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【グレートレース】 製作年 1965年、米 監督 ブレーク・エドワーズ 出演 ジャック・レモン トニー・カーチス ナタリー・ウッド ピーター・フォーク |
【あらすじ】 20世紀初頭、冒険家のレスリー(トニー・カーチス)と彼にライバル心を燃やすフェイト(ジャック・レモン)は幾多の競技で争っていたが、レスリーが提案したニューヨークからパリまでの自動車レースにフェイトも怪しい自動車を作って参加することにした。一方マギー(ナタリー・ウッド)は新聞社に押し掛け記事を書くから費用を出せと迫り、根負けした編集長からOKをもらった。スタート前にフェイトの助手マックス(ピーター・フォーク)が対抗車に細工をしたので、スタート直後次々と脱落者が出るが、間抜けなマックスは自分たちの車にも細工したのでエンジンが吹き飛んだ。マギーの車もエンコしたが、レスリーの車に無理矢理乗り込んでレースを継続した。ずるがしこいフェイトは西部の町でひと騒動起こし自分たちだけ燃料を補給し、残りを燃やしてしまう。レスリーは馬に車を引かせて追い掛け、手間取っていたフェイクとアラスカの氷山の上で追いつく。ベーリング海峡を渡りシベリアを横断しカルパニア王国までたどり着くと、一行は頭の弱い皇太子(ジャック・レモン)に目通りを許されるがフェイトにそっくりなので驚いた。陰謀家のキュスター将軍もそれに気づき皇太子を監禁すると、フェイトを身代わりにして国の乗っ取りを画策する。しかし、フェイトは戴冠式間際に抜け出し、一同はパリを目指して車を飛ばす。優勝が確実だったレスリーはエッフェルト塔の下のゴール直前で車を止め痴話ゲンカ中だったマギーと仲直りするが、フェイトが先にゴールインした。しかし、フェイトはわざと俺を勝たしたと立腹し、再レースを要求した。 |
【解説】 監督のブレーク・エドワーズは、祖父も監督だったこともありハリウッドのスタジオを遊び場に育った。当然、映画界に進んだが芳しい評価を受けることが出来ず、テレビの仕事に転向し、それから運が向き始める。TVシリーズの時に組んだ作曲家のヘンリー・マンシーニとは、本作品や「ティファニーで朝食を」(61年)、一連の”ピンク・パンサー”シリーズなどエドワーズ作品の大半でコンビを組んでいる。 同監督の「ペティコート作戦」(59年)にも出演していたトニー・カーチスは、50年代から60年代にかけて典型的な2枚目青春スターとして多くの作品に出演したが、「手錠のまゝの脱獄」(58年)のような骨太い作品にも出演している。同じ青春スターで絶大な人気があったジャネット・リーと結婚し、「トゥルー・ライズ」に出演していたジェイミー・リー・カーチスら二女をもうけたが、カーチスの浮気が元で離婚している。同監督の「酒とバラの日々」(62年)でも鬼気迫る熱演を見せたジャック・レモンは、本作品の仇敵トニー・カーチスと共演した「お熱のがお好き」(59年)で監督のビリー・ワイルダーに出会って、以後「アパートの鍵貸します」(60年)など同監督の7本の作品に出演しコメディアンとしての才を遺憾なく発揮した。 この作品は1908年に実際に行われた大陸横断オートレースが元になっている。実際のレースに参加したのはアメリカから1台、ドイツから1台、フランスから3台、イタリアから1台の計6台で、ニューヨークのタイムズスクェアをスタートした後、一斉に北米大陸横断に挑んだがはやくもフランスの2台が西海岸のサンフランシスコにたどり着けずリタイヤしている。一行は、映画と同じようにベーリング海峡を横断するためアラスカに向かうが、原地の人に聞くと海峡が結氷することはほとんど無く、車で渡ることは不可能と言われる。映画以上に間抜けな話だが協議した結果、一行はシアトルから船に乗り横浜に向かう。彼らは横浜から敦賀まで車で横断し、そこからウラジオストックまで船で行く予定だった。 当時の日本ではまだ車は珍しく当然道路も整備されていなかった。特に木や竹で出来た橋はもろいため地元の人々に協力してもらい補強してから渡った。米原から敦賀までの山間部を抜けるのも一苦労し、地元民が総出で応援してくれたそうである。ウラジオストックで1台がリタイヤし、3台がシベリアの平原横断に挑んだが、2ヶ月後にはドイツ車がトップでロシアのペテルスブルグにたどり着いた。ペテルスブルグからパリまではこれまでの行程で最も道がよく、ドイツ車が8日間で走り抜きトップでゴールしたが、北米大陸横断時のペナルティ(途中で鉄道を使ったのが発覚した)があったため優勝はアメリカのトーマス・フライヤー号となった。 1900年代のアメリカでは蒸気自動車の方が幅を利かせており、映画でもナタリー・ウッドの乗用車としてスタンレーの蒸気自動車が登場する。しかし、始動に時間がかかるのとボイラーの洗浄を頻繁に行わなければならないなどの理由で、しだいにガソリン車に市場を奪われていった。 |
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