新婚行進曲・・・・・エピローグ
”あれ?家の電気が点いてる”
ジョーはそう思った。色々あったが、なんとか合コンを抜け出して帰ってきたのだ。もうかなり遅い時
間、普段ならアルベルトはもう寝ている時間。だが、見上げた家は電気が点いている。これはかなり珍
しいことといえた。
”何かあったのかな・・・?”
何だか憔悴感に襲われて、ジョーは一気に階段を駆け上がった。
「ただいま〜。」
「あ・・・・お、お帰り・・・。」
部屋に入ると、やはりというべきかアルベルトがソファで本を読んでいた。
「どうしたのさ、珍しいねこんな時間まで起きてるなんてさ。明日、会社休みなの?」
「い・・いやそういうわけでもないんだが・・・。」
ジョーはアルベルトをマジマジと見つめた。何だか様子がおかしい。落ち着きが無く、何か言おうとし
て口を開くが、何故か顔を真っ赤にして閉じてしまう。それは今迄に見たことが無いアルベルトだった。
「・・・・・・何かあったの・・・?」
「い・いや別に・・・。」
別にと言うわりには挙動不審である。そわそわと更に落ち着きを失くす。ジョーはショルダーバックを
下ろすのも忘れて、ポカンとアルベルトを見る。いつもと違う態度にジョーは、段々いつも感じている
不安が膨張するのが分かった。まさか・・・浮気っ!?との言葉を思い出すが、それなら今のアルベル
トの態度はやっぱりおかしい。両者とも黙ったまま、片方は真っ赤になりながらもう片方は?マークを
飛ばして相手を見つめるという、消極的な戦いが展開されていた。
やがて、アルベルトが何かを決心したような顔をして口を開いた。
「・・・・・今夜・・・・その・・・しないか?」
「はっ?」
アルベルトの声は小さくて、良く聞こえない。思わず聞き返す。だが、アルベルトは真っ赤を通りこし
て、湯気が出そうになりながら下を向いてしまう。
「アル?何て言ったの?ゴメン良く聞こえなかったよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「もう1回言って?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「アル?」
アルベルトが顔を上げた。相変わらず湯気が出そうになっている。
「い、いやなんでもないんだ。気にしないでくれ。」
そう言われれば、気になるのが人間というもの。ジョーはプーッと膨れた。
「ヤダよ。何か言おうとしてたんでしょ?アルの言葉は何でも良いから聞きたいんだ。」
立ち上がりかけるアルベルトの肩を掴んで、ソファに座り直させる。顔を近づけると、アルベルトは不
自然に視線を外した。思わず肩を掴む手に力が入る。
「アル・・・・?」
やけくそになったのか、何なのかアルベルトは突然ジョーをキッと睨みつけて叫んだ。
「だからっ!今夜しないかって・・・っ!」
「へ!?」
思いも寄らないアルベルトの言葉に、ジョーは目をパチクリとさせた。反対にアルベルトはゼーゼーと
肩で息をしている。顔は相変わらず真っ赤で、涙目になってしまっていた。
「・・・・・・・・ええーっ!?」
ようやくジョーの脳にアルベルトの言葉が届いたらしい。途端にジョーまで真っ赤になった。今まで、
そーいうことは何回でもしている(なんたって新婚さんである)。だが、いつもジョーが誘うだけで、ア
ルベルトから言われた事は無い。誘えば相手をしてくれるが、それだけだった。それでもジョーは心底
幸せだったので気にしていなかった。のだが・・・。
「ほ、本気?」
「別に嫌ならいい。」
アルベルトの拗ねたような口調にブンブンと首を横に振る。好きな相手から誘われれば、嬉しくない奴
がどこにいる。
「なら、早く風呂に入って来い。」
「うん!わかった!」
ジョーはショルダーバックを放り投げ、バタバタと風呂場に消えていった。
”ふ〜・・・・。”
アルベルトは大きな溜息をついた。まだ心臓がバクバクしている。幼い旦那が慌てているのだろう、バタ
ーンとか大きな音がしている。
”とうとう、言っちまった・・・。”
グレート、(特に)張々湖に背中を押された感じになってしまった。ノッてしまった自分もどうかと思う
が、今更かとも思う。
”あとは・・・積極的にいったってなあ・・・”
何だか頭を抱える。ジョーが帰って来るまで、モンモンとしていた気持ちが蘇った感じがした。そろそ
ろジョーが風呂から出てくる。アルベルトは覚悟を決めて、立ち上がった。
”ほんとに何があったんだろ?”
