Xmas2003


       「というわけで、今年もやってきました。クリスマス〜v」
       「やかましいぞ、ジョー。お前、今の状況わかってんのか?」
       「分かってるって、大丈夫だよ、アルv」
       そんな009と004が喋っている場所は、何故か薄暗い森の中だった。さらには2人共きっちりと防
       護服を着込んでいる。
       「・・・・去年のクリスマスもえらい目にあったが、今年もロクでもないな・・・・。」
       ぼやく004に、009は心外と云わんばかりに振り向いた。
       「何言ってんの、去年はろまんちっくにオーロラを見に行ったんじゃないか。」
       「見えたのは猛吹雪だけだった気がするがな。」
       「そりゃ心の目で見ないと、オーロラは恥かしがり屋なんだから見えないって。」
       「馬鹿者!どこの世界に心の目でしか観察できないオーロラがあるんだ!?」
       思わず、といった感じで大声を出した004の口を009はぱふっと塞いだ。
       「ダメだって。あいつらに気がつかれるよ?」
       そう言われて渋々口を閉じる004であった。

       彼らがなにをしているかというと・・・・・。

       「クリスマスにBG団の皆様を血祭りに上げて、神に捧げるんだよ。生贄ってやつね。」
       何故か嬉々として(しかもVサイン付)言い募る009である。
       「ドコに向かって解説してんだ、お前は。今時、キリスト教に生贄思考があると思ってんのか?」
       004は額に手をやって、疲れたようにコメントをしてくる。その眉間には深々と縦皺が刻まれている
       のだった。
       「それにしても、やっと2人っきりになれたねv僕は満足だよん♪」
       「お前がいきなり俺を引きずり出したんだろうが・・・・・。」
       「愛は勝つ。」
       「なにに?」
       「全てにv」
       「・・・・・・・・即答か。」
       004は溜息をついて、空を見上げた。そこには去年と違って、目に沁みるような青空が広がっている。
       あまつえ、何か鳥が翼を広げて飛んでいた。
       「なんだか・・・・・平和だな。」
       呟いた004に
       「大丈夫、心配しなくったってすぐ戦場になるよ。」
       満面の笑みを湛えた009が、自信満々に答えてきた。
 


       事の発端は、いきなり眠っていたはずの001が起きだし、ココにBG団の基地があるから潰しといて
       ねvと言って、とっとと眠ってしまったことだった。クリスマスがある、ということで003のお誘い
       もあって日本で(今度こそ)全員でパーティしようと、メンバー全員が集まっていた。今回009はどう
       やら003から004を掻っ攫うことに失敗したらしく、不服そうに頬を膨らませていた。その攻防戦
       は水面下で凄まじかったらしく、その2人の間に挟まってしまった002は何1つ語ろうとはしなかっ
       た。しかし005は精霊になにか聞いていたらしく何もかも承知という感じであったし、006と00
       7も大体の経緯は知っている。聡い008は004がクリスマスパーティにいる、ということだけで大
       体の事柄は察知していたらしい。
       何も知らないのは、自分に対する好意に疎い004だけなのであった。
       ま、それは置いといて、001の御神託は00ナンバーには絶対である。ぶーぶー文句を言いながら、
       ドルフィン号に乗り込んでその基地を目指したのだった。

 

       そこはお約束な、無人島。BG団という組織はよっぽど無人島というシュチュエーションが好きらしい。
       そして先ずはどう攻めるか、ということを論議する。ここで絶大なる信頼を寄せられているのが008
       なのだが、その彼が何かを発言する前にフライングもよろしく飛び出して行った奴がいた。
       004を引きずっていく、009である。
       唖然としたメンバーであったが・・・・・
       「大丈夫、ジョーがアルベルトを連れて飛び出すのはちゃんと想定してあるから。」
       と淡々と言う008に、メンバーの008支持率は過剰にアップしたのであった。しかもキチンと00
       9がどのルートで行こうとしているのか把握しているらしく、テキパキと指示を与えていく008の姿
       に008支持率は更にアップしていくのだった。
 


