ありません。ワンパターンを打破しようとしたら、2人とも死んでしまいました。
これは原作の「四次元半 襖の下張り・サイボーグ戦士(ウオーリア)」に引っ掛けた話です。004がボロ
ボロになってしまったシーンは驚きましたよ・・・。ここでは名の無いサイボーグとして出てきたんですが
自分のこと、ワタシって呼んでたりしてたけど・・・・。
あんまり、解説するような話ではないのですが、ちょっとだけ・・・。004が009の名前を繰り返し呼
んでいるのは、意味があります。もう、喋る力すら残っていない004は009の名前に、様々な感情を込
めています。闘いに敗れた無念さ、望郷の思い、自分の惑星の未来、そんな中で自分の最期を看取りに来て
くれた009への感謝の気持ちなんかも入っています。だから009がいちいち答えているんですよ。その
004の気持ちへの、返事なのです。
009は004の後を追います。004が闘いに行く時に、既に覚悟をしていたんですよ。だから、死ぬの
に躊躇しなかった。彼は、004の望みより自分の願いを優先したんです。その判断が間違っているかどう
かは第3者には分かりませんね。
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