Xmas!

       ビョオオオオオオオオオオ
       「おい、ジョー・・・。」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「うん、なあに?アル?」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「此処は一体、何処なんだ?」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「アラスカv」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「そーかそーか。で、なんで俺達世間様がクリスマス・イブで騒いでる時に、此処に突っ立っているん
        だろうな?」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「一緒に、オーロラが見たかったんだよねえ・・・。」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「いくら俺達が吹きすさぶ風が似合うっていっても、これはちょっと吹きすさびすぎだろう?」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「あはは、確かにね!あれ〜?アル何処〜?見えないなあ・・・。」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「俺にも、お前の姿は見えんぞ。つーか、自分の手も見えんぐらいな視界だな。」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「じゃあ、ドルフィン号に戻ろうか。遭難する前にさ。」
       ビョオオオオオオオオオオ
       「・・・・・・・賛成だ。」


       とぼとぼと帰ったドルフィン号の中は、暖かかった。いくら、防護服を着ていても寒いものは寒い。0
       04は溜息をついて、009を見た。ニコニコと何がそんなに嬉しいのか、笑って肩に積もった雪なん
       ぞを払っている。自分をじっと見つめている004に気が付いて、なに?とばかりに首を傾げる。なに
       か言おうものなら、すぐに言葉尻を捕らえてくるので004は何でもない、と手を振った。そのまま、
       何となく自分の定位置になってしまった艦長席にどっかりと座り込む。ドルフィン号のコクピットから
       見える外は、ブリザードが吹き荒れていた。このブリザードの為、ドルフィン号も動けなくなってしま
       っている。まったく、どーしてこういうことになってしまうやら、004はうんざりと外を見つめた。

       「はい、アル。」
       009が004の隣にピッタリとくっついてきて、何か渡してくれる。見れば、棒状の何か。
       「?何だこりゃ?」
       「カ○リーメイトのフルーツ味だよ。僕、この味が一番好きなんだ〜♪」
       「ほー、そりゃ良かったな・・・。」
       「遠慮せずに、食べてv食べてv」
       遠慮もへったくれもない。009は、いそいそと袋からカ○リーメイトを出すと、ぐぼおっと004の
       口に突っ込んだ。ぐへえ、と004の喉から色気の無い声が漏れる。どうやら勢いあまって、喉の奥深
       くまでカ○リーメイトを突っ込んでしまったらしい。004は、げぼげぼとむせた。
       「ごめ〜ん、アル♪大丈夫?」
       ちっとも悪いと思っていないことが、モロにわかる口調で009は謝った。004は涙目になって(むせ
       た為)009を睨みつけた。
       「貴様・・・・悪いなんてこれっぽちも思ってないんだろう?」
       そんな004の台詞に、009は突然稲妻を背負ってよろめいた。
       「ひ・・・ひどいっ!!アルはもう僕のこと、愛してくれてないんだね?」
       よよよ、と泣くまねをする。004は、少し頭痛を覚えた。
       「いつ愛してるって言ったよ、俺が?」
       ひらりと白いハンカチを出してきて、009はそれを口に銜えた。
       「そんなことまで言って・・・。ひどいわ、僕捨てられちゃうんだね?うううう・・・。」
       「そんなことより、そのハンカチはどこから出てきたんだ?」
       青い顔をして004は訊いた。しれっと009が答えてくる。
       「ポケット。」
       即答に、004の頬がヒクリと強張った。
       「ミュートスと戦った時も、フランソワーズに対して思ったんだがな・・・。」
       「うん。」
       「防護服に、ポケットなんぞ存在せんぞ。・・・・それともお前とフランソワーズの防護服にだけ、ポ
        ケットが存在するのか?」
       「そんなことないよ。僕とアルの防護服は、同じ物だよ?」
       「ほおおう、はっきりと言い切るじゃないか。」
       009は、ニヤリと笑った。にっこりではない。この笑いが出てきた時は、何か良からぬことを考えて
       いるのは明白だ。
       「言い切れるよ。だって、僕の防護服はまさに今、アルが着てるんだもん。」
       「へっ!?」
       「ちなみに、今僕が着ているのはアルの防護服。えへへ、取替えっこv」
       「・・・・・・・・・・。」
       004はぼーぜんとして、009を見つめた。確かに009と自分は、体格は似ている。身長も大体同
       じくらいだ。・・・つまりサイズは殆ど一緒、ということだ。しかし今まで、004は他のメンバーの
       服を着たことが無い。正確に言えば、例え-----例えば008の防護服を着ても-----違和感があり、気
       がつかなかったなんてことは無かったのだ。それが今回、全く気が付かなかったとわ・・・。004は
       前が真っ暗になったような気がした。
       「どしたの、アル?」
       元凶が、仕草も可愛らしく訊いてくる。004は虚ろな目で009を見ると、くるりと背を向け膝を抱え
       た。まるで、子供が叱られた時にするような格好。
       「俺は今、もーれつに自己嫌悪中だ・・・・。探さないで下さい・・・・。」
       「探すも何も、アルは此処にいるじゃんか。」
       ごろにゃん、と004の背中に懐いてくる。004が反応を示さないのを見ると、今度はのしっと背中
       に体重をかけてきた。
       「人が落ち込んでいる時くらい、ちょっかいをかけてくんな。重い・・・・。」
       「そりゃあ、アルよりは軽いけど(004はフル装備すると120kgあるそうな)僕の体の中にも高価な
        精密機械がみっしりと入っているからね♪」
       004からの返事はなかった。009はほそく笑む。さり気なく、004に自分の防護服を渡した時に
       は、どきどきした。004にこれは自分のじゃない、と言われやしないかと。しかし結局、タネ明かし
       をするまで004は気が付かなかった。それは、それだけ自分の感触が004に馴染んでいる、という
       証。


