【ブラックホーク・ダウン】
製作年 2001年、米
監督  リドリー・スコット → テルマ&ルイーズ
出演  ジョシュ・ハートネット ユアン・マクレガー トム・サイズモア
【あらすじ】
 1993年10月3日、ソマリアの首都モガディシオ市街に米軍レンジャー部隊とデルタフォース部隊の兵士100名あまりがヘリ部隊と車輌部隊に別れて向かった。彼らの任務は独裁者アイディード将軍の副官2名を拘束することで30分あまりで終了するはずだった。ヘリから降下する時RPGロケット砲で狙われ新人のブラックバーンが落下してしまうが、副官の捕捉は予定どうり遂行された。しかし、彼らがいる5ブロック先でブラックホークが敵のRPGで撃墜され、乗員の保護のためエヴァーズマン軍曹(ジョシュ・ハートネット)らが向かうことになった。マクナイト中佐(トム・サイズモア)が率いる車輌部隊も救出に向かおうとするが、バリケードと民兵の攻撃を受け市街地を迷走してしまう。そうした矢先、2機目のブラックホークが撃墜された。上空に待機していた2名のデルタ隊員が救援に降下するが、またたく間に弾を撃ち尽くし群がる暴徒らの犠牲になった。最初のヘリ墜落地点にたどりつけない車輌部隊は乗員の半数以上が死傷者となり、体勢を立て直すため基地に帰還した。墜落地点に釘付けになっていたエヴァーズマンらは取り残されることになった。夜が訪れ民兵たちの攻撃が激しくなるが、徒歩で応援にきた別働隊やヘリが撃退してくれかろうじて命脈を保つことが出来た。国連軍や山岳師団を中心にした大規模な車輌部隊がようやく救出に駆けつけ、ヘリのパイロットの遺体を収容した。夜明けとなり基地に帰還しようとするが、車輌が満杯なためエヴァーズマンらは徒歩で向かうことになり、民兵らの銃撃の中を必死で基地まで駆け抜けた。
【【解説】
 1993年のソマリア紛争での急襲作戦が元になっており、戦闘で死亡した兵士が群衆に引きずられるショッキングな映像が流されクリントン大統領にソマリアからの撤退を決意させたことでも知られる。監督のリドリー・スコットがイギリス出身であるためか、「スター・ウォーズ・エピソード1/ファントム・メナス」(99年)のユアン・マクレガーや「パトリオット」(2000年)のジェイソン・アイザックスなどイギリス出身の俳優も多く出演している。「イントルーダー/怒りの翼」にも出演していたトム・サイズモアは、「プライベート・ライアン」(98年)の分隊長役や「パールハーバー」(2001年)の航空整備士役などでもタフで頼りがいのある軍人を演じている。撮影はモロッコで行われ、実際の戦闘に参加した退役軍人も監修にあたっている。俳優たちはレンジャー隊員役・パイロット役・デルタフォース隊員役の3つに別れ、それぞれ実際の特殊作戦部隊での訓練プログラムに参加して一般軍事知識から高度な戦闘テクニックまで習得した。
 シコルスキーMH−60ブラックホークは、ベトナム戦争を扱った映画には必ず出てくるUH−1イロコイの後継機として登場した汎用輸送ヘリUH−60型の特殊作戦仕様機である。UH−60はブレード(回転翼)にチタンや複合素材を使い、コックピットや燃料タンクにも装甲板が取り付けられており、23o弾にも耐えられるような構造になっている。故障箇所を自動的に検知する装置が付けられ信頼性が高められており、炎熱と砂塵の中での作戦となった湾岸戦争でも400機近くが派遣されたが、故障した機体はごくわずかで戦闘による損失は2機だけだった。
 特殊作戦仕様機には、夜間でも良好な視界を確保できる赤外線監視装置、前方の地形を捜索し自動的に高度を調節して匍匐飛行(高度5m前後の超低空飛行)を可能にする地形追随レーダー、赤外線誘導ミサイルの攻撃を防ぐ赤外線妨害装置や、エンジンから発生する熱量を制御し赤外線の発生を抑制する排気制御システムも装備されている。本作品の中に膝当てをした兵士が出てくるが、ブラックホークは天井が低く側面窓に装備してある回転銃身式機関銃(ミニガン)を操る時直立できないためである。天井が低い訳は輸送機による搬送を可能にするため大きさに制約が設けられているためである。
 多くの派生型が存在し米海軍の対潜哨戒型はシーホーク、沿岸警備隊の捜索救難型はジェイホークと呼ばれている。海外でも20ヶ国以上の国が採用しているが、最も多く使用しているのは日本である。陸上自衛隊では多用途戦術輸送ヘリとして、海上自衛隊では救難・対潜ヘリとして、航空自衛隊では救難ヘリとしてそれぞれ採用している。
 リトルバードと呼ばれる小型のヘリが登場するが、OH−6カイユースをベースに特殊作戦用に発展させたもので2種類存在し、その内MH−6Jは折り畳み式ステップに4名の兵員を乗せる事が出来、特殊部隊隊員の潜入、収容、輸送に使われる。AH−6Jは70oロケット弾ポッド2個とミニガン2基を機外に搭載しており、MH−6Jの護衛や地上攻撃に使われる。