       殺気
       気配
       そして
       影
 

       にやりと009が笑った。
       「来たよ、アル。」
       スーパーガンを身構える。
       「そのようだな。」
       004も右手のマシンガンを構える。
       ピ・・・・ンと空気が張る。
       戦場の空気が満ち満ちる。
       そして。
       シュッ
       相手が飛び掛ってきた。
       009が加速する。
       004が応戦する。
       生と死が交錯する。


       「や〜れやれ、手ごたえのない相手だったなあ。」
       「何言ってやがる、油断するなって。」
       屍累々の場所で、呑気に呟く009を004が窘める。はあい、などと気のない良い子の返事をしな
       がら009は面白くなさそうに周囲を見回した。そして何かを考える仕草を見せてから、徐に息を吸
       い込む。
       「?」
       「♪き〜ぃよし〜〜〜〜〜こ〜〜〜〜のよるぅ〜〜〜!!!!♪」
       いきなり大声で歌いだした009の口を、004は慌てて塞いだ。
       「な・・・な・・・・馬鹿!!!なに戦場でクリスマスソング歌いだすんだ!!畑違いだぞ!?」
       「良いじゃんか、退屈なんだもん。折角のクリスマスなんだから、歌でも歌わないとバチが当るって。」
       「戦場で歌う方がバチが当るぞ。」
       「そうかなあ。」
       「絶対そうだ。」
       「でもさ。」
       009が黒い笑顔を見せる。思わず009から4歩下がって、身構える004。悲しい習性であった。
       「違うってば。・・・・・気がつかない?」
       「なに?」
       「また来たよ・・。」
       009が愉快そうに呟いてくる。確かに複数の殺気が、自分達の周囲に展開してきている。
       「お前が大声で歌うからだろ!?このバチ当り!」
       「わざとだよ、あんなの。」
       「わざと・・・?」
       ピキ、と004のこめかみに青筋がたった。
       「そ、僕達が敵を引きつけていれば他の皆が行動しやすいだろ?」
       「・・・・そりゃそーだが・・・・。」
       「僕とアルならかなりの戦力を相手に出来る。まあね、奴らの相手しながら匍匐前進して基地は目指
        すつもりだけどさ。」
       「匍匐なんてしたら、戦闘なんかできんぞ。距離的にも無理だからな。それに防護服が破れかねん。」
       「匍匐前進は大和魂なのに(謎)。」
       「だめなものはだめ。」
       「どーしてもだめ?」
       「いけません。」
       「ぶーっ、分かったよーだ。」
       004としては、何故そこでぶーたれるのかが分からない。とにかく009はぷう、と頬を膨らませ
       てとっとと臨戦態勢に入る。004も首を傾げながら、臨戦態勢に入った。緊張感漂う、その時。
       「うーむ、このぐらい諸人がこぞれば主とやらはここに来ませり。なんだろうか。」
       009ののんびりした声が響く。
       「馬鹿者、こんな戦場に来る呑気な主なんぞいるわけないだろ?」
       004が、律儀に突っ込んでくる。
       「昔は”主はきませり”が"シュワー"と聞こえてさー。サイダー思い出してたよね。」
       「・・・・・・お前、教会育ちだろ?」
       「教会で育ったからって、キリスト教徒になるわけないじゃん。」
       しれっと言ってくる009に、もはや何もかも諦めた感じの004が溜息をついた。
 