       ”さんざん抵抗されても、色々したことは無駄じゃなかったんだ♪”
       はっきり言って、009のしていたことは犯罪行為である。ぎゃーぎゃー言う004を押し倒して、あ
       ーんなことやこーんなことやそーんなことをしていたわけだから。しかし、そんなこと009にはどー
       でも良かった。
       ”大事なのは、結果だけだよねv”
       などと、ど畜生なことを平気で考えている。一見、009は可愛い子ちゃんなのでたまに・・・ごくた
       まーに押し倒されそうになることがある。何も知らない愚かな奴に。004を自分が押し倒すことは、
       正当であると考えているが、自分がそういう目にあった場合、容赦なくぼっこぼこにしてしまう。そし
       て決め台詞はこうだ。
       「僕を押し倒そうなんて、馬っ鹿じゃないの?そんな趣味は無いんだよ!」
       それを知った004には、言われた。
       「俺を押し倒す趣味と、一緒じゃないのか?」
       009にはそんなつもりはない。
       「なんでさー?僕はノーマルだよ。アル押し倒すのは変じゃないもん。」
       004は、額に手をやって青ざめた。
       「お前さ・・・・ノーマルの意味知ってるか?」
       普通人としては004の反応は当たり前だ。009は気にしない。
       「うん。」
       いけしゃあしゃあと言ってのける。屁理屈で004が009に勝てるわけないのだ。


      「取り合えずコレ、食べてよ。」
       俯いてしまった004の顎を、後ろから掴んで上を向かせるともう片方の手でカ○リーメイトを口に持
       っていく。004は、まだショックから抜け出せていないらしい。案外素直にカ○リーメイトを銜えて
       もそもそと食べだした。1本食べ終わると、うんざりしたように009を振り返った。
       「おいしかった?アル?」
       「・・・・・・聖夜だというのに、なんで俺はお前と顔をつき合わせてカ○リーメイトを食わなきゃな
        らんのだ・・・・?」
       009は、キョトンとしたが004が現実逃亡をしかかっていることに気が付いた。
       「じゃあ、反対に訊くけどさ。アルはその聖夜に何か特別なイベントでも用意してたわけ?」
       004が沈黙した。004は意外とこういうイベントには疎い。いや、正確には無頓着なのだ。ほっと
       けば、年明けですら部屋でぼんやりしている御仁である。対して009はお祭り好き。イベント大好き
       っ子なので、なんやかんやと004を引っ張り出している。この聖夜に004とオーロラが見たいと思
       ったのは、純粋な想いからだ。・・・・但し純粋でないオマケイベントもついてくるが。
       「ほら見てご覧よ?なにも用意してないんだったら、僕と聖夜を過ごしたってバチは当らないよ。」
       むううう、と004が呻いた。