ジョーはアルベルトの寝顔を見ながら思った。誘われただけでなく、いつになく積極的というか協力的
だった。そんなアルベルトに、血が上って大暴走してしまったのだが。
”ちょっと、やり過ぎちゃったよね・・・。”
反省する。明日(といっても既に今日になっている)会社があるのに、大丈夫かなあと心配もした。
「あいた・・・!」
身じろぎすると、背中が痛い。
”爪、切ってもらわなきゃ・・・”
きっと今の自分の背中は、他人には見せられないだろう。それか猫にでもひっかかれたのかと思われる
ぐらいか。アルベルトがどういうつもりで誘ってきたか知らないが、今迄の1歩引かれている状況から
好転したような気がした。
”少しは・・・・変わってくれるのかな?本気で僕のこと・・・見てくれるのかな・・・・。”
アルベルトは憔悴しきって、苦悩しまくりのような顔をして寝ている。その寝顔を見つめながら、ジョー
はウトウトとしだした。
”そうだ・・・結婚してること皆にバレちゃったってこと話すの忘れた・・・・・”
ピピピピピピピ
いつも通りに目覚まし時計が、いつものように朝を告げる。アルベルトは目を開けた。目に入ってくる
のは見慣れた天井。だが、いつもと違うのは身体の疲労だった。かなりダルい。動くのも億劫になって
くる。ふと隣を見ると、相変わらずジョーが幼い寝顔で寝ていた。途端にボッと顔から火が噴出しそう
になる。もう昨夜のことは、思い出すのも恥ずかしい。ジョーは最初戸惑っていたが、あっというまに
大暴走した。
”・・・・・良く身体がもったよな・・・。”
ジョーはともかく、自分の体力に感心する。まあ、後半は意識が(というか記憶が)ハッキリせず、何が
どうなったのかは覚えていない。
ただ、ハッキリしたのは今迄引いていた1歩を失くしても大丈夫ではなかろうかということだった。確
かに張々湖の言ったことも1理ある。大暴走したとはいえ、ジョーの・・・今迄気付いていても敢えて
素知らぬフリをした想いがヒシヒシと感じられた。それは1歩引いた状態ではなく、初めて素直にジョ
ーの気持ちを受けてみたからかもしれない。最初は妥協という感じでジョーの手を取った。しかし、こ
れからは同じ”想い”のレベルでいっても良いのかも知れない。そう結論らしきものが出た。
”・・・・・・・・・さて・・・起きるか。”
結論も出たし、そろそろ起きないといけない時間だ。アルベルトはベットから降りた。
ストン
立ち上がろうとした瞬間、腰に力が入らずアルベルトは床に座り込んだ。
”!?”
驚いて、もう1度立ち上がろうとする。・・・・・しかしやはりダメだった。立ち上がるどころか、座
り込んだ姿勢のまま、動けない。
”・・・・・・・・・・・・・・・・。”
「アル?どーしたの?」
眠たそうな声で、ジョーがモゾモゾと起き上がる。座り込んでいるアルベルトを見て、首を傾げた。ア
ルベルトは呆然としたような顔でジョーを振り返る。
「身体に力が入らん・・・。」
「えっ!?」
2人して、しばし呆然と見詰め合う。先に笑い出したのはジョーだった。
「何笑ってんだ!お前のせいだろう!」
アルベルトが赤い顔で怒鳴ってくる。それでもジョーは笑いが止まらなかった。原因はわかっている、
自分だ。
「ゴメンゴメン。アルは今日急ぎの仕事とかあるのか?」
「?いや、別に。」
「じゃあ、今日休みなよ。そんな状態で行ったって仕事にならないよ。ゆっくり寝てなって。」
「・・・・しかし・・・。」
休むということに抵抗があるのだろうが、こんな状態では会社に着く前に倒れるのがオチだ。
「大丈夫!僕が責任を持ってしーっかりと看病してあげるからさ!」
「お前、今日大学は?」
「ンなモン休む。」
「お前なあ。」
「何言ってんの、愛しの奥様の体調が悪い時に大学なんて行ってらんないよ。ささ、こっちへ戻って。」
よいしょとばかりにジョーはアルベルトの身体をベットに戻した。
「じゃあ、もうちょっとしたら会社に電話しなきゃね。体調不良のためお休みしますって。」
「ああ・・・・頼む。」
きっと、グレート辺りには休みの理由などバレるんだろうなと思う。
「ねえ、アル?」
いつの間にか、自分もちゃっかりと布団に潜り込んでいたジョーが悪戯っぽく笑う。
「ん?」
「大好きだよ。」
「ん。」
いつもこう言った瞬間、アルベルトが見せていた躊躇した顔はなかった。照れたように即答してくるアル
ベルトにジョーは心底嬉しくなって、抱きついた。
「いって・・・・。」
「あーごめーん。」
「お前ね、責任持って看病するって言っときながら悪化させようってのか?」
「そんなつもりじゃないよーだ。」
軽口を叩きながら、じゃれあう。
いつものように朝が来て、いつものように暮れていく。
新婚行進曲は、まだまだ鳴り響く。
☆はーい、本当にお疲れ様でした!結局アダルターな話にはなりませんでしたけど、如何だったでしょうか?
アダルターなところは・・・逃げました。ええ、ずっぱりと。後は皆様で想像して下され・・・。
一応説明をしましょう。プロローグ〜夜までは、2人の気持ちっていうのがすれ違っているので個々の
行動や想いなどを別々に書きました。エピローグはアルベルトの方から、近づいていって”想い”が同じ
レベルになっていったので、分けてません。稚拙ですけど、そういう書き方をしました。この2人の場
合、アルベルトが1歩前進しないと展開していかないし。自分ももし12歳年下の人と結婚ということ
になったら(ありえませんが)1歩引いちゃうだろうなーと思います。
イチャイチャラブラブのバカップルって書けないのかも。あとアダルターなトコも。読むのと書くので
は雲泥の違いですね。知恵熱でましたよ。体温低いのに、37度以上をキープしておりました。か弱い
な、私・・・いや私の脳みそですね。(いつもの体温は35度前後34度の時もあります)
ともあれ、こんな色物のギャグになりそこなった話に最後まで付き合って下さって有難うございました。
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