       敵はどこかで何でも出るという石臼を轢いて戦闘員を生産しているのか、と疑いたくなる程の戦力だっ
       た。流石に004の息が上がってくる。右手のマシンガンの弾はとうに撃ちつくし、スーパーガンでの
       応戦ではあったが、そのスーパーガンのエネルギー残量も怪しくなってくる。なにせ009は加速しっ
       ぱなしだったので、敵は自然と姿が見える004に向かってくる。
       気配を背後に感じて、004は振り返った。確かに敵がいたのだが、敵は四方八方から来ているのであ
       る。スキありと見た連中が、004に襲い掛かった。
       「しまった・・・・っ!!」
       思わず叫んで身構えた004であったが・・・・・・。
       目を開ければ、屍累々。そして自分の前で嘘爽やかに笑っている、009。
       「あ、ありがとう、ジョー。」
       「いいや、このくらい朝飯前さ!なんたって恋人がピンチの時に、颯爽と現れて救うっていうのはお約
        束だからねーvvvやってみたかったんだあ♪」
       009の最後の言葉に、004はピクリと反応した。
       「・・・・ちょっと待て。いやに敵が俺に集中したとは思ったが、お前今までドコにいた?」
       004のドスの効いた声もなんのその、009はケロリとして答えた。
       「あそこ。」
       敵の包囲網の外側を指差す。
       「つまりお前はそこにずーっと待機してて、俺がピンチになる瞬間を狙っとった・・・ということか?」
       「うん。」
       やたら無邪気に頷く009を見て、004は頭に血が登るというのはこういうモンなんだなと実感した。
       そのまま無言で、基地があるらしい方向に向かって歩き出した。そんな004に、009はスキップし
       ているのかとも思えるほど軽い足取りでついて来る。
       「ついてくんな、ボケナス。」
       「?なに怒ってるの?」
       「これが怒らずにいられるか。お前が敵を呼んだくせに、俺に全部押し付けやがって・・・・。」
       「アル格好良かったよv流石ーってvv僕のハニーなだけはあるよねv」
       「俺は蜂蜜じゃない。」
       ぶすっと的外れに言ってくる004の前に、009はひょいと立った。
       「・・・・・・・邪魔だ。」
       「怒らないでよ、なんか悪い事したかな?僕。」
       可愛らしく言ってはいるが、絶対分かって言っているのだ。004は騙されるもんかと、睨みつける。
       「まあ、良くわかんないけどご褒美あげるからさーv機嫌直してよv」
       ニヤリと笑う009に、悪寒が走る。
       「い、いらな・・・・・ムグー!!!」
       なにが起こったかは想像にお任せするが、まあそんな彼等の周りで何かがバタバタ倒れていく音がする。
       「?」
       009を引き剥がして慌てて見れば、周りで倒れていたのはBGの戦闘員だった。
       「?何倒れてるんだ、こいつら・・・・?泡まで吹いて・・・?」
       「さあ?きっと聖なるクリスマスだから、クリスマスビームが発せられたんだよ。きっと。」
       「どんなビームだっ!?」
       「神様が僕らを守ってくれたんだね、良い子にしてるから。」
       「敵を呼んでおいて、自分はどっかからただ見とった奴が良い子じゃないと思うが。」
       「そう?(ケロリ)んじゃここらへんに転がってる連中を生贄に捧げるか・・・。」
       「お前の神様ってゆーのは、暗黒神なのか・・・・・?」
       004の突っ込みもなんのその、009は適当にそこらの枝に連中を吊るしていく。あっという間に恐
       ろしい飾り付けが出来上がった。


       ドカーン
       基地がある方向から、爆音と煙が上がる。どうやら他のメンバーが侵入に成功、さらには破壊にも成功
       したらしい。
       「おや、早かったねーvこれで帰ってクリスマスケーキが食べれるな♪チキンもv」
       「・・・・お前、こんな空恐ろしいオブジェの中で良く食いもんの話ができるな・・・・・。」
       「あとはーアルと聖なる夜中を過ごせば良いんだしv」
       「想像がつくから、止めてくれ。いや本当に・・・・。」
       ニコニコとご機嫌で笑う009、頭を抱えて蹲る004。そんな004を背中から抱き締めて、009
       は言った。
       「メリークリスマス、アル♪皆さんも良いクリスマスをねvあ、もう過ごしちゃったかー。」




       ★・・・・すいません、なんつー色気のない話でしょう。なんだか最初書きたかったものから、ずれた         気が。ちなみに009は別にBGの首を吊るしたわけではないので、御安心(?)しかし奇怪なオブジ         ェになったのは、確かですね。         私の009が言っている主は、本当に暗黒神かもしれません(笑)黒島村だし。         ちなみに009が言っている「主は=シュワー」と聞こえていたのは、幼き日の私でございます。君が         代もそうですが、歌詞の意味を分からずに歌ってました。授業で。更には「救いの御子」を御と子の間         をのばして歌う為、ずっとミーコだと思ってました。猫みたいな名前ーとか言って。         敬虔なキリスト教信者の方に叱られそうな解釈をしていた私は、今は立派な無神論者です。まあ無神論         者といっても、祈ってるだけじゃなにも変わらないと思っている程度ですが。 戻る