新婚行進曲・・・・プロローグ

初めから始まり-----ジョー



           はっきり言って、一目惚れだったんだ。
           本当に小さい頃、初めて行ったある公園で迷子になった。他の子と一緒に来たんだけど、何故か僕だけはぐれてしまった。
           どうして良いかわからずに、一人ベソをかいてた。その時、ふと見上げると彼の人が困ったような顔を
           して僕を見下ろしていた。
           思わずベソをかくのも忘れて見入ってた。
           綺麗な銀色の髪と不思議な色合いの青い瞳。
           彼の人は17歳、僕は5歳。

           それから僕を教会へ連れて行ってくれた。神父様や他の子供達も心配してくれて、僕が無事だったことを
           本当に喜んでくれた。
           ところが、気が付くと彼の人は消えていた。お礼が言いたかったのと、名前聞きたかったのに。
           でも子供なりに、一生懸命考えた。また会いたくて、話がしたくて。
           そして、結論に辿り着く。
           あの公園、僕は初めてだったけど彼の人は通学路だったに違いない。だったらあの時間、あそこで待っていれば
           きっと会える。そう思った。

           勘は当たった。
           少し時間が昨日とずれたけど、また会えた。
           昨日のお礼と名前を聞いた。
           それから、少しずつ親しくなっていく。変な子供だと思っていたようだけど、そんなこと全然かまわない。


           「僕、18歳になったら貴方をお嫁さんにする!」
           僕にとっては本気の口癖。彼の人は、子供の戯言だと笑って言う。
           早く大人になりたかった。

           でも、彼の人に大切な人ができた。すごく腹立たしかったけど、彼の人が選んだだけあってとても
           良い人だった。彼の人にひっつく僕を、とても可愛がってくれて。ああ、この人なら彼の人を託しても
           良いかな?くやしいけどそう思うようになった時、思いもかけない事がおきた。


           その人が死んだ。
           交通事故だった。
           くやしいじゃないか、酔っ払い運転の車にはねられたんだ。その人は何も悪くなかったのに。
           「私に何かあったら・・・あの人をよろしくね?」
           冗談とも本気とも思われる言葉を、その人は僕によく言ってた。悪戯っぽく笑いながら。
           彼の人は目に見えて落ち込んでた。だけど、僕には慰める言葉もなくて。どうして良いかわからなかった
           けど、ただずっと彼の人のそばで座ってた。


           時が過ぎて、僕はとうとう念願の18歳になった。さっそく彼の人の所へ行き、プロポーズ。
           彼の人はびっくりしてたけど、強引に説き伏せた。
           そうさ、ずっと欲しかったんだ。欲しいものを手に入れる為には、なんだってやれる。


           --------------------だってそうだろう?


初めから始まり-----アルベルト



           はっきり言って、どうしてそうなったか覚えていないんだ。
           学校の帰り道、通学路にしている公園で泣いている1人の子供がいた。どうやらはぐれたらしい。周り
           には人影もなくて。どうしようかと思った、正直俺は子供は苦手だった。でも捨てておけないし。
           とうとう良心に負けて近づくと、その子が俺を見上げた。
           何故か泣くのを止めて、ポカンと俺を見つめる。なんだろう俺、変なもんついてるか?
           取りあえず、家を聞いた。俺の家からちょっと離れた教会が自分の家だと言った。なるほど、この子は
           孤児だったのか。場所を思い出していると、その子の瞳とぶつかった。涙ぐみながら、不安そうに見つめて
           くる。どうしよう、と思ったがなんとなく手を差し出した。その子が安心したように、俺の手を握る。
           そのまま、手を繋いだまま教会に向かった。
           その子は5歳、俺は17歳。

           教会に着くと、彼らの世話をしている神父と子供達が走りよって来た。心配していたんだろう。皆の顔
           が明るい。神父が俺の所に来て、何度も頭を下げてお礼を言う。慌てた。別にこんなに礼を言われる程
           のことなんかしてない。挨拶もそこそこに、俺は家に帰った。


           それで終わりのはずだったんだが・・・・。
           その子が昨日と同じ場所に立っていた。俺を見つけると、パッと顔を輝かせて走り寄る。
           会話は・・・・お礼を言われて名前を聞かれた。その程度。
           それから・・・その子はなんだか俺の周りをうろちょろするようになった。
           変な子供だ、なんだって俺の周りにいるんだか。さすがに俺が友達と遊ぶ時はついてこなかったけど。


           「僕、18歳になったら貴方をお嫁さんにする!」
           俺にとっては、ただの子供の戯言。でも、その子には本気の口癖だったらしい。
           ま、その頃には俺に興味なんかなくしているだろうな。

           俺には大切な人ができた。本当に大切な人。自分の人生の中で、こんな気持ちになることがあったなんて
           驚きだ。相変わらず、その子は俺の周りをうろちょろしていたが別段異議はなかったらしい。
           仲良かったしな。良く2人して話をしていたっけ。ああ、この人とならずっと一緒に過ごせると思った。
           だが思いもかけない事がおきた。


           大切な人は死んだ・・・死んでしまった。
           交通事故だった。
           腹立たしいじゃないか、酔っ払い運転の車にはねられたんだ。大切な人はなにも落度がなかったのに。
           思い出すのは、鮮やかな笑顔。優しい声。だがもうどこにもいない。・・・・いないんだ。
           その頃には1人暮らしだったから、部屋に篭もってなんとか悲しみを癒そうとした。
           その子は・・・・俺を訪ねてきて、なにも言わなかった。ただ・・・ただ俺のそばに座っていた。
           ただ・・・・・座りこんでいた。

           時が過ぎて、ようやく心の傷が癒えてきた頃、その子がいきなりやって来てこう言った。
          「僕、今日で18歳になったからかねてから言ってた通り、結婚してね!」
           青天の霹靂だ。なんとか思い直させようとしたが、なんだか強引にOKさせられた。
           まあ、良い。気がすめば、この選択が間違いだったと気づくだろう。その子はまだ本当に若いから、
           それからでも十分人生のやり直せるから。


           --------------------だってそうだろう?






           かくして・・・ウエディング・ベルは鳴り響く



           ★えー、何だかシリアスっぽいですが(そう思っているのは私だけ?)次からはギャグ路線です。
           しっかし、色物ですね・・・こりゃ。幼い旦那ジョーと奥様アルベルト。ジョーの幼馴染フランソワーズ
           と親友(悪友?)ジェット。アルベルトの同僚グレートと行きつけの中華飯店(笑)の親父張々湖ぐらいが
           出演予定です。あ、そうそう”その人”はヒルダさんです。良かったら宜しく。
戻る