       「お前、服脱げよ。」
       なんの前触れもなしに、突然004は言ってきた。
       「きゃvアルったら大胆v」
       頬に両手を当てて、しれっと言う009に004が眉を寄せた。だが、すぐ思い当たることがあったよう
       だった。顔を真っ赤にして、怒鳴ってくる。
       「ば・馬鹿っ!!!そーいう意味じゃない!俺の防護服を返してもらいたいだけだっ!!」
       「まったまたあv照れなくっても良いんだよ?」
       「照れとらん!!」
       「も〜う、アルッたらか〜わいいんだからv」
       「俺の話、聞いてるのか・・・?」
       「僕のぬーどが見たいだなんてね。今まで、いっぱい見せてあげたハズだけど・・・・。」
       「吐血するくらい、見せられたわ!もう見なくても良い!」
       009は上機嫌で、防護服を脱ぎだした。上を脱いだ時点で、ささっと004のマフラーを取る。
       「!?」
       慌てた004が振り返るより早く、009はぽいっと004の防護服を上だけ脱がした。
       「こ、こら!何してやがるっ!?」
       「なにって・・・。僕、これ脱いだら他に着るものないんだもん。返してもらおうと思っただけだよ。」
       すまし顔で009は言い放った。確かに、理屈はそーなるのだろうが・・・・。
       「じゃ、じゃあ、その服を渡してくれ!」
       004は右手を差し出して、自分のものだという防護服を掴もうとした。しかし流石009である。さっ
       と遠くへほおり投げてしまった。004は思わず、はいはいをして2人掛けの艦長席を進もうとした。
       009はそれを捕まえて、えいやっとばかりに004を仰向けに引っくり返した。そのまま、圧し掛かる。
       「お前なあ!好い加減ワンパターンだぞ!!」
       「犬の卒倒?」
       「俺が卒倒したいわ、馬鹿タレ。」
       004のかなり本気の台詞に、009は何故かははははと笑った。
       「なんだ?何がおかしい?」
       「いや〜、アルって冗談上手くなったよね。」
       「・・・・・冗談言ったつもりはないが・・・?」
       「そう?ま、アルが卒倒しようがしまいが”やること”はちゃんとやるよ。うん。」
       何故か、うんうんと大真面目に009は頷いている。004は、ぽかんと009を見つめた。
       「お、お前・・・そりゃ犯罪だぞ・・・?」
       「なにがさ。」
       「いやだから・・・・。」
       「アルも気持ち良い、僕も気持ち良い。万事解決だろ?どこが犯罪なの?」
       ヤバイ
       004は頭の中で警戒警報が発令されたのを感じた。この自分より12歳も年下のガキンチョ・・・い
       やいや、御子様は本気でこんなド畜生を言っている!ここで、言い負けたらどうなるかわからない。0
       04は無意味に(いやあるか)燃えた。
       「例えそーであっても、同意じゃなきゃ犯罪なんだよ!」
       「僕、18歳だから引っ掛かんないよ。」
       「誰が年齢の話をしているんだ。俺が言ってるのは、意思の疎通なんだよ。」
       「つーかーじゃんか、僕ら。」
       ああ言えば、話をずらす。こう言えば、とっとと結論を出してしまう。009は強かった・・・・。難
       しい顔をして、黙ってしまった004に、009は爽やかに言った。
       「まあまあ。聖夜ってさ、日本じゃカップルが愛を確かめ合う日なんだよ。別に僕とアルがしたって、
        問題はないさ。」
       「此処はアラスカで、俺はドイツ人だから関係ないぞ。」
       「僕は日本人だからね。たまには、僕の我侭きいてよ。」
       「ききまくった挙句の結果が、今だろ!?」
       「そうだったけか・・・・。ま、いっか♪」
       「良くな〜い!ひえええええ!!!」
       激しいブリザードは、004の悲鳴を遮り、ただただビョオオオオオオオと吹きすさんでいた。


       ★ああ・・・クリスマス・イブだというのに、何書いているんでしょうか私ったらゴフゥッ(吐血)きっ         と私が書かなくたって、誰かが素敵な94話を書いてくれるわ〜。なら私はギャグにしっちゃおうっ         と思ったのは本当です。ロマンに疎い人ですので。ああ、防護服なんですけど002,004,00         7,008,009は見たところ大体同じ体格なんですよね、私から見ると。そんな同じサイズが5         着もあったら、間違えたって変じゃないと思うんですが・・・・。ちゃんとネームでも入っているん         でしょうかね、刺繍で(笑)        